先に結論:クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)とは

  • 異常プリオン蛋白が脳にたまり、神経細胞が壊れて脳がスポンジ状になる病気で、急速に進む認知症・ミオクローヌス(手足のピクッとした動き)・歩行障害などが起こり、数か月で寝たきりになる重い病気です(日本では年間およそ100万人に1人。Nakatani 2015)。略してCJDや「ヤコブ病」とも呼ばれ、プリオン病の中で最も多い病気です
  • 多くは原因のわからない孤発性で、ほかに遺伝性(家族性)と、医療行為などによる感染性があります。ふだんの生活での接触で人にうつることはありません
  • MRIの拡散強調像(DWI)で大脳皮質(リボン状)や基底核(線条体)が白く光るのが特徴で、血管の支配領域に一致しません。脳波の周期性同期性放電、髄液検査とあわせて診断します
  • MRI(DWI・FLAIR)は孤発性CJDを感度96%・特異度93%で見分けられたと報告されています(Vitali 2011)
  • 最初に視覚の異常(かすみ、視野の欠けなど)が出て、眼科で原因が見つからないまま進むハイデンハイン型もあります。この型でも、DWIで後頭葉の皮質が高信号になることがあります

Creutzfeldt-Jakob病

  • 感染性のある異常プリオン蛋白の中枢神経沈着により生じる。進行性の精神・高次機能障害、運動失調、歩行障害など、広範な中枢神経系の障害を来し、最終的には死に至る。
  1. 原因不明の孤発性CJD、
  2. プリオン蛋白遺伝子の変異による家族性CJD、
  3. ヒトや動物からの感染による感染性CJD、

の3型に大別されるが、孤発性CJDが最も多い。

  • 孤発性CJDは認知症、ミオクローヌス、脳波での周期性同期性放電(PSD:Periodic synchronous discharge)を三徴とし、数か月で無動性無言になる。
  • 病理学的には、著明な神経脱落とグリオーシスを伴う特徴的な海綿状変性が、皮質や基底核を中心に認められる、著明なびまん性脳萎縮を来すが、海馬は比較的保たれる。

CJDの画像所見

  • DWIやT2強調像、FLAIR像で基底核や大脳皮質に高信号が認められる。ADC低下あり。血管支配領域に一致しない。海綿状変化が拡散制限を来すと考えられている。
  • 中心前回は侵されにくい。また海馬など辺縁系だけに高信号がとどまることはなく、辺縁系のみの高信号(FLAIR>DWI)はむしろ他の急速進行性認知症に多い。
  • DWIではFLAIRやT2WIよりも早期に、病状の増悪に一致して(ミオクローヌスの出現とほぼ一致)出現する。日本の検討(CJD 36例)では、初回検査での異常の検出率はDWI 92.3%で、脳波の周期性同期性放電(50.0%)や髄液14-3-3蛋白(84.0%)より高く、発症3週の時点でDWI異常を捉えられた例もあった。
  • 末期には著明なびまん性脳萎縮が認められ、白質の広範なT2延長病変を伴う。
  • T1WIで淡蒼球や視床に軽度高信号を来す事がある。
  • 進行性。
  • 家族性CJDのMRI所見は、孤発性CJDとほぼ同様である。

DWIによる異常信号パターン

CJDにおけるDWI異常信号の出現部位は、

  • 基底核:被殻、尾状核
  • 皮質:前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、島部、帯状回、海馬
  • 視床:Pulvinar sign, Hockey stick sign

※出現頻度としては基底核と大脳皮質の高信号が多い。国際多施設研究(孤発性CJD 436例)では、FLAIRまたはDWIで「側頭・頭頂・後頭葉のうち2領域以上の皮質」または「尾状核と被殻の両方」に高信号があることが鑑別に最も有用とされ、MRIを診断基準に加える改訂が提案されました。一方、視床、海馬、小脳の高信号はCJDの中でも特徴的なタイプに多い。

症例 70歳代男性 認知症

CJD1

基底核および大脳皮質を中心にDWIで異常な高信号あり。


症例 80歳代男性 亜急性に進行する認知症

CJD

大脳皮質を中心にDWIで広範な異常高信号あり。


症例 80歳代男性

CJD2

大脳皮質を中心にDWIで広範な異常高信号あり。

CJDの診断に使う検査

検査 見るもの 報告されている陽性率など
MRI(DWI) 皮質・基底核の高信号(DWI>FLAIR、ADC低下) 初回検査で92.3%(Shiga 2004)。MRIの所見を診断基準に加えると、確定例の98%が基準を満たした(Zerr 2009)
脳波 周期性同期性放電(PSD) 初回50.0%(Shiga 2004)、台湾の全国調査で59.7%(Sun 2022)
髄液14-3-3蛋白 神経細胞が壊れて出る蛋白 初回84.0%(Shiga 2004)、台湾の全国調査で69.7%(Sun 2022)
髄液RT-QuIC 異常プリオン蛋白そのもの(増幅して検出) 特異度がきわめて高く、生前の確実な診断に役立つ(Hermann 2021、Chatzikonstantinou 2021)

ハイデンハイン型CJD:視覚障害で始まるタイプ

ハイデンハイン(Heidenhain)型は、物忘れより先に視力や視野の異常が出るタイプです。後頭葉の障害が強いために起こります。眼の検査で異常が見つからず、数週間のうちに視力が低下して、あとから混乱やふらつきが現れることがあります。68歳の男性で、2週間で視力が手動弁まで低下した症例では、MRIで両側の後方の皮質に異常が出ており、髄液の14-3-3蛋白陽性でCJDと診断されました(Wong 2015)。

項目 報告
頻度 ドイツのサーベイランスの169例では20%に視覚症状(かすみ、視野狭窄、変視症、皮質盲)がみられました(Kropp 1999)。中国の施設では229例中18例(7.9%)でした(Kong 2023)。報告により頻度には差があります
経過 ハイデンハイン型の病期は、CJD全体より有意に短い(5.7か月と7.5か月)と報告されています(Kropp 1999)
MRI 病理で後頭葉の変化が最も強く、MRIでは11例中4例でT2・プロトン密度強調像で後頭葉・視覚野の皮質に限局した信号上昇があり、7例(63%)では基底核の対称性の高信号を認めました(Kropp 1999)。DWIの高信号は早期にも現れ、早期診断に役立つ可能性があります(Kong 2023)
遺伝子 プリオン蛋白遺伝子のコドン129がメチオニンのホモ接合である例が多く、12例中11例(92%)でした(Kropp 1999)
  • 数週間で急に進む視力低下で眼科的な原因が見つからないときは、脳神経内科への受診を考えます(Wong 2015)
  • 画像の側では、ハイデンハイン型がPRESに似て見えた症例が報告されています(Antonioni 2022)。FLAIRだけで判断せず、DWI・ADC、経過、他の部位(基底核、他の皮質)の所見もあわせて確認します

診断基準の更新とMRIの見方

孤発性CJDの診断基準は、髄液のRT-QuICを組み込む形に更新されました。症状、髄液の14-3-3蛋白、MRI、脳波を組み合わせる従来の考え方に、RT-QuICが加わっています(Hermann 2021)。
MRIについても新しい基準が検討されています。剖検で診断が確認された872例を調べた研究では、皮質(前頭・頭頂・側頭・後頭)、尾状核、被殻、視床のうち1か所でも拡散強調像で陽性とする新しい基準の感度は90〜95%(4人の読影者)で、従来のMRI基準(69〜76%)より高く、特異度は90〜100%と変わりませんでした。1人の読影者が770例を評価した結果は、感度92.1%・特異度97.4%(従来基準は感度69.8%・特異度98.0%)でした(Bizzi 2020)。

CJDでよくある疑問(Q&A)

Q. 発症からどのくらいで進みますか?
A. 台湾の全国調査(孤発性CJD 400例)では、発症年齢の平均は67歳、発症からの生存期間の中央値は10か月でした(Sun 2022)。

Q. 治療法はありますか?
A. 現在、効果が確かめられた治療薬はありません(Hermann 2021)。症状に合わせた対症療法やケアが中心になります。

Q. 視力低下だけで始まるCJDはありますか?
A. あります。ハイデンハイン型と呼ばれ、数週間のあいだ視覚症状だけが続くことがあります(Kong 2023)。眼科で異常がないのに急に見えにくくなったときは、神経内科へ相談してください。

Q. MRIでCJDの診断はどこまでできますか?
A. DWIで皮質や基底核の高信号がみられると診断の手がかりになります。新しい基準では感度が従来より高くなりましたが、髄液のRT-QuICなどとあわせて判断します(Bizzi 2020, Hermann 2021)。

物忘れが急に進む、手足がピクッと動く、歩きにくいなど気になる症状があれば、早めに医療機関(脳神経内科など)を受診してください。

参考文献

  1. Zerr I, Kallenberg K, Summers DM, et al. Updated clinical diagnostic criteria for sporadic Creutzfeldt-Jakob disease. Brain. 2009;132(Pt 10):2659-68. PubMed
  2. Hermann P, Appleby B, Brandel JP, et al. Biomarkers and diagnostic guidelines for sporadic Creutzfeldt-Jakob disease. Lancet Neurol. 2021;20(3):235-246. PubMed
  3. Nakatani E, Nishimura T, Zhou B, et al. Temporal and regional variations in sporadic Creutzfeldt-Jakob disease in Japan, 2001-2010. Epidemiol Infect. 2015;143(5):1073-8. PubMed
  4. Vitali P, Maccagnano E, Caverzasi E, et al. Diffusion-weighted MRI hyperintensity patterns differentiate CJD from other rapid dementias. Neurology. 2011;76(20):1711-9. PubMed
  5. Shiga Y, Miyazawa K, Sato S, et al. Diffusion-weighted MRI abnormalities as an early diagnostic marker for Creutzfeldt-Jakob disease. Neurology. 2004;63(3):443-9. PubMed
  6. Fragoso DC, Gonçalves Filho AL, Pacheco FT, et al. Imaging of Creutzfeldt-Jakob Disease: Imaging Patterns and Their Differential Diagnosis. Radiographics. 2017;37(1):234-257. PubMed
  7. Sun Y, Fan LY, Huang CT, et al. Prognostic Features of Sporadic Creutzfeldt-Jakob Disease: An Analysis of Taiwan’s Nationwide Surveillance. J Am Med Dir Assoc. 2022;23(5):845-851. PubMed
  8. Chatzikonstantinou S, Kazis D, Karantali E, et al. A meta-analysis on RT-QuIC for the diagnosis of sporadic CJD. Acta Neurol Belg. 2021;121(2):341-349. PubMed
  9. Wong A, Matheos K, Danesh-Meyer HV. Visual symptoms in the presentation of Creutzfeldt-Jakob disease. J Clin Neurosci. 2015;22(10):1688-9. PubMed
  10. Kropp S, Schulz-Schaeffer WJ, Finkenstaedt M, et al. The Heidenhain variant of Creutzfeldt-Jakob disease. Arch Neurol. 1999;56(1):55-61. PubMed
  11. Kong Y, Chen Z, Zhang J, et al. Clinical and Genetic Characteristics of the Heidenhain Variant of Creutzfeldt-Jakob Disease. Viruses. 2023;15(5):. PubMed
  12. Bizzi A, Pascuzzo R, Blevins J, et al. Evaluation of a New Criterion for Detecting Prion Disease With Diffusion Magnetic Resonance Imaging. JAMA Neurol. 2020;77(9):1141-1149. PubMed
  13. Antonioni A, Raho EM, Gozzi A, et al. Case Report: A Case of Creutzfeldt-Jakob Heidenhain Variant Simulating PRES. Diagnostics (Basel). 2022;12(7):. PubMed

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