
先に結論:移植からの時期(生着前・生着後早期・晩期)を軸に、原因別に画像パターンを当てはめる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 頻度 | 同種移植の成人888人で、1年間の主要な中枢神経合併症の累積発生率は14.8%(Mannina 2020) |
| 時期の区分 | 生着前(30日未満)、生着後早期(30〜100日)、生着後晩期(100日超)(Server 2017) |
| よくある原因 | 代謝性、薬剤性神経毒性、脳血管障害、感染、悪性病変など(Mannina 2020) |
| 画像の例 | 頭頂後頭葉の血管性浮腫(PRES)、海馬・扁桃体(HHV-6)、リング状造影(膿瘍)、多発する造影病変(PTLD) |
| 注意 | 原因が分からない例も約3割ある。画像は臨床・髄液・血液検査と合わせて判断する |
移植後の中枢神経合併症とは
造血幹細胞移植(HSCT)や臓器移植のあとには、神経合併症が移植を受けた人の30〜60%にみられると整理されています(Server 2017)。移植前の化学療法や全身放射線照射、免疫抑制薬、生着までの免疫低下、GVHDなど、脳に負担をかける要因が重なるためです。
同種移植を受けた成人888人の単施設の研究では、1年時点での主要な中枢神経合併症の累積発生率は14.8%(95%信頼区間12.3〜17.2%)でした。合併症のあった132人の内訳は、代謝性36人、薬剤性神経毒性26人(うちシクロスポリン14人)、脳血管障害11人(虚血8人・出血3人)、感染9人、精神症状9人、悪性病変9人で、原因が分からなかった例が37人(28%)ありました(Mannina 2020)。中枢神経合併症のある人は、ない人より全生存率が有意に低く、移植関連の死亡も多いと報告されています(Mannina 2020)。
別の302人の同種移植の研究では、すべての中枢神経合併症の累積発生率は100日で18%、1年で23%、PRESは100日で6%、1年で7%でした。発作は、最初の100日の中枢神経イベントの37%、PRESの73%にみられました(Siegal 2007)。けいれんで見つかる例が多いことは、画像検査の依頼理由としても重要です。
読み方の軸:移植からの時期
移植後の免疫状態は時間とともに変わるため、合併症は時期によって出やすいものが違います。画像診断では、移植後の時期を次の3つに分けて考えます(Server 2017)。
| 時期 | 移植からの日数 | 考える病態の目安 |
|---|---|---|
| 生着前 | 30日未満 | 薬剤や代謝の障害、PRES、出血など |
| 生着後早期 | 30〜100日 | PRES、ウイルス感染(HHV-6など)、薬剤性、GVHD |
| 生着後晩期 | 100日超 | 日和見感染、慢性GVHD、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、二次性の腫瘍 |
この表はあくまで目安で、時期が重なる病態も少なくありません。たとえばGVHDが関わる中枢神経病変は、発症の中央値が移植後149日で、100日より前の発症が44%と、早期にも晩期にもみられます(Lambert 2025)。
原因別の画像パターン
1. PRES(可逆性後白質脳症症候群):最もよくある画像診断
小児の移植後に神経症状で画像検査を受けた130人の検討では、中枢神経合併症があった23人(17.6%)のうち、14人(60.9%)がPRESでした。残りは白質脳症5人、急性硬膜下血腫3人、真菌感染1人でした(Atça 2021)。PRESの78.5%(11/14)は典型的な頭頂後頭葉の血管性浮腫で、前頭葉だけ・小脳虫部だけ・基底核だけの非典型例も1例ずつ、拡散低下を示した例が2例ありました(Atça 2021)。非典型なMRI像でもPRESを否定しないことが要点とされています(Atça 2021)。PRESの基本はPRESにまとめています。
症例 11歳男児 移植後のPRES(論文の図)

引用:Atça AÖ, Erok B, Aydoğdu S, et al. BMC Pediatr. 2021;21:455 (Figure 1). PubMed(CC BY 4.0、加工なし)
論文の図です。急性骨髄性白血病で同種移植を受けて3か月後に、けいれんと視覚の障害が出た11歳男児です。a・bのFLAIR像で、頭頂葉と後頭葉に左右対称の皮質・皮質下の高信号があり、皮質灰白質の関与が目立ちます。c・dの拡散強調像とADC像の高信号はT2 shine-throughで、真の拡散低下ではありません。eのフォローアップのFLAIR像では、3か月後に後頭葉の血管性浮腫がすっかり消えています。
2. HHV-6による辺縁系脳炎:海馬と扁桃体
移植後にみられるウイルス性脳炎で、画像の特徴がはっきりしているのがHHV-6です。成人6人のMRI研究では、全員で海馬・扁桃体に異常があり、ほかの部位は侵されていませんでした。発症0〜2日の早期にはFLAIR高信号(2/3)と拡散強調像の高信号・ADC低下(2/2)、3〜30日の中期にはT1低信号(5/6)とT2・FLAIR高信号(4/6〜5/6)、30日を超えると信号異常が消えて萎縮が出ました(4/4)(Noguchi 2006)。
移植後急性辺縁系脳炎(PALE)の9人の報告では、前向性健忘、SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)、軽度の髄液細胞増多、側頭部の脳波異常が共通し、MRIでは鉤、扁桃体、嗅内野、海馬がT2・FLAIR・拡散強調像で高信号でした。髄液のHHV6のPCRは9人中6人で陽性でした(Seeley 2007)。「移植後に記憶がおかしい・けいれん+内側側頭葉の信号異常」はHHV-6を思い浮かべる組み合わせです。詳しくはHHV6脳炎のMRI画像所見を参照してください。
3. 薬剤性神経毒性
免疫抑制薬などによる神経毒性も大きな割合を占めます。上の888人の研究では、薬剤性神経毒性が26人で、そのうち14人がシクロスポリンによるものと考えられました(Mannina 2020)。画像の現れ方はさまざまなため、薬剤の種類や経過、ほかの原因の除外と合わせて判断します。化学療法薬による白質の障害はメトトレキサート(MTX)脳症のMRIも参考になります。なお、投与の量や中止の判断は主治医の指示に従ってください。
4. 感染症:膿瘍・日和見感染
免疫が低下した時期には、細菌・真菌・ウイルス・原虫による感染が起こります。小児の症例報告では、同種移植の5か月後に頭痛と意識障害をきたした9歳女児で、左内側側頭部に周囲の浮腫を伴う嚢胞状の病変、前頭葉の円蓋部にも同様の病変があり、造影でリング状に増強されて脳膿瘍に合致すると記載されています(Atça 2021)。免疫低下例のJCウイルス感染はPMLを参照してください。
症例 9歳女児 移植後の脳膿瘍に合致する病変(論文の図)

引用:Atça AÖ, Erok B, Aydoğdu S, et al. BMC Pediatr. 2021;21:455 (Figure 7). PubMed(CC BY 4.0、加工なし)
論文の図です。同種移植の5か月後に頭痛と意識障害をきたした9歳女児です。aのT2強調像で左内側側頭部に周囲の浮腫を伴う嚢胞状の病変があり、bのT1強調像では低信号です。c・dの造影T1強調像では同じ病変と前頭葉円蓋部の別の病変がリング状に造影され、脳膿瘍に合致します。
5. 移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)
β-サラセミアで移植を受けた4人の中枢神経原発PTLDでは、移植から診断までの中央値は5.5か月で、脳内の病変は多発して、テント上下にまたがり、均一または辺縁が造影されました。3人がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、1人が形質細胞過形成でした(Yang 2024)。移植後に新しい造影病変が出たときは、感染と並んでPTLDを鑑別に入れます。PTLDの全身の画像は移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)を参照してください。
6. 白質脳症と出血
小児の130人の検討では、白質脳症が5人で、T2強調像で脳室周囲白質の高信号が3か月後も残る例がありました。急性硬膜下血腫は3人でした(Atça 2021)。血小板が少ない時期は、頭蓋内出血も忘れずに探します。
7. 中枢神経のGVHD
中枢神経のGVHD(CNS-GVHD)は、まだ分かっていないことの多い病態です。可能性のある66人の検討では、最初の症状は認知機能の低下41%、麻痺21%、意識の変化20%でした。脳MRIで症状に合う異常があったのは57%、CTではわずか7%で、髄液の白血球増多は56%でした(Lambert 2025)。CTが正常でも否定できません。
| 病態 | 画像の手がかり | 鑑別のコツ |
|---|---|---|
| PRES | 頭頂後頭葉の血管性浮腫。非典型像もある | けいれん、免疫抑制薬、血圧、フォローで消える |
| HHV-6脳炎 | 海馬・扁桃体(内側側頭葉) | 健忘、けいれん、髄液・血液のウイルス検査 |
| 脳膿瘍 | リング状造影、周囲の浮腫 | 血液・髄液検査、拡散強調像 |
| PTLD | 多発・均一または辺縁の造影 | 生検、EBウイルスの検査 |
| 白質脳症 | 脳室周囲白質のT2高信号 | 治療歴(全身放射線照射・化学療法) |
| CNS-GVHD | MRIで異常、CTはほぼ正常 | 他の原因の除外、髄液 |
画像を読むときのチェックリスト
- 移植からの日数(30日・100日)と免疫状態(生着、GVHD、免疫抑制薬)を確認したか
- けいれんで見つかった場合、PRESを最初に考えたか(血管性浮腫の分布、拡散強調像・ADC)
- 海馬・扁桃体に左右の信号異常はないか(HHV-6)
- 造影で、リング状の病変や多発する病変はないか(膿瘍・PTLD)
- 出血(硬膜下血腫・脳内出血)をCT・T2*/SWIで確認したか
- CTが正常でも、症状が続くときはMRIを行ったか
- 前回の画像と比べて、変化(消える・広がる)はどうか
よくある疑問(Q&A)
Q1. 移植後の頭部MRIは、症状が出てから撮りますか?
多くは、けいれん・意識障害・頭痛・視覚の異常などの症状をきっかけに撮ります。小児の検討でも、症状があって画像検査を受けた130人のうち17.6%に中枢神経合併症が見つかっています(Atça 2021)。症状が出たときは早めに医療機関へ連絡してください。
Q2. PRESは元に戻りますか?
名前のとおり可逆性のことが多く、上の症例でも3か月後に後頭葉の血管性浮腫が消えました(Atça 2021)。ただしPRESの重症例や、拡散低下を伴う例もあり、経過の確認が必要です。
Q3. CTで異常がなければ、脳に問題はありませんか?
いいえ。CNS-GVHDの検討では、MRIで異常があった人は57%でしたが、CTで異常があったのは7%でした(Lambert 2025)。症状が続くときは、CTが正常でもMRIが勧められます。
Q4. 原因が分からないことはありますか?
あります。888人の検討では、原因が不明だった例が28%でした(Mannina 2020)。画像診断は、臨床所見、髄液や血液の検査、経過と合わせて、診断を絞り込む役割をもちます。
あわせて読みたい:Fabry病(ファブリー病)の脳MRI、小児の白質ジストロフィー・代謝疾患のMRI
参考文献
- Server A, Bargalló N, Fløisand Y, et al. Imaging spectrum of central nervous system complications of hematopoietic stem cell and solid organ transplantation. Neuroradiology. 2017;59(2):105-126. PubMed
- Mannina D, Berneking L, Both A, et al. Major central nervous system complications after allogeneic stem cell transplantation: A large retrospective study on 888 consecutive adult patients. Eur J Haematol. 2020;105(6):722-730. PubMed
- Siegal D, Keller A, Xu W, et al. Central nervous system complications after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation: incidence, manifestations, and clinical significance. Biol Blood Marrow Transplant. 2007;13(11):1369-79. PubMed
- Atça AÖ, Erok B, Aydoğdu S. Neuroimaging findings of posterior reversible encephalopathy syndrome (PRES) following haematopoietic stem cell transplantation in paediatric recipients. BMC Pediatr. 2021;21(1):445. PubMed
- Noguchi T, Mihara F, Yoshiura T, et al. MR imaging of human herpesvirus-6 encephalopathy after hematopoietic stem cell transplantation in adults. AJNR Am J Neuroradiol. 2006;27(10):2191-5. PubMed
- Seeley WW, Marty FM, Holmes TM, et al. Post-transplant acute limbic encephalitis: clinical features and relationship to HHV6. Neurology. 2007;69(2):156-65. PubMed
- Lambert N, Forte F, El Moussaoui M, et al. CNS manifestations in acute and chronic graft-versus-host disease. Brain. 2025;148(4):1122-1133. PubMed
- Yang X, Deng X, Wu M, et al. Neuroimaging features of primary central nervous system post-transplantation lymphoproliferative disorder following hematopoietic stem cell transplant in patients with β-thalassemia: a case series and review of literature. Insights Imaging. 2024;15(1):40. PubMed
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