先に結論:脳卒中にはCTかMRIか
- 脳卒中が疑われたら、まずCTで出血を除外するのが基本で、脳出血・くも膜下出血はCTが得意です
- 急性期の脳梗塞はMRIのDWIが最も鋭敏で、FLAIR・T2*強調像・MRAと組み合わせて評価します。ただし検査で治療開始が遅れないことが最優先です
- 血栓回収療法の適応判断にはCTA・MRAでの主幹動脈閉塞の確認が必要で、施設の体制に合わせて最短で評価します
- 発症時刻がわからない脳梗塞では、MRIのDWIとFLAIRを比べ、DWIで光るがFLAIRで高信号がない(DWI-FLAIRミスマッチ)と、発症から概ね4.5時間以内の目安になります(下の節)
- CTでは急性期の出血は白く(高吸収)、脳梗塞は時間がたつと黒く(低吸収)写ります。発症直後の脳梗塞はCTでほとんど変化が見えないことがあります
脳卒中に適した画像はCTなのでしょうか?それともMRIなのでしょうか?
MRIは脳梗塞に強いと言われますが、実際の所どうなのでしょうか?
脳卒中に適した画像についてまとめてみました。
脳卒中に適した画像の撮影モダリティとは?
なるほど。では、CTを取れば脳梗塞か脳出血かわかるということですか?
逆にMRIは脳梗塞の早期診断に優れています。
しかし、CTしかない施設では、CTで出血を除外し、臨床所見から脳梗塞が疑わしいときは、脳梗塞として治療を開始したり、場合によっては、MRIが撮影できる施設に転送されることもあります。
ただし、
静注血栓溶解療法の候補では単純CTで出血を除外すれば治療を始めてよく、DWIで虚血の範囲を確かめるのは治療を遅らせない場合に限る。MRIを最初の検査にするのは、24時間すぐにMRIを撮れて治療を遅らせない施設である
(米国神経放射線学会・米国放射線学会・米国脳神経血管内治療学会の共同声明。国内の推奨は脳卒中治療ガイドラインの現行版を確認してください)
とされています。
施設の状況や患者さんの状態などにより、臨機応変に対応しなくてはいけません。
ここまでのまとめ
- CTが第一選択。
- CTは急性期脳出血に強い。
- MRIは急性期脳梗塞に強い。
- MRIが撮影できない施設はたくさんある。今ある状況でベストを尽くす。
頭部CT
- 脳卒中が疑われる場合の第一選択。
- 脳実質内出血、クモ膜下出血、硬膜下血腫、硬膜外血腫など急性期頭蓋内出血の描出に優れる。
- 急性期脳内出血の検出能は、T2*強調像を含むMRIとほぼ同等とされる。
- 急性期脳梗塞の描出には弱いが、わかることもあるので、その特徴を覚えておく。→early CT sign(早期虚血サイン)とは?
造影したら、コントラストがついて見やすくなるんじゃないですか?
頭部の場合は、造影は基本的に必要ありません。
逆に出血が見えにくくなります。基本は単純CTです。
ただし、血管を描出するCTAは一部の場合では撮影した方がよいことがあります。
CTAが有用であるという報告
- 椎骨・脳底動脈閉塞を疑う場合。
- 経動脈的血栓除去術など急性期再開通療法を考慮する場合。
- CTAの元画像が早期虚血サインの診断に有用。
頭部MRI
・急性期脳梗塞の描出に優れる。CTより上。救急で脳卒中が疑われた356例の前向き比較では、急性期脳梗塞の検出率はMRI(DWI)46%に対しCT 10%で、最終診断に対する脳卒中全体の感度はMRI 83%、CT 26%でした。
DWI
- 特に発症早期の急性期脳梗塞の検出で最も鋭敏。最重要。上記の前向き比較では、発症3時間以内に撮影した例でもMRIは46%で急性期脳梗塞を検出し、CTは7%でした。
- 見かけの拡散係数ADCが低下していることを確認することも重要。ただし、発症直後や病変が小さい場合は判定困難なことあり。
- 他、痙攣後脳症や脳炎、脳膿瘍の診断にも有用。
FLAIR
- 梗塞や虚血性病変の検出。・発症時刻不明の脳梗塞でも、DWIで病変がありFLAIRで実質の高信号がない(DWI-FLAIRミスマッチ)場合は発症から概ね4.5時間以内と推定できる。この条件で行われたWAKE-UP試験では、90日後の転帰良好(mRS 0-1)がアルテプラーゼ群53.3%、プラセボ群41.8%であった。
- 皮質枝閉塞(intraarterial signal)の描出に優れる。
- 側副路の評価もある程度可能。
- 急性期〜亜急性期のくも膜下出血の検出に強い。
T2WI
- FLAIRが弱い後頭蓋窩の虚血性病変の描出に優れる。
- しかし、DWIで代用できるため、省略可。
参考)脳梗塞の画像の経時的変化
T1WI
- 脂肪、出血(メトヘモグロビン)、マンガン沈着、メラニン沈着などが特異的な高信号を呈する。
- ただし、急性期においてこれらの検出を第一目的とすることは少ないため、急性期のルーチンに入れなくてもよい。
T2*WI
- 急性期出血の検出はCTと同等で、microbleedなど陳旧性出血の検出はCTより上。磁化率変化に鋭敏。穿通動脈レベルのヘモジデリン沈着の検出=microbleedの検出。
- ただし、古い出血(亜急性期のメトヘモグロビンや陳旧性のヘモジデリン)か新しい出血(デオキシヘモグロビン)かわからないことがあるので、解釈には慎重に。
- 皮質枝塞栓の検出(塞栓子や血栓のsusceptibility sign)。
SWI
- 皮質枝塞栓の検出(susceptibility sign)。
- 穿通動脈レベルのヘモジデリン沈着の検出=microbleedの検出。
MRA(MR angiography)
- 閉塞部位の特定に有用。
- ただし、血管の径の評価はCTAより下。狭窄を過大評価することあり。
灌流画像
・DWIと併用することにより、梗塞巣やペナンブラの評価に有用。
やはり急性期脳梗塞の診断には、DWI(diffusion)が最重要なんですね。
よくわかりました。
発症時刻がわからないとき・時間がたった脳梗塞の画像の見方
朝起きたら症状があった(wake-up stroke)など、発症時刻がわからない脳梗塞は少なくありません。そのようなときは「時計」の代わりに画像で、梗塞がどのくらい新しいか、救える脳が残っているかを調べます。
| 場面 | 見る画像 | わかったこと(臨床試験) |
|---|---|---|
| 発症時刻不明 | MRIのDWI+FLAIR(DWI-FLAIRミスマッチ) | DWIに病変があり、FLAIRで実質の高信号がない患者(血栓回収を予定する例は除外)で、アルテプラーゼ群は90日後の転帰良好が53.3%、プラセボ群は41.8%。症候性頭蓋内出血は2.0%と0.4%でした(Thomalla 2018 WAKE-UP試験) |
| 最終健在確認から6〜24時間 | 症状の重さと梗塞の大きさのミスマッチ(DAWN) | 内頸動脈または中大脳動脈近位部の閉塞で、血栓回収群の90日後の機能的自立は49%、対照群は13%でした(Nogueira 2018) |
| 最終健在確認から6〜16時間 | 灌流画像(DEFUSE 3)。梗塞が70mL未満で、虚血組織の体積と梗塞体積の比が1.8以上 | 機能的自立は血栓回収群45%、薬物治療のみの群17%でした(Albers 2018) |
| 大きな梗塞(ASPECTS 3〜5、またはコア体積50mL以上) | CT(ASPECTS)、CT灌流画像またはDWI(SELECT2) | 発症24時間以内で機能的自立は血栓回収群20%、薬物治療のみの群7%でした(Sarraj 2023) |
- DWI-FLAIRミスマッチは「DWIでは梗塞が見えるが、FLAIRではまだ変化が出ていない」状態で、梗塞が比較的新しいことを示します。時間とともにFLAIRで高信号になっていくためです。
- 血栓回収の適応は、これらの試験の画像条件が目安になりますが、国内の適応は脳卒中治療ガイドラインの現行版と各施設の体制で決まります。
- どの場合も、画像検査で治療開始が遅れないことが最優先です。
CTが有用な疾患、MRIが有用な疾患まとめ
CTが有用
- 脳出血急性期
- クモ膜下出血急性期
- 頭部外傷急性期
- 頭蓋底、顔面頭蓋外傷
MRIが有用
- 脳梗塞超急性期
- クモ膜下出血亜急性期
- 前頭葉や側頭葉に限局する脳挫傷や軸索損傷
- その他の中枢神経救急疾患全般

CTで脳梗塞と脳出血はどう見える?(白い・黒い)
CTでは、X線を通しにくいものほど白く(高吸収)、通しやすいものほど黒く(低吸収)写ります。脳梗塞と脳出血は、CTでの色の見え方がちがいます。
| 脳出血・くも膜下出血 | 脳梗塞 | |
|---|---|---|
| 発症直後 | 出血がすぐに白く写る | ほとんど変化が見えないことが多い。早期虚血サイン(灰白質と白質の境目がぼやける、脳溝が浅くなる等)が見えることがある |
| 時間がたつと | 白さがしだいに薄れ、慢性期には黒くなる | 梗塞の範囲がはっきり黒くなる |
| MRIでは | T2*強調像・SWIで黒く抜ける | DWIで発症早期から白く光る |
脳梗塞なのにCTで白く見えることがある
- 血管の中の血栓:詰まった中大脳動脈などが白く見えることがあり(hyperdense artery sign)、急性期脳梗塞の手がかりになります
- 出血性梗塞:梗塞の部分に出血が加わると、黒い梗塞の中に白い出血が混じって見えます
そのため「CTで白い=出血、黒い=梗塞」と単純には決められず、発症からの時間やMRIとあわせて判断します。
症例 40歳代女性(急性期の左中大脳動脈領域梗塞)


引用:Radiopaedia(Acute left middle cerebral artery infarct – hyperdense MCA sign)
急に右半身の麻痺が出た方です。単純CT(上)では左の基底核や前頭葉・側頭葉の皮質〜皮質下にまだらな低吸収域があり、脳溝の狭小化や灰白質と白質の境目の不明瞭化を伴っています。同じ症例のCTでは左中大脳動脈が白く見えるhyperdense MCA signもみられ、血栓による閉塞が疑われました。MRIの拡散強調像(下)では左の基底核などに高信号があり、ADCの低下とあわせて急性期脳梗塞と確かめられています。
脳卒中のCT・MRIでよくある疑問(Q&A)
Q. CTで異常がなければ脳梗塞ではない?
いいえ。発症早期の脳梗塞はCTで写らないことが多く、前述の356例の比較でもCTが急性期脳梗塞を捉えたのは10%でした(Chalela 2007)。CTで出血がないことを確かめたうえで、症状から脳梗塞が疑われれば治療やMRIへ進みます。
Q. なぜCTとMRIの両方を撮ることがあるの?
CTは短時間で出血を除外でき、MRIのDWIは早期の脳梗塞を見つけるのが得意なためです。ただし検査で治療開始が遅れないことが最優先で、どちらを先に撮るかは施設の体制によって変わります。
Q. 発症時刻がわからないときは、治療できないのですか。
いいえ。MRIでDWI-FLAIRミスマッチがあれば、発症4.5時間以内に近いと推定され、静脈内血栓溶解療法の対象になりうることが示されています(Thomalla 2018)。また、最終健在確認から6〜24時間でも、画像の条件を満たせば血栓回収で転帰が改善した報告があります(Nogueira 2018、Albers 2018)。実際の適応は施設の体制と現行の診療指針で判断します。
Q. 梗塞が大きくても血栓回収は意味がありますか。
広範な梗塞(ASPECTS 3〜5など)でも、血栓回収群で機能的自立が20%、薬物治療のみで7%と、血栓回収群が良好でした(Sarraj 2023)。ただし死亡率は同等で、血管の合併症も報告されています。
顔のゆがみ、片側の手足の麻痺やしびれ、言葉のもつれなどの症状が急に出たときは、様子を見ずにすぐ救急車を呼ぶなどして医療機関を受診してください。
参考文献
- Chalela JA, Kidwell CS, Nentwich LM, et al. Magnetic resonance imaging and computed tomography in emergency assessment of patients with suspected acute stroke: a prospective comparison. Lancet. 2007;369(9558):293-8. PubMed
- Kidwell CS, Chalela JA, Saver JL, et al. Comparison of MRI and CT for detection of acute intracerebral hemorrhage. JAMA. 2004;292(15):1823-30. PubMed
- Prabhakaran S, Gonzalez NR, Zachrison KS, et al. 2026 Guideline for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2026;57(8):e316-e436. PubMed
- Wintermark M, Sanelli PC, Albers GW, et al. Imaging recommendations for acute stroke and transient ischemic attack patients: a joint statement by the American Society of Neuroradiology, the American College of Radiology and the Society of NeuroInterventional Surgery. J Am Coll Radiol. 2013;10(11):828-32. PubMed
- Thomalla G, Simonsen CZ, Boutitie F, et al. MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset. N Engl J Med. 2018;379(7):611-622. PubMed
- Nogueira RG, Jadhav AP, Haussen DC, et al.. Thrombectomy 6 to 24 Hours after Stroke with a Mismatch between Deficit and Infarct. N Engl J Med. 2018;378(1):11-21. PubMed
- Albers GW, Marks MP, Kemp S, et al.. Thrombectomy for Stroke at 6 to 16 Hours with Selection by Perfusion Imaging. N Engl J Med. 2018;378(8):708-718. PubMed
- Sarraj A, Hassan AE, Abraham MG, et al.. Trial of Endovascular Thrombectomy for Large Ischemic Strokes. N Engl J Med. 2023;388(14):1259-1271. PubMed
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