慢性腎不全に伴う関節周囲の転移性石灰化
- 腎不全に伴う石灰化を転移性石灰化(metastatic calcification)と呼ぶ。
- 透析患者の0.5~1.2%。
- 石灰沈着は主に、眼球、動脈壁、軟骨、関節近傍、腹部臓器に生じる。
- 関節軟骨の石灰化は腎不全に伴うピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶沈着を反映していることが多く、膝関節や手根関節に認めることが多い。
- 関節周囲の石灰沈着は大関節(肩、股、膝、肘)に好発し、多発性・対称性のことが多い。大きなものでは不均一な雲状濃度を有する腫瘤状石灰化となり、骨破壊や関節内への進展を伴うこともある。
症例60歳代男性 透析中
左股関節周囲に雲状石灰化あり。
慢性腎不全に伴う関節周囲の転移性石灰化を疑う所見です。
関連:腫瘍状石灰化症(Tumoral calcinosis)
- カルシウム代謝異常を伴わずに関節周囲の皮下に結節状の石灰沈着を来す疾患。
- 黒人で罹患率が高く、家族内発生が知られ、遺伝性疾患と考えられている。
- 四肢関節(股、肘、肩、足、手)の周囲に結節状の石灰化を来す。
- 慢性腎不全などの基礎疾患があって同様の腫瘤状石灰化を来す病態を2次性腫瘤状石灰化症と記載しているものもあるが、本来、腫瘍状石灰化症という疾患名は家族性のものに限定して用いるべき。
ですので、腎不全による石灰化は、慢性腎不全に伴う転移性石灰化と表現するのが妥当です。
参考文献:
- 臨床画像 Vol.36 No.10 2020 P1095
- 画像診断 Vol.36 No.11 増刊号 2016 P99
- 画像診断 Vol.32 No.12 2012 P1203