
先に結論:肺の外の病変は「縁がなだらかで鈍角」「縁の一部が見えない」。ただし胸膜か胸壁かはCTで確かめる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| extrapleural sign | 肺の外にある病変の、縁がなだらかに壁へつながり、胸壁との角が鈍角になる所見。接線方向の縁だけがくっきり見え、両端は細く消える |
| incomplete border sign | 病変の縁の一部だけが見え、残りの縁が見えない所見。肺の外の病変を示す(Sureka 2013、Desimpel 2021) |
| 肺の中の病変との違い | 肺内の病変は壁との角が鋭角で、肺の血管を巻き込む。肺外の病変は鈍角で、血管を押しのける(Sureka 2013) |
| 注意点 | レントゲンだけでは、胸膜か胸壁(胸膜外)かを決められないことが多い(Ilsen 2016)。CTで判断する |
前提:胸膜と胸膜外腔
肺は、臓側胸膜という薄い膜に包まれ、その外側に胸膜腔(ふだんはごくわずかな液体があるだけの隙間)があります。さらに外側が壁側胸膜で、その外に胸膜外腔(extrapleural space)、肋骨・肋間筋があります。胸膜外腔は、肋骨の内面と壁側胸膜の間にある、ふだんは目立たない潜在的な隙間です(Riba 2026)。炎症、感染、外傷、腫瘍などが起こり、胸膜や胸壁の病気と間違えられやすいとされています(Riba 2026)。
末梢の影は、胸膜との関係から3つに分けられます(Ilsen 2016)。
| 場所 | 由来 | 辺縁と角度 |
|---|---|---|
| 胸膜外(extrapleural) | 胸壁(肋骨・肋間筋など)から生じ、胸膜や肺に浸潤していない | 鈍角で、肺側の縁がくっきりしている |
| 胸膜(pleural-based) | 胸膜腔・胸膜 | 辺縁の一部または全体が明瞭で、鈍角になることが多い |
| 胸膜下(subpleural) | 肺の実質 | 辺縁は不整で、鋭角 |
肺の外(胸膜外と胸膜)の病変は鈍角、肺の中の病変は鋭角、という違いが、これから説明する2つのサインの土台です。
extrapleural signとは
胸壁側から肺のほうへ張り出す病変は、壁側胸膜ごと肺を内側へ押し込みます。そのため、レントゲンでは次のように写ります。
- 病変の縁が滑らかで、肺側にふくらむ半円状の形になる
- 胸壁との角が鈍角で、縁がなだらかに壁へつながる
- X線が病変の縁に接線方向で当たる部分だけ、内側の縁がくっきり見え、その上下では縁が細くなって消える
病変を皮膚の下にできた「こぶ」にたとえると、こぶの横から見た輪郭だけがはっきり見えて、こぶの根元のあたりは周りの壁と区別できなくなります。この形が、肺の中の丸い病変(壁との角が鋭角で、周囲を肺が取り囲む)との違いです。肺癌などの肺内の腫瘤では、肺の血管が腫瘤の中に取り込まれます。一方、肺の外の腫瘤は、肺の血管を押しのけます(Sureka 2013)。
症例 70歳代女性 肋骨転移(extrapleural sign)

引用:Radiopaedia(Rib metastasis with extrapleural sign)
右の第7肋骨の外側に、骨の破壊を伴う病変があります。症例ページでは、extrapleural signを伴う右第7肋骨の破壊性病変とされ、肋骨転移はextrapleural signの一般的な原因であると記載されています。縁が壁へなだらかに移行する形を確認してください。
incomplete border signとは
incomplete border signは、病変の縁の一部しか見えない所見です(Sureka 2013)。肺の外の病変を疑う手がかりのひとつで、ほかに、肺の血管の押しのけ、呼吸による病変の位置の変化があります(Desimpel 2021)。
なぜ縁の一部が見えないのかというと、病変の肺側の縁は、まわりの空気を含む肺との濃さの差があるので、くっきり見えます。しかし、胸壁や胸膜に接する側の縁は、まわりの胸壁と同じくらいの濃さの中に溶け込んで、縁が見えなくなります。「片側だけがくっきり、もう片側がぼんやり」が合言葉です。
症例 20歳代女性 骨肉腫の転移(incomplete border sign)

引用:Radiopaedia(Osteosarcoma metastasis – incomplete border sign)
右の第8肋骨の後方に重なる結節状の陰影があり、内側の縁は明瞭で、外側の縁は不明瞭です。症例ページでは、これがincomplete border signで、胸壁の腫瘤を示唆すると記載されています。CTでは右第8肋骨の後外側に肺の外の骨化した腫瘤があり、骨肉腫の転移とされています。
肺の中か外か、胸膜か胸壁かの見分け方
レントゲンで影を見たときは、まず「肺の中か外か」を考えます。見分けるポイントを表にまとめます(Sureka 2013、Ilsen 2016)。
| 見るポイント | 肺の中 | 肺の外(胸膜・胸壁) |
|---|---|---|
| 胸壁との角 | 鋭角 | 鈍角 |
| 辺縁 | 不整なことが多い | 滑らかで、なだらかに壁へつながる。肺側の縁は明瞭 |
| 縁の見え方 | 全周が見える | 一部が見えない(incomplete border sign)ことがある |
| 肺の血管 | 病変に取り込まれる | 押しのけられる |
| 呼吸による位置 | 病変の中心は肺の中にある | 胸膜病変は、呼吸で位置が変わることがある |
次に、肺の外と判断したあとの「胸膜か胸壁(胸膜外)か」は、レントゲンではほとんど決められません。胸膜の腫瘍と胸壁の腫瘍は、どちらも鈍角を作るためです(Ilsen 2016)。標準的な胸部レントゲンでは、局所の病変が胸膜腔に属するかを正確に特定しにくいとされています(Ilsen 2016)。ここからはCTの出番で、次のような違いが手がかりになります(Sureka 2013)。
| CTで見ること | 胸膜の病変 | 胸膜外(胸壁)の病変 |
|---|---|---|
| 胸膜外脂肪 | 胸壁側へ押される(外向き) | 肺側へ押される(内向き) |
| 肋骨 | 典型的には、肋骨を壊さない | 肋骨・肋間筋・神経血管束などから生じ、肋骨の破壊を伴うことがある |
| 由来 | 胸膜 | 胸膜外脂肪、肋骨、肋間筋、神経血管束 |
胸膜外腔の病変は、胸膜や肺の病変とは治療の方針が異なることがあり、胸部悪性腫瘍では病期や治療計画にも影響するため、見逃されやすい点にも注意が必要です(Pillenahalli Maheshwarappa 2021)。
縦隔の病変との関係
鈍角になるのは、胸壁だけでなく縦隔(左右の肺の間の部分)との間でも同じです。胸膜の腫瘍の一般的な特徴として、末梢で胸壁に接する位置、隣り合う肺との間の鮮明な縁、胸壁や縦隔との間に鈍角が細く移行する形があげられています(Ilsen 2016)。後方の胸壁の腫瘤が、正面像では心臓の裏にある陰影として写り、側面像で後方の鈍角の陰影としてわかった例もあります(Ilsen 2016)。縦隔か肺外かを決めるときも、側面像やCTが役立ちます。縦隔の腫瘤の考え方は、神経原性腫瘍などの記事も参考にしてください。
間違えやすい所見と代表的な病気
胸膜外脂肪は、肥満の人で肋骨の内側に脂肪が増えて、胸膜の肥厚のように見えることがあります。典型的には左右対称で、なめらかに波打つ軟部組織の濃度として、第4〜第8肋骨のあたりに見られるとされています(Ilsen 2016)。詳しくは胸膜外脂肪(extrapleural fat)を参照してください。
胸膜外血腫は、胸膜外腔に生じる血液のたまりですが、胸膜の腫瘍と似て見える病変のひとつです(Walker 2012)。肺の外の影を見たときの鑑別に挙がる病態です。
incomplete border signを示す代表的な腫瘍のひとつに、孤立性線維性腫瘍(SFT)があります。高齢者に多く、境界明瞭な不均一な腫瘤で、incomplete border signや有茎性の形をとることがあると整理されています(Desimpel 2021)。詳しくはSFT(孤立性線維性腫瘍)を参照してください。胸膜の肥厚の鑑別は、胸部CTにおける胸膜肥厚の鑑別診断も参考になります。
正常な胸部レントゲンの見かたは、正常な胸部レントゲン画像の見方にまとめています。
よくある疑問(Q&A)
Q. extrapleural signとincomplete border signは、どう違いますか?
A. extrapleural signは、縁が滑らかで壁へなだらかにつながり、角が鈍角になる形、incomplete border signは、縁の一部が見えない所見です。どちらも「病変が肺の外にある」ことを示す手がかりです(Sureka 2013)。
Q. 鈍角なら、胸膜か胸壁の病変と決めてよいですか?
A. 鈍角は肺の外の病変を疑う目安です。ただし、胸膜の病変も胸壁の病変も鈍角を作るため、レントゲンだけで区別できないことが多く、CTで確認します(Ilsen 2016)。
Q. 胸壁や胸膜に影があると言われました。どうすればよいですか?
A. 影の場所と性質を調べるには、CTが役立ちます。追加の検査が必要かどうかは主治医が判断します。肩や背中、胸の痛み、しこり、咳の持続など気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
Q. 縦隔の病変でも鈍角になりますか?
A. 縦隔に接する病変も、縦隔との間に鈍角を作ります(Ilsen 2016)。そのため、鈍角だけでは胸壁か縦隔かを決められないことがあり、側面像やCTで位置を確かめます。
あわせて読みたい:胸部レントゲンで見落としやすい場所、胸部レントゲン側面像の見方
あわせて読みたい:胸壁腫瘍のCT・MRI
参考文献
- Sureka B, Thukral BB, Mittal MK, et al. Radiological review of pleural tumors. Indian J Radiol Imaging. 2013;23(4):313-20 PubMed
- Ilsen B, Vandenbroucke F, Beigelman-Aubry C, et al. Comparative Interpretation of CT and Standard Radiography of the Pleura. J Belg Soc Radiol. 2016;100(1):106 PubMed
- Desimpel J, Vanhoenacker FM, Carp L, et al. Tumor and tumorlike conditions of the pleura and juxtapleural region: review of imaging findings. Insights Imaging. 2021;12(1):97 PubMed
- Riba M, Andreu M, Lozano C, et al. Pathology of the extrapleural space: Keys to diagnosis. Radiologia (Engl Ed). 2026;68(5):501703 PubMed
- Pillenahalli Maheshwarappa R, Rajdev M, Nagpal P, et al. “Multimodality imaging of the extrapleural space lesions”. Clin Imaging. 2021;79:64-84 PubMed
- Walker CM, Takasugi JE, Chung JH, et al. Tumorlike conditions of the pleura. Radiographics. 2012;32(4):971-85 PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
