
先に結論:膠肉腫は「膠芽腫の一型」。画像だけで膠芽腫と区別するのは難しい
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | グリア成分と肉腫成分の二相性をもつ悪性脳腫瘍。WHO分類2021では膠芽腫(IDH野生型)の形態学的な亜型 |
| 好発 | テント上(大脳)に単発。60歳前後に多く、側頭葉が最多との報告がある |
| 画像の目安 | 境界がはっきりした壁の厚い不整なリング状増強、壊死・嚢胞、周囲の浮腫。硬膜に接することがある |
| 膠芽腫との違い | 出血は膠肉腫で、嚢胞成分や軟膜・脳室壁への浸潤は膠芽腫で多い傾向。ただし通常のMRIだけでは区別できない |
| 確定診断 | 病理(グリア成分+肉腫成分) |
膠肉腫とは
膠肉腫(gliosarcoma)は、グリア系の腫瘍(膠芽腫に相当する部分)と、肉腫のような紡錘形の細胞の部分が一つの腫瘍の中に混在するまれな悪性脳腫瘍です。WHO分類2021(第5版)では独立した腫瘍ではなく、IDH野生型膠芽腫の形態学的な亜型として位置づけられています(Matute-González 2023、Amer 2022)。
病理では、グリア成分はGFAP(グリア細胞の目印となるたんぱく)が陽性になり、肉腫成分は細網線維(reticulin)の染色で網目状に染まります(Fan 2022)。MDアンダーソンがんセンターの94例では、検査できた検体でreticulin陽性が83.7%、IDH変異は3.8%でした(Amer 2022)。
原発性と二次性
最初から膠肉腫として見つかるものを原発性、先に別の脳腫瘍(多くは膠芽腫)の治療を受けたあとに肉腫成分が現れるものを二次性といいます。二次性膠肉腫や放射線治療後に生じる膠肉腫は非常にまれで、文献をまとめた報告でも二次性12例、放射線誘発性12例にとどまります(Han 2010)。
| 原発性 | 二次性 | |
|---|---|---|
| 意味 | 初発の時点で膠肉腫 | 先行する腫瘍の治療後に肉腫成分が出現 |
| 頻度 | 多数(94例中70例) | 少数(94例中24例) |
| 全生存期間の中央値(病理診断から) | 17.3か月 | 10.2か月 |
(Amer 2022)
どんな人に多い?症状は?
膠肉腫の症状は他の悪性脳腫瘍と同じく特異的なものがなく、頭痛、めまい、手足の麻痺などの脳腫瘍による症状で見つかります(Fan 2022)。年齢は、スペインの21例で中央値62歳、男性12人・女性9人、側頭葉が9例(42.9%)で最多でした(Matute-González 2023)。中国の14例では、男性が64.3%、40〜60歳が57.1%で、全例がテント上の脳実質に単発の腫瘤でした(Fan 2022)。別の17例の報告では平均59歳(27〜74歳)でした(Sampaio 2017)。
画像所見:CT・MRI
CT
CTでは混合吸収値(高い所と低い所が混ざる)の腫瘤が多く、出血を伴うことがあります(Fan 2022)。
MRI
MRIの所見をまとめると次のようになります。
| 項目 | 報告されている所見 |
|---|---|
| 部位・数 | テント上・単発(17例全例、Sampaio 2017/14例全例、Fan 2022) |
| 境界 | 境界明瞭(17例全例、Sampaio 2017) |
| 内部 | T1・T2強調像とも不均一。壊死・嚢胞変性を伴い、出血を認めることもある(Sampaio 2017、Fan 2022) |
| 造影効果 | 辺縁が不整に厚いリング状増強が多い(17例中12例)。壁在結節を伴うことがある(Sampaio 2017、Matute-González 2023、Fan 2022) |
| 硬膜との関係 | 17例中13例で硬膜面に接し、そのうち8例で硬膜が造影された(Sampaio 2017) |
| 拡散強調像 | 充実部で拡散制限(11例中8例、平均ADC 0.64×10-3 mm2/秒)(Sampaio 2017) |
| 灌流画像 | 壊死・嚢胞でない部分で血液量が高い(8例で一貫して)(Sampaio 2017) |
| MRスペクトロスコピー | 脂質・乳酸のピーク、コリンとクレアチンの上昇(3例の報告、Fukuda 2020) |
周囲には浮腫があり、腫瘤による圧排(占拠性効果)を伴います(Fan 2022)。つまり「壁の厚い不整なリング状増強をもつ、境界が比較的はっきりした大脳の腫瘤」で、拡散制限や高い血液量があれば高悪性度の腫瘍を考えます。リング状に造影される病気の全体像は脳でリング状増強効果を呈する疾患の鑑別診断で整理しています。
症例 43歳男性 膠肉腫

引用:Fan H, Yu Y, Du J, et al. Neuropsychiatr Dis Treat. 2022;18:2577-2589 (Figure 5). PubMed(CC BY-NC 3.0、加工なし)
論文の図(造影T1強調像・矢状断)です。腫瘤は不整なリング状に造影され、壁が厚い所や壁在結節が見られます。論文の記載では、この図は頭痛とめまいが6か月続いた43歳男性の例です。
膠芽腫・髄膜腫との見分け方
膠芽腫との比較
ドイツの研究では、膠肉腫56例と、年齢・性別を合わせた膠芽腫56例の術前MRIを比べました。出血があれば膠肉腫を示唆し、嚢胞成分と軟膜・脳室壁への浸潤は膠芽腫で多く見られました。ただし、作成した判別モデルの曲線下面積は学習データで0.919、外部検証データで0.746にとどまり、通常のMRIだけで膠肉腫と膠芽腫を区別することはできないと結論されています(Maurer 2021)。
| 所見 | 膠肉腫で多い | 膠芽腫で多い |
|---|---|---|
| 出血 | 多い | 少ない |
| 嚢胞成分 | 少ない | 多い |
| 軟膜・脳室壁への浸潤 | 少ない | 多い |
(Maurer 2021)
この判別モデルを外部の検証データに当てはめると、正確度は0.67、感度は0.85、特異度は0.5でした(Maurer 2021)。感度が高くても特異度が低いため、「膠肉腫らしい」という画像だけで病名を決めることはできません。一方で、拡散強調像の拡散制限と灌流画像での血液量の高さは、高悪性度の膠腫と共通する所見で、悪性度の評価には役立つとされています(Sampaio 2017)。
膠芽腫そのもののMRI所見は膠芽腫(グリオブラストーマ)のMRI画像所見|WHO分類2021と鑑別で解説しています。
髄膜腫との区別
硬膜に接する腫瘤では、まず髄膜腫を考えます。膠肉腫は脳の中から発生する腫瘍ですが、17例中13例が硬膜面に接していました(Sampaio 2017)。硬膜に接するからといって髄膜腫と決めず、腫瘤の中心が脳の外か中か、壁が厚いリング状か、周囲の脳に浸潤していないかを確認します。髄膜腫の典型的な見え方は髄膜腫とは?良性が多い理由・症状と経過観察、CT・MRI画像所見を参照してください。
膿瘍など、リング状に染まる別の病気
辺縁が造影される病変には膿瘍や転移、脱髄病変もあります。膿瘍は拡散強調像で中心部が強い高信号になる点が手がかりになります。詳しくは脳膿瘍のMRI画像診断|DWI高信号・リング状造影と膠芽腫・転移との鑑別をご覧ください。
転移・予後
膠肉腫は、他の神経膠腫と比べて脳の外へ転移しやすいとされます(Amer 2022)。スペインの21例では脳外への進展は1例のみで遠隔転移はなく(Matute-González 2023)、ブラジルの3例の報告では1例に脊髄方向の播種(drop metastasis)が見られました(Fukuda 2020)。
予後は報告によって幅があります。中国の14例では平均生存期間が約7か月(Fan 2022)、スペインの21例では中央値7か月で、肉眼的全摘出が確認できたのは21例中4例(19%)でした(Matute-González 2023)。MDアンダーソンがんセンターの94例では、全体の生存期間の中央値は16.8か月でした(Amer 2022)。施設や集計方法で数字が異なる点には注意が必要です。
米国の登録データ(SEER)から抽出した原発性膠肉腫498例(2004〜2015年)の報告では、手術後の疾患特異的生存率は、0.5年で71.4%、1年で46.4%、3年で9.8%でした(Feng 2019)。年齢、腫瘍の大きさ、転移の有無、術後の化学療法の有無が予後因子とされています(Feng 2019)。腫瘍の大きさと転移の有無が予後と関連するため、画像でもこれらの記載が大切になります。
読影のチェックリスト
- 大脳(特にテント上)の脳実質内に、境界がはっきりした腫瘤があるか
- 壁の厚い不整なリング状増強や壁在結節があるか
- 出血があるか(T2*強調像・SWIも見る)
- 拡散強調像で充実部の拡散制限、灌流画像で血液量の増加があるか
- 硬膜に接していても、髄膜腫と決めずに脳内への浸潤を探す
- 軟膜・脳室壁・脊髄方向への広がりがないか
- 過去に脳腫瘍の治療歴があれば、二次性膠肉腫も思い浮かべる
- 画像だけで膠芽腫と区別できないことを前提に、病理診断につなげる
よくある疑問(Q&A)
Q. 膠肉腫は膠芽腫より悪いのですか?
A. WHO分類2021では膠芽腫の一型です。膠芽腫より5年生存率が低いとされる報告があります(Amer 2022)。数字は研究ごとに異なりますので、個別の見通しは主治医に確認してください。
Q. MRIで膠肉腫と診断できますか?
A. 画像の特徴はありますが、通常のMRIだけで膠芽腫と区別することはできないとされています(Maurer 2021)。最終的には手術や生検で得た組織の病理診断で決まります(Fan 2022)。
Q. 二次性膠肉腫とは何ですか?
A. 先に別の脳腫瘍の治療を受けたあとに、肉腫成分をもつ腫瘍として再発した状態です。非常にまれで、原発性とは区別して集計されます(Han 2010、Amer 2022)。
Q. 頭痛やしびれが続いています。膠肉腫でしょうか?
A. 症状だけで膠肉腫かどうかは判断できません。気になる症状があれば医療機関を受診してください。
あわせて読みたい:pituicytoma(下垂体後葉の腫瘍)とは?症状・MRI所見と下垂体腺腫との見分け方、ガレン大静脈瘤(VGAM)とは?新生児の心不全・水頭症とMRI・超音波所見
参考文献
- Fan H, Yu Y, Du J, et al. Computed Tomography, Magnetic Resonance Imaging, and Pathological Features of Gliosarcoma. Neuropsychiatr Dis Treat. 2022;18:2577-2589. PubMed
- Maurer CJ, Mader I, Joachimski F, et al. Do gliosarcomas have distinct imaging features on routine MRI? Neuroradiol J. 2021;34(5):501-508. PubMed
- Matute-González M, Mosteiro-Cadaval A, Vidal-Robau N, et al. Clinicopathological and Neuroimaging Features of Primary Gliosarcoma: A Case Series and Review of Literature. World Neurosurg. 2023;178:e480-e488. PubMed
- Amer A, Khose S, Alhasan H, et al. Clinical and survival characteristics of primary and secondary gliosarcoma patients. Clin Neurol Neurosurg. 2022;214:107146. PubMed
- Sampaio L, Linhares P, Fonseca J. Detailed magnetic resonance imaging features of a case series of primary gliosarcoma. Neuroradiol J. 2017;30(6):546-553. PubMed
- Han SJ, Yang I, Tihan T, et al. Secondary gliosarcoma: a review of clinical features and pathological diagnosis. J Neurosurg. 2010;112(1):26-32. PubMed
- Fukuda A, Queiroz LS, Reis F. Gliosarcomas: magnetic resonance imaging findings. Arq Neuropsiquiatr. 2020;78(2):112-120. PubMed
- Feng SS, Li HB, Fan F, et al. Clinical characteristics and disease-specific prognostic nomogram for primary gliosarcoma: a SEER population-based analysis. Sci Rep. 2019;9(1):10744. PubMed
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