先に結論:骨転移と間違えやすい「赤色髄の島」
- 骨髄の中に血をつくる赤色髄が島状・結節状に残る(または増える)と、MRIでT1強調像の低信号・拡散強調像の高信号となり、骨転移とそっくりに見えることがあります(FDG-PETで集積することもあります)
- 見分けのポイントは脂肪が混ざっているかで、化学シフト画像(in-phase→opposed-phase)で信号が20%程度以上下がる、T1強調像で筋肉や椎間板より明るい・中に脂肪の点がある場合は赤色髄の可能性が高くなります
- 赤色髄(赤色骨髄)は血液をつくる骨髄、黄色髄は脂肪に置きかわった骨髄です。年齢とともに赤色髄は黄色髄に変わりますが、貧血や造血を促す治療で再び赤色髄に戻ること(骨髄再転換・赤色髄化)があります
- 脊椎の血管腫も脂肪を含み、CTの水玉模様(polka-dot sign)で区別できます。判断に迷うときは、CTや経過観察と組み合わせます
赤色髄(赤色骨髄)とは?黄色髄との違いと骨髄再転換
- 赤色髄は造血の場で水分が多く脂肪も含み、黄色髄は主に脂肪からなります。成長とともに手足の先の骨から黄色髄に変わり、成人では椎体・骨盤・大腿骨近位などに赤色髄が残ります。この変化と分布のパターンはMRIで予測できます(Saifuddin 2023)。
- 造血の需要が増えると、黄色髄が再び赤色髄に戻ることがあり、これを骨髄再転換(赤色髄化、reconversion)といいます。
- 乳癌の化学療法にG-CSF(白血球を増やす薬)を併用した109例では、治療後に骨髄再転換による胸骨の造影増強がみられ、1年後には低下しました。骨転移と誤らないよう注意が必要です(Sorin 2023)。
| 黄色髄 | 赤色髄 | 骨転移 | |
|---|---|---|---|
| T1強調像 | 高信号(皮下脂肪に近い) | やや低下するが筋肉・椎間板より高いことが多い | 筋肉・椎間板と同等〜低信号 |
| 化学シフト(in→opposed) | 脂肪主体で低下は目立たない | 信号が低下する(水と脂肪が混在) | 低下しない・わずか |
| 拡散強調像 | 低信号 | 高信号になることがある | 高信号 |
骨転移とMRIで誤診してはならない赤色髄(限局性過形成骨髄)
- 前立腺癌患者などでのMRIにおける骨転移偽陽性症例には、変性、感染、血管腫など良性病変がある。
- もう一つ忘れてはならないのが骨髄内に島状、腫瘤状に孤立性に描出されることがある赤色髄(限局性過形成骨髄(Focal nodular marrow hyperplasia))。
- 赤色髄(限局性過形成骨髄)はDWI高信号、T1WI低信号、T2WI低信号となることがあり、骨転移と誤診しないように注意が必要。また、骨シンチは陰性だが、FDG-PETで集積することがある。
- 骨転移ではないと診断するには、CTで骨硬化性病変がないこと、赤色髄には水分とともに脂肪も含まれることから、T1WIをよく観察すると一部に高信号を認めていたり、in phase→out of phaseで(20%以上の)信号低下を認める点を確認すること。椎体の化学シフト画像の検討では、正常椎体はopposed-phaseで平均58.5%信号が低下したのに対し、転移の低下は平均2.8%にとどまり、20%を超える低下を正常(非腫瘍)の目安とすることが提案されている。別の検討では、opposed-phase/in-phaseの信号比0.81をカットオフとすると腫瘍の検出は感度・特異度とも95%であった。T1強調像では、病変が椎間板や骨格筋より高信号であれば正常の赤色髄の可能性が高く、等〜低信号であれば腫瘍などの浸潤性病変を疑う(椎間板より高信号の病変はすべて正常赤色髄だったとの報告がある)。
- ちなみに、脊椎血管腫もDWIで高信号となるがCTでのpolka dot signや血管腫にも脂肪が含有されるため、in phase→out of phaseで信号低下を認める点を確認する。
- 逆にいえば、in phase→out of phaseで信号低下を認めていたり、T1WIで内部に高信号な脂肪成分を同定できたら転移の可能性は低いと考えられる(ただし完全に否定できるわけではないため、経過や他の検査と合わせて判断する)。
in phase / out of phase(化学シフト画像)とは
- MRIでは水と脂肪の信号のタイミング(位相)が少しずれており、撮影の条件によって両者がそろう画像(in phase)と打ち消し合う画像(out of phase、opposed phase)が得られます。
- 1つの画素の中に水と脂肪が混ざっていると、out of phaseで信号が下がります。赤色髄はこの状態にあたり、腫瘍が骨髄の脂肪を置きかえた転移では信号が下がりにくくなります。
症例 50歳代女性

引用:Radiopaedia
骨盤骨、および近位大腿骨にT1低信号を認めています。
STIR信号に明らかな変化は認めず、造血髄(赤色髄)化を疑う所見です。
症例 40歳代女性

引用:Radiopaedia
Th5に黄色骨髄と比べてT1WIで低信号、T2WIで低信号、STIRで等信号の均質な類円形骨病変を認めます。
またTh2にT1WI,T2WI,STIRいずれも高信号の病変を認め、こちらは脊椎血管腫を疑います。

フォローのMRIでは造影MRIが撮影されました。
Th2,5病変とも残存しており、Th2は血管腫らしく造影されるのに対して、Th5病変は造影効果を認めていないことがわかります。
Th5病変はもし担癌患者ならば転移も考えたくなる所見です。

ところが、Th5病変はin phaseからout of phaseにかけて信号の低下を認め脂肪の含有が示唆され、転移ではなく赤色髄(限局性過形成骨髄)であることがわかります。
赤色髄でよくある疑問(Q&A)
Q. 赤色髄はMRIで異常ですか?
A. 赤色髄そのものは正常な造血の骨髄です。島状・結節状に見えると骨転移とまぎらわしいため、T1強調像の筋肉・椎間板との比較と化学シフト画像で脂肪の混在を確認します。
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あわせて読みたい:再生不良性貧血の骨髄MRI画像所見、骨髄線維症(myelofibrosis)の画像診断
参考文献:
- 片平 和博. 前立腺癌骨転移のMRI診断. 画像診断 37(14):1492-1502, 2017(本記事の参照: P1496)
- 全身DWIBSドライブスルー P43-4
- Zajick DC, Morrison WB, Schweitzer ME, et al. Benign and malignant processes: normal values and differentiation with chemical shift MR imaging in vertebral marrow. Radiology. 2005;237(2):590-596. PubMed
- Disler DG, McCauley TR, Ratner LM, et al. In-phase and out-of-phase MR imaging of bone marrow: prediction of neoplasia based on the detection of coexistent fat and water. AJR Am J Roentgenol. 1997;169(5):1439-1447. PubMed
- Carroll KW, Feller JF, Tirman PF. Useful internal standards for distinguishing infiltrative marrow pathology from hematopoietic marrow at MRI. J Magn Reson Imaging. 1997;7(2):394-398. PubMed
- Saifuddin A, Tyler P, Rajakulasingam R. Imaging of bone marrow pitfalls with emphasis on MRI. Br J Radiol. 2023;96(1142):20220063. PubMed
- Sorin V, Bokov I, Haisraely O, et al. Treatment-Induced Bone Marrow Enhancement at MRI in Breast Cancer Patients Receiving Granulocyte-Colony Stimulating Factor Adjunct to Chemotherapy. Acad Radiol. 2023;30 Suppl 2:S9-S15. PubMed
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