
先に結論:頭部は「単純で足りる病気」と「造影が役立つ病気」に分かれる
| 場面 | 基本の考え方 |
|---|---|
| 脳卒中(出血・梗塞)の初期評価 | 造影なしのCTやMRIが中心。血管を見たいときはCTA(造影)やMRAを追加する |
| 頭部外傷 | まず単純CT。血管の損傷が疑われるときにCT血管撮影を追加する(Shih 2021) |
| 腫瘍(転移・髄膜腫・神経膠腫など) | 造影MRIが役立つ。転移の検出や性質の評価に使う |
| 感染・炎症(膿瘍・髄膜炎・多発性硬化症など) | 造影で膿瘍の壁、髄膜、活動性の病変が見やすくなる |
| 共通の注意 | 造影の可否は、アレルギー・腎機能・妊娠などを踏まえて施設と主治医が判断する |
造影とは?頭部で何が変わるのか
造影検査は、静脈から造影剤を入れて撮影する方法です。CTではヨードを含む造影剤、MRIではガドリニウムを含む造影剤を使います。脳は「血液脳関門」という仕組みで、血液中の物質が脳の中に入りにくくなっています。ところが腫瘍や感染、炎症があると、この関門が壊れたり、関門のない異常な血管ができたりして、造影剤が病変に集まって白く写ります。これが「造影される(増強される)」という状態です(Atlas 1993)。
頭部では、造影の有無で次の2つの情報が得られます。
- 病変が見つけやすくなる(小さな転移など)
- 造影されるパターンから、病変の性質を推測できる。反対に「造影されないこと」も診断の手がかりになる(Atlas 1993)
なお、造影剤の安全面については後半で触れます。造影剤を使うこと自体が目的ではなく、「その病気を診断するのに、造影の情報が必要か」で考えるのが基本です。
造影なしで足りることが多い場面
脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血)
救急で頭痛や麻痺、意識障害があるときは、まず出血の有無を確認します。この目的では、造影剤を使わない単純CTが基本です。造影剤が入ると血管や硬膜(脳を包む膜)が白く写り、出血との区別が付きにくくなることがあるためです。造影剤による見え方の例は造影剤による頭部CTの高吸収とは?出血との見分け方で解説しています。
くも膜下出血では、発症から6時間以内に撮影した頭部CTで、くも膜下出血の121人全員が見つかったという前向き研究があります。同じ研究で、全体(発症からの時間を問わない)の感度は92.9%でした(Perry 2011)。時間が経つほど見つかりにくくなるため、早い撮影が大切です。
脳梗塞は、単純のMRI(拡散強調像)やCTで評価します。血管の詰まりや狭窄を調べたいときは、造影を使うCTAや、造影なしでも撮れるMRAを追加します。どの検査を選ぶかは、症状の出方や経過で決まります。
頭部外傷
頭部外傷では、頭蓋内の出血や損傷を調べる最初の検査はCTです。ACRの基準では、頭蓋内の損傷が疑われるときのCTは第一選択とされ、外傷が軽症のときは臨床判断のルールで撮影する人を絞ります。MRIは、CTのあとも神経症状が説明できないときに有用です。また、血管の損傷が疑われる場合はCT血管撮影、脳脊髄液の漏れが疑われる場合は頭蓋底の薄いスライスのCTを追加します(Shih 2021)。外傷で最初から造影を行う、という流れではありません。
| 状況 | 最初の検査 | 追加で考える検査 |
|---|---|---|
| 頭部外傷(頭蓋内損傷の疑い) | 単純CT | 神経症状が説明できなければMRI |
| 頭部外傷(血管損傷の疑い) | 単純CT | CT血管撮影(造影) |
| 頭部外傷(脳脊髄液漏の疑い) | 単純CT | 頭蓋底の薄いスライスのCT |
(Shih 2021)
頭痛の初期評価
頭痛は原因が幅広く、突然の激しい頭痛のような命にかかわる原因から、慢性の良性のものまであります。ACRの適切性基準(2022年更新)は、頭痛の8つの状況ごとに、最初に行う画像検査を整理しています(Utukuri 2023)。造影が必要かどうかも状況で変わるため、検査前に医師が目的を決めます。気になる頭痛が続くときは、医療機関に相談してください。
造影が役立つ場面
腫瘍:転移の数と性質
頭蓋内の腫瘍では、造影MRIが中心的な役割を果たします。造影によって腫瘍の場所や、中心の壊死・嚢胞の様子がはっきりします。特に転移性脳腫瘍では、小さな病変の検出が治療方針に影響するため、造影が重視されます(Atlas 1993)。転移性脳腫瘍の画像は転移性脳腫瘍(脳転移)のMRI画像診断も参照してください。
造影が必要かどうかは、腫瘍の種類によって差があります。2025年のレビューは、造影が現在も欠かせないのは、高悪性度の神経膠腫や複雑な腫瘍だと述べています。一方、良性や経過の安定した病変では、3D T2強調像のような造影なしの撮像で代用できる場合があり、造影を減らす工夫が進んでいます(Doniselli 2025)。
症例 70歳代女性 乳癌の脳転移

引用:Radiopaedia(Brain metastases)
造影前のT1強調像です。画像の右寄りに、周囲よりわずかに暗い領域があります。症例ページでは、転移病変はT1強調像で低信号と記載されています。

引用:Radiopaedia(Brain metastases)
同じ高さの造影後T1強調像です。同じ場所が、輪のように縁だけ白く光る丸い病変として写っています。症例ページでは、周囲に血管原性浮腫を伴うリング状の増強を示す多発転移と記載されています。造影前では目立たなかった病変が、造影後には見つけやすくなる例です。
感染症:脳膿瘍と髄膜炎
脳膿瘍は、膿のたまりの周りの壁が造影されて「リング状」に見えます。ただし、転移や膠芽腫などでもリング状に造影されるため、造影だけでは区別できません。拡散強調像(DWI)を組み合わせると、膿瘍とそれ以外のリング状病変を区別する精度が高く、11研究を統合した解析では感度0.95、特異度0.94でした(Xu 2014)。詳しくは脳膿瘍のMRI画像診断をご覧ください。
髄膜炎や、がんが髄膜に広がる髄膜播種では、脳を包む膜が造影される所見が診断の手がかりになります。造影MRIは、髄膜や脳室の壁に沿った病変の広がりを見つけるのに役立つとされています(Atlas 1993)。
炎症・脱髄:多発性硬化症
多発性硬化症では、造影される病変は「急性〜亜急性の炎症」を示し、T2強調像の高信号は「過去の炎症の痕跡」を示します。診断の段階では造影の価値が高い一方で、定期的な経過観察では、T2強調像で新しい病変や大きくなった病変を見つけることで、造影を使わずに病気の活動性を追える場合があります(Rovira 2024)。造影を使い分けて、必要な回数を減らす考え方です。
造影の画像を読むときのポイント
造影の画像は、造影前の画像と同じ断面で見比べるのが基本です。造影前から白く写っているものを「造影された」と誤って判断しないためです(Atlas 1993)。また、造影でもともと白く写る正常の構造もあります。次の表は、確認の順番の例です。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 造影前の画像で、病変の場所と信号を確認する |
| 2 | 同じ断面の造影後の画像で、増強される部分があるかを見る |
| 3 | 増強のパターン(縁だけか、全体か、膜に沿うか)を確認する |
| 4 | 正常の血管・静脈洞・硬膜・脈絡叢などの造影を、病変と間違えていないかを見る |
| 5 | 拡散強調像やFLAIRなど、造影以外の撮像と合わせて判断する |
造影を決める前に知っておきたい注意点
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 造影前の画像 | 多くの場合、造影前(単純)の画像と見比べて評価する。造影前からT1強調像で白く写る所見を、造影効果と間違えないため(Atlas 1993) |
| アレルギー | MRIのガドリニウム造影剤の急性の副作用はまれで、ヨード造影剤より少ない(Starekova 2024)。ただし、過去の反応は検査前の問診で申告する |
| 腎機能 | 腎不全の人では、一部のガドリニウム造影剤で腎性全身性線維症(NSF)というまれで重い病気が起こりうる。現在はリスクの低い種類が使われ、ほとんど見られなくなった(Starekova 2024) |
| 体内への沈着 | ごく微量のガドリニウムが脳などに残ることが知られているが、現時点では、これによる健康への悪影響を示すデータはない(Starekova 2024) |
| 薬・妊娠・授乳 | 検査前に控える薬や、妊娠・授乳中の扱いは、検査施設と主治医の指示に従う |
造影剤の副作用や腎機能との関係は、造影MRIと腎機能(eGFR)でも解説しています。
頭部MRIの流れの中での位置づけ
頭部MRIは、まず単純の撮像(T1・T2・FLAIR・拡散強調像など)で全体を評価し、必要に応じて造影を足すのが一般的です。撮像の順序や読み方は頭部MRIの読み方で整理しています。造影を追加するかどうかは、単純の画像を見たうえで放射線科医が判断する場合もあります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 造影なしでも脳腫瘍はわかりますか?
A. 単純のMRIだけで、腫瘍の存在や位置がわかることはよくあります。ただし、小さな転移の検出や、悪性度・性質の評価では造影が役立ちます。良性や経過の安定した腫瘍では、造影を減らせる場合もあります(Doniselli 2025)。どちらを選ぶかは、病気の種類と目的で決まります。
Q. 造影MRIを何度も受けて問題はありませんか?
A. 微量のガドリニウムが体内に残ることは知られていますが、現時点では、そのことによる健康への悪影響を示すデータはありません(Starekova 2024)。一方、欧州や北米の学会・規制当局は、造影剤は臨床的に必要なときに使うよう提案しています(Rovira 2024)。繰り返しの検査が気になるときは、主治医に目的を確認してください。
Q. 腎臓が悪い、またはアレルギーがあります。造影はできませんか?
A. 腎機能や過去の反応によって、造影剤の種類や使うかどうかが変わります。検査前の問診で伝え、可否は施設と主治医が判断します。造影ができない場合でも、造影なしのMRIやCTで調べられることは多くあります。
Q. 頭を打ったあとのCTで造影はしないのですか?
A. 頭部外傷の最初の検査は、造影なしの単純CTが基本です。血管の損傷が疑われる場合などに、CT血管撮影を追加します(Shih 2021)。
あわせて読みたい:CTAとMRAの違いと使い分け、脊髄硬膜外膿瘍のMRI
参考文献
- Shih RY, Burns J, Ajam AA, et al. ACR Appropriateness Criteria® Head Trauma: 2021 Update. J Am Coll Radiol. 2021;18(5S):S13-S36. PubMed
- Utukuri PS, Shih RY, Ajam AA, et al. ACR Appropriateness Criteria® Headache: 2022 Update. J Am Coll Radiol. 2023;20(5S):S70-S93. PubMed
- Doniselli FM, Ramos J, Hilario A, et al. Recommendations on the use of gadolinium-based contrast agents in the diagnosis and monitoring of common adult intracranial tumours. Eur Radiol. 2025;35(12):7774-7785. PubMed
- Rovira À, Doniselli FM, Auger C, et al. Use of gadolinium-based contrast agents in multiple sclerosis: a review by the ESMRMB-GREC and ESNR Multiple Sclerosis Working Group. Eur Radiol. 2024;34(3):1726-1735. PubMed
- Xu XX, Li B, Yang HF, et al. Can diffusion-weighted imaging be used to differentiate brain abscess from other ring-enhancing brain lesions? A meta-analysis. Clin Radiol. 2014;69(9):909-15. PubMed
- Starekova J, Pirasteh A, Reeder SB. Update on Gadolinium-Based Contrast Agent Safety, From the AJR Special Series on Contrast Media. AJR Am J Roentgenol. 2024;223(3):e2330036. PubMed
- Atlas SW. Rationale and clinical indications for contrast agents in MR imaging of the brain and spine. J Comput Assist Tomogr. 1993;17 Suppl 1:S1-7. PubMed
- Perry JJ, Stiell IG, Sivilotti ML, et al. Sensitivity of computed tomography performed within six hours of onset of headache for diagnosis of subarachnoid haemorrhage: prospective cohort study. BMJ. 2011;343:d4277. PubMed
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