監視療法とMRI PRECISE 1〜5の読み方と限界

前立腺がんが見つかりましたが、「すぐ治療せず、定期的にMRIと生検で経過をみる(監視療法)」と言われました。MRIでは何を比べているのですか?
監視療法では、前回までのMRIと今回のMRIを比べて「がんが大きくなっていないか、悪くなっていないか」を見ます。比べ方をそろえるためにPRECISEという報告の決まりがあり、1〜5の段階で変化を書きます。ただしMRIだけで「変化なし」と決めきれない点もあるので、その限界も含めて整理します。

先に結論:監視療法のMRIは、診断時の選別と、経過中の変化を1〜5で報告するPRECISEが柱。4〜5は進行を示すが、MRIだけでは決められない

項目 ポイント
監視療法とは 低リスクの前立腺がんなどで、すぐに治療せず、PSA・MRI・生検で経過を見る方針。過剰な治療を減らし、進行したときに治療に切り替える
MRIの役割 診断時の選別と確認生検の導き、経過中の変化の評価
PRECISE 前回との変化を1(消失)〜5(病期の進行)で報告する国際的な決まり。4〜5が進行
性能 PRECISE 4以上の基準で、感度は57〜76%、陰性的中率は85〜96%。MRIだけで進行を除外はできない
読影のコツ 画質を確認し、前回だけでなく最初のMRIとも比べ、T2強調像で大きさを同じ方法で測る

監視療法とMRIの関係

監視療法(active surveillance)は、低リスクの前立腺がんや、一部の中間リスクのがんで選ばれる、保存的な管理の方法です(Dias 2024)。目的は、治療のしすぎ(過剰治療)を減らしながら、進行したときにそれを見つけて、治癒の見込みがあるうちに治療へ切り替えることです(Caglic 2021)。

従来の経過観察は、PSA・直腸診・定期的な再生検が中心でした(Caglic 2021)。MRIが加わったことで、診断時の選別、確認生検、経過観察のそれぞれの場面で使われるようになりました(Englman 2024、Dias 2024)。

場面 MRIの役割と根拠
診断時の選別 監視療法に適するとされた男性の約2/3で、MRIに疑わしい病変がある。MRIで陽性だと、再生検で臨床的に意義のあるがんが見つかりやすい。特に病変を狙った生検が有利(Schoots 2015)
病理との関係 前立腺全摘の標本では、MRI陽性のほうが陰性よりグレードの上昇が多い(43% 対 27%)。T2を超える病期の上昇は有意差なし(10% 対 8%)(Schoots 2015)
選別と経過中の評価 臨床的に意義のあるがんに対するMRIの高い陰性的中率が、選別と層別化を支える。一方、進行の評価では結果が一致していない(Dias 2024)

MRIでの前立腺の見方の基本は前立腺癌のMRI画像診断とPI-RADS v2.1まとめ、T2強調像で低信号になる病変との区別は前立腺癌の鑑別診断(T2WIで低信号となるもの)で説明しています。

PRECISE:変化を1〜5で報告する

経過観察のMRIは、「前回より大きくなった」と報告する人によって言葉がばらばらになりがちでした。そこで2016年に、泌尿器科・放射線科・腫瘍内科の専門家がPRECISE(Prostate Cancer Radiological Estimation of Change in Sequential Evaluation)という報告の決まりを作りました(Caglic 2021、Moore 2017)。個々のMRIの報告では、指標となる病変の大きさを最初と毎回のMRIで実測値で書き、変化の確からしさを5段階で評価するのが基本です(Moore 2017)。

スコア 意味(Caglic 2021)
1 疑わしい所見が消えた(以前に拡散が制限されていた所が、もう制限されない など)
2 疑わしい所見が小さくなった・目立たなくなった(まだ臨床的に意義のあるがんが疑われる)
3 変わらない(疑わしい所見がない、または大きさも見え方も安定)
4 疑わしい所見が大きくなった・目立つようになった(病変の有意な増大や、拡散制限の新しい領域)
5 明らかな病期の進行(被膜外進展、精嚢浸潤、リンパ節・骨への浸潤など)

1〜2は退縮、3は安定、4〜5は進行と整理されます(Giganti 2026)。2024年の改訂版(PRECISE version 2)では、38人の専門家の合意で、次のような点がまとめられました(Englman 2024)。

  • 最低限の画質を満たさないMRIは、スコアではなく「X(画質不十分)」とする。
  • 今回のMRIは、前回だけでなく最初(ベースライン)とも比べる。
  • 病変が複数あるときは、病変ごとのスコアのうち最大のものを全体のスコアにする。
  • スコア3は、病変が見えるもの(3-V)と見えないもの(3-NonV)に分ける。
  • PI-RADS・Likert 3以上の病変はT2強調像で測り、ほかの系列は病変の同定に使う。できるだけ図(シェーマ・スクリーンショット・輪郭)で示す。
  • スコア5は、T3a以上への進行と明確にする。
  • 大きさの測り方は合意に至らず、有意な増大の大きさは今後の課題。

大きさの測定について、196人の検討では、楕円体の式(3方向の径から計算する)が、病変を輪郭で囲む方法(planimetry)と最もよく相関しました(ρ=0.97〜0.98)。また、PRECISE 2〜3と4〜5では、1年あたりの体積変化率に有意な差がありました(Giganti 2020)。

症例 66歳男性 PRECISE 4(辺縁域の病変の増大)

前立腺癌 監視療法 PRECISE 4 辺縁域病変の増大 T2強調像・ADC
引用:Caglic I, et al. Eur Radiol 2021;31:2490-2500 (Figure 3) CC BY 4.0 PMC

上段がT2強調像、下段がADCマップです。右辺縁域の中部にLikert 5の病変(矢印)があり、最初のMRIで12×7mmでした。2年後のMRIで15×9mm(PRECISE 4)、さらに2年後に17×10mmと大きくなり、標的生検でGleason 3+4=7と判明し、放射線治療が行われています(Caglic 2021)。

症例 68歳男性 PRECISE 5(被膜外進展を疑う進行)

前立腺癌 監視療法 PRECISE 5 被膜外進展を疑う進行 T2強調像・ADC
引用:Caglic I, et al. Eur Radiol 2021;31:2490-2500 (Figure 4) CC BY 4.0 PMC

左辺縁域の基部の病変(矢印)は、最初のMRIで9×7mmでした。30カ月後に21×10mmへ大きくなり、被膜との接触が広く、輪郭が不整で被膜外進展と考えられる所見です。再生検でGleason 3+4が確認され、ホルモン療法と放射線治療が行われています(Caglic 2021)。

どこまで信頼できるか:MRIの限界

MRIの変化は、進行を知る重要な手がかりですが、それだけで結論は出せません。

報告 結果
295人(Caglic 2021) 進行は13.9%(中央値52カ月)。PRECISE 4以上を基準にすると感度0.76、特異度0.89、陽性的中率0.52、陰性的中率0.96
22施設1,667人(Giganti 2026) PRECISE 4〜5は、1〜3に比べて生検での進行のオッズが4.53倍。PRECISE 4以上の基準で、感度57%、特異度79%、陽性的中率46%、陰性的中率85%
15研究2,240人のメタ解析(Rajwa 2021) 感度0.59、特異度0.75。陰性的中率0.81〜0.88、陽性的中率0.37〜0.50。研究間のばらつきが大きく、PRECISEと施設ごとの定義に有意差はなかった

メタ解析の結論は、経時的なMRIを進行を除外する唯一の根拠にしてはならず、MRIの変化だけでは進行を示すのに十分な精度がない、というものです(Rajwa 2021)。一方、PRECISEの1〜3は陰性的中率が高いため、再生検の回数を減らす助けになる可能性も示されています(Caglic 2021、Giganti 2026)。「MRIが安定ならすぐに生検が不要」とは決めず、PSAの動きなどと組み合わせて判断するのが前提です(Giganti 2026、Rajwa 2021)。

MRIで見えない臨床的に意義のあるがんの扱い、画質の最適化、T2強調像と拡散強調像だけのバイパラメトリックMRIか、造影を含むマルチパラメトリックMRIか、人工知能の活用は、今後明らかにすべき課題とされています(Dias 2024)。

読影のときのチェックポイント

場面 確認すること
画質 T2強調像・拡散強調像の画質が最低限か。不十分ならスコアではなく「X」とする(Englman 2024)
比べる相手 前回のMRIだけでなく、ベースラインとも比べる(Englman 2024)
測り方 T2強調像で、毎回同じ方法で指標病変を測る。数値だけでなく図でも示す(Englman 2024、Giganti 2020)
スコア5の根拠 被膜外進展・精嚢浸潤・リンパ節や骨の所見など、T3a以上の所見を具体的に書く(Caglic 2021、Englman 2024)
スコア3の書き方 病変が見える(3-V)のか、見えない(3-NonV)のかを分ける(Englman 2024)
報告の言葉 MRIだけでは進行の有無を決められないため、PSAや生検の経過とあわせた判断が必要と添える(Rajwa 2021)

前立腺の解剖は前立腺のMRI解剖と画像の読み方、骨転移などの病期診断で使うPSMA PETはPSMA PETとはで説明しています。監視療法の方針は担当の医師が個別に決めるため、検査や経過で気になることがあれば、主治医に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. MRIで変化がなければ、生検は受けなくてよいですか?
A. MRIが安定している場合は、再生検を減らせる可能性があります。ただし、MRIだけでは進行を除外できないとされており、PSAの経過などと合わせて主治医が決めます(Rajwa 2021、Giganti 2026)。

Q. PRECISEの4や5と言われたら、すぐ治療ですか?
A. 4〜5は進行を示す所見で、再生検や治療の検討につながります。ただしMRIだけで決まるわけではなく、陽性的中率は5割前後です(Caglic 2021、Giganti 2026)。

Q. 病変が小さくなったと言われました。がんが消えたのですか?
A. PRECISE 1〜2は退縮を示しますが、MRIで見えなくなった(スコア1)ことと、がんが消えたことは同じではありません。見えないがんの扱いは今後の課題とされています(Dias 2024)。

Q. 毎回同じ条件でMRIを撮る必要がありますか?
A. 比較のため、最低限の画質を満たすことと、毎回同じ方法で大きさを測ることが勧められています(Englman 2024、Giganti 2020)。

あわせて読みたい:骨軟部腫瘍のWHO分類(2020年・第5版)、膝蓋腱・四頭筋腱断裂の画像診断、リン酸塩尿性間葉系腫瘍の画像診断

参考文献

  1. Moore CM, Giganti F, Albertsen P, et al. Reporting Magnetic Resonance Imaging in Men on Active Surveillance for Prostate Cancer: The PRECISE Recommendations-A Report of a European School of Oncology Task Force. Eur Urol. 2017;71(4):648-655. PubMed
  2. Englman C, Maffei D, Allen C, et al. PRECISE Version 2: Updated Recommendations for Reporting Prostate Magnetic Resonance Imaging in Patients on Active Surveillance for Prostate Cancer. Eur Urol. 2024;86(3):240-255. PubMed
  3. Caglic I, Sushentsev N, Gnanapragasam VJ, et al. MRI-derived PRECISE scores for predicting pathologically-confirmed radiological progression in prostate cancer patients on active surveillance. Eur Radiol. 2021;31(5):2696-2705. PubMed
  4. Giganti F, Leni R, Wagaskar V, et al. Multicentre validation of the PRECISE scoring system for prostate MRI during active surveillance. Eur Radiol. 2026;36(10):7940-7953. PubMed
  5. Rajwa P, Pradere B, Quhal F, et al. Reliability of Serial Prostate Magnetic Resonance Imaging to Detect Prostate Cancer Progression During Active Surveillance: A Systematic Review and Meta-analysis. Eur Urol. 2021;80(5):549-563. PubMed
  6. Schoots IG, Petrides N, Giganti F, et al. Magnetic resonance imaging in active surveillance of prostate cancer: a systematic review. Eur Urol. 2015;67(4):627-36. PubMed
  7. Dias AB, Woo S, Leni R, et al. Is MRI ready to replace biopsy during active surveillance? Eur Radiol. 2024;34(12):7716-7727. PubMed
  8. Giganti F, Stavrinides V, Stabile A, et al. Prostate cancer measurements on serial MRI during active surveillance: it’s time to be PRECISE. Br J Radiol. 2020;93(1116):20200819. PubMed

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