
頭部救急のCTは、出血→脳ヘルニア・水頭症→早期の脳梗塞→静脈洞→骨折・空気の順に、「いま治療が変わる所見」から探す検査です。研修医のハジメくんと一緒に、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・頭部外傷・静脈洞血栓症のCTで何を見て、どの研究の数字を判断に使うかを整理します。
先に結論
- 頭部救急のCTは出血(場所と形)→正中偏位・脳槽・脳室→早期虚血サインと血管の高吸収→静脈洞→骨条件の骨折・空気の順に見る。
- 急性期脳梗塞は、非造影CTで出血を除外し、早期虚血の広がりをASPECTSで数える。CTが正常でも脳梗塞は否定できない。
- 発症6時間以内のCTはくも膜下出血の検出に強い。軽症頭部外傷はCanadian CT Head Ruleのような基準でCTの必要性を考える。
目的から読む: CTの見る順番 / 脳梗塞(ASPECTS) / 脳出血(spot sign) / くも膜下出血 / 頭部外傷 / 静脈洞血栓症
場面ごとの要点(早見表)
| 場面 | 画像の要点 |
|---|---|
| 突然の頭痛 | 発症6時間以内に撮ったCTは、くも膜下出血121例をすべて検出した(Perry 2011) |
| 急性期の脳梗塞 | 非造影CTで出血を除外し、ASPECTSで早期虚血の範囲を数える(Barber 2000)。血管の高吸収は血栓を示す(Heo 2017) |
| 脳出血 | CT血管造影のspot signは血腫の増大を予測する(Wada 2007) |
| 軽症頭部外傷 | Canadian CT Head Ruleの5つの高リスク因子(Stiell 2001) |
| 静脈洞血栓症 | MRI/MR静脈造影、またはCT/CT静脈造影で診断する(Saposnik 2024) |
頭部救急CTの見る順番:治療が変わる所見から
答えは「出血 → 脳ヘルニア・水頭症 → 早期の脳梗塞 → 静脈洞 → 骨折・空気」です。上から順に、見つかったら治療や次の検査がすぐ変わる所見です。
救急の頭部CTは、限られた時間で「いま治療を変える所見」を拾うことが目的です。決まった順番で見ると、見落としが減ります。頭部CTの基本的な見方(高吸収域・低吸収域、ウィンドウの選び方)は頭部CTの見方まとめで詳しく扱っています。
| 順番 | 見るもの | 主な疾患 |
|---|---|---|
| 1 | 高吸収の出血(脳実質内・くも膜下腔・硬膜下・硬膜外・脳室内) | 脳出血、くも膜下出血、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫 |
| 2 | 正中偏位、脳槽の消失、脳室の拡大 | 脳ヘルニア、急性水頭症 |
| 3 | 皮髄境界の不明瞭化、基底核の輪郭の消失、血管の高吸収 | 急性期脳梗塞 |
| 4 | 静脈洞の高吸収、両側・非典型な場所の出血や浮腫 | 脳静脈洞血栓症 |
| 5 | 骨条件で骨折、頭蓋内の空気、副鼻腔の液面 | 頭蓋骨骨折、頭蓋底骨折、気脳症 |
脳卒中の分類と画像の全体像は脳卒中とは?脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の分類とCT・MRI画像診断まとめにまとめています。
急性期脳梗塞のCT所見:早期虚血サインとASPECTS
非造影CTの第一の役割は出血の除外です。そのうえで、皮髄境界・レンズ核の輪郭・脳溝の3つで早期虚血を探し、その広がりをASPECTSの10領域で数えます。
非造影CTの役割
急性期の脳梗塞で血栓溶解療法を考えるとき、非造影CTは出血を除外するために欠かせません。そのうえで、早期の虚血変化(皮髄境界の不明瞭化、レンズ核の輪郭の消失、脳溝の狭小化)の広がりを見ます。
この広がりを数で表すのがASPECTS(Alberta Stroke Programme Early CT Score)です。中大脳動脈の灌流域を10の領域に分け、早期虚血のある領域を減点していきます。発症3時間以内にアルテプラーゼを投与した203例の研究では、治療前のCTの虚血変化が前方循環の虚血の75%に見られ、ASPECTSの値は重症度・3か月後の機能予後・症候性脳内出血と関係しました。観察者間の一致も良好でした(Barber 2000。数値の詳細は末尾の「根拠」)。
hyperdense MCA sign(血管の高吸収)とは
非造影CTで中大脳動脈などが反対側より白く見える所見で、血管の中の血栓を示します。
非造影CTで、中大脳動脈などが周りより白く見える所見は、血管内の血栓を示します。MRIではT2*強調像のblooming artifactとして見えます。CTでの血栓の見えやすさはスライス厚に左右され、薄いスライスのCTやCT血管造影・MR血管造影で血栓の長さや量を測る方法が報告されています(Heo 2017)。血栓の大きさは再開通のしやすさの予測に役立つ可能性がありますが、研究ごとに測り方と区切りの値が違うため、標準化が課題とされています(Heo 2017)。
症例 左中大脳動脈分岐部の高吸収の血栓

引用:Heo JH, et al. J Stroke. 2017 (Figure 2). PMC5307933 CC BY-NC 4.0
78歳男性、右半身の脱力と感覚性失語で受診。非造影CTで左中大脳動脈の分岐部に高吸収の血栓(矢頭)があり、CT血管造影の閉塞部位と一致します。ダイナミックCT血管造影では、血栓の中が徐々に造影されています(Heo 2017, Figure 2)。
CTとMRIの違い、早期虚血サインの見え方は脳梗塞はCTでわかる?MRIとの違いと早期虚血サインで解説しています。
脳出血のCT血管造影:spot signとは
spot signは、CT血管造影で血腫の中に見える小さな造影の点です。血腫がこれから大きくなるかの予測に使います。
脳出血:spot sign
脳出血は、発症後に血腫が大きくなることが予後の悪化と関係します。CT血管造影で血腫の中に見える小さな造影の点を「spot sign」と呼びます。発症3時間以内の自然発症の脳出血39例の前向き研究では、13例(33%)にspot signがあり、経過で血腫が大きくなったのは11例(28%)でした。spot signがあった例の77%、なかった例の4%で血腫が大きくなり、増大の予測の感度は91%、特異度は89%でした(Wada 2007)。
脳出血の部位(被殻・視床・小脳・橋など)と血腫量の計算は脳出血のCT・MRI画像診断まとめを参照してください。
くも膜下出血のCT:発症6時間以内の感度
発症6時間以内に撮ったCTは、くも膜下出血をほぼ見逃さなかったと報告されています。ただし、時間がたつほど感度は下がります。
くも膜下出血:発症からの時間
突然の激しい頭痛では、まずくも膜下出血を考えます。神経学的異常のない急性頭痛の成人3132例の前向き研究(カナダの11の救急部門)で、CT全体の感度は92.9%でしたが、発症から6時間以内にCTを撮った953例では、くも膜下出血121例すべてがCTで見つかりました(Perry 2011)。この結果は第3世代のCTで、資格のある放射線科医が読影した条件でのものです。
| CTを撮った時期 | くも膜下出血の検出(Perry 2011) |
|---|---|
| 全体(3132例) | 感度92.9%、特異度100%、陰性的中率99.4% |
| 発症6時間以内(953例) | 感度100%、特異度100%、陰性的中率100% |
全体の感度(92.9%)は6時間以内に限った場合より低く、時間がたってからのCTが陰性でも疑いが残る場合は腰椎穿刺などの追加検査を主治医が判断します。
頭部外傷のCT:撮る基準と見る所見
軽症頭部外傷では、Canadian CT Head Ruleの高リスク5因子と中リスク2因子でCTの必要性を考えます。撮ったら、血腫の層と形、脳への圧迫、骨折を見ます。
どの人にCTを撮るか
意識がほぼ保たれた軽症頭部外傷で、誰にCTが必要かを決める基準として、Canadian CT Head Ruleがあります。対象は16歳以上、受傷24時間以内の鈍的頭部外傷で、GCS 13〜15かつ意識消失・健忘・見当識障害のいずれかがある人です。GCS 13未満、抗凝固薬の内服や出血しやすい病気(出血性素因)などは対象外です。
カナダの10施設の3121例から作られました。5つの高リスク因子は脳神経外科的な介入が必要な例を100%の感度で拾い、高リスク因子だけで判断した場合の推定CT実施率は32%でした。中リスク因子は臨床的に重要な脳損傷を拾うための因子で(感度98.4%)、高リスクと中リスクの両方を使うと推定CT実施率は54%でした(Stiell 2001)。
| 区分 | 因子(Stiell 2001) |
|---|---|
| 高リスク(5つ) | 受傷後2時間でGCS 15に戻らない、開放性または陥没頭蓋骨骨折の疑い、頭蓋底骨折の徴候、2回以上の嘔吐、65歳以上(脳神経外科的な介入が必要な例を拾う) |
| 中リスク(2つ) | 受傷前30分を超える健忘、危険な受傷機転(臨床的に重要な脳損傷を拾う) |
CTで見る外傷の所見:凸レンズ形と三日月形
急性硬膜外血腫は頭蓋骨と硬膜の間にたまり、縫合線を越えない凸レンズ形になります。急性硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間に広がり、縫合線を越える三日月形になります。この形の違いと受傷機転は急性硬膜下血腫とは?急性硬膜外血腫との違いで詳しく説明しています。血腫や浮腫で脳が押されると脳ヘルニアを起こすため、正中偏位と脳槽の消失を確認します。
脳静脈洞血栓症のCT:見落としやすいサイン
非造影CTで静脈洞が白い、動脈の灌流域に合わない出血や浮腫がある、両側に病変がある。この3つが手がかりで、疑ったら静脈相を含む検査を足します。
脳静脈洞血栓症は脳卒中全体の0.5〜3%を占め、若い人、妊娠可能年齢の女性、血栓ができやすい状態の人に多いとされます。症状は頭痛やけいれんなどさまざまで、疑うこと自体が難しい病気です。診断は主にMRI/MR静脈造影、またはCT/CT静脈造影で行い、集中的な治療をしても10〜15%が死亡または介助が必要な状態になります(Saposnik 2024)。
非造影CTで静脈洞が白く見える、動脈の灌流域に合わない出血や浮腫がある、両側に病変がある、といった場合は静脈洞血栓症を考え、静脈相を含む追加検査を検討します。原因・症状と静脈性梗塞・出血の特徴は脳静脈洞血栓症のCT・MRI画像診断で症例と合わせて見られます。
よくある勘違い
Q. 頭部CTで異常がなければ、脳梗塞は否定できる?
否定できません。発症からの時間が短いと、CTでは変化が見えないことがあります。ASPECTSの研究でも、早期虚血の変化が見えたのは前方循環の虚血の75%でした(Barber 2000)。症状から脳梗塞が疑われるときは、MRIや血管の検査が追加されます。
Q. 頭痛から半日たってからのCTが陰性なら、くも膜下出血は否定できる?
6時間以内のCTで感度100%という結果は、撮影の時期と読影の条件がそろった場合のものです(Perry 2011)。全体の感度は92.9%で、時間がたつほど見逃しの余地が出るため、追加の検査が必要かどうかを主治医が判断します。
Q. 頭を打ったら、全員CTを撮るべき?
軽症頭部外傷では、Canadian CT Head Ruleのような基準でCTの必要性を判断する考え方があります(Stiell 2001)。ただし、GCS 13未満、抗凝固薬の内服や出血しやすい病気、16歳未満の子どもなどは基準の対象外です。判断は診察した医師が行います。
今日のまとめ
- 頭部救急のCTは出血→ヘルニア・水頭症→早期虚血→静脈洞→骨折・空気の順。出血がなくても終わらない。
- 脳梗塞は境目が消えるサインとASPECTS、血管の高吸収。脳出血はCT血管造影のspot sign。
- くも膜下出血は撮った時期で感度が変わる。軽症頭部外傷は決まった基準でCTを考える。
根拠(もう少し詳しく)
- ASPECTS(Barber 2000):前方循環の虚血156例のうち117例(75%)で治療前のCTに虚血変化があり、ASPECTSの値は重症度(NIHSS)と逆相関しました(r=-0.56)。観察者間の一致はκ=0.71〜0.89でした。
- spot sign(Wada 2007):陽性的中率77%、陰性的中率96%で、観察者間の一致はκ=0.92〜0.94でした。spot signは血腫の増大を独立して予測しました。
- くも膜下出血(Perry 2011):3132例のうち240例(7.7%)がくも膜下出血でした。
参考文献
- Perry JJ, Stiell IG, Sivilotti ML, et al. Sensitivity of computed tomography performed within six hours of onset of headache for diagnosis of subarachnoid haemorrhage: prospective cohort study. BMJ. 2011;343:d4277. PubMed
- Barber PA, Demchuk AM, Zhang J, et al. Validity and reliability of a quantitative computed tomography score in predicting outcome of hyperacute stroke before thrombolytic therapy. ASPECTS Study Group. Alberta Stroke Programme Early CT Score. Lancet. 2000;355(9216):1670-4. PubMed
- Heo JH, Kim K, Yoo J, et al. Computed Tomography-Based Thrombus Imaging for the Prediction of Recanalization after Reperfusion Therapy in Stroke. J Stroke. 2017;19(1):40-49. PubMed
- Wada R, Aviv RI, Fox AJ, et al. CT angiography “spot sign” predicts hematoma expansion in acute intracerebral hemorrhage. Stroke. 2007;38(4):1257-62. PubMed
- Stiell IG, Wells GA, Vandemheen K, et al. The Canadian CT Head Rule for patients with minor head injury. Lancet. 2001;357(9266):1391-6. PubMed
- Saposnik G, Bushnell C, Coutinho JM, et al. Diagnosis and Management of Cerebral Venous Thrombosis: A Scientific Statement From the American Heart Association. Stroke. 2024;55(3):e77-e90. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
