
CT画面の四すみの文字とは、その画像が「だれの・いつの・どの検査か」と「どの向き・どの高さ・どんな条件で作られたか」を示す情報です。前の画像と比べて「悪くなった?」とあわてたハジメくんと一緒に、画像の中身を見る前に四すみで確かめたいことを順に整理します。
先に結論
- CT画面の四すみの文字とは、画像の身元と作られ方の情報。画像を見る前に、まずだれの・いつの・どの検査かを確かめる。
- R・L・A・P・H・F(S・I)の向きの文字と、位置の数字(どの高さか)で、どこをどの向きで見ているかを確かめる。前の画像と比べるときは日付・高さ・造影の有無をそろえる。
- 撮影条件の文字のうち、読む側がまず見るのはスライス厚・再構成関数・WL/WW(白黒の割り当て)・造影。見え方が変わる理由の手がかりになる。
目的から読む: 四すみの文字とは / 患者さん・日付の確認 / 向きの文字(R・L・A・P) / 位置の数字と位置決め画像 / 前の画像と比べるとき / 撮影条件(kV・mA・スライス厚) / WL・WWの読み方
CT画面の四すみの文字とは? 何が書いてある?
CT画面の四すみには、おもに6つの情報が出ています。①だれの画像か(名前・患者ID・年齢・性別)、②いつの・どの検査か(日付・時刻・検査名)、③向き(R・L・A・Pなど)、④位置と画像の番号(どの高さか・何枚目か)、⑤撮影条件(kV・mA・スライス厚・再構成関数など)、⑥白黒の割り当て(WL・WW)です。どの角に何を出すかは装置やビューア、施設の設定でちがいます。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)画面の文字は、画像の「名札」と「作り方のメモ」のようなものです。中身を見る前に、名札を読むくせをつけましょう。

だれの・いつの・どの検査か 患者さんの取りちがえを防ぐ
画像を開いたら、最初に名前と患者ID(または生年月日)の2つ以上で、目の前の患者さんの画像かを確かめます。次に検査の日付・時刻と検査名(どこを・単純か造影か)を見て、依頼した検査かを確かめます。同じ日に何回か撮っている人もいるので、時刻も見ます。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)似た名前の人もいます。名前だけでなく、IDか生年月日でもう1つ確かめる。数秒で済むことが、取りちがえを防ぎます。

向きの文字 R・L・A・P・H・F(S・I)の意味
画像のふちに出る英字は、患者さんの体の向きです。R=右、L=左、A=前(おなか側)、P=後ろ(背中側)、H=頭側、F=足側。頭側・足側をS・Iと書くビューアもあります。横断像はふつう、画面の左に R が出ます(画面の左が患者さんの右)。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)たとえば、うつぶせで撮った検査では、画面の上が背中側になることがあります。画像を左右反転して表示している場合もあります。覚えた形で決めつけず、R や A の文字で確かめましょう。左右をまちがえると、病変の側をまちがえることになります。
画面の左が患者さんの右になる理由はCT画像の左右はなぜ逆?(#03)で、横断・冠状断・矢状断の向きは横断・冠状断・矢状断とは(#02)で、図と合わせて読めます。

位置の数字と位置決め画像 どの高さを見ているか
いま見ている横断像が体のどの高さかは、位置の数字(多くは mm の単位)と画像の番号(シリーズの中の何枚目か)でわかります。もう1つの手がかりが、撮影の最初に撮る位置決め画像(スカウト像。体を正面などから透かした画像)です。多くのビューアでは、位置決め画像の上に、いま見ている断面の高さの線を出せます。位置の数字がどちら向きに増えるか(頭側か足側か)は、装置や設定でちがいます。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)高さをそろえるときは、番号ではなく骨や臓器の目印で合わせます。たとえば腰の高さなら、どの椎体の高さかで合わせると確かです。
マルオ(技師)どこからどこまで撮ったかを知りたいときは、位置決め画像を開いてみてください。範囲の線が見えます。
椎体の高さで位置を言うときの数え方は椎体の数え方と第12胸椎(Th12)はどこ?で確かめられます。

前の画像と比べるとき 日付・高さ・造影の有無をそろえる
前回の画像と比べる前に、日付(いつといつを比べているか)・高さ(同じ高さか)・造影の有無(単純CTどうしか、造影CTどうしか)の3つをそろえます。単純CTと造影CTを並べると、変わっていない臓器も白さが変わって見えます。造影CTどうしでも、撮った時相(造影剤を入れてからの時間)がちがうと見え方が変わります。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)比べるなら、今回の単純CTのシリーズと前回の単純CTです。
造影剤で白く見えるもの、石灰化や出血との見分け方はCTで白く見えるもの(#04)で読めます。単純CTと造影CTの違いそのものは #11 で扱います。

1回の検査に入っているシリーズ 名前で見分ける
1回のCT検査の中には、シリーズ(Se。同じ条件で作った画像のひと続き)がいくつも入っています。単純と造影、時相、スライス厚、向き(横断・冠状断・矢状断)、再構成関数がちがうものが、別々のシリーズになります。どのシリーズを見ているかは、シリーズ番号とシリーズの名前で確かめます。
マルオ(技師)名前のつけ方は施設ごとにちがうので、わからなければ気軽に聞いてください。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)目的に合うシリーズを自分で選ぶ。それも四すみの文字を読む理由の1つです。

撮影条件の文字 kV・mA・スライス厚・再構成関数の見かた
撮影条件の文字のうち、読む側がまず見るのはスライス厚・再構成関数・造影かどうかです。どれも画像の見え方を変えます。kV(管電圧)やmA・mAs(管電流・管電流時間積)は、X線の強さと量にかかわる撮る側の条件で、全部を覚える必要はありません。
- スライス厚: 厚いとざらつき(ノイズ)は減りますが、小さいものや薄いものはまわりと平均されて見えにくくなります。
- 再構成関数: 肺や骨用の関数はふちがくっきりしますがざらつきが増え、やわらかい組織用の関数はなめらかになります。
- 造影: 単純か造影か、造影ならどの時相かで、臓器や血管の白さが変わります。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)画質と被ばくのつり合いは撮る側が決めているので、読む側は「なぜこの画像はざらついて見えるのか」を考えるときの手がかりにすれば十分です。それより、スライス厚と再構成関数を見てください。薄い肺用の画像と、厚いやわらかい組織用の画像では、同じ病変でも見え方が変わります。
スライス厚・再構成関数・MPRのしくみはスライス厚・MPR・再構成関数とは(#07)で、薄いものが灰色に見える理由は部分容積効果とは(#06)で読めます。kV・mA と被ばくの関係は #09 で扱います。

WL・WWとは? 白黒の割り当ての文字
WL(ウィンドウレベル)は白黒のまん中にするCT値、WW(ウィンドウ幅)は白から黒までに割り当てるCT値の幅です。撮影の条件ではなく、できた画像をどう表示するかの設定なので、見る人があとから変えられます。同じ画像でも、WL・WW を変えると肺がよく見えたり、臓器の濃さの差がよく見えたりします。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)比べるときは、WL と WW も同じ数字にそろえてから見ましょう。
CT値とウィンドウのしくみ、縦隔条件・肺野条件で白黒が変わる理由はCT値とウィンドウとは(#01)で読めます。

画像を開いたら四すみを10秒 確かめる順番
画像を開いたら、中身を見る前に四すみを10秒ほど見ます。順番は、①だれの(名前・ID)→②いつの・どの検査(日付・検査名・シリーズ)→③向き(R・L・A・P)→④位置(高さ)→⑤撮影条件とWL・WWです。比べるときは、2つの画面でこの5つをそろえてから中身を比べます。
ハジメ(研修医)
ごろ〜(指導医)中身を見る順番は、たとえば腹部なら腹部CTの読み方(見る順番と見落としチェックリスト)で確かめられます。
スライス厚・ウィンドウ・造影の時相など、CT検査の基本をひととおり確かめたいときはCT検査の基本まとめが役に立ちます。
前の #09 ではCTの被ばく量の基礎を、次の #11 では単純CTと造影CTの違いを扱います。
よくある勘違い
Q. 前の画像と並べれば、すぐ比べられる?
いいえ。日付・同じ高さか・造影の有無(造影なら時相も)をそろえてから比べます。単純CTと造影CTを並べると、変わっていない臓器も白さが変わって見えます。WL・WW もそろえます。
Q. 画面のすみの文字は、技師さん向けの情報?
いいえ。だれの・いつの・どの検査か、向き、位置は、読む人がまず確かめる情報です。撮影条件も、見え方が変わる理由の手がかりになります。
Q. WL・WW は撮影の条件?
いいえ。WL(まん中のCT値)・WW(CT値の幅)は、できた画像の白黒の割り当てで、見る人があとから変えられます。kV・mA などの撮影の条件とは別のものです。
今日のまとめ
- 画像を開いたら、まず四すみの文字で、だれの(名前とIDなど2つ以上)・いつの・どの検査かを確かめる。
- 向きの文字(R・L・A・P・H・F)と位置の数字で、どこをどの向きで見ているかを確かめる。覚えた形で決めつけない。
- 比べるときは日付・高さ・造影の有無と WL・WW をそろえる。スライス厚・再構成関数は見え方の手がかり。
根拠(もう少し詳しく)
- 患者さんの確認は、名前に加えて患者IDや生年月日など、2つ以上の情報で行うことが勧められています(WHO 2007)。部屋番号やベッドの位置は確認の情報には使いません。
- 画面に出る文字は、画像といっしょに保存される DICOM の付帯情報(患者さんの情報・検査の日付・シリーズの名前・画像の位置と向き・撮影条件など)から、ビューアが選んで表示しています。どの情報をどの角に出すか、略し方(H・F か S・I か、Se・Im など)は装置・ビューア・施設の設定でちがいます。
- 位置の数字(スライスの位置)は、装置の寝台や患者さんの座標をもとにした値で、0 の場所や増える向きは装置・設定でちがいます。前回と今回で同じ数字でも、同じ高さとは限りません。
- スライス厚が厚いほどノイズは減りますが部分容積効果が強くなり、再構成関数は高周波を強調するもの(肺・骨用)ほどふちがくっきりしノイズが増えます。どちらも撮影後の再構成で変えられる条件です(#07)。
参考文献
- World Health Organization, Joint Commission International. Patient Identification. Patient Safety Solutions, Volume 1, Solution 2. 2007.
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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