脳室炎 MRIでの見え方

脳室炎(化膿性脳室炎)とは、脳室の内側を覆う上衣と脳室内の髄液に起こる感染症で、画像でいちばん多いのは側脳室の後角にたまる不整な液面の膿(デブリ)です。CTでは正常に見えることもあり、MRIの拡散強調像(DWI)とFLAIRが頼りになります。研修医のハジメくんと一緒に、見る場所と撮り方の選び方を整理します。

先に結論

  1. 脳室炎とは、上衣と脳室内の髄液の感染症。脳室ドレーン・シャントのあと、髄膜炎からの広がり、脳膿瘍の脳室穿破などで起こる。
  2. いちばん多い所見は脳室内の膿(デブリ)。あおむけで後角の低い側にたまり、液面が不整になる。水頭症・脳室周囲の高信号・上衣の造影も見る。
  3. デブリはDWIとFLAIRが見つけやすい(DWIはADCとセットで)。CTが正常でも否定できない。診断は髄液検査とあわせて。

目的から読む: 脳室炎とは / 脳膿瘍の脳室穿破 / CT・MRI所見 / DWIとFLAIRの使い分け / 上衣の造影・水頭症 / 脳室内出血との違い / 診断の進め方

脳室炎(化膿性脳室炎)とは? 原因と起こり方

脳室炎(ventriculitis)は、脳室の壁(上衣)と中の髄液に起こる感染症です。化膿性のものはまれですが重く、症状がはっきりしないことがあります(Fukui 2001)。

ハジメハジメ(研修医)
先生、脳室ドレーンが入っている患者さんが熱を出しています。脳室炎が心配なんですが、髄膜炎とは何が違うんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
髄膜炎は脳の外側を包む膜の炎症でしたね。では、脳の内側にある「部屋」の壁と中の水に炎症が起きたら、膿はどこにたまると思いますか?
ハジメハジメ(研修医)
部屋の中…脳室の中ですか。ドレーンの管を伝って菌が入るんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。入り口は管だけではありません。髄膜炎から広がる道、脳膿瘍が脳室に破れる道、処置がなくても起こる一次性のものもあります。入り口を知っておくと、画像でどこを見るかが決まります。

脳室の上衣と脳室内の炎症

原因としては、脳室ドレーンやシャントなど脳神経外科の処置のあとに起こるもの、髄膜炎から広がるもの、脳膿瘍が脳室に破れるものなどがあります。

17例をまとめた研究では、原因菌はブドウ球菌とエンテロバクターが多くみられました(Fukui 2001)。脳神経外科の処置や人工物がないのに起こる「一次性」の化膿性脳室炎もあり、台湾の三次医療施設の8例(2019〜2023年)では、1年の死亡率が25.0%でした(Ho 2026)。

脳室と髄液の流れの基本は脳室と髄液の流れと水頭症の違い、側脳室の各部の名前は側脳室の解剖とCT・MRI画像で確かめられます。

脳膿瘍の脳室穿破: 被膜と脳室壁の距離を測る

脳膿瘍が脳室に破れること(脳室穿破)は、脳室炎の重要な原因で、死亡の強い予測因子です。膿瘍の被膜と脳室壁の最短距離が5mm以下だと破れやすいという報告があります(Ndandja 2026)。

ハジメハジメ(研修医)
脳膿瘍のレポートには、大きさと場所を書けば十分だと思っていました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
大きさも大事です。でも、壁がうすい風船が、別の部屋の壁のすぐ横にあったらどうでしょう。破れたときに困るのは、その「すぐ横」のほうです。被膜から脳室壁までの最短距離を、数字で書いておきましょう。

脳膿瘍の脳室穿破

モスクワの2施設で脳膿瘍104例を調べた研究では、28例(26.9%)に脳室穿破が起こり、死亡の最も強い独立した予測因子でした(調整オッズ比14.2)。穿破の最大の危険因子は、膿瘍の被膜と脳室壁の最短距離で、5mm以下を区切りにすると感度84.6%・特異度81.2%でした(Ndandja 2026)。

脳膿瘍の読影では、膿瘍が脳室にどれだけ近いかを計って書いておくと、治療方針の相談に役立ちます。脳膿瘍のMRIは脳膿瘍のMRI画像診断で説明しています。

脳室炎のCT・MRI所見: 後角の不整な液面(デブリ)

いちばん多い所見は脳室内のデブリ(膿)で、17例中16例(94%)にみられ、その多くで液面が不整でした(Fukui 2001)。ほかに水頭症・脳室周囲の高信号・上衣の造影・髄膜炎の所見を見ます。

ハジメハジメ(研修医)
脳室炎なら、まず脳室の壁が造影されているかを探せばいいんですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
造影も見ます。ただ、上衣の造影は造影した例の6割ほどでした。それより多かったのは何だと思いますか? 患者さんはベッドであおむけに寝ています。重たい膿は、脳室のどこに沈むでしょう。
ハジメハジメ(研修医)
あおむけなら、いちばん低いのは後ろ…側脳室の後角ですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そのとおりです。後角に液面があり、その面がでこぼこしていたら、膿を考えます。

脳室内のデブリ(膿)

1990〜2000年の化膿性脳室炎17例を、2人の神経放射線科医が独立して評価した研究では、脳室内のデブリが16例(94%)と最も多い所見でした。デブリの液面は16例中13例(81%)で不整で、著者らはこの不整な液面を脳室炎のデブリの特徴としています(Fukui 2001)。

デブリは、患者があおむけに寝ていると、側脳室の後角(後頭角)など低い側にたまります。

マルオマルオ(技師)
撮る側からひとことです!後角の液面は、横断像だけだと薄い層が見えにくいことがあります。矢状断を作ると、低い側にたまった層の厚みや面のでこぼこがわかりやすいですよ!

脳室炎のMRI: DWIとFLAIRの使い分け

脳室内の膿を見つける力は、DWIとFLAIRが同じくらい高く、脳室壁の異常はFLAIRが造影T1強調像より見やすいと報告されています(Fujikawa 2006)。CTやほかの撮像で見えず、DWIだけが膿を示した報告もあります(Marinelli 2014)。

ハジメハジメ(研修医)
CTで脳室がきれいだったので、脳室炎はなさそうと伝えてしまいました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
膿と髄液は、CTではどちらも水に近い濃さです。濃さの差が小さいものを、CTで分けられるでしょうか。MRIのDWIなら、膿のように水が動きにくい所が白く浮かび上がります。
マサマサ(技師)
……DWIで白いだけだと、T2で白いものが透けて見えるT2 shine-throughのこともあるんですよね。ADCも並べて見てもらえると、撮った甲斐があります。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
大事な点ですね。DWIで高信号にADCの低下を伴えば、拡散制限を支持します。ただし脳室内の膿でもADCの低下がはっきりしない例があり(Fukui 2001)、低下がないだけで脳室炎は否定できません。FLAIR・造影所見・髄液検査とあわせて判断します。DWIの高信号の考え方は下のリンクで確かめられます。

DWIとFLAIRが見つけやすい

脳室炎と診断された13例(20検査)で撮像法を比べた研究では、脳室内のデブリや膿という最も多い所見を見つける力は、DWIとFLAIRが同じくらい高く優れていました。脳室壁の異常(頻度は低いが脳室炎を示唆する所見)は、FLAIRが造影T1強調像より見やすく描出されました(Fujikawa 2006)。

多くの手術歴があり、頭痛や髄膜刺激症状がなく、精神運動の緩慢・顔面のジスキネジア・ミオクローヌスで発症した60歳代男性の報告では、頭部CTは正常で、DWIだけが側脳室内の膿をはっきり示しました。髄液からMRSAが見つかり、バンコマイシンで回復しました(Marinelli 2014)。DWIの高信号の考え方は拡散強調像(DWI)とは?にまとめています。

症例 60歳代男性 化膿性脳室炎(CT・T2・FLAIR・DWI)

化膿性脳室炎 CT・T2・FLAIRでは不明瞭でDWIで高信号の側脳室内の膿
引用:Marinelli L et al. BMC Res Notes 2014(Figure 1)(CC BY 2.0)

脳室炎と診断された日の画像です。(A)CT、(B)T2強調像、(C)FLAIRでは脳室内の膿ははっきりしません。(D)DWIでは、側脳室内の膿が高信号として明らかに見えます(矢印)(Marinelli 2014)。

上衣の造影・脳室周囲の高信号・水頭症

水頭症は17例中13例(76%)、脳室周囲の高信号はMRIの9例中7例(78%)でFLAIRで最も目立ち、上衣の造影は造影した11例中7例(64%)でした(Fukui 2001)。上衣の造影は、脳室の内側をなめらかで連続した線として縁どります(Ho 2026)。

ハジメハジメ(研修医)
造影MRIで上衣が染まっていなければ、脳室炎は否定できますか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
上衣の造影は、造影した例の3分の2ほどにしか出ていません。染まっていないことだけで否定はできませんね。造影は膿瘍の被膜や髄膜の造影を見るのに役立ちます。造影するかどうかは、腎機能なども含めて主治医と検査施設で決めます。

脳室周囲の高信号・上衣の造影・水頭症

17例の研究では、髄膜炎の所見(軟膜や硬膜・くも膜の信号変化や造影)は13例(76%)にありました。3例は脳膿瘍の所見を伴っていました(Fukui 2001)。

脳室ドレーンを長く入れていた脳出血の40歳代男性の報告では、造影CTで軽い水頭症・後角の低い側の不整なデブリ・脳室周囲の低吸収がみられ、MRIのT2強調像・FLAIR・DWI・造影T1強調像で脳室炎の特徴がはっきりしました。著者らは、造影CTも役立つが、とくにMRIが脳室炎の診断に適しているとしています(Jorens 2009)。

一次性の化膿性脳室炎8例では、上衣の造影が4例(50.0%)、DWIで拡散が制限された脳室内の膿が4例(50.0%)にみられました(Ho 2026)。

症例 一次性の化膿性脳室炎(造影T1強調像とFLAIR)

一次性化膿性脳室炎 造影T1強調像の上衣の線状造影とFLAIRの脳室内の液面
引用:Ho YJ et al. J Clin Med 2026(Figure 2)(CC BY 4.0)

発症3日目のMRIです。(A)造影T1強調横断像で、側脳室の上衣に沿ってなめらかで連続した線状の造影がみられます(矢印)。(B)T2強調像/FLAIRで、側脳室後角の低い側に液面(矢印)を作る膿がみられます。(C)T2強調像で脳室が拡大し、側脳室の低い側に中間信号のデブリが層を作り、周囲の脳室周囲に高信号(上衣を越えた浮腫)があります。(D)中脳の高さのT2強調像で、両側の側脳室下角が強く拡大しています。著者らは下角の拡大を急性の閉塞性水頭症の目印としています(Ho 2026)。この患者は1年後も生存していました。

撮像ごとの見え方

撮像 見えるもの 注意点
CT(単純・造影) 水頭症、後角の不整な液面、脳室周囲の低吸収、上衣の造影 正常に見えることがある(Marinelli 2014)
DWI 脳室内の膿が高信号 FLAIRと同じくデブリの検出に優れる(Fujikawa 2006)。ADCの低下もあわせて確かめる
FLAIR デブリ、脳室周囲の高信号、脳室壁の異常 脳室壁の異常は造影T1強調像より見やすい(Fujikawa 2006)
造影T1強調像 上衣の線状の造影、髄膜の造影、膿瘍の被膜 上衣の造影は64%にとどまる(Fukui 2001)

脳室内出血・上衣への播種との違い(鑑別)

液面を作る脳室内出血は、CTで高吸収になり、MRIでは出血の信号が時間とともに変わります。上衣に沿った造影は腫瘍の播種でもみられ、結節状のことがあります。

ハジメハジメ(研修医)
脳出血でドレーンが入っている人の後角に液面があったら、出血の残りだと思ってしまいそうです。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこが難しいところですね。出血のあとに脳室炎が起こることもあります。前のCTとくらべて、液面の濃さが血液らしく時間とともに変わっているか、それとも新しく不整な層が出てきたか。経過で見ると手がかりになります。

脳室内出血でも液面ができるため、出血の経過や、CT値・MRIの信号をあわせて区別します。

区別したい所見

所見・病気 脳室炎との違いの考え方
脳室内出血 液面を作るが、CTで高吸収、MRIで出血の信号の時間変化を示す。出血のあとに脳室炎が起こることもある(Jorens 2009)
癌性髄膜炎(上衣への播種) 上衣に沿った造影を示すが、結節状のことがある。発熱・髄液の培養と細胞診で区別
ドレーン・シャントの周りの変化 カテーテルの経路に沿った信号変化。デブリの有無を見る

脳室や上衣への腫瘍の広がりは、髄膜播種(癌性髄膜炎)とは?で扱っています。

脳室炎の診断の進め方: 画像と髄液検査

画像だけで診断は決まりません。髄液の細胞数・蛋白・培養などの検査とあわせて診断します。17例の研究でも、膿瘍の所見や脳室・脳槽の髄液の培養陽性、白血球と蛋白の増加が診断の条件でした(Fukui 2001)。

ハジメハジメ(研修医)
じゃあ画像の役目は何ですか? 髄液を調べれば済むような気がしてきました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
症状がはっきりしない患者さんで、最初に「脳室炎かもしれない」と気づかせるのは、しばしば画像です。後角の膿を見つけて、髄液の検査につなげる。水頭症や膿瘍の広がりも、治療を考える材料になります。

根拠(もう少し詳しく): 所見の頻度と撮像の選び方

所見 頻度・ポイント
脳室内のデブリ 17例中16例(94%)。16例中13例(81%)で液面が不整(Fukui 2001)
水頭症 17例中13例(76%)(Fukui 2001)
脳室周囲の高信号 MRIの9例中7例(78%)。FLAIRで最も目立つ(Fukui 2001)
上衣の造影 造影した11例中7例(64%)(Fukui 2001)
撮像の選び方 デブリはDWIとFLAIRが同じく高感度。脳室壁の異常はFLAIRが造影T1強調像より優れる(Fujikawa 2006)

よくある勘違い

Q. CTで脳室に異常がなければ、脳室炎は否定できる?

できません。CTが正常で、DWIだけが脳室内の膿を示した報告があります(Marinelli 2014)。疑いが残るときはMRIのDWI(ADCとあわせて)とFLAIRを考えます。

Q. 脳室炎は、上衣の造影がなければ考えなくてよい?

よくありません。上衣の造影は造影した11例中7例(64%)にとどまり、いちばん多いのは後角の不整な液面のデブリでした(Fukui 2001)。脳室壁の異常もFLAIRのほうが造影T1強調像より見やすいと報告されています(Fujikawa 2006)。

Q. 脳膿瘍は、脳室に破れてから報告すればよい?

破れる前の距離が大事です。104例の研究では、被膜と脳室壁の最短距離が5mm以下だと穿破しやすく、穿破は死亡の最も強い予測因子でした(Ndandja 2026)。距離を測って書いておきます。

今日のまとめ

  1. 脳室炎は後角の低い側の不整な液面(デブリ)をまず探す。水頭症・脳室周囲の高信号・上衣の造影もあわせて見る。
  2. デブリはDWIとFLAIRが見つけやすい。DWIはADCとセットで読み、CTが正常でも否定しない。
  3. 脳膿瘍は脳室壁までの距離を書く。診断は画像と髄液検査をあわせて決める。

参考文献

  1. Fukui MB, Williams RL, Mudigonda S. CT and MR imaging features of pyogenic ventriculitis. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(8):1510-6. PubMed
  2. Fujikawa A, Tsuchiya K, Honya K, et al. Comparison of MRI sequences to detect ventriculitis. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(4):1048-53. PubMed
  3. Jorens PG, Voormolen MH, Robert D, et al. Imaging findings in pyogenic ventriculitis. Neurocrit Care. 2009;11(3):403-5. PubMed
  4. Marinelli L, Trompetto C, Cocito L. Diffusion magnetic resonance imaging diagnostic relevance in pyogenic ventriculitis with an atypical presentation: a case report. BMC Res Notes. 2014;7:149. PubMed
  5. Ho YJ, Huang HL, Wang PK, et al. Primary Pyogenic Ventriculitis in Adults: A Retrospective Case Series of Clinical Characteristics, Cerebrospinal Fluid Parameters, and Surgical Drain Managements. J Clin Med. 2026;15(20). PubMed
  6. Ndandja DTK, Chmutin GE, Musa G, et al. Intraventricular rupture of brain abscess: A two-center observational cohort study. Surg Neurol Int. 2026;17:427. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

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