
びまん性骨髄置換性病変とは、骨髄の脂肪(黄色髄)や正常な造血組織が、腫瘍細胞などに広く置き換わった状態です。腰椎MRIで「骨髄がびまん性に低信号」と書かれたとき、何と比べて、次に何を撮ればよいのか。研修医のハジメくんと一緒に、T1強調像で椎間板と比べる見方、考える病気、化学シフト画像と拡散強調像の使い方を整理します。
先に結論
- びまん性骨髄置換とは、骨髄の脂肪や正常な造血組織が腫瘍細胞などに置き換わった状態。成人の椎体はT1強調像で椎間板・筋肉より明るいのが普通。
- 椎間板・筋肉と同じか暗いときは「脂肪が減っている」。置換(骨髄腫・白血病・リンパ腫・転移)のほか、赤色髄の再転換でも起こる。
- 見分けの手がかりは化学シフト画像の逆位相で信号が落ちるか。落ちれば脂肪が残っている(再転換寄り)。ただし目安で、最終診断は骨髄検査。
目的から読む: 骨髄置換とは / T1で椎間板より低信号 / 鑑別(考える病気) / 化学シフト画像 / 拡散強調像・ADC / 読影の順番
びまん性骨髄置換性病変とは
骨髄の中身(脂肪と造血細胞)が、腫瘍細胞などの別の細胞に広く入れ替わった状態です。MRIでは、脂肪の明るさが失われて骨髄が暗くなることで気づきます。
正常な骨髄の見え方
骨髄には、血液をつくる赤色髄(造血髄)と、脂肪の多い黄色髄(脂肪髄)があります。子どものうちは全身の骨髄の多くが赤色髄で、年齢とともに手足の先のほうから黄色髄に置き換わっていきます。成人では、椎体・骨盤・胸骨・頭蓋骨・大腿骨や上腕骨の近位部に赤色髄が残ります。赤色髄と黄色髄の分布と年齢による変化は、赤色骨髄と黄色骨髄(脂肪髄)の違いとMRIでの見え方で詳しく説明しています。
成人の椎体の骨髄は、赤色髄といっても脂肪をかなり含んでいます。そのため、T1強調像では脂肪の信号を反映して、椎間板や背中の筋肉よりも明るく見えます。この「椎間板・筋肉より明るい」という関係が、骨髄の異常を拾うときの基準になります。

「置換」「増殖」「減少」の3つの見方

骨髄の病気は、骨髄の中身がどう変わるかで、正常な成分が増える(増殖)、別の細胞に置き換わる(置換)、正常な成分が減る(減少)の3つに分けて考えると理解しやすい、とされています(Alyas 2007)。
| 変化の種類 | 主な病気・状態 | T1強調像での見え方 |
|---|---|---|
| 増殖(赤色髄の増加) | 赤色髄の再転換(貧血・喫煙・肥満・持久運動・造血因子製剤など) | 脂肪が減り、椎間板・筋肉と同じくらいまで暗くなることがある |
| 置換(腫瘍細胞などが入れ替わる) | 多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫、びまん性の骨転移 | 脂肪が失われ、椎間板・筋肉と同じか、それより暗い |
| 線維化 | 骨髄線維症 | T1強調像・T2強調像ともに暗い |
| 鉄の沈着 | 輸血による鉄過剰(ヘモジデローシス) | T1強調像・T2強調像ともに暗い |
| 減少(脂肪髄化) | 再生不良性貧血、化学療法・放射線治療後 | 脂肪が増え、T1強調像で明るい |
「びまん性骨髄置換性病変」と書かれたときは、上の表の「置換」を疑っている、という意味です。ただし、T1強調像だけでは増殖と置換の区別がつかないことが多いため、ほかの撮像法や血液検査とあわせて考えます。
T1強調像で椎間板より低信号かを見る
T1強調像の矢状断で、椎体の骨髄を上下の椎間板と背中の筋肉に比べます。明るければ正常寄り、同じか暗ければ脂肪が減っています。椎間板よりはっきり暗いほど、腫瘍の置換を考える根拠が強くなります。

比べる相手は椎間板と筋肉
トルコの単施設研究(Akman 2019)では、正常の対照群の椎体はT1強調像で椎間板・筋肉より高信号でした。一方、血液腫瘍の群と赤色髄の再転換の群では、どちらも椎体の信号が椎間板・筋肉と同等か、それより低くなっていました。
つまり、「椎間板・筋肉と同じか暗い」は、脂肪が減っているという意味では大事な所見ですが、それだけで腫瘍とは決められません。
骨髄腫での「椎間板より低い」の意味
形質細胞の病気のMRIとCTを比べた研究(Laroche 1996)では、椎間板より明るさが残る程度のびまん性の信号低下は、骨髄腫に特有の所見ではありませんでした。一方、椎間板より低いびまん性の信号低下や多結節状の見え方は、対照やMGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)には見られず、病期3の骨髄腫の全例と、病期1の骨髄腫の40%に見られました。
骨髄腫の画像全体(打ち抜き像・CT・PET)は、多発性骨髄腫の画像診断にまとめています。
T1強調像と造影で拾えない浸潤もある
骨髄腫と乳癌の、びまん性で均一な骨髄浸潤を調べた研究(Baur 1997)では、生検で骨髄の20%未満にとどまる軽い浸潤は、造影前のT1強調像でも造影でも評価できませんでした。MRIが正常に見えても、浸潤がないとは言い切れません。造影効果の数値は、後ろの「根拠(もう少し詳しく)」にまとめています。
T1でびまん性に低信号の骨髄の鑑別(考える病気)
考えるのは、赤色髄の再転換、多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫、びまん性の骨転移、骨髄線維症です。どれも画像だけでは決めきれず、分布・骨の外の所見・血液検査を手がかりにして、最後は骨髄検査で確かめます。
| 病気・状態 | 画像の手がかり | 画像以外の手がかり |
|---|---|---|
| 赤色髄の再転換 | 化学シフト画像の逆位相で信号が落ちる(脂肪が残っている)。骨幹端など赤色髄が戻りやすい場所から広がる | 貧血・喫煙・造血因子製剤の使用など、造血が盛んになる理由がある |
| 多発性骨髄腫 | 椎間板より低いびまん性の低信号、多結節状、骨の打ち抜き像 | M蛋白、高カルシウム血症、腎障害 |
| 白血病 | 全身の骨髄が均一に暗い。子どもでは骨痛・骨幹端の透亮帯を伴うことがある | 血球の減少や芽球。血球数が正常に近いこともある |
| 悪性リンパ腫 | びまん性または斑状の浸潤。骨の外に軟部腫瘤や硬膜外腫瘤を作ることがある | リンパ節腫大、LDHの上昇 |
| びまん性の骨転移 | 多発する結節が癒合して、びまん性に見える。逆位相で信号が落ちにくい | 乳癌・前立腺癌・肺癌などの既往 |
| 骨髄線維症 | T1強調像・T2強調像ともに暗い。骨硬化、脾腫や髄外造血を伴う | 涙滴赤血球、骨髄穿刺で吸引できない(dry tap) |
骨髄線維症の画像は骨髄線維症(myelofibrosis)の画像診断で、赤色髄の再転換の原因は骨髄再転換(赤色髄化)のMRI画像診断で扱っています。リンパ腫・形質細胞腫などが骨の外に作る軟部腫瘤の見分け方は、骨外に軟部腫瘤を作る骨髄病変の鑑別で症例と合わせて見られます。

化学シフト画像(in-phase・opposed-phase)で脂肪が残っているかを見る
逆位相(opposed-phase)で信号が落ちれば、細胞のあいだに脂肪が残っている(赤色髄の再転換寄り)、落ちなければ脂肪が押しのけられている(腫瘍の置換寄り)と読みます。

なぜ信号が落ちるのか
化学シフト画像は、水と脂肪の信号が足し合わされる同位相(in-phase)と、打ち消し合う逆位相(opposed-phase、out-of-phase)の2種類を撮ります。同じ画素の中に水と脂肪が混ざっていると、逆位相で信号が落ちます。赤色髄は造血細胞と脂肪が混ざっているので逆位相で暗くなり、腫瘍細胞が脂肪を押しのけてしまった骨髄では、ほとんど暗くなりません。局所的な赤色髄と転移の区別にこの方法が役立つことは、骨髄の落とし穴をまとめた総説でも取り上げられています(Saifuddin 2023)。
数字の目安
| 研究 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| Zajick 2005 | 正常な椎体569個(75例)と、局所の椎体病変221個(92例)。1.5T | 逆位相での信号低下は、正常な椎体で平均58.5%、終板変性で52.2%、血管腫で49.4%、良性骨折で49.3%、転移で2.8%。20%を超える低下を正常寄りの目安とする提案 |
| Akman 2019 | 血液腫瘍17例、びまん性の赤色髄の再転換16例、対照21例 | 逆位相/同位相の信号比は、血液腫瘍0.97、再転換0.69、対照0.28。境界値0.82で感度83.3%、特異度87% |
信号比は「逆位相の信号÷同位相の信号」なので、1に近いほど脂肪が少ない(信号が落ちない)ことを表します。Zajick 2005 の「信号低下(%)」と Akman 2019 の「信号比」は、同じことを逆の向きから表した数字です。

Akman 2019では、血液腫瘍なのに境界値を下回った2例はいずれも多発性骨髄腫でした。再転換なのに境界値を上回った3例のうち2例は、寛解中の血液腫瘍の患者でした。重なりがあるため、数値は目安として使い、臨床情報と合わせて判断します。局所の赤色髄と転移の見分け方は、骨転移とMRIで間違えやすい赤色髄でも紹介しています。
引用元の図 B細胞リンパ腫の椎体浸潤(化学シフト画像で信号が落ちない)

引用:Akman B, et al. Turk J Med Sci 2019(Figure 2)(CC BY 4.0)
51歳女性で、第8胸椎の生検でB細胞リンパ腫と診断された例です。
- (a)T1強調矢状断像:胸椎の骨髄の信号は、隣の椎間板より低くなっています。第8胸椎には病的骨折があり、同じ高さに硬膜外の腫瘤があります。
- (b)T2強調像:病的骨折と硬膜外腫瘤がよりはっきり見えます。
- (c)逆位相と(d)同位相:逆位相でも信号の低下がなく、信号比は0.95でした。
引用元の図 慢性疾患に伴う貧血で過形成になった骨髄(信号が落ちる)

引用:Akman B, et al. Turk J Med Sci 2019(Figure 3)(CC BY 4.0)
60歳男性で、慢性疾患に伴う貧血があり、骨髄生検では過形成の骨髄でした。
- (a)腰椎のT1強調矢状断像:椎体の骨髄の信号は、隣の椎間板と同じくらいです。
- (b)逆位相と(c)同位相:逆位相で信号が落ちています。信号比は0.73で、良性と考えられる値でした。

拡散強調像(DWI)とADCで骨髄を見るときの注意
骨髄では、脂肪の多い正常な骨髄のほうがADC値が低く出やすく、腫瘍が入った所は正常に見える骨髄よりADC値が高いことがあります。拡散強調像の明るさは、ADCと脂肪の量をあわせて読みます。
多発性骨髄腫35例に全身の拡散強調像と、水と脂肪を分けるDixon法を撮った研究(Ji 2021)では、局所病変のADC値は、正常に見える骨髄より有意に高い値でした。局所病変では、ADC値が脂肪の信号や脂肪の割合と強く逆相関し、ADC値や脂肪の割合などの指標は、骨髄中の形質細胞の割合とも相関していました。脂肪の多い正常の骨髄はADC値が低く出やすいため、ADC値は脂肪の量とあわせて読む必要があります。

びまん性の骨髄低信号の読影の順番
年齢→T1強調像で椎間板・筋肉と比べる→分布→骨の外→化学シフト画像・拡散強調像→臨床情報、の順に見ます。

| 順番 | 見ること |
|---|---|
| 1. 年齢を確かめる | 子どもは赤色髄が多く、T1強調像で暗いのが正常のことがある |
| 2. T1強調像で椎間板・筋肉と比べる | 同じか暗ければ「脂肪が減っている」と判断する |
| 3. 分布を見る | びまん性か、多結節状か、斑状か。終板の下や骨幹端だけか |
| 4. 骨の外を見る | 病的骨折、硬膜外や傍椎体の腫瘤、脾腫、リンパ節腫大 |
| 5. 化学シフト画像・拡散強調像 | 逆位相で信号が落ちるか。拡散強調像の信号はADCと脂肪の量とあわせて読む |
| 6. 臨床情報と合わせる | 貧血の理由、造血因子製剤の使用、血液検査、M蛋白など。必要に応じて骨髄検査を勧める |
T1強調像で骨髄が脂肪で明るくなる再生不良性貧血は、置換とは反対の変化です。化学療法や放射線治療の後には、照射野が脂肪髄化して明るくなったり、造血因子製剤で赤色髄が増えたりするため、治療歴の確認も欠かせません。
よくある勘違い
Q. 骨髄がびまん性に低信号なら、がん(腫瘍の浸潤)?
そうとは限りません。貧血や喫煙などで造血が盛んになった赤色髄の再転換でも、T1強調像で椎間板・筋肉と同じくらい暗くなります(Akman 2019)。化学シフト画像と血液検査をあわせて考えます。
Q. 化学シフト画像で信号が落ちれば、腫瘍は否定できる?
否定はできません。Akman 2019では、多発性骨髄腫の2例で信号比が境界値を下回っていました。腫瘍細胞の量が少ないと脂肪が残り、信号が落ちることがあります。数値は目安の一つです。
Q. MRIが正常なら、骨髄に病気はない?
骨髄の20%未満の軽い浸潤は、T1強調像でも造影でも評価できなかったという報告があります(Baur 1997)。血液検査で異常が続く場合は、骨髄検査を考えます。
今日のまとめ
- T1強調像の物差しは椎間板と筋肉。同じか暗ければ「脂肪が減った」で、腫瘍とは限らない。
- 鑑別の1行目は赤色髄の再転換。化学シフト画像の逆位相で信号が落ちるかを見る(目安)。
- 拡散強調像はADCと脂肪の量とあわせて読む。骨の外の所見と臨床情報を加え、最後は骨髄検査で確かめる。
根拠(もう少し詳しく)
| 研究 | 対象 | わかったこと |
|---|---|---|
| Akman 2019 | 血液腫瘍17例、びまん性の赤色髄の再転換16例、対照21例(トルコの単施設) | 正常な成人の椎体はT1強調像で椎間板・筋肉より高信号。血液腫瘍と赤色髄の再転換では、びまん性に同等か低い信号になった |
| Laroche 1996 | MGUS 24例、骨髄腫の病期1が12例・病期3が12例、対照30例 | 椎間板より明るさが残る程度の信号低下は骨髄腫に特有ではなかった。椎間板より低いびまん性の信号低下・多結節状の見え方は、病期3の全例と病期1の40%に見られた |
| Baur 1997 | 健康な成人94例、骨髄腫20例・乳癌10例のびまん性浸潤 | 正常な人の骨髄の造影効果は幅が大きく(3〜59%、平均21%)、年齢とともに弱くなった。生検で20〜50%以上を腫瘍が占める中等度・高度の浸潤では、造影による信号上昇が平均67%と正常より有意に高かった。20%未満の軽い浸潤は、造影前のT1強調像でも造影でも評価できなかった |
| Ji 2021 | 多発性骨髄腫35例(全身の拡散強調像とDixon法) | 局所病変のADC値は正常に見える骨髄より高く、脂肪の信号・脂肪の割合と強く逆相関した。指標は骨髄中の形質細胞の割合と相関した |
最終的な診断は骨髄検査で行います。
参考文献
- Akman B, Ata Korkmaz HA, Sarı A. Efficacy of chemical shift MRI for differentiating diffuse red bone marrow reconversion and hematological malignancies. Turk J Med Sci. 2019;49(2):644-652. PubMed
- Laroche M, Assoun J, Sixou L, et al. Comparison of MRI and computed tomography in the various stages of plasma cell disorders: correlations with biological and histological findings. Myélome-Midi-Pyrénées Group. Clin Exp Rheumatol. 1996;14(2):171-6. PubMed
- Zajick DC Jr, Morrison WB, Schweitzer ME, et al. Benign and malignant processes: normal values and differentiation with chemical shift MR imaging in vertebral marrow. Radiology. 2005;237(2):590-6. PubMed
- Baur A, Stäbler A, Bartl R, et al. MRI gadolinium enhancement of bone marrow: age-related changes in normals and in diffuse neoplastic infiltration. Skeletal Radiol. 1997;26(7):414-8. PubMed
- Alyas F, Saifuddin A, Connell D. MR imaging evaluation of the bone marrow and marrow infiltrative disorders of the lumbar spine. Magn Reson Imaging Clin N Am. 2007;15(2):199-219, vi. PubMed
- Saifuddin A, Tyler P, Rajakulasingam R. Imaging of bone marrow pitfalls with emphasis on MRI. Br J Radiol. 2023;96(1142):20220063. PubMed
- Ji X, Huang W, Dong H, et al. Evaluation of bone marrow infiltration in multiple myeloma using whole-body diffusion-weighted imaging and T1-weighted water-fat separation Dixon. Quant Imaging Med Surg. 2021;11(2):641-651. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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