側面像の見方 3つの黒いすき間と椎体の黒さ

胸部レントゲンには正面と横向き(側面)の2枚があります。側面像は何を見るために撮るのですか?どこを見ればいいのかわかりません。
側面像は、正面像で心臓や横隔膜、骨の陰に隠れる部分を補う写真です。胸骨の後ろ、心臓の後ろ、気管の後ろの3つの黒いすき間と、背骨の黒さ、横隔膜、葉間裂を順に見れば、初心者の方でも手がかりがつかめます。正面像との対応も含めて整理します。

先に結論:側面像は「3つの黒いすき間」「背骨の黒さ」「横隔膜と後方の角」「葉間裂」の順に見る

項目 ポイント
側面像の役割 正面像で隠れる肺を補う。正面像では見えない約15%の肺が側面像で見える、との記載がある(Raoof 2012)
見る場所 胸骨後腔・気管後腔・心臓後腔(3つの黒いすき間)、椎体、横隔膜、後方の肋骨横隔膜角、葉間裂
代表的なサイン 椎体が下ほど黒くならず白い(spine sign)=下葉の病変。胸骨後腔が白い=前縦隔の腫瘤や右室拡大を考える
注意点 胸骨後腔の白さは、女性など正常でも起きる(Landay 1994)。小さな結節の検出では側面像を足しても診断能は上がらなかった研究もある(Kluthke 2016)

側面像で何がわかるのか

正面像(正しくは後前像)は、胸の前後が重なった写真です。心臓、横隔膜、背骨の陰になる肺は、正面像では見えません。胸部レントゲンの読み方を整理した総説には、側面像によって、正面像では隠れている肺の約15%を見ることができるとあり、正面像だけでなく側面像も見る習慣をつけるよう勧められています(Raoof 2012)。

側面像が力を発揮する場面は、次のとおりです。

場面 側面像でわかること
胸水の検出 胸水の液面(メニスカス)が見え始める量は、側面像で約50 mL、正面像で約200 mLという報告がある(Blackmore 1996)。後方の肋骨横隔膜角の鈍化は、CTで測った胸水量の平均26 mLに対応した(Mammarappallil 2015)
肺門の下の「窓」 側面像の肺門の下方には通常は黒く抜ける領域(inferior hilar window)がある。ここの腫瘤やリンパ節腫大を、感度88%、特異度94%で判定できたが、左右が合っていたのは32%だった(Park 1991)
間質の線状影 胸骨後腔は重なる構造が少なく、肺線維症や肺水腫の網状影(Kerley D line)が正面像より見やすいことがある(Green 2017)
病変の前後の位置 正面像で位置のはっきりしない影が、前の方か後ろの方かを判定できる

一方、小さな肺結節(CTで確認した45例)の検出では、正面像に側面像を加えても診断能は有意に向上しなかったという研究もあります(正面のみ0.75、側面追加0.77、Kluthke 2016)。ただし、この研究は心不全、肺実質の病気、肺門の異常などを評価したものではありません。側面像は「何を探すか」を決めて使う写真といえます。

側面像の見る順番

側面像では、画像の隅の「R」「L」の印で、どちら側を検出器に付けて撮ったかを確認します。そのうえで、前から後ろ、上から下へ見ていきます。多くは、胸骨が左、背骨が右にくる向きで表示されます。

見る場所 正常の見え方 異常のサイン
胸骨後腔(胸骨と上行大動脈の間) 黒い(空気を含む肺) 白い:前縦隔の腫瘤(胸腺腫・リンパ腫など)・右室拡大。広がって見える:肺気腫(Green 2017)
気管後腔(気管の後ろ) 黒い 白い:縦隔の腫瘤・食道の病変などを疑う
心臓後腔(心臓と背骨の間) 黒い(下葉の肺) 白い:下葉の肺炎・無気肺・胸水
椎体(胸椎) 上から下へ向かって、徐々に黒くなる 下の方が白い・黒くなっていない=spine sign
横隔膜 右は前方の胸壁まで続いて見える。左は前方が心臓の陰に隠れ、下に胃の空気(胃泡)がある 線が途切れる・盛り上がる・形がいびつ
後方の肋骨横隔膜角 鋭い 鈍い・丸い:胸水
葉間裂 細い1本の線 線の位置のずれ・太くなる:無気肺・葉間胸水

3つの黒いすき間(胸骨後腔・気管後腔・心臓後腔)

側面像には、胸骨後腔(retrosternal clear space)、気管後腔(retrotracheal)、心臓後腔(retrocardiac)の3つの黒く抜けるすき間があります(Green 2017)。胸骨後腔は、胸骨と上行大動脈の間にある黒い領域で、右室の流出路が作る心臓の縁より上にあります(Green 2017)。

胸骨後腔が白くなるのは、前縦隔の腫瘤か右室の拡大を示すことが教科書的に知られており、肺気腫などの閉塞性肺疾患では逆にこの領域が広がります(Green 2017)。ただし、正常でも胸骨後腔が心臓後腔より白く見える人がいます。正常の側面像38例を調べた研究では、胸骨後腔のほうが白かったのは16例(42%)で、女性では12人中10人、男性では26人中6人でした(Landay 1994)。上行大動脈の前縁がはっきり見えたのは9例(24%)にとどまり、胸骨から大動脈までの距離が2.5 cmを超えても正常のことがあります(Landay 1994)。胸骨後腔が白いだけで異常と決めず、正面像や他の所見と合わせて判断します。

心臓後腔は、下葉の肺が写る領域です。ここが白くなっているときは、下葉の肺炎や無気肺、胸水が隠れていないかを見ます。

椎体は下ほど黒くなる(spine sign)

側面像の胸椎は、上から下に向かって、だんだん黒く(透過性が高く)見えるのが正常です。下の方の椎体が白いままのとき、あるいは前より白くなったときは、椎体に重なる下葉に影(浸潤影など)があるサインで、spine signと呼ばれます。

症例 40歳代女性 左下葉の浸潤影(spine sign)

左下葉の浸潤影 胸部側面X線 spine sign
引用:Radiopaedia(Spine sign)

症例ページでは、左下葉の浸潤影(肺炎を疑う)で、側面像のspine signとして最もよくわかると記載されています。18か月前の胸部レントゲンは異常なしでした。

横隔膜の左右と後方の肋骨横隔膜角

側面像の横隔膜は、前から後ろへ向かう1本の弧として見えます。右と左は、右は前方の胸壁まで線が続き、左は前方が心臓の陰に隠れて途中から見えなくなり、下に胃泡が見えることで区別します。迷うときは、画像のR・Lの印も参考にします。横隔膜そのものの位置と働きは、横隔膜はどこにある?で解説しています。

側面像のいちばん後ろの肋骨横隔膜角は、胸水がたまる最初の場所です。鋭い角が、丸く鈍くなっていれば、少量の胸水を考えます(Mammarappallil 2015)。

葉間裂

葉間裂は、肺葉の境の細い線です。側面像では、大葉間裂(斜裂)は、後ろ上方から前下方へ斜めに下りる1本の線として、小葉間裂(水平裂)は、ふつう右肺にだけ見える、水平に前方へ向かう線として見えます。線が引き込まれて位置がずれていれば、その肺葉の無気肺を疑います(肺葉性無気肺の胸部レントゲン所見)。線に沿ってレンズ状の影があれば、葉間胸水の可能性があります(葉間胸水とは?)。線が余分に見えるときは、副葉間裂などの正常変異かもしれません。

正面像と側面像の対応

側面像は、正面像で気になった影を「前か後ろか」「どの肺葉か」と翻訳する写真です。主な対応を表にまとめます。

正面像で気づくこと 側面像で確認すること
右の心臓の縁が不鮮明になった 右中葉の病変:側面像で心臓の前下方に帯状・三角形の影がないか
心臓の裏が白い・左下葉が見えにくい 下葉の病変:心臓後腔の白さと、下の方の椎体が黒くなっているか(spine sign)
縦隔が広がったかはっきりしない 胸骨後腔が白くなっていないか。前縦隔腫瘤・右室拡大を疑う
横隔膜の肋骨横隔膜角がはっきりしない 後方の肋骨横隔膜角が鈍っていないか(胸水)
肺門が大きい・不明瞭 肺門の下の窓(inferior hilar window)に影がないか(Park 1991)

症例 40歳代女性 左下葉の浸潤影(正面像)

左下葉の浸潤影 胸部正面X線(同じ症例)
引用:Radiopaedia(Spine sign)

前の症例と同じ患者さんの正面像です。症例ページでは、左下葉の浸潤影は側面像で最もよくわかると記載されています。正面像で気になる点があれば、側面像と組み合わせて見る意味がよくわかります。

正面像の基本は、正常な胸部レントゲン画像の見方にまとめています。

よくある疑問(Q&A)

Q. 側面像は、胸部レントゲンのときいつも撮るものではないのですか?
A. 側面像を足しても小さな肺結節の検出能が上がらなかった研究があるように(Kluthke 2016)、目的によって有用性が変わります。胸水や縦隔の腫瘤、肺炎の位置の確認など、正面像で疑問が残るときに追加するのが一般的です。撮るかどうかは、主治医や検査施設の判断に従ってください。

Q. 胸骨の後ろが白いと言われました。悪いものですか?
A. 胸骨後腔が白く見える所見は、正常でも起こります。正常の側面像の約4割で、胸骨後腔のほうが心臓後腔より白く、女性に多い傾向がありました(Landay 1994)。他の所見と合わせて判断します。気になる症状があれば医療機関に相談してください。

Q. 側面像で胸水はどのくらいからわかりますか?
A. 液面が側面像で見え始めるのは約50 mL、正面像では約200 mLという報告があります(Blackmore 1996)。ただし個人差が大きく、CTで測った量にも幅があります(Mammarappallil 2015)。

Q. 側面像のspine signは肺炎だけですか?
A. 下葉の異常を知らせるサインで、肺炎が代表的です。椎体が下ほど黒くなるという正常の変化が失われたかどうかが手がかりです。

あわせて読みたい:胸部レントゲンで見落としやすい場所、extrapleural sign・incomplete border signとは

あわせて読みたい:心臓CTの正常解剖

参考文献

  1. Raoof S, Feigin D, Sung A, et al. Interpretation of plain chest roentgenogram. Chest. 2012;141(2):545-558 PubMed
  2. Landay MJ. Anterior clear space: how clear? How often? How come? Radiology. 1994;192(1):165-9 PubMed
  3. Green DB, Legasto AC, Drexler IR, et al. Pulmonary fibrosis on the lateral chest radiograph: Kerley D lines revisited. Insights Imaging. 2017;8(5):483-489 PubMed
  4. Park CK, Webb WR, Klein JS. Inferior hilar window. Radiology. 1991;178(1):163-8 PubMed
  5. Blackmore CC, Black WC, Dallas RV, et al. Pleural fluid volume estimation: a chest radiograph prediction rule. Acad Radiol. 1996;3(2):103-9 PubMed
  6. Mammarappallil JG, Anderson SA, Danelson KA, et al. Estimation of Pleural Fluid Volumes on Chest Radiography Using Computed Tomography Volumetric Analysis: An Update of the Visual Prediction Rule. J Thorac Imaging. 2015;30(5):336-9 PubMed
  7. Kluthke RA, Kickuth R, Bansmann PM, et al. The additional value of the lateral chest radiograph for the detection of small pulmonary nodules-a ROC analysis. Br J Radiol. 2016;89(1067):20160394 PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →