骨軟部腫瘍のWHO分類 2020年・第5版の変更点と画像診断

骨や筋肉のしこりの画像診断で「WHO分類」という言葉が出てきます。画像を読むときに、これは何の役に立つのでしょうか。
WHO分類は、骨や軟部(筋肉・脂肪・神経・血管などの柔らかい組織)にできる腫瘍の「名前と性格」を決める病理の分類です。2020年に第5版が出ました。画像で組織型そのものは決まりませんが、病理の分類を知っておくと、画像の何を書けば治療方針に役立つかが見えてきます。変更点を画像診断の目線で整理します。

先に結論:WHO分類(2020年・第5版)は「良性・中間・悪性」の4区分が土台。画像診断医は、区分ごとに「画像で何を書くか」を押さえておく

項目 ポイント
何の分類か 骨・軟部腫瘍を、似ている正常組織(脂肪・軟骨・骨など)ごとに分け、性格まで示す病理分類。第5版は2020年刊行
4つの区分 良性、中間(局所侵襲性)、中間(まれに転移)、悪性
2020年の主な変化 遺伝子の異常を取り込んだ再編。未分化小円形細胞肉腫の新しい章、軟部腫瘍の新しい名前、軟骨腫瘍の扱いの整理
画像診断で大切なこと 大きさ・深さ・骨との関係・隔壁や結節などを具体的に書く。組織型は画像だけでは決まらないので、病理・整形外科との合議が前提

WHO分類とは何か

骨や軟部にできる腫瘍は種類がとても多く、まれです。肉腫の発生率は人口10万人あたり年5例ほどで、軟部の悪性腫瘍だけで約70の亜型に分けられます。病理診断そのものが難しく、診断が食い違う割合は20〜30%という報告もあります(Sbaraglia 2021)。そこで、世界共通の「ものさし」として使われているのがWHO分類(WHO Classification of Tumours)です。

骨と軟部腫瘍は、2020年刊行の第5版で1冊にまとめられました。編集委員には、病理医や遺伝学者に加えて臨床医も参加しました(Sbaraglia 2021)。病理の分類ですが、画像診断医を含む多職種が関わって作られています。

4つの区分:良性・中間・悪性

WHO分類では、腫瘍を「どの組織に似ているか」(脂肪、線維、軟骨、骨、血管など)で分けたうえで、振る舞いに応じて次の区分に整理します(Sbaraglia 2021)。

区分 意味 例
良性 切除すれば再発しにくく、転移しない 脂肪腫、結節性筋膜炎(軟部)
中間(局所侵襲性) 周囲に染み込むように広がり、再発しやすい。転移はまれ デスモイド型線維腫症、異型脂肪腫様腫瘍(軟部)、骨芽細胞腫、異型軟骨性腫瘍(骨)
中間(まれに転移) 局所の再発に加えて、まれに転移する 叢状線維組織球性腫瘍(軟部)、軟骨芽細胞腫(骨)
悪性 転移する力が高く、局所の破壊も強い 脂肪肉腫(脱分化型など)、骨肉腫、グレード2・3の軟骨肉腫

骨巨細胞腫は、局所侵襲性の経過をとるものと、まれに転移するものがある腫瘍です(Ahlawat 2020・骨)。「中間」は「良性でも悪性でもない曖昧な群」ではなく、再発しやすいので切除範囲や経過観察の計画が必要な群と考えると、画像診断の役割が分かりやすくなります。

骨軟部腫瘍のWHO分類の4区分:良性(脂肪腫・結節性筋膜炎)、中間・局所侵襲性(デスモイド型線維腫症・異型脂肪腫様腫瘍・骨芽細胞腫・異型軟骨性腫瘍)、中間・まれに転移(叢状線維組織球性腫瘍・軟骨芽細胞腫)、悪性(脂肪肉腫・骨肉腫・軟骨肉腫)

画像診断医が分類を知っておく理由は、病期分類(AJCCやEnneking分類)に組織学的グレードが含まれるからです。皮質の関与、関節への浸潤、神経血管の巻き込みなど、手術計画に重要な所見はMRIで評価するのが適しています(Murphey 2021)。軟部腫瘍の画像診断全体は軟部腫瘍の画像診断と鑑別、骨腫瘍は骨腫瘍の画像診断(年齢・部位・レントゲン所見で考える鑑別)にまとめています。

2020年版(第5版)の主な変化

軟部腫瘍で変わった点

2020年版の軟部腫瘍では、新しい腫瘍名が加わり、古い名前が整理されました(Sbaraglia 2021)。画像診断で出会いやすいものを表にします。

変更 内容
異型紡錘形細胞・多形脂肪腫様腫瘍(新) 以前は「紡錘形細胞脂肪肉腫」などと呼ばれていたものを含む。いずれも良性として扱われ、手術で切除する。浅い部位にできやすく、MDM2・CDK4遺伝子の増幅が原因ではない
粘液型多形脂肪肉腫(新) きわめてまれな悪性腫瘍。小児・若年者に多く、縦隔が最も多い。早期に肺や骨に転移することがある
悪性線維性組織球腫の廃止 2000年代初めまでは肉腫の診断の約50%を占めていた名前。現在は、典型例は「未分化多形肉腫」と呼ぶ
血管周皮腫の廃止 多くは孤立性線維性腫瘍と診断される。予後は年齢・大きさ・深さ・核分裂数で評価する
悪性黒色性神経鞘腫(名称変更) 「黒色性シュワン細胞腫」が、悪性の経過をとる腫瘍として「悪性」に位置づけ直された。脊髄や自律神経など正中の神経に多く、長期の経過観察が勧められる
NTRK再構成紡錘形細胞腫瘍(新興) NTRK阻害薬の対象となる可能性があることから「新興の腫瘍」として収載。小児・若年者の四肢に多い

画像診断で気をつけたいのは、新しく加わった腫瘍の多くは、画像の特徴がまだ十分に報告されていないことです(Bansal 2021)。「この名前のときはこの画像」と覚えるのではなく、大きさ・深さ・内部の脂肪や石灰化・造影のされ方といった一般的な項目を丁寧に書いておくのが現実的です。

また、脂肪性の腫瘍では「異型脂肪腫様腫瘍(ALT)」と「高分化型脂肪肉腫」は組織学的には同じものです。切除しきれない縦隔や後腹膜にできたものを高分化型脂肪肉腫と呼ぶ、という使い分けがあります(Ahlawat 2020・軟部)。画像の見分け方は異型脂肪腫様腫瘍(ALT)・高分化脂肪肉腫(WDL)のMRI・CT画像で詳しく解説しています。

未分化小円形細胞肉腫の新しい章

2020年版で目立つ変更が、骨と軟部をまたぐ「未分化小円形細胞肉腫」の新しい章です。以前はEwing肉腫ファミリーやEwing様肉腫と呼ばれていたものが、遺伝子の異常にもとづいて4つに分けられました(Sbaraglia 2021、Mori 2026)。

種類 画像の傾向(Mori 2026)
Ewing肉腫 小児・若年者。虫食い状の溶骨性破壊、侵襲的な骨膜反応、大きな軟部腫瘤
CIC再構成肉腫 境界明瞭で分葉状の軟部腫瘤。内部に広い壊死と出血があり、石灰化はない
BCOR遺伝子異常を伴う肉腫 思春期の男児に多い。長管骨や骨盤の溶骨性または硬化性病変で、骨外の成分に石灰化を伴うことが多い
EWSR1-非ETS融合遺伝子を伴う肉腫 長管骨の骨幹部で、皮質の膨隆と皿状の表面侵食を伴う溶骨性病変

この分け方が大切なのは、治療への反応や予後が違うためです。CIC再構成肉腫は標準的なEwing肉腫の治療への反応が乏しく、BCOR-CCNB3肉腫はEwing肉腫より予後が良い可能性があると整理されています(Mori 2026)。画像だけで区別することはできませんが、「若年者の軟部の分葉状腫瘤で、壊死・出血が目立ち石灰化がない」といった所見は、病理に追加の遺伝子検査を依頼する手がかりになります。

骨腫瘍で変わった点

骨腫瘍でも、遺伝子の異常を取り込んだ再分類と、新しい腫瘍の追加が行われました(Hwang 2023)。画像診断の現場で影響が大きいのが、軟骨性腫瘍の扱いです。

  • 異型軟骨性腫瘍(ACT):四肢の長管骨・短管骨にできる低グレードの軟骨性腫瘍で、「中間(局所侵襲性)」に分類されます。
  • 軟骨肉腫グレード1(CS1):組織像はACTと同じですが、体幹(骨盤や頭蓋底を含む)にできたものにこの名前を使い、「悪性」に分類されます。体幹の軟骨肉腫は四肢よりも経過が悪く、治療も積極的になります(Kim 2023)。

軟骨肉腫は、骨髄腫・骨肉腫に次いで3番目に多い原発性の悪性骨腫瘍で、原発性悪性骨腫瘍の20〜27%を占めます。通常型(従来型)の軟骨肉腫の5年生存率は、グレード1で88%、グレード2・3で57%と報告されています(Kim 2023)。

症例 50歳女性 異型軟骨性腫瘍(大腿骨遠位)

異型軟骨性腫瘍 大腿骨遠位 X線・CT・MRI
引用:Kim JH, Lee SK. Cancers (Basel) 2023;15(6):1703 (Figure 3) CC BY 4.0 PMC

大腿骨遠位に、X線(A)で溶骨と硬化が混じった病変があり、軟骨性腫瘍に典型的な「ring-and-arc」の石灰化が見られます。CT(B)とT2強調像(C)では、分葉状の軟骨性腫瘍と深い骨内膜側の侵食(endosteal scalloping)があります。病変は1.7cmと小さいのに侵食が深い、というのが論文での説明です(Kim 2023)。

画像診断では何を見て、どう書くか

軟部腫瘍:脂肪腫かALTか、良性か悪性か

軟部腫瘍は、MRIで大きさ・位置・筋膜との関係・隔壁や結節の有無を整理するのが出発点です。次の表は、よく問題になる場面です(Ahlawat 2020・軟部)。

場面 画像の目安
脂肪腫とALT 大きさ、浅筋膜より深い、下肢の近位、脂肪抑制のかかりにくさ、厚い隔壁(2mm超)や結節(1cm超)がALTを示唆する
悪性の脂肪性腫瘍 脱分化型などの悪性は、腫瘍内に目立つ肉眼的な脂肪を欠くことが多く、脂肪腫・ALTと区別しやすい
結節性筋膜炎 急に大きくなり、組織像が肉腫に見えることもある自然に治る腫瘍。筋膜に沿った尾(fascial tail)は手がかりだが、決め手にならず、病理での確認が必要
骨化性筋炎 早期〜中期は筋肉内の不均一な腫瘤で、周囲の筋の浮腫が広い。この浮腫は感度60〜70%、特異度97〜99%。周辺の淡い石灰化と外傷歴も合わせて判断する
デスモイド型線維腫症 体幹に多く、筋膜に沿った尾と、内部の帯状の低信号が手がかり。治療前に生検が必要になることがある

なお、脂肪を含まない紡錘形細胞脂肪腫や多形脂肪腫は、画像が肉腫と重なります。単純な脂肪腫はMRIで診断できても、これらは生検が必要です(Ahlawat 2020・軟部)。結節性筋膜炎の画像は結節性筋膜炎(nodular fasciitis)のCT・MRI画像所見も参考にしてください。

骨腫瘍:内軟骨腫か、ACT・軟骨肉腫か

骨腫瘍の画像診断で、WHO分類の変更が現場に直接響くのが、大きな良性の軟骨性腫瘍(内軟骨腫)と、グレード1の軟骨肉腫・ACTの区別です。

項目 内容
臨床・画像の手がかり 病変による痛み、病変の長さ、骨内膜側の侵食が皮質の2/3を超える深さ、皮質の破壊、骨の膨隆、軟部腫瘤(Ahlawat 2020・骨)
侵食の深さ(2/3超) 複数の所見の中で最も感度が高い(71%)(Ahlawat 2020・骨)
皮質の破壊・軟部腫瘤 特異度は100%(Ahlawat 2020・骨)
X線・CT 基質の石灰化は60〜78%に見られ、高分化なものはring-and-arc、高グレードでは目立たず不定形になる(Kim 2023)
拡散強調像(ADC) 低グレードの軟骨肉腫と内軟骨腫の区別には役立たない。値が重なるため(Ahlawat 2020・骨)

内軟骨腫の画像の基本は内軟骨腫とは?レントゲン・CT・MRI画像所見で説明しています。判断が難しい軟骨性腫瘍は、放射線科医・病理医・外科医の合議で、生検の要否や生検経路まで決めることが勧められています(Ahlawat 2020・骨)。

ほかにも、骨の腫瘍には「画像が似ていて見分けにくい組」がいくつかあります(Ahlawat 2020・骨)。

  • 良性脊索腫瘍と脊索腫:良性脊索腫瘍は椎体内に限られ、膨隆・皮質の破壊・軟部腫瘤がありません。脊索腫は膨隆する溶骨性病変で軟部腫瘤を伴います。
  • 骨巨細胞腫:MRIで境界が明瞭か不明瞭かが、顕微鏡での腫瘍細胞の浸潤範囲と対応します。切除や掻爬の範囲を決める助けになります。
  • Langerhans細胞組織球症:周囲の浮腫、骨膜炎、骨内膜側の侵食、軟部腫瘤など「悪い腫瘍らしい」所見をとり、感染や悪性腫瘍と重なります。生検が必要になることが多いとされています。

画像だけでは決まらないこと

骨腫瘍のうち「線維肉腫」は、他のどの腫瘍にも分類できないことを確認して初めてつく、いわば除外診断です。十分な生検組織が必要で、MRIでも他の肉腫と区別できる特徴がありません(Ahlawat 2020・骨)。同じ理由で、病理の名前を画像から言い当てようとするより、病理が決めやすいように、画像で場所・範囲・性状を正確に伝えるのが画像診断医の役割です。

骨や軟部の腫瘍はまれなので、診断と治療は専門の施設で、画像診断医・整形外科の腫瘍医・病理医が集まって進めるのが望ましいとされています(Ahlawat 2020・骨)。「しこりが大きくなる」「痛みが続く」といった症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. WHO分類の「中間」とは、悪性に近いという意味ですか?
A. 「悪性に近い」のではなく、再発しやすい(局所侵襲性)、または再発に加えてまれに転移する(まれに転移)という性格の群です。切除範囲や経過観察の計画が必要という意味で使われます(Sbaraglia 2021)。

Q. 画像で組織型は決められますか?
A. 一部の腫瘍は部位や画像に特徴がありますが、多くは重なります。新しく加わった腫瘍の画像の特徴は、まだ十分に報告されていません(Bansal 2021)。画像は、病理が診断を決める手がかりを増やす役割です。

Q. ACTと軟骨肉腫グレード1は同じものですか?
A. 組織像は同じで、できた場所で呼び分けます。四肢の長管骨・短管骨ではACT(中間・局所侵襲性)、体幹では軟骨肉腫グレード1(悪性)として扱われます(Kim 2023)。

Q. 未分化小円形細胞肉腫が別の章になったのはなぜですか?
A. Ewing肉腫に似た組織像でも、遺伝子の異常が違えば、臨床経過や治療への反応が異なるためです(Sbaraglia 2021、Mori 2026)。

あわせて読みたい:膝蓋腱・四頭筋腱断裂の画像診断、リン酸塩尿性間葉系腫瘍の画像診断、前立腺癌の監視療法とMRI

参考文献

  1. Sbaraglia M, Bellan E, Dei Tos AP. The 2020 WHO Classification of Soft Tissue Tumours: news and perspectives. Pathologica. 2021;113(2):70-84. PubMed
  2. Hwang S, Hameed M, Kransdorf M. The 2020 World Health Organization classification of bone tumors: what radiologists should know. Skeletal Radiol. 2023;52(3):329-348. PubMed
  3. Murphey MD, Kransdorf MJ. Staging and Classification of Primary Musculoskeletal Bone and Soft-Tissue Tumors According to the 2020 WHO Update, From the AJR Special Series on Cancer Staging. AJR Am J Roentgenol. 2021;217(5):1038-1052. PubMed
  4. Kim JH, Lee SK. Classification of Chondrosarcoma: From Characteristic to Challenging Imaging Findings. Cancers (Basel). 2023;15(6). PubMed
  5. Ahlawat S, Fayad LM. Revisiting the WHO classification system of bone tumours: emphasis on advanced magnetic resonance imaging sequences. Part 2. Pol J Radiol. 2020;85:e409-e419. PubMed
  6. Ahlawat S, Fayad LM. Revisiting the WHO classification system of soft tissue tumours: emphasis on advanced magnetic resonance imaging sequences. Part 1. Pol J Radiol. 2020;85:e396-e408. PubMed
  7. Bansal A, Goyal S, Goyal A, et al. WHO classification of soft tissue tumours 2020: An update and simplified approach for radiologists. Eur J Radiol. 2021;143:109937. PubMed
  8. Mori K, Kurokawa R, Motoi T, et al. Undifferentiated Small Round Cell Sarcomas: Radiologic-Pathologic Correlation for the Updated WHO Classification Fifth Edition (2020). Radiographics. 2026;46(4):e250087. PubMed

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