脊髄伝導路 3本の道の位置・交差・MRI所見

脊髄の伝導路は、錐体路、脊髄視床路、後索など名前がたくさんあって、どこを通るのか、どこで交差するのかが頭に入りません。画像と症状をつなげて覚えるコツはありますか?
最初は「運動の道(皮質脊髄路)」「痛みと温度の道(脊髄視床路)」「位置覚・振動覚の道(後索)」の3本だけに絞るのがおすすめです。脊髄の断面のどこを通り、どこで交差するかが分かると、症状から障害の場所を絞れて、MRIで見る場所も決まります。

先に結論:まず3本の道を、断面の位置・交差する場所・症状で覚える

伝導路 通る位置(軸位断) 交差する場所 障害されたときの症状
皮質脊髄路(運動) 側索の後方(外側皮質脊髄路) 延髄の下端(錐体交叉) 障害と同じ側の筋力低下・痙縮
脊髄視床路(痛み・温度) 側索の前方〜前外側 入った高さの近くで反対側へ 障害より下の反対側の痛み・温度の低下
後索(位置覚・振動覚) 後方正中寄り(薄束と楔状束) 延髄で反対側へ 障害と同じ側の位置覚・振動覚の低下

脊髄の断面:灰白質と白質を「索」に分けて見る

脊髄の軸位断では、中央の蝶のような形の灰白質(神経細胞の集まり)と、その周りの白質(神経線維の束)があります。白質は後索・側索・前索に分けて呼びます。灰白質の前の部分が前角、後ろの部分が後角で、前角には手足の筋を直接動かす運動神経の細胞があります。

画像診断で重要なのは、3つの伝導路(皮質脊髄路、脊髄視床路、後索)を断面のどこで見分けるかです。これを知っておくと、脊髄の不全型の障害(一部の経路だけが侵される脊髄症候群)で、どの経路が侵されているかを画像と症状から推定できます(Kunam 2018)。

運動の道:皮質脊髄路(錐体路)

大脳の運動野から出て、内包、大脳脚、橋、延髄の錐体を通り、延髄の下端でその大部分が反対側へ交差して、脊髄の側索の後方を下ります。交差した後の経路を外側皮質脊髄路と呼びます。一部の線維は交差せずに前索を下り(前皮質脊髄路)、脊髄の途中で反対側へ移るものもあります。脊髄の中では交差が終わっているため、脊髄の障害では障害と同じ側に麻痺が出ます。脳の中の走行は錐体路(皮質脊髄路)のMRI解剖で位置を確認できます。

痛みと温度の道:脊髄視床路

皮膚や筋から入った痛み・温度の情報は、脊髄の後角で次の神経細胞に乗り換え、入った高さの近くで反対側へ交差して、側索の前方〜前外側を上ります。そのため、脊髄の一側が障害されると、障害と反対側で、障害の高さより少し下から痛み・温度の感覚が低下します。

位置覚・振動覚の道:後索

細かい触覚、位置覚、振動覚の情報は、入った側の後索を上り、延髄の薄束核・楔状束核で乗り換えて、そこで反対側へ交差します。下半身の情報は内側の薄束、上半身の情報は外側の楔状束を通ります。脊髄の中では交差していないため、脊髄の後索の障害では障害と同じ側に位置覚・振動覚の低下が出ます。

障害のパターンと画像:脊髄症候群の早見表

障害される伝導路の組み合わせで、典型的なパターンに分けられます。ここでは、代表的なものを断面の位置と画像で整理します。不全型の脊髄症候群には、後索型・前索型・中心型・Brown-Séquard型、さらに脊髄の下端の円錐症候群と馬尾症候群があります(Kunam 2018)。

パターン 主に侵される場所 症状の特徴 代表的な原因
後索型(dorsal cord) 後索 位置覚・振動覚の低下、ふらつき ビタミンB12欠乏(亜急性連合性脊髄変性症)、神経梅毒など
前索型(ventral cord) 前索・前角・脊髄視床路 筋力低下と痛み・温度の低下。位置覚・振動覚は比較的保たれる 前脊髄動脈の梗塞、前方からの圧迫
中心型(central cord) 中心部(頸髄では上肢の線維が内側) 下肢より上肢の症状が目立つ 頸椎症、外傷、脊髄空洞症など
Brown-Séquard型 脊髄の半側 同側の麻痺・位置覚低下、反対側の痛み・温度低下 外傷、椎間板ヘルニア、腫瘍、炎症
円錐・馬尾 脊髄の下端と神経根 下肢の症状、排尿・排便の障害 椎間板ヘルニア、腫瘍、外傷

後索型:亜急性連合性脊髄変性症のMRI

ビタミンB12(コバラミン)欠乏による脊髄症は、左右対称の感覚障害と位置覚の低下、痙性の麻痺を示します。MRIで最も安定した所見は、頸髄・胸髄の後索、または後索と側索に限られた、左右対称のT2高信号です(Briani 2013)。軸位断では後索が「逆V字」のように見えることがあり、胸髄では左右に対になった結節状の高信号が「双眼鏡」のように見えることがあります(Xiao 2016)。

ただし、MRIでいつも異常が見えるわけではありません。臨床的に確定した36例の検討では、T2強調像で異常があったのは19例(感度52.8%)でした。そのうち18例は脊髄の後方、1例は胸髄の前角にあり、頸髄が12例、胸髄が7例で、逆V字が見えたのは頸髄の5例でした。全例がビタミンB12の補充で臨床的に改善し、2例の経過観察MRIでは病変が小さくなりました(Xiao 2016)。MRIが正常でも、臨床で疑うならあきらめないことが大切です。詳しくは亜急性連合性脊髄変性症とは?、後索が侵される他の病気は脊髄後索障害とは?症状と鑑別にまとめています。

症例 亜急性連合性脊髄変性症のMRI

亜急性連合性脊髄変性症 頸髄MRI T2強調像 後索 ビタミンB12欠乏
引用:Briani C, et al. Nutrients 2013;5:4521-39(Figure 2)。PMC、CC BY 3.0

ビタミンB12欠乏による亜急性連合性脊髄変性症の頸髄MRI(T2強調像)です。正中矢状断(A)では、頸髄の後方に線状の高信号が見られます(黒矢印)。軸位断(B)では、後索が選択的に侵されています。

前索型:前脊髄動脈の梗塞(脊髄梗塞)のMRI

前脊髄動脈の梗塞では、脊髄の前方の領域が侵されます。17例の検討では、前脊髄動脈の梗塞が16例、後脊髄動脈の梗塞が1例でした。前脊髄動脈の梗塞では、矢状断T2で鉛筆の芯のような縦長の高信号が16例(100%)、軸位断T2で「owl eye(ふくろうの目)」と呼ばれる前角の左右対称の高信号が6例(37.5%)に見られました。拡散の制限(DWIの高信号)は8例、造影効果は2例にありました。症状は、痛み・温度の感覚が低下し(解離性感覚障害)、手足の筋力が低下する形で現れました(Yadav 2018)。くわしくは脊髄梗塞のMRI画像診断を参考にしてください。

側索の病変:外側皮質脊髄路が侵される病気

側索が侵される病気では、痙性の麻痺が出ます。HTLV-1関連脊髄症(HAM)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、鑑別は脊髄側索を侵す疾患の鑑別診断で整理しています。

MRIを読む順番:伝導路から考える

  • まず軸位断:病変が断面のどこにあるか(後索、側索、前索、中心、半側)を見る。矢状断だけでは、どの伝導路かが分からない。
  • 縦の長さを見る:何椎体分か。1〜2椎体なら局所の圧迫や小さな梗塞、長い病変は炎症・梗塞・代謝性などを考える。
  • 左右差を見る:対称か片側か。左右対称な後索の病変は代謝性や変性、半側の病変はBrown-Séquard型を考える。
  • 脊髄の太さを見る:腫大、萎縮、圧迫による変形。
  • 症状との対応を確認:画像で見た位置と、症状(同側か反対側か、運動か感覚か)が合っているか。合わない場合は、もう一段上の高さ(脳や脳幹)も確認する。

後脊髄動脈の梗塞はまれです。上記の17例では後脊髄動脈の梗塞は1例で、同じ側の上肢の筋力低下と感覚障害があり、MRIでは頸髄(C2〜C7)の左後方の傍正中の三角形の領域にT2高信号を認めました(Yadav 2018)。後索の位置と一致しており、「どの索が侵されたか」を断面で読む練習になります。

拡散テンソル画像(DTI)による伝導路の評価も研究が進んでいます。脊髄の白質線維は水の動きに方向性(異方性)があり、外傷による障害部位ではその指標(FA)が一貫して低下します。ただし、撮像条件や解析が標準化されておらず、日常診療への導入は課題があるとされています(Nanda 2022)。

見落としやすいところ・よくある間違い

間違いやすい点 考え方
痛みの低下は障害の同じ側 脊髄視床路は入った高さの近くで交差するため、脊髄の一側の障害では反対側に出る
後索の症状は反対側 後索は延髄まで交差しないため、脊髄の障害では同じ側に出る
矢状断で異常がなければ脊髄は正常 軸位断で後索や前角だけに病変が見えることがある。T2は軸位断も忘れずに確認する
MRIが正常ならビタミンB12欠乏症ではない 亜急性連合性脊髄変性症では、T2で異常を認めたのは約半数だった(Xiao 2016)
髄内の高信号=炎症 梗塞、代謝性、圧迫、変性でも出る。分布(どの索か)と縦の長さ、経過で考える

よくある疑問(Q&A)

Q. 脊髄の障害で、なぜ痛みの低下は反対側、位置覚の低下は同じ側に出るのですか?
A. 痛み・温度の線維は脊髄の中で反対側へ交差し、位置覚・振動覚の線維は延髄まで交差せずに同じ側を上るためです。この違いが、Brown-Séquard型(同側の麻痺と位置覚の低下、反対側の痛み・温度の低下)の症状の形を作ります(Kunam 2018)。

Q. 亜急性連合性脊髄変性症のMRIは、いつも「逆V字」ですか?
A. 逆V字は特徴的な所見ですが、いつも見えるわけではありません。36例の検討では、逆V字が見えたのは頸髄の5例でした(Xiao 2016)。左右対称に後索や側索がT2で高信号になるのが基本の所見です(Briani 2013)。

Q. 脊髄梗塞の特徴的な画像所見は?
A. 前脊髄動脈の梗塞では、矢状断T2で縦長の鉛筆の芯のような高信号、軸位断T2でowl eye(前角の左右対称の高信号)が特徴です(Yadav 2018)。拡散の制限や造影効果は一部の例でのみ見られました。

Q. 手足のしびれや力が入りにくい状態が続いています。画像検査はすぐ必要ですか?
A. しびれ、力の入りにくさ、歩きにくさなどの症状が続くときは、医療機関を受診して相談してください。急に出た場合や、排尿・排便の症状を伴う場合は、早めの受診が大切です。

あわせて読みたい:脳神経の解剖、第4脳室の解剖、辺縁系・Papez回路の解剖

参考文献

  1. Kunam VK, Velayudhan V, Chaudhry ZA, et al. Incomplete Cord Syndromes: Clinical and Imaging Review. Radiographics. 2018;38(4):1201-1222. PubMed
  2. Yadav N, Pendharkar H, Kulkarni GB. Spinal Cord Infarction: Clinical and Radiological Features. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018;27(10):2810-2821. PubMed
  3. Briani C, Dalla Torre C, Citton V, et al. Cobalamin deficiency: clinical picture and radiological findings. Nutrients. 2013;5(11):4521-39. PubMed
  4. Xiao CP, Ren CP, Cheng JL, et al. Conventional MRI for diagnosis of subacute combined degeneration (SCD) of the spinal cord due to vitamin B-12 deficiency. Asia Pac J Clin Nutr. 2016;25(1):34-8. PubMed
  5. Nanda G, Jain P, Suman A, et al. Role of diffusion tensor imaging and tractography in spinal cord injury. J Clin Orthop Trauma. 2022;33:101997. PubMed

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