先に結論:PML(進行性多巣性白質脳症)とは
- PML(Progressive Multifocal Leukoencephalopathy)は、多くの人が体内に持っているJCウイルスが、免疫が弱ったときに脳で増え、神経を包む髄鞘をつくる細胞を壊して起こる脳の病気(白質脳症)です
- HIV感染症(エイズ)、白血病・リンパ腫、免疫抑制薬や生物学的製剤(ナタリズマブ・リツキシマブなど)を使っている人に起こります。手足のまひ・ことばや視野の障害・認知機能低下などが週〜月の単位で進みます
- MRIでは、皮質のすぐ下(皮質下)から広がる左右非対称の白質病変がT2強調像・FLAIRで高信号、T1強調像で低信号になり、原則として造影されず、むくみ(圧排)もないのが特徴です。診断は髄液のJCウイルスPCRなどで行います
- 治療の中心は免疫の回復(HIVの治療、原因薬の中止など)で、近年の1年生存率は約6割です(Mainardi 2026)
- 免疫を抑える薬を使っている人では、症状が出る前のMRIで見つかることがあり、症状がないうちに見つかった方が経過がよいと報告されています(下の節)
進行性多巣性白質脳症(PML:progressive multifocal leukoencephalopathy)
- JCウイルスによる日和見感染。オリゴデンドロサイトに感染して脱髄を起こす。
- 特にHIV陽性患者で、U-fiberを含む白質病変を認めたら、PMLを考える。
- CD4が低い未治療のHIV感染症で多いが、抗HIV療法(ART)中でも起こりうる(Mainardi 2026)。
- HIV陽性以外に、リンパ腫、白血病、免疫抑制剤使用例(リツキシマブ、ナタリズマブ、エファリズマブ)などに合併する。
- T1WIで低信号を呈する点は特徴である。
- 免疫再構築により一過性に増悪し、造影効果を呈したり、腫瘤性病変を呈することがある。予後は非常に不良であるが、
- HIV例では強力な抗HIV療法により予後の延長例もある。
- 鑑別診断はHIV脳症、悪性リンパ腫、トキソプラズマ、CJD、神経核内封入体病(NIID)。
PMLの画像所見
- 病変は皮質下白質から深部白質へ進展し、進行とともに萎縮する。皮質下U-fiberを侵す。非対称性。皮質下に沿った信号をscalloped appearanceと呼んだり、広範な皮質下のT2WI淡い高信号+多数の分離した高信号をMilky way appearanceと呼ぶことがある。
- T1WIで低信号(脱髄)が特徴的。T2WIで高信号。
- DWIでは、境界のはっきりしない高信号の辺縁(エッジ)と、低信号の中心(コア)というパターンが典型的とされる(Godi 2017)。
- 原則として、造影効果やmass effectはない。診断は米国神経学会(AAN)のコンセンサス基準に沿い、臨床症状と典型的な画像所見に加えて髄液JCウイルスPCR陽性で確定(definite PML)とされる。なお同基準には病理による確定の道筋もあり、脱髄・奇怪な(bizarre)アストロサイト・腫大したオリゴデンドログリア核という組織学的三徴に、JCウイルスの証明を組み合わせて確定します。髄液PCRが陰性でも臨床的にPMLが強く疑われる場合は、生検による組織診断が検討されます。
- 免疫再構築により一過性に増悪し、増強効果がみられることもある。
免疫を抑える薬・生物学的製剤を使っているときに疑うこと
PMLはHIV感染症だけの病気ではありません。HIV関連の割合は、イタリアの456例では1987〜1996年の99%から2013〜2024年の43%まで減り、かわりに年齢が高く、女性が多く、CD4が高い例が増えました(Mainardi 2026)。多発性硬化症のナタリズマブ、リンパ腫に使うリツキシマブ、乾癬に使われたエファリズマブなどのモノクローナル抗体薬でも報告されています(Sharma 2022)。血液疾患、膠原病、臓器移植、原発性免疫不全でも起こります(Bag 2010)。

- MRIは症状より早く病変を見つけます。ナタリズマブで治療中の多発性硬化症では、MRIで症状が出る数か月前から病変が見えることがあり、FLAIRが最も感度が高いとされます(Wattjes 2014)。
- 症状がないうちに診断された方が経過がよいことが示されています。ナタリズマブ関連PML 372例の検討では、診断時に症状がなかった30人のうち96.7%、症状があった342人では75.4%が生存していました(Dong-Si 2014)。診断時の病変は、症状がなかった群では1つの葉に限られるもの(unilobar)が68%でしたが、症状があった群では37%で、広範なものが11%に対して40%でした。
- HIVのPMLに比べ、ナタリズマブ関連PMLのMRI像は不均一で時間とともに変わり、炎症の所見や皮質の灰白質の病変が見られることがあります(Wattjes 2014)。
- 早期の目印として、T2強調像で小さな点状の高信号が集まる像(点状パターン)が現れ、のちに大小の卵円形の病変がmilky way appearanceになります。SWIでの低信号が早期の目印になりうるとも報告されています(Mori 2025)。
- 早期は髄液のJCウイルスDNAが少なく、薬剤関連の例では超高感度のPCR検査が必要になることがあります(Mori 2025)。
白質脳症の鑑別:PMLと見分けたい病気
| 疾患 | PMLとの見分け方(MRI) |
|---|---|
| PML | 皮質下U-fiberを含む非対称な白質病変。T1強調像で低信号、造影効果・mass effectは原則なし |
| HIV脳症 | 脳室周囲の左右対称でびまん性の淡い高信号。U-fiberは保たれ、T1低信号は目立たない |
| 悪性リンパ腫 | 造影される腫瘤でmass effectを伴う。DWIで高信号(拡散制限) |
| トキソプラズマ症 | 基底核などのリング状に造影される多発病変。浮腫を伴う |
| CJD | DWIで大脳皮質(リボン状)や線条体の高信号。白質病変は目立たない |
| NIID | DWIで皮髄境界に沿った線状の高信号 |
PMLの治療と予後(余命)
確立した抗ウイルス薬はなく、治療の基本は免疫の回復です。HIV感染症では抗HIV療法(ART)を行い、免疫抑制薬などが原因ならその薬を中止します。
イタリアの456例の全国コホートでは、1年生存率は1987〜1996年の23.8%から2013〜2024年には59.2%に改善しましたが、依然として予後不良な病気です。背景疾患別では、ナタリズマブで治療中の多発性硬化症が93.8%と高く、ARTを受けていないHIV感染症では11.9%でした(Mainardi 2026)。
免疫を抑える治療中で、ことばや手足の動き、見え方の異常などが数週間かけて進む場合は、早めに主治医に相談してください。
症例 30歳代男性 2か月にわたる進行性の左上下肢の衰弱。 HIV陽性でART療法を受けている

右前頭頭頂白質に広範に信号異常(T2WI高信号、T1WI低信号)を認めます。
異常信号はU-fiberに及ぶが皮質は保たれています。
また造影効果は認めていません。
典型的な進行性多巣性白質脳症(PML)を疑う所見です。
JCウイルスが検出されました。
引用:Radiopaedia
PMLでよくある疑問(Q&A)
Q. 免疫を抑える治療中に、MRIで白質の異常が出たら何を疑いますか。
A. 皮質のすぐ下から広がる、非対称でT1強調像で低信号の病変があればPMLを考え、髄液のJCウイルスPCRなどで確かめます。症状が出る前にMRIで見つかることがあるため、リスクの高い治療では定期的なMRIが勧められています(Major 2018、Wattjes 2014)。
Q. PMLは治りますか。
A. 確立した抗ウイルス薬はなく、免疫の回復が治療の中心です(Sharma 2022)。1年生存率はナタリズマブで治療中の多発性硬化症で93.8%、ART中のHIV感染症で55%、未治療のHIV感染症で11.9%と、背景によって大きく違います(Mainardi 2026)。
あわせて読みたい:トキソプラズマ脳症とは?画像診断のポイントは?
参考文献:Jpn J Radiol . 2009 Feb;27(2):69-77.
- Berger JR, Aksamit AJ, Clifford DB, et al. PML diagnostic criteria: consensus statement from the AAN Neuroinfectious Disease Section. Neurology. 2013;80(15):1430-8. PubMed
- Bag AK, Curé JK, Chapman PR, et al. JC virus infection of the brain. AJNR Am J Neuroradiol. 2010;31(9):1564-76. PubMed
- Mainardi I, Gerevini S, Tarantino A, et al. Changing Clinical and Laboratory Characteristics of Progressive Multifocal Leukoencephalopathy: A Retrospective National Cohort Study. Clin Infect Dis. 2026;82(4):607-617. PubMed
- Godi C, De Vita E, Tombetti E, et al.. High b-value diffusion-weighted imaging in progressive multifocal leukoencephalopathy in HIV patients. Eur Radiol. 2017;27(9):3593-3599. PubMed
- Wattjes MP, Barkhof F. Diagnosis of natalizumab-associated progressive multifocal leukoencephalopathy using MRI. Curr Opin Neurol. 2014;27(3):260-70. PubMed
- Dong-Si T, Richman S, Wattjes MP, et al.. Outcome and survival of asymptomatic PML in natalizumab-treated MS patients. Ann Clin Transl Neurol. 2014;1(10):755-64. PubMed
- Mori K, Kurokawa M, Harada M, et al.. Overview of MRI findings in progressive multifocal leukoencephalopathy. Jpn J Radiol. 2025;43(12):1908-1925. PubMed
- Sharma K, Tolaymat S, Yu H, et al.. Progressive multifocal leukoencephalopathy in anti-CD20 and other monoclonal antibody (mAb) therapies used in multiple sclerosis: A review. J Neurol Sci. 2022;443:120459. PubMed
- Major EO, Yousry TA, Clifford DB. Pathogenesis of progressive multifocal leukoencephalopathy and risks associated with treatments for multiple sclerosis: a decade of lessons learned. Lancet Neurol. 2018;17(5):467-480. PubMed
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