
先に結論:低リン血症を伴う骨軟化症では、腫瘍性骨軟化症(FGF23産生腫瘍)を疑う。腫瘍は小さく、CT・MRIだけでは見つからないことがあり、全身のソマトスタチン受容体PET/CTが探すときの中心になる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | FGF23を作る間葉系の腫瘍(リン酸塩尿性間葉系腫瘍:PMT)が原因の腫瘍性骨軟化症(TIO)。まれで、診断が遅れやすい |
| きっかけ | 骨の痛み、筋力低下、骨折。血清リンの低下と、低め〜正常の1,25(OH)2ビタミンD |
| 腫瘍の画像 | 平均3cm台と小さい。骨では溶骨性で境界が狭いことが多く、内部に基質(石灰化)やT2強調像で暗い部分を持つことが多い |
| 探し方 | 機能画像(68Ga-DOTATATE PET/CTなど)で全身を調べ、見つかった所をCT・MRIで詳しく見る |
| 見分けたい病気 | 線維性異形成、腱滑膜巨細胞腫、脂肪腫様の腫瘍など、他の骨・軟部腫瘍に似る |
リン酸塩尿性間葉系腫瘍(PMT)とは
腫瘍性骨軟化症(tumor-induced osteomalacia:TIO)は、FGF23という、腎臓でのリンの再吸収を減らすホルモンを腫瘍が過剰に作ることで起こる傍腫瘍症候群です。FGF23が増えるとリンが尿から失われ、血清リンが低下し、活性型ビタミンD(1,25(OH)2D)が低くなって骨の石灰化が悪くなります(Jan de Beur 2023)。原因になる腫瘍のほとんどが、リン酸塩尿性間葉系腫瘍(phosphaturic mesenchymal tumor:PMT)です(Minisola 2023)。
非常にまれな病気で、報告されたTIOの895例の総説では、診断時の年齢の中央値は46歳、男性が58.3%でした。腫瘍の大きさの中央値は2.7cmで、診断の遅れが2年を超えた人が8割以上でした(Bosman 2022)。別の総説では、症状が非特異的なため、初期の誤診率は95%を超えると指摘されています(Minisola 2023)。
| 項目 | 報告されている内容 |
|---|---|
| 血液検査 | 低リン血症と、低〜正常の1,25(OH)2ビタミンDが98%に(Bosman 2022) |
| 骨の状態 | 骨密度のデータがある人の62%で腰椎のTスコアが−2.5以下、骨折の報告は少なくとも39%(Bosman 2022) |
| 腫瘍の場所 | 頭から足まで全身のどこにでもでき、軟部と骨で同程度(Minisola 2023) |
| 遺伝子 | 約半数でFN1-FGFR1またはFN1-FGF1融合遺伝子(Minisola 2023) |
| 悪性の頻度 | 多くは良性。悪性は、895例の総説では約10%、別の総説では2.5%未満と、報告により差がある(Bosman 2022、Hussein 2021) |
このため、国際的なガイダンスでは、慢性の筋肉痛や筋力低下、脆弱性骨折、骨の痛みがある患者さんでは、血清リンを測るよう勧めています。TIOが疑われたら専門医に紹介し、原因腫瘍の場所を調べるには機能画像を使うとされています(Jan de Beur 2023)。
骨軟化症としての画像
まず、腫瘍ではなく「骨軟化症」の所見が画像に出ます。X線では、骨梁の粗さ、皮質の菲薄化、Looser帯(骨軟化症に特徴的な、骨にできる細い透亮線)が見られます。足や骨盤では、癒合しない骨軟化症性の骨折が目立ち、偽骨折は大腿骨頸部・膝・骨盤・肋骨に多いと報告されています(Hussein 2021)。子どもでは、くる病の所見になります(Hussein 2021)。
骨シンチの報告例では、胸椎・肋骨・骨盤・四肢に多発する集積があり、仙骨のH字型の集積は脆弱性骨折に典型的なパターンでした(Hussein 2021)。骨軟化症・くる病の画像はくる病・骨軟化症の画像診断、骨シンチの見方は骨シンチの見方と偽陽性、痛い場所と離れた所の骨折は痛む場所と違うところの骨折でも説明しています。
骨折や痛みが多発しているのに、骨粗鬆症や外傷では説明しにくいときは、全身の代謝の異常を疑って血清リンを確認することが診断への近道です(Jan de Beur 2023)。危険因子や基礎疾患のない若い人に病的骨折があることも、重要な手がかりとされています(Hussein 2021)。
腫瘍そのもののCT・MRI
PMTの画像は、骨と軟部に40病変を集めた39人の報告が参考になります(Broski 2019)。
| 項目 | 結果(Broski 2019) |
|---|---|
| 大きさ | 最大径の平均3.4cm(1.1〜9.8cm) |
| 骨の病変 | 原発性の骨病変の66.6%(12/18)が溶骨性。75.0%(15/20)で境界が狭い(narrow zone of transition) |
| 内部の基質 | 56.3%(18/32)に基質を認める |
| MRI T1強調像 | 筋肉と等信号が83.8% |
| MRI T2強調像 | 高信号が38.9%。暗い部分を含むものが88.9% |
| 造影 | 充実性に造影されるものが70.0% |
CTでは、骨の病変は溶骨性が多く、まれに硬化性や混合型もあります。基質は点状または不定形、まれにすりガラス状で、すりガラス状の腫瘍で薄い硬化縁を伴うものは、線維性異形成と間違えやすいとされます(Hussein 2021)。MRIでは、T1強調像で中間〜高信号、T2強調像で高信号で不均一になることが多く、大きな腫瘍ではT2強調像で血管の流れによる暗い点(flow void)が見られます。小さな腫瘍では、T1・T2とも均一な信号になります(Hussein 2021)。STIRや拡散強調像は、病変の位置を探すのに役立ちますが、拡散強調像は空間分解能が低く、T2 shine-throughにも注意が必要です(Hussein 2021)。
PMTの画像は他の腫瘍に似ます。論文では、線維性異形成、腱滑膜巨細胞腫、異型脂肪腫様腫瘍などが鑑別に挙げられ、臨床と検査値を合わせて考えることが重要だとされています(Broski 2019)。腫瘍の見え方は溶骨性病変を来す疾患の鑑別や軟部腫瘍の画像診断と鑑別とも重なります。
症例 47歳男性 第4肋骨のPMT

引用:Hussein MAM, et al. Radiol Med 2021;126:1651-1664 (Figure 7) CC BY 4.0 PMC
背部の痛みで受診した患者さんの第4肋骨に、境界のはっきりした丸い濃度の高い病変があり、CT(A・B)では内部に軽い石灰化を伴います。T2強調像(C)では高信号と低信号が混在し、皮質の破壊と胸膜外の脂肪への進展があります。造影T1強調像(D)では均一に強く造影され、造影されない縁(矢頭)は石灰化の部分です。論文の報告です(Hussein 2021)。
見つからないときの機能画像
PMTは小さく、ゆっくり育ち、下顎・肋骨・副鼻腔など思いがけない場所にできるため、CTやMRIで場所を絞れないことがあります。このため機能画像が使われます(Hussein 2021)。PMTはソマトスタチン受容体を多く出す(79%)ことが知られており、68Ga-DOTATATEなどの検査が使われます(Hussein 2021)。
| 報告 | 結果 |
|---|---|
| 6人の症例集(Clifton-Bligh 2013) | 68Ga-DOTATATE PET/CTは全例で強い集積を示し、腫瘍の場所を確信を持って示した |
| 13人の比較(Yu 2021) | 手術で確認された8人で、感度は68Ga-DOTATATE 100%(8/8)、18F-FDG 75%(6/8)。特異度は両方とも80%(4/5) |
| 40病変の検討(Broski 2019) | テクネシウム-sestamibiは8/9、インジウム-ペンテトレオチドは2/4、68Ga-DOTATATEは2/2、18F-FDGは11/13で陽性。FDGのSUVmaxは平均4.1(1.5〜10.8) |
数が少ない研究なので、どの検査が上かをこの表だけで決めることはできません。総説では、68Ga-DOTA系の検査の感度が高いとされ(Minisola 2023)、頭からつま先までの全身の撮像が使われます(Yang 2019)。ただし、検査の選択は各施設で実施できるかに左右され、他の検査より優れているという明確な証拠はない、という整理もあります(Hussein 2021)。
見つかった場所は、焦点を絞ったCTやMRIで腫瘍の範囲を示して手術に生かします(Yang 2019)。腫瘍を診察で見つけられたのは32%で(Bosman 2022)、画像のあとも、画像に出ない小さな腫瘍を想定して、体表から触れる腫瘤がないかの診察と合わせて探すのが現実的です。
症例 59歳男性 右膝付近の軟部のPMT(DOTATATEとFDGの比較)

引用:Yu HN, et al. Orthop Surg 2021;13:791-798 (Figure 2) CC BY 4.0 PMC
3年以上続く骨痛があり、血清リンが低い患者さんです。68Ga-DOTATATE PET/CTで右膝付近の軟部に強い集積(SUVmax 17.2)があり、同じ病変は18F-FDG PET/CTでは集積が増えていません。1.2cmの腫瘍を切除すると症状が速やかに改善し、血清リンも正常に戻ったと報告されています。病理はPMTでした(Yu 2021)。
読影・依頼のときのチェックポイント
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| 骨折が多発している、癒合しない | 骨軟化症の所見(Looser帯・偽骨折・骨梁の粗さ)がないか。血清リンの値を臨床に確認する(Hussein 2021、Jan de Beur 2023) |
| 骨や軟部に小さな腫瘤がある | 低リン血症の既往・骨軟化症の所見があれば、PMTも考える。溶骨性で境界が狭い、内部に基質、T2強調像で暗い部分、といった特徴を記載する(Broski 2019) |
| CT・MRIで原因の腫瘍が見つからない | 全身の機能画像(68Ga-DOTATATE PET/CTなど)を提案する(Jan de Beur 2023、Minisola 2023) |
| 機能画像で集積を認めた | 骨折・関節炎・骨壊死による非特異的な集積と区別し、同じ部位のCT・MRIで確認する(Yu 2021、Yang 2019) |
| 腫瘍切除のあと | 切除後に、画像で残存病変が見つかった例がある。症状と血清リンの経過とあわせて追う(Clifton-Bligh 2013) |
治療は、腫瘍の切除が基本とされています。切除できない場合や腫瘍が見つからない場合には、内科的な治療法があります(Jan de Beur 2023)。原因になる腫瘍が小さくても、見つけて切除すると症状と血清リンが戻った例が多いため、診断の遅れを減らすことが大切です(Clifton-Bligh 2013)。骨の痛みや骨折が続く、筋力が落ちるといった症状があるときは、医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 骨粗鬆症との違いは何ですか?
A. どちらも骨がもろくなりますが、TIOでは血清リンが低く、1,25(OH)2ビタミンDが低め〜正常で、骨軟化症の画像(Looser帯・偽骨折など)が目立ちます(Bosman 2022、Hussein 2021)。骨密度が低いだけで、骨粗鬆症と決めつけない注意が必要です。
Q. FDG-PETで見つかりますか?
A. 見つかることはありますが、感度は68Ga-DOTATATEより低い報告があります。13人の比較では、手術で確認された8人のうちFDGで見つかったのは6人でした(Yu 2021)。
Q. 腫瘍は悪性ですか?
A. 多くは良性です。ただし悪性の例も報告され、その頻度は報告で2.5%未満から約10%まで差があります(Hussein 2021、Bosman 2022)。
Q. 腫瘍を切除すれば治りますか?
A. 腫瘍を見つけて切除すると、症状と血清リンが改善した報告が多くあります。画像で残存が見られた例もあります(Clifton-Bligh 2013)。
あわせて読みたい:骨軟部腫瘍のWHO分類(2020年・第5版)、膝蓋腱・四頭筋腱断裂の画像診断、前立腺癌の監視療法とMRI
参考文献
- Bosman A, Palermo A, Vanderhulst J, et al. Tumor-Induced Osteomalacia: A Systematic Clinical Review of 895 Cases. Calcif Tissue Int. 2022;111(4):367-379. PubMed
- Minisola S, Fukumoto S, Xia W, et al. Tumor-induced Osteomalacia: A Comprehensive Review. Endocr Rev. 2023;44(2):323-353. PubMed
- Jan de Beur SM, Minisola S, Xia WB, et al. Global guidance for the recognition, diagnosis, and management of tumor-induced osteomalacia. J Intern Med. 2023;293(3):309-328. PubMed
- Hussein MAM, Cafarelli FP, Paparella MT, et al. Phosphaturic mesenchymal tumors: radiological aspects and suggested imaging pathway. Radiol Med. 2021;126(12):1609-1618. PubMed
- Broski SM, Folpe AL, Wenger DE. Imaging features of phosphaturic mesenchymal tumors. Skeletal Radiol. 2019;48(1):119-127. PubMed
- Yu HN, Liu L, Chen QS, et al. Comparison of (18) F-FDG PET/CT and (68) Ga-DOTATATE PET/CT in the Targeted Imaging of Culprit Tumors Causing Osteomalacia. Orthop Surg. 2021;13(3):791-798. PubMed
- Clifton-Bligh RJ, Hofman MS, Duncan E, et al. Improving diagnosis of tumor-induced osteomalacia with Gallium-68 DOTATATE PET/CT. J Clin Endocrinol Metab. 2013;98(2):687-94. PubMed
- Yang M, Doshi KB, Roarke MC, et al. Molecular Imaging in Diagnosis of Tumor-induced Osteomalacia. Curr Probl Diagn Radiol. 2019;48(4):379-386. PubMed
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