背側皮膚洞のMRI 仙骨ディンプルとの違いと見分け方

赤ちゃんのお尻の上にくぼみ(ディンプル)があります。「背側皮膚洞かもしれないのでMRIを」と言われました。仙骨のくぼみは多くの子にあると聞いたのですが、どう違うのですか?
お尻のくぼみの多くは問題のない「単純な仙骨ディンプル」です。一方、背側皮膚洞(先天性皮膚洞)は、皮膚と脊髄などの神経組織がトンネルでつながっている先天異常で、細菌が入ると髄膜炎や膿瘍の原因になります。くぼみの位置・大きさ・皮膚の所見が、画像検査が必要かどうかの手がかりになります。超音波とMRIの役割とあわせて整理します。

先に結論:「小さく浅い単独のくぼみ」は画像検査が不要とされる。「大きい・深い・正中から外れる」くぼみや、毛髪・血管腫などの皮膚所見を伴うくぼみは、新生児ではまず超音波、月齢が進んだ乳児や判断に迷う例ではMRIで調べる。背側皮膚洞は感染と神経の係留(けいりゅう)が問題になる

項目 ポイント
背側皮膚洞とは 皮膚(皮膚の外胚葉)と神経組織の分離がうまくいかず、皮膚から脊柱管内へ続くトンネルが残った先天異常(Chesney 2025)
単純な仙骨ディンプル 正中の単独のくぼみで、直径5 mm未満、肛門から2.5 cm以内、ほかの皮膚所見なし。脊髄の異常とは関連せず、画像検査は不要とされる(Eun 2026)
要精査のくぼみ 大きい・深い・正中から外れる、または毛髪の束・血管腫などの皮膚所見を伴う。潜在性の脊髄の異常と有意に関連する(Eun 2026)
合併しやすいもの 感染(髄膜炎・膿瘍)、類皮嚢胞・類表皮嚢胞、脊髄の係留。MRIが診断の中心(Lee 2017、Pai 2026)
治療の考え方 感染と神経障害を防ぐため、切除と係留の解除が勧められる。時期は症状・年齢・合併病変で検討される(Chesney 2025)

背側皮膚洞(先天性皮膚洞)とは

背側皮膚洞(dorsal dermal sinus、先天性皮膚洞 congenital dermal sinus)は、脊髄の発生の途中で、皮膚の外胚葉と神経外胚葉が離れる過程(分離)の異常によってできる先天異常です。皮膚の表面から皮下を通り、脊柱管の中へ向かうトンネル(sinus tract)が残ります。感染や、神経の係留による障害のリスクがあるため、予防的に切除と係留の解除が勧められています(Chesney 2025)。

背側皮膚洞は、皮下に腫瘤を伴わない閉鎖性脊髄癒合不全の1つで、MRIで分類すると、神経外科的な介入を考える「複雑な」病変に入ります(Pai 2026)。くぼみのある位置は、一般に臀裂(お尻の割れ目)より頭側であることが多いとされます。臀裂の中に収まるくぼみは、後述する単純な仙骨ディンプルであることが多くなります。脊髄癒合不全の全体像は椎弓の癒合不全・欠損の種類とCT画像で触れています。

仙骨ディンプルとの違いと、要精査の皮膚所見

仙骨ディンプルは、新生児に最もよくみられる皮膚の異常です。多くは問題のない解剖学的なバリエーションですが、一部に潜在性の脊髄癒合不全(係留脊髄、皮膚洞、脂肪脊髄髄膜瘤など)が隠れています(Eun 2026)。

項目 単純なディンプル 要精査のディンプル
大きさ・深さ 直径5 mm未満 大きい、深い
位置 正中、肛門から2.5 cm以内 正中から外れる、臀裂より頭側(一般に)
皮膚所見 なし 毛髪の束、血管腫(毛細血管性)、皮膚の突起、点状の開口部など
画像検査 不要とされる 新生児は超音波、月齢が進んだ乳児・判断に迷う例はMRI

(Eun 2026より整理)

引用元の図 単純な仙骨ディンプルの超音波とMRI

仙骨ディンプルの外観・脊椎超音波・MRI矢状断(脊髄の異常なし)
引用:Eun J, et al. Clin Exp Pediatr 2026(Fig. 2)(CC BY-NC 4.0)

図:仙骨ディンプルがあるが、脊髄の異常は認めなかった例です。左から、くぼみの外観、脊椎の超音波像、MRIの矢状断像です。

皮膚所見が複数あると、画像で異常が見つかりやすくなります。腰仙部に皮膚所見があり、全員に脊椎の超音波を行った新生児・乳児の研究では、超音波が異常だったのは34人(24%)でした。皮膚所見が1つだけの人は、2つ以上ある人より、超音波が正常である割合が高い結果(79%対53%)でした(Shields 2021)。ただし、これは小児泌尿器科に紹介された患者を対象にした報告で、くぼみ全体の頻度を示す数字ではありません。

一方、単純な仙骨ディンプルだけで超音波を受けた新生児195人(生後90日以内)では、脊髄癒合不全が見つかったのは2人(1.0%)で、2人とも係留脊髄でした(Tattersall 2026)。このように、単純なディンプルでの超音波の診断率は低いとされています。

超音波とMRIの役割

検査 役割 注意点
超音波 新生児の最初のスクリーニング。脊髄円錐の位置と動き、終糸、皮下のトンネルを見る 月齢が進むと、脊椎の骨の成熟で観察しにくくなる。小さな病変は見逃すことがある
MRI 皮膚洞の走行、付着部、類皮嚢胞・類表皮嚢胞、感染、係留の評価 乳児は鎮静が必要なことがある。造影は感染の評価で使う

要精査のディンプルでは、新生児なら超音波、月齢が進んだ乳児や超音波で判断に迷う例ではMRIが勧められています。係留脊髄・皮膚洞・脂肪脊髄髄膜瘤・脊髄分割奇形は、MRIで最もよく見えます(Eun 2026)。脊髄円錐の位置(正常な位置)は腰椎MRIの正常解剖(矢状断)を参考にしてください。

MRIで見るポイント

トンネルの走行と付着部

皮膚のくぼみから皮下を通り、脊柱管へ入るトンネルをたどります。トンネルが硬膜の中(脊髄や馬尾)のどこに付着するかを確認します。背側皮膚洞では、脊柱管内で脊髄や馬尾など、さまざまな部位に付着します(Lee 2017)。

類皮嚢胞・類表皮嚢胞と脂肪腫

トンネルの終わりやその途中に、類皮嚢胞・類表皮嚢胞がみられることがあります。背側皮膚洞10人のうち6人で類皮・類表皮腫瘍があり、限局性背側脊髄裂(LDM)の12人では1人もいませんでした(Lee 2017)。無症状で手術を受けた乳児52人の報告では、ほかの脊椎病変が29%にあり、脂肪腫(19%)、類皮・類表皮嚢胞(8%)、くも膜嚢胞(2%)でした。長期の再係留や神経所見の異常は、合併した脂肪腫と関連していました(Chesney 2025)。

引用元の図 複数の皮膚洞と皮下の嚢胞

3本の皮膚洞と皮下の類皮嚢胞・硬膜内封入嚢胞のMRI
引用:Spazzapan P, et al. Front Pediatr 2024(Figure 3)(CC BY 4.0)

図:腰部に3つのくぼみがあった女児のMRIです。(A)矢状断で、L2・L3・S1の3か所に皮膚洞があり、脊髄円錐はL2の高さにあります。(B)最も上の皮膚洞は、皮下の類皮嚢胞で終わっています(矢印)。(C)S2の高さに硬膜内の封入嚢胞が見えます(点線の矢印)。

背側皮膚洞は通常は1本ですが、多発したり、典型的でない位置にあったりする例も報告されています(Spazzapan 2024)。このような症例では、全脊椎を見渡して、皮膚洞や嚢胞を見逃さないことが大切です。

引用元の図 皮下を走る2本の皮膚洞

殿部から仙骨へ向かう2本の皮膚洞のMRI
引用:Spazzapan P, et al. Front Pediatr 2024(Figure 1)(CC BY 4.0)

図:殿部にある皮膚洞の例のMRIです。(A)皮膚洞が、右殿部の皮膚から内側へ向かって仙骨下部に向かっています(2本の矢印)。(B)上の皮膚洞が、S3の神経孔から脊柱管の下部に入っています(点線の矢印)。画像上は、硬膜内への進展を示す所見はありませんでした。

脊髄との関係:LDMとの違い

背側皮膚洞と似た病態に、限局性背側脊髄裂(limited dorsal myeloschisis、LDM)があります。両者を比べた研究(LDM 12人、背側皮膚洞10人)の結果を表にまとめます(Lee 2017)。

項目 背側皮膚洞 LDM
皮膚の所見 くぼみ(皮膚洞の開口部) 薄い上皮でおおわれた「噴火口」状の陥凹(10/12、83%)
感染合併 6/10(60%) なし(P = .003)
脊柱管内のトンネルの見えやすさ 1/10(10%) 10/12(83%)
脊髄への付着 脊髄・馬尾など、さまざま 全例(12/12)で脊髄に付着
脊髄の背側へのテンティング 1/10(10%) 10/12(83%)
類皮・類表皮腫瘍 6/10(60%) なし

LDMは感染や類皮・類表皮腫瘍を伴わず、脊柱管内にトンネルが見え、脊髄との結合部で脊髄が背側に引かれる「テンティング」が特徴です。背側皮膚洞は感染を起こしやすい、という違いがあります(Lee 2017)。

感染と係留:何が問題になるか

背側皮膚洞は、皮膚から脊柱管内への道になるため、細菌が入って髄膜炎や脊髄周囲の膿瘍を起こすことがあります。脊髄内の膿瘍はまれですが最も重い合併症で、感染した背側皮膚洞と類皮嚢胞から、脊髄内に膿瘍ができた乳児の報告があります(Matsubara 2022)。MRIでは、脂肪抑制を併用した造影T1強調像が、皮膚洞の走行と感染の範囲を調べるのに役立ちます。化学性髄膜炎は、類皮嚢胞などの内容が脊柱管内に漏れても起こりうるとされます。

もう1つの問題は脊髄の係留です。脊髄が下に引かれて、神経・整形外科・泌尿器の障害(足の運動、排尿・排便、脊椎の変形など)を起こすことがあります(Eun 2026)。手術では、皮膚洞の切除と係留の解除が行われます(Chesney 2025)。直腸肛門奇形に伴う脊髄係留の調べ方は直腸肛門奇形(鎖肛)の画像診断に、脊髄脂肪腫は脂肪脊髄髄膜瘤(脊髄脂肪腫)のMRI画像診断と終糸脂肪腫との違いにあります。

無症状の背側皮膚洞をいつ手術するかは、まだ決まっていません。52人の報告では、手術の合併症は8%で、主に創傷治癒の問題でした。手術時の年齢が6か月未満であることが、合併症と関連していました。手術の方針は、小児脳神経外科で個別に決められます(Chesney 2025)。

よくある疑問(Q&A)

Q. 赤ちゃんの仙骨のくぼみは、すべてMRIが必要ですか。
A. 必要ではありません。直径5 mm未満で、正中にあり、肛門から2.5 cm以内で、ほかの皮膚所見のない単純なくぼみは、脊髄癒合不全とは関連せず、画像検査は不要とされています(Eun 2026)。くぼみが大きい・深い・正中から外れる、毛髪の束や血管腫を伴う場合は、検査を考えます。

Q. 超音波で異常がなければ安心ですか。
A. 新生児の超音波は有用ですが、見え方は月齢や条件で変わります。判断に迷う場合や、皮膚洞が疑われる場合は、MRIで確認します(Eun 2026)。結果の説明は、検査を受けた施設で確認してください。

Q. くぼみから分泌物が出たり、赤くなったりしたら。
A. 背側皮膚洞が感染すると、皮膚の炎症や分泌物、発熱、髄膜炎の症状が出ることがあります。くぼみの周囲の発赤・腫れ・分泌物、発熱、不機嫌、哺乳不良といった変化があれば、早めに小児科を受診してください。

Q. 背側皮膚洞とLDMは区別できますか。
A. MRIで、脊柱管内のトンネルの見えやすさ、脊髄への付着、背側へのテンティング、類皮・類表皮腫瘍の有無などが手がかりになります(Lee 2017)。ただし、症例数の少ない研究で、診断は小児放射線科医・脳神経外科医が総合して決めます。

お子さんの背中や臀部の皮膚の気になる所見があれば、小児科・小児外科・小児脳神経外科などの医療機関に相談してください。

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参考文献

  1. Lee SM, Cheon JE, Choi YH, et al. Limited dorsal myeloschisis and congenital dermal sinus: comparison of clinical and MR imaging features. AJNR Am J Neuroradiol. 2017;38(1):176-182. PubMed
  2. Eun J, Lee KS, Yang SH. Sacral dimple: clinical perspectives of lesions hidden beneath the skin. Clin Exp Pediatr. 2026;69(2):103-113. PubMed
  3. Chesney KM, Keating GF, Patel N, et al. The importance of timing: evaluating the optimal age for surgical intervention in asymptomatic dermal sinus tracts. J Neurosurg Pediatr. 2025;35(3):237-245. PubMed
  4. Tattersall N, Stam L, Burnett M, et al. Evaluating the diagnostic utility of spinal ultrasound in neonates with a simple sacral dimple: an eight-year retrospective study. J Med Radiat Sci. 2026;73(Suppl 2):S73-S80. PubMed
  5. Shields LB, Mutchnick IS, Daniels MW, et al. Risk of occult spinal dysraphism based on lumbosacral cutaneous manifestations. SAGE Open Med. 2021;9:20503121211037172. PubMed
  6. Pai V, Krishnan P, Miller E, et al. Imaging of congenital anomalies of the spinal cord: part 2. Neuroimaging Clin N Am. 2026;36:665-679. PubMed
  7. Spazzapan P, Thompson DNP. Case report: two cases of multiples and atypical dermal sinus tracts. Front Pediatr. 2024;12:1346970. PubMed
  8. Matsubara Y, Murakami N, Kurogi A, et al. Intramedullary abscess at thoracolumbar region transmitted from infected dermal sinus and dermoid through retained medullary cord. Surg Neurol Int. 2022;13:54. PubMed

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