
先に結論:CTAは速く細かく、MRAは被ばくなし。部位・腎機能・体の条件で選ぶ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| CTA | ヨード造影剤を静脈から入れて撮る。短時間で細かく見え、石灰化や急性期の大動脈の評価に強い。X線の被ばくがある |
| MRA | 磁場で撮るので被ばくがない。頭蓋内の血管は造影剤なしでも撮れる。血流が乱れると狭窄を実際より強く見せることがある |
| 頭頸部 | 脳動脈瘤の診断精度はCTAとMRAで差が示されていない。頭蓋内の狭窄はMRAが過大評価しやすい |
| 大動脈 | 急性の大動脈の病気はCTAが第一。MRAは選ばれた場面で使う |
| 下肢 | CTAは精度が高い。造影剤なしのMRAも近い精度で、強い石灰化の部位はMRAが見やすい |
CTAとMRAは「何で血管を見るか」が違う
CTAとMRAは、どちらも血管の内側(血液の通り道)を画像にして、血管の狭窄・閉塞・瘤(こぶ)・解離を調べる検査です。違いは、血管をどう映すかです。
| 項目 | CTA(CT血管造影) | MRA(MR血管造影) |
|---|---|---|
| 原理 | X線で撮影し、血管の中のヨード造影剤を映す | 磁場を使い、血液の流れの信号(TOF法)または造影剤(ガドリニウム)を映す |
| 造影剤 | ヨード造影剤が基本 | 頭蓋内などは造影剤なしでも撮れる(非造影MRA) |
| 被ばく | X線の被ばくがある | 被ばくはない |
| 撮影時間 | 短い | CTAより長く、体動の影響を受けやすい |
| 得意なこと | 細かい血管、石灰化、ステントの評価、急ぐ検査 | 被ばくを避けたいとき、非造影で見たいとき、血管壁の性状 |
| 苦手なこと | 石灰化が強いと内腔が見えにくい。ヨード造影剤の使用条件がある | 血流が乱れる所で狭窄を過大評価することがある。金属でゆがむ |
画像を立体的に見るときのMIPやVRなどの表示方法は、MPR・MIP・MinIP・VRとはにまとめています。
画像の見え方の違い:読むときの注意
| 検査 | 血管の中が白く(明るく)見える理由 | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| CTA | 血管の中のヨード造影剤が白く写る | 石灰化も白いため、強い石灰化では内腔が隠れやすい。造影のタイミングがずれると血管が薄く写る |
| MRA(TOF法) | 流れている血液の信号が明るくなる | 流れが遅い・乱れる所は暗くなり、狭窄が強く見える。金属の近くは信号がゆがむ |
どちらも立体的な画像(MIPやVR)で全体を見たあと、血管に直角な元の断面画像で内腔を確認する習慣が大切です。表示画像だけでは、小さな瘤や軽い狭窄が隠れることがあります。
頭頸部:脳動脈瘤は同程度、頭蓋内の狭窄はMRAが強く見せやすい
頭蓋内の血管のスクリーニングには、造影剤を使わないTOF法のMRAがよく使われます。頭部MRAで何がわかるかは頭部MRAとは?MRIとの違い・わかることで詳しく解説しています。
脳動脈瘤では、CTAとMRAの診断精度を比べた10研究のメタ解析で、CTAは感度0.84・特異度0.85、MRAは感度0.80・特異度0.87で、曲線下面積に有意差はありませんでした。ただし、症例数の限界があり、結果は慎重に解釈する必要があるとされています(Chen 2018)。
一方、頭蓋内の動脈硬化による狭窄では、MRAは狭窄の程度を過大評価することがあります。CTAを基準にした18人33病変の比較では、MRAで狭窄を20%より強く過大評価した病変が33病変中8病変ありました(Sarikaya 2021)。血流が乱れる狭窄部では信号が落ちるためで、MRAで「強い狭窄」とされたものは、他の検査で確認することがあります。
頸動脈では、プラーク(血管壁のかたまり)の性状を、CTAもMRAも調べられます。CTAでも不安定プラークの一部の特徴は見えますが、MRAのほうが詳しく見えるとされ、両方が補い合うと報告されています(Dakis 2023)。
症例 75歳男性 頸動脈の高度狭窄(CTA)

引用:Radiopaedia(Critical carotid stenosis – CTA findings)
頸部のCTAの冠状断(MIP)像です。症例ページでは、左内頸動脈の起始部に石灰化プラークによる高度狭窄があり、その先の内頸動脈は保たれているものの口径が小さく、造影の程度も低いと記載されています。
大動脈:急性ならCTA、選ばれた場面でMRA
急性大動脈症候群(大動脈解離など)は、診断が遅れると予後が悪くなる緊急の病気です。画像診断では、CTAが速く撮れて広く使えるため、大半の患者さんで第一選択になっています。経食道心エコーも診断精度が高く、経胸壁心エコーとMRAも選ばれた患者さんで役立つとされています(Carroll 2020)。
急性期のあとの経過を見る段階でも、画像は重要とされています(Carroll 2020)。被ばくのないMRAも選択肢になりますが、どの方法が適するかは、病気の状態と施設の設備で変わります。
症例 65歳女性 胸部大動脈の造影MRA

引用:Radiopaedia(MR angiography of the thoracic aorta)
胸部大動脈の造影MRAの立体表示です。症例ページでは、軽い蛇行はあるものの口径は正常で、大動脈の枝の起始部にも異常はないと記載されています。
下肢:CTAは精度が高く、非造影MRAも近い精度
下肢の動脈(末梢動脈疾患)では、多列CTAを血管造影(DSA)と比べた20研究・957人のメタ解析で、50%を超える狭窄または閉塞を見つける感度は95%、特異度は96%でした(Met 2009)。
造影剤を使わないMRA(QISS法)をCTAと比べた30人の検討では、50%を超える狭窄の感度と特異度は、MRAで84.9%と97.2%、CTAで87.3%と95.4%と近い値でした。判定できない区間はMRAが2.8%、CTAが7.8%で、強く石灰化した区間はMRAのほうが見やすいと報告されています(Varga-Szemes 2017)。そのため、石灰化が強い人や、造影剤を避けたい人では、非造影MRAが選択肢になります。
造影剤と被ばくの考え方
| 項目 | CTA | MRA |
|---|---|---|
| 造影剤 | ヨード造影剤。腎機能低下がある人では確認が必要 | 非造影MRAなら不要。造影MRAではガドリニウム造影剤を使う |
| 被ばく | X線の被ばくがある(撮影範囲や方法で変わる) | なし |
| 確認すること | 腎機能、アレルギーの経験、服用中の薬 | 体内の金属・ペースメーカー、閉所が苦手かどうか |
ヨード造影剤では、腎機能が低下した人の急性腎障害のリスクが、以前は過大に考えられていたとされています。米国放射線学会と米国腎臓財団の合意文書(2020年)では、急性腎障害がある人や、透析をしていない人でeGFRが30未満の人には、生理食塩水の点滴による予防が示されています(Davenport 2020)。実際の対応は、腎機能の状態や施設の方針で変わります。
MRAのガドリニウム造影剤では、重い腎機能低下の人に起こる腎性全身性線維症(NSF)が過去に問題になりました。しかし、米国放射線学会の分類で「グループII」とよばれる種類の造影剤では、腎機能がとても悪い人4,931人(16研究)で発症は0人で、リスクは0.07%未満と推定されています(Woolen 2020)。
造影剤を使う検査の前に控える薬や食事は、主治医・検査施設の指示に従ってください。
使い分けの目安
| 場面 | 考えやすい選択 |
|---|---|
| 頭蓋内の血管のスクリーニング(症状なし・健診) | 非造影のTOF法MRA(造影剤・被ばくなし) |
| MRAで頭蓋内に強い狭窄が見えたとき | 過大評価の可能性を考え、CTAなど他の検査で確認する |
| 胸や背中の強い痛みで大動脈解離を疑う | CTA(速く撮れる) |
| 足の血管の狭窄を調べる、石灰化が強い | 非造影MRAも選択肢。造影CTAも精度が高い |
| 腎機能が低下している | 非造影MRAを検討。造影検査が必要なら主治医が判断する |
| 体内に金属・ペースメーカーがある、じっとしていられない | CTAを検討。MRIは施設の条件に従う |
どちらの検査が適するかは、症状・既往歴・腎機能・体の条件で変わります。検査について不安な点は、主治医や検査施設に相談してください。
検査を受ける前に確認しておきたいこと
- 腎臓の病気があるか、過去に造影剤で副作用やアレルギーが出たことがあるか
- 服用中の薬をすべて伝える。検査前に控える薬があるかは、主治医・検査施設の指示に従う
- 妊娠している、または妊娠の可能性があるか
- 体内に金属(ペースメーカー、人工関節、ステントなど)があるか、狭い所が苦手か(MRAを受けるとき)
- 決められた時間じっとしていられるか(MRAは撮影時間が長く、動くと画像がぼやけます)
これらを事前に伝えておくと、検査の種類の選び方や、当日の準備がスムーズになります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 被ばくが気になります。MRAのほうが安全ですか?
A. MRAには放射線被ばくがありません。一方、CTAは必要な情報を短時間で得られるため、急ぐ病気では大切な検査です。被ばくの量は撮影法や範囲で変わるため、気になるときは検査の目的と一緒に担当医に尋ねてください。
Q. MRAで「狭窄がある」と言われました。CTAも必要ですか?
A. 頭蓋内の動脈では、MRAが狭窄の程度を過大評価することがあります(Sarikaya 2021)。治療方針に関わるときは、CTAなど他の検査で確認することがあります。
Q. 結局、CTAとMRAのどちらの精度が高いのですか?
A. 部位と目的で変わります。脳動脈瘤では両者の診断精度に差が示されていません(Chen 2018)。下肢ではCTAの感度95%・特異度96%(Met 2009)に対し、非造影MRAも近い値でした(Varga-Szemes 2017)。「どちらが上」と決めず、病気と体の条件に合う検査を選ぶことが大切です。
Q. 造影剤のアレルギーや腎臓の病気があると、どちらも受けられませんか?
A. 頭蓋内や下肢の動脈では、造影剤を使わないMRAが選べる場合があります(Varga-Szemes 2017)。ヨード造影剤を使うCTAでは、腎機能による注意が必要です(Davenport 2020)。事前に病歴を医師に伝えてください。
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参考文献
- Chen X, Liu Y, Tong H, et al. Meta-analysis of computed tomography angiography versus magnetic resonance angiography for intracranial aneurysm. Medicine (Baltimore). 2018;97(20):e10771 PubMed
- Sarikaya B, Colip C, Hwang WD, et al. Comparison of time-of-flight MR angiography and intracranial vessel wall MRI for luminal measurements relative to CT angiography. Br J Radiol. 2021;94(1118):20200743 PubMed
- Carroll BJ, Schermerhorn ML, Manning WJ. Imaging for acute aortic syndromes. Heart. 2020;106(3):182-189 PubMed
- Dakis K, Nana P, Athanasios C, et al. Carotid Plaque Vulnerability Diagnosis by CTA versus MRA: A Systematic Review. Diagnostics (Basel). 2023;13(4):646 PubMed
- Met R, Bipat S, Legemate DA, et al. Diagnostic performance of computed tomography angiography in peripheral arterial disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2009;301(4):415-24 PubMed
- Varga-Szemes A, Wichmann JL, Schoepf UJ, et al. Accuracy of Noncontrast Quiescent-Interval Single-Shot Lower Extremity MR Angiography Versus CT Angiography for Diagnosis of Peripheral Artery Disease: Comparison With Digital Subtraction Angiography. JACC Cardiovasc Imaging. 2017;10(10 Pt A):1116-1124 PubMed
- Davenport MS, Perazella MA, Yee J, et al. Use of Intravenous Iodinated Contrast Media in Patients with Kidney Disease: Consensus Statements from the American College of Radiology and the National Kidney Foundation. Radiology. 2020;294(3):660-668 PubMed
- Woolen SA, Shankar PR, Gagnier JJ, et al. Risk of Nephrogenic Systemic Fibrosis in Patients With Stage 4 or 5 Chronic Kidney Disease Receiving a Group II Gadolinium-Based Contrast Agent: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2020;180(2):223-230 PubMed
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