浸透圧性脱髄症候群osmotic demyelination syndrome:ODSとは?
- 体液の浸透圧の異常による炎症反応に乏しい脱髄疾患。
- 低Na血症に対する急速な補正が原因。
- ただし、高浸透圧血症の患者の症例にも起こり、細胞外液が細胞内液に対して相対的に高い状態における障害と考えられている。
- また、糖尿病の高張性非ケトン性昏睡、慢性アルコール中毒や重症熱傷などの代謝・障害状態(等〜高血清Naとなると報告されている)が脳の浸透圧保護機能を低下させることも補助的要因となる。
- 病変は軽症では、脱髄とgliosis、重症ではnecrosisが見られる。
- 主に橋底部中央に見られる。(橋中心髄鞘崩壊症(central pontinemyelinolysis:CPM))
- その他、基底核や視床,小脳回、内包、外包、最外包、皮質下白質、皮質などにも見られることがある(橋外髄鞘崩壊症(extra pontinemyelinolysis:EPM))。→この場合、低酸素脳症、低血糖脳症、Wilson病、CDJなどが鑑別に挙がる。
MRI画像所見
- CPMでは橋中央にT2強調像で楕円形〜三角形の凸型の高信号を示す。T1WIでは低信号、FLARIでは高信号を呈する。障害は横走線維に多く、橋被蓋や縦走線維は温存される傾向にある。
- 皮質脊髄路が走る橋底部付近が対称性に島状に保たれる傾向にある。また、びまん性に橋に異常高信号を認めても、辺縁部はspareされる傾向がある。
- mass effectに乏しく、造影効果は通常認めないが、辺縁や一部に造影効果が見られることもある。
- 発症後数日~数週にわたってMRI撮影で異常が指摘できないこともある。
- 拡散強調像(DWI)は浸透圧障害による細胞浮腫を反映して、発症24時間以内に拡散低下が見られ、早期発見に有用とされる。
症例 60歳代女性 入院中の強直間代発作
引用:radiopedia
橋中心にT2WI/FLAIR高信号あり。拡散制限は認めません。
橋中心髄鞘崩壊症(central pontinemyelinolysis:CPM)と診断されました。
症例 60歳代男性 意識障害
T2WI・FLAIRでは、橋中央部に左右対称性の広範な高信号域を認めています。
CTでは同部に低吸収域あり(CTは慢性期のもの)。
浸透圧性脱髄症候群(橋中心髄鞘崩壊症(central pontinemyelinolysis:CPM))と診断されました。
参考)
・よくわかる脳MRI(第3版)
・臨床画像2013年3月 白質の構造からアプローチする脱髄性疾患 森本笑子先生