
羊水量の異常とは、超音波で見積もった羊水の量が妊娠週数の目安より少ない(羊水過少)か多い(羊水過多)状態で、最大垂直ポケット(MVP)では2cm未満が羊水過少、8cm以上が羊水過多(単胎)の目安です。研修医のハジメくんと一緒に、MVP・AFIの測り方と落とし穴、羊水過少・羊水過多の原因の探し方、肺低形成とのつながりを整理します。
先に結論
- 羊水量の異常とは、羊水が週数の目安より少ない・多い状態。妊娠中期後半〜後期はMVP 2cm未満が羊水過少、8cm以上が羊水過多(単胎)。測るポケットに臍帯と手足を入れず、カラードプラは使わない。
- 羊水過少では腎臓・膀胱(尿の流れ)・胎児の発育・破水を確かめる。羊水が少ない状態は肺低形成の原因の一つ。
- 羊水過多の約7割は原因不明、約2割は母体の糖尿病。心臓・消化管・口や胸の腫瘤を探し、数値は経過で見直す。
目的から読む: 羊水とは / 測り方(MVP・AFI) / 基準値と限界 / 羊水過少の原因 / 肺低形成 / 羊水過多の原因 / 読影の手順
羊水とは? 羊水量はどのように保たれているか
羊水は、胎児が作って胎児が飲みこむ「出入りのある水」です。胎児の尿・肺・飲みこみ・消化管のどこかで出入りが止まると、量が少なくも多くもなります。

羊水は、胎児の成長と発達に欠かせない環境です。胎児の肺での産生、嚥下、消化管での吸収、尿の産生、胎児の動きなどが羊水の循環に関わります(Jha 2023)。羊水が十分にあることは、胎児の肺の発達、成長、動きに必要です(Jha 2023)。
そのため、羊水量の異常は「胎児の健康状態の目印」になります。画像診断の目的は、胎児の詳しい形態観察、胎盤の評価、母体の状態との照合を通じて、羊水異常の原因を見つけることです(Jha 2023)。
羊水量の異常の要点
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 測り方 | 最大垂直ポケット(MVP)かAFI。MVPは2cm未満を羊水過少とする(妊娠中期後半〜後期、Moise 2013)。単胎の羊水過多はMVP 8cm以上またはAFI 24cm以上(SMFM 2018) |
| 羊水過少の原因 | 胎児発育不全、腎臓・尿路の異常、前期破水など(Jha 2023) |
| 羊水過多の原因 | 約7割は原因不明、約2割が母体の糖尿病、約1割弱が胎児の先天異常(Kollmann 2014) |
| 測定の限界 | 超音波は正常な羊水量を見分けるのは得意だが、異常な量の判定は苦手(Magann 2021) |
| 画像診断の役割 | 胎児の詳しい形態の観察、胎盤の評価、原因の検索(Jha 2023) |
羊水量の測り方: MVP(最大垂直ポケット)とAFI(羊水インデックス)
MVPは、臍帯と胎児の手足を含まない最大の羊水ポケットを1か所、縦に測ります。AFIは子宮を4つに分けて、それぞれの最大ポケットの深さを足します。


超音波での羊水量の測定には、羊水インデックス(AFI)と最大垂直ポケット(MVP、single deepest pocket、SDPとも呼ぶ)があります(Moise 2013)。どちらも、色素希釈法で測った実際の羊水量との相関は強くありません(Moise 2013)。測るポケットには、臍帯や胎児の小さな部分(手足など)を含めません(Moise 2013)。
| 方法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| MVP(SDP) | 臍帯・胎児の部分を含まない最大の羊水ポケットを1か所測る | 羊水過少はMVP 2cm未満(妊娠中期後半〜後期、Moise 2013)。単胎の羊水過多はMVP 8cm以上またはAFI 24cm以上(SMFM 2018。Moise 2013の定義は8cm超) |
| AFI | 子宮を臍と正中線で4分割し、各区画の最大の垂直ポケットを足す(Magann 2021) | 羊水過少と診断される例がMVPより多い(Nabhan 2008) |
AFIとMVPを比べた4つの無作為化試験(3,125人)のまとめでは、どちらが良い転帰につながるかの差は見られませんでした。AFIを使うと羊水過少の診断も分娩誘発も増えましたが、出生時の状態は改善しませんでした(Nabhan 2008。数値は後ろの「根拠(もう少し詳しく)」)。羊水過少の判定にはMVPが勧められ、羊水過多の判定ではAFIのほうが適するという整理があります(Magann 2021)。
カラードプラで測ると羊水過少と読みすぎる

なお、カラードプラを併用すると、グレースケールだけでは見えない臍帯が羊水ポケット内に見えるため、測定値がおよそ20%小さくなり、羊水過少と過剰に診断されることがあります(Magann 2021)。そのため羊水量の測定にカラードプラは使わないという提案があります(Magann 2021)。
症例 羊水ポケットの測定(グレースケールとカラードプラ)

引用:Magann EF, et al. Int J Womens Health. 2021;13:773-779(Figure 3)、CC BY-NC 3.0(図は加工していません)
左がグレースケール、右がカラードプラで、同じ羊水ポケットを測定した例です。カラードプラでは臍帯の血流が羊水ポケット内に見え、測定できる深さが短くなります。画面の数値はグレースケールで3.15cm、カラードプラで2.55cmです。
羊水量の基準値(正常値)と、測定値の読み方・限界
妊娠中期後半〜後期の目安は、MVP 2cm以上8cm未満が正常の範囲です(単胎)。ただし超音波は「正常」を見分けるのは得意でも、実際に少ない・多いときの判定は苦手なので、基準の近くの値は経過で見直します。

色素希釈法や帝王切開時に量った実際の羊水量と比べた検討から、次のことが整理されています(Magann 2021)。
| 項目 | 分かっていること |
|---|---|
| 正常と異常の判定 | 超音波は実際に正常な羊水量を見分けるのは得意だが、実際に過少・過多の場合は見逃しやすい |
| 正常値の決め方 | 各妊娠週数で、正常妊娠の羊水量の下位5%未満・上位95%超を異常とする。データの少ない妊娠の初期と末期は基準の幅が広い |
| 測定と目視 | 経験のある術者が測らずに見て判断する方法と、測定する方法で、正常・異常を見分ける精度に差はなかった(63例) |
| プローブの向き | 妊娠後期は、床に垂直でも子宮の輪郭に垂直でも、測定値に有意な差はなかった(240例) |
基準値の近くに測定値があるときは、数値を絶対視せず、胎児の形態や発育、母体の状態とあわせて判断します。経過をみて再測定する前提で評価するのが基本です。
根拠(もう少し詳しく)
- AFIとMVPの比較:4つの無作為化試験(3,125人)のまとめで、AFIを使うと羊水過少の診断が約2.3倍(RR 2.33)になり、分娩誘発が約2.1倍(RR 2.10)、胎児機能不全による帝王切開が約1.5倍(RR 1.45)に増えました。新生児集中治療室への入院、臍帯動脈pH 7.1未満、5分後のアプガースコア7未満などの転帰には差がありませんでした(Nabhan 2008)。
- カラードプラの影響:67例でグレースケールとカラードプラを比べた検討では、平均のAFIは11.6から9.3に、平均のMVP(SDP)は4.5から3.7に小さくなりました。色素で量った実際の羊水過少を多く見つけることはなく、実際には正常な9例が羊水過少に振り分けられました(Magann 2021)。
羊水過少(oligohydramnios)の原因と、画像で見る所
羊水過少では、胎児の腎臓・尿路の異常、胎児発育不全、前期破水を考えます。画像では両側の腎臓、膀胱にたまる尿、胎児の大きさと胎盤を確かめ、破水は臨床で確認します(Jha 2023)。

羊水過少では、胎児発育不全のほか、腎臓・尿路の異常を調べます。具体的には、腎無形成、多嚢胞性異形成腎、腎盂尿管移行部狭窄、膀胱出口閉塞があります。前期破水も臨床的に除外する必要があります(Jha 2023)。
| 原因の領域 | 主な例 | 画像で確認すること |
|---|---|---|
| 胎児の尿路 | 腎無形成、多嚢胞性異形成腎、腎盂尿管移行部狭窄、膀胱出口閉塞 | 腎臓の有無・大きさ・嚢胞、水腎症、膀胱の大きさ |
| 胎児発育 | 胎児発育不全 | 推定体重、胎盤の評価 |
| 破水 | 前期破水 | 臨床での確認(画像だけでは決めない) |

片側または両側の腎臓が見えない、あるいは異常な腎臓がある場合の画像は、腎臓の奇形の種類まとめ、多嚢胞性異形成腎(MCDK)とは?が参考になります。
「他に異常がない羊水過少」の場合
胎児の異常がない「孤立性」の羊水過少でも、妊娠37週前に診断された108例では、早産が26.9%と対照の12.3%より多く、分娩誘発や帝王切開も多くなりました。ただし、様子をみて自然に満期で分娩した例に限ると差はなくなり、悪い転帰の多くは医療介入による早産と関連していました(Melamed 2011)。羊水過少という所見だけで、胎児が悪い状態とは決められません。
羊水過少と肺低形成: 羊水が少ないと、なぜ肺が育たないのか
肺低形成とは、胎児の肺が十分に育たない状態です。胸郭が狭い・動かない病気、胸の中を押す病気と並んで、羊水が少ない状態(前期破水・尿路の異常)が原因になります(Triebwasser 2017)。
羊水が少ない状態は、胎児の肺が十分に育たない肺低形成と関連します。肺低形成は、胸郭の容積や動きが制限される疾患(骨系統疾患、腹壁欠損)、胸の中を圧迫する疾患(先天性横隔膜ヘルニア、胸水)、そして羊水が少ない状態(前期破水、尿路の異常)で起こります(Triebwasser 2017)。

両側の腎無形成で羊水過少・無羊水を伴う場合は予後が悪く、周産期の死亡の多くは肺低形成によると報告されています(Huber 2019)。
羊水過多(polyhydramnios)の原因と頻度、検査の進め方
羊水過多の多くは原因不明で、次に多いのが母体の糖尿病です。画像では、胎児の消化管閉塞、口・咽頭や胸部の腫瘤、心臓、神経・骨格の異常を探します(Jha 2023、Kollmann 2014)。

羊水過多の多くは原因不明で、母体の糖尿病が一般的な原因です。画像では、胎児の消化管閉塞、口腔・咽頭や胸部の腫瘤、神経・筋骨格系の異常を探します(Jha 2023)。
単胎の羊水過多860例の検討では、原因不明が68.8%、母体の糖尿病が19.8%、先天異常が8.5%、TORCH血清が陽性だったのが2.9%でした(血清陽性は、母体や胎児の感染が確定したという意味ではありません)。先天異常のうち最も多かったのは心奇形(32.9%)です(Kollmann 2014)。
| 原因 | 割合・内容 | 画像で確認すること |
|---|---|---|
| 原因不明(特発性) | 68.8%(Kollmann 2014) | 他の異常がないことの確認 |
| 母体の糖尿病 | 19.8%(Kollmann 2014) | 血液検査(耐糖能)との照合 |
| 胎児の先天異常 | 8.5%。うち心奇形が32.9%(Kollmann 2014) | 心臓(胎児心エコー)、消化管、口・咽頭、胸部、神経・骨格 |
| TORCH血清陽性 | 2.9%(Kollmann 2014)。感染の確定を意味しない | 感染を疑う所見の有無(胎児の脳・肝臓など) |

消化管の閉塞では、食道閉鎖・十二指腸閉鎖などが羊水過多と関連します。食道閉鎖は先天性食道閉鎖症とは?で、新生児の腹部X線のdouble bubbleは新生児の腹部レントゲンで詳しく説明しています。
羊水過多があるのに胎児が小さい(胎児発育不全を伴う)状態は逆説的で、母体の糖尿病や高血圧で起こることがあります。これらの母体の病気がない場合は、染色体異常の可能性を考えます(Jha 2023)。「他に異常がない」羊水過多でも、遺伝学的な異常が4.5%(染色体異常2.1%)に見つかり、羊水過多が強いほど割合が増えました(Tsakmaki 2024)。
羊水過多では、母体の糖代謝(糖負荷検査)と、胎児心エコーを含む詳しい超音波で胎児の形態を評価します(Kollmann 2014)。感染の検査は、感染を疑う随伴所見(胎児の脳・肝臓の石灰化など)や母体の病歴がある場合に検討し、ほかに異常のない羊水過多だけを理由にTORCH検査を一律には行いません。ほかに異常のない羊水過多で感染症の血清検査をした研究では、陽性は62例中0例、234例中3例(約1%)で、胎児に感染が及んだ例はありませんでした(Fayyaz 2012、Pasquini 2016)。
羊水量の異常の読影の手順(チェックリスト)
まず正しく測り、次に少ない・多いで探す場所を分け、最後に母体の情報と照らします。何も見つからなくても、経過で見直す前提で報告します。
- 羊水ポケットは、臍帯・胎児の部分を含まない最大のものを測った(カラードプラは使わない)
- 妊娠週数に合った基準で、少ない・多いを判定した
- 羊水が少ないとき:両側の腎臓、膀胱(尿の貯留と排出)、胎児の大きさ(発育不全)を確認した
- 羊水が少ないとき:破水の有無を、臨床情報で確認した
- 羊水が多いとき:胃の泡の大きさと位置、消化管の拡張(閉塞)を確認した
- 羊水が多いとき:心臓、口・咽頭、胸部、神経・骨格の異常を探した
- 母体の糖尿病・感染・多胎・胎盤の状態を、臨床情報から確認した
- 「他に異常がない」場合も、経過をみて再評価する前提で報告した
超音波の基本的な見方はエコー(超音波)検査の基礎にまとめています。
よくある勘違い
Q. 羊水過少と言われたら、胎児に異常がある?
異常があるとは限りません。腎臓・尿路の異常や胎児発育不全が見つかることもありますが、孤立性の羊水過少では、医療介入による早産が悪い転帰の大きな要因とされています(Melamed 2011)。詳しい超音波で原因を確認します。
Q. 羊水過多の原因は、ほとんどが胎児の奇形?
いいえ。単胎の検討では約7割が原因不明、約2割が母体の糖尿病で、先天異常が見つかるのは約1割弱でした。先天異常のなかでは心奇形が最も多くみられます(Kollmann 2014)。
Q. カラードプラで臍帯を確かめながら測るほうが正確?
いいえ。グレースケールでは見えない臍帯まで見えてポケットが短くなり、測定値はおよそ2割小さくなります。実際の羊水過少を多く見つけるわけではなく、羊水過少と読みすぎます(Magann 2021)。
今日のまとめ
- 羊水は胎児の尿で入り、飲みこみで出る。MVPは臍帯・手足を避けて縦に測り、カラードプラは使わない。
- 羊水過少は腎臓→膀胱→発育→破水の順に確かめる。肺低形成につながることを意識する。
- 羊水過多は原因不明と母体の糖尿病が多い。飲みこむ通り道と心臓を探し、基準の近くの値は経過で見直す。
あわせて読みたい:先天性心疾患の画像診断入門、心臓・心膜腫瘍の画像診断、卵管癌・原発性腹膜癌の画像診断
参考文献
- Jha P, Raghu P, Kennedy AM, et al. Assessment of Amniotic Fluid Volume in Pregnancy. Radiographics. 2023;43(6):e220146. PubMed
- Moise KJ Jr. Toward consistent terminology: assessment and reporting of amniotic fluid volume. Semin Perinatol. 2013;37(5):370-4. PubMed
- Nabhan AF, Abdelmoula YA. Amniotic fluid index versus single deepest vertical pocket as a screening test for preventing adverse pregnancy outcome. Cochrane Database Syst Rev. 2008;2008(3):CD006593. PubMed
- Magann EF, Whittington JR, Morrison JC, et al. Amniotic Fluid Volume Assessment: Eight Lessons Learned. Int J Womens Health. 2021;13:773-779. PubMed
- Melamed N, Pardo J, Milstein R, et al. Perinatal outcome in pregnancies complicated by isolated oligohydramnios diagnosed before 37 weeks of gestation. Am J Obstet Gynecol. 2011;205(3):241.e1-6. PubMed
- Triebwasser JE, Treadwell MC. Prenatal prediction of pulmonary hypoplasia. Semin Fetal Neonatal Med. 2017;22(4):245-249. PubMed
- Kollmann M, Voetsch J, Koidl C, et al. Etiology and perinatal outcome of polyhydramnios. Ultraschall Med. 2014;35(4):350-6. PubMed
- Tsakmaki E, Ververi A, Chatzakis C, et al. Genomic abnormalities in apparently isolated polyhydramnios and the role of confirmed fetal phenotype: a systematic review and meta-analysis. Am J Obstet Gynecol MFM. 2024;6(10):101469. PubMed
- Society for Maternal-Fetal Medicine (SMFM); Dashe JS, Pressman EK, Hibbard JU. SMFM Consult Series #46: Evaluation and management of polyhydramnios. Am J Obstet Gynecol. 2018;219(4):B2-B8. PubMed
- Fayyaz H, Rafi J. TORCH screening in polyhydramnios: an observational study. J Matern Fetal Neonatal Med. 2012;25(7):1069-72. PubMed
- Pasquini L, Seravalli V, Sisti G, et al. Prevalence of a positive TORCH and parvovirus B19 screening in pregnancies complicated by polyhydramnios. Prenat Diagn. 2016;36(3):290-3. PubMed
- Huber C, Shazly SA, Blumenfeld YJ, et al. Update on the Prenatal Diagnosis and Outcomes of Fetal Bilateral Renal Agenesis. Obstet Gynecol Surv. 2019;74(5):298-302. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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