撮影条件の確認 回旋・吸気・透過度・PA/AP・立位/臥位

救急外来や病棟でベッドの上から撮った胸部レントゲンは、心臓が大きく、肺も全体に白っぽく見えます。写真を見る前に、何を確認すればよいのでしょうか?
病気を探す前に、「まっすぐ撮れているか(回旋)」「十分に息を吸っているか(吸気)」「写り具合は適切か(透過度)」「立って後ろから撮ったか、寝て前から撮ったか(PA・AP、立位・臥位)」の4つを確かめます。この条件が崩れると、心臓が大きく見えたり、片方の肺が黒く(または白く)見えたりします。条件ごとの見え方の変化を整理します。

先に結論:読影の最初の30秒は「回旋・吸気・透過度・撮影体位」の確認。条件が悪い写真は所見を割り引いて読む

確認項目 ポイント
回旋 胸椎の棘突起が左右の鎖骨内側端の真ん中にあるか。ずれていれば回旋あり。回旋で片側の肺が黒く(白く)見え、縦隔が偏位したり心臓が大きく見えたりする(Marais 2023)
吸気 後ろの肋骨が何本見えるか、横隔膜がどの高さか。吸気不足では心臓が大きく、下肺野が白く見える
透過度 心臓の陰を通して背骨が薄く見える程度が目安。白すぎると肺の奥が、黒すぎると淡い影が見えなくなる
体位・撮影方向 立位のPA(後前)像が基準。AP(前後)像や臥位では心臓や縦隔が大きく見え、胸水と気胸の見え方も変わる(Milne 1988、Park 2023)

なぜ最初に撮影条件を確認するのか

胸部レントゲンは、肺の中の空気、心臓や血管、骨、皮下の脂肪など、濃さの違う組織が重なった1枚の影です。同じ病気でも、撮り方が違えば別の絵になります。逆に、撮り方の違いだけで「病気のように見える写真」ができあがることも珍しくありません。

読影の最初の手順として、「読影前のチェック」を習慣にします。立位の写真か臥位の写真か、撮影条件は適切か、正しい体位で撮られているかを確かめます。心臓や血管の陰の異常、経過の変化が、不適切な体位・不十分な吸気・X線の向きのずれによることも少なくないためです。以前の写真と比べるときも、同じ条件同士で比べることが基本です。

胸部レントゲンの全体の見方は正常な胸部レントゲン画像の見方で、見落としやすい場所は胸部レントゲンで見落としやすい場所で整理しています。この記事は、それらを読む前の「写真の質の確認」に絞った内容です。

読む前の4つのチェック

項目 確認のしかた 崩れたときの落とし穴
回旋(まっすぐ撮れているか) 胸椎の棘突起が、左右の鎖骨の胸骨側の端から等しい距離にあるかを見る 片側の肺野が黒く、反対側が白く見える。心臓や縦隔がずれて見える。心臓が大きく見える
吸気(十分に吸えているか) 後ろの肋骨が何本見えるか、横隔膜の高さを確かめる。最大吸気で撮るのが基本 心臓が大きく見える。肺底部の血管が集まり、白くもやもや見えて肺炎のように見える
透過度(写り具合) 心臓の陰の向こうに背骨の輪郭が薄く見えるかを確かめる 白っぽい写真は心臓の裏や下肺野が見えない。黒っぽい写真は淡い影や細い血管が消える
体位・撮影方向 写真の「立位」「臥位」の表示、肩甲骨の位置、胃泡の液面の有無を見る 心拡大・縦隔拡大・胸水・気胸の見え方が変わる(次の章)

回旋:棘突起と鎖骨内側端の位置を見る

正面から正しく撮れた写真では、胸椎の棘突起が左右の鎖骨の胸骨側の端から等しい距離にあります。棘突起がどちらかに寄っていれば、体が斜めを向いて撮られています。

回旋の影響を新生児の胸部写真で整理した総説では、ICUで撮った新生児の胸部写真の半数を超えるものに回旋があり、次の6つの影響があると述べられています(Marais 2023)。

  • 回旋した向きの側の肺が、黒く(透過性が高く)見える
  • 上になった側の肺が大きく見える
  • 心臓と縦隔の影が、回旋した向きへずれて見える
  • 見かけの心拡大
  • 心臓・縦隔の形が崩れて見える
  • 臍帯のカテーテルの先端の位置関係が逆に見える

この総説では、回旋が空気の閉じ込め(エアトラッピング)、無気肺、心拡大、胸水と見間違える原因になり、逆に病気を隠すこともあると述べています(Marais 2023)。対象は新生児ですが、回旋で肺野の濃さが変わるしくみは成人の写真でも同じです。症例ページでも、回旋した成人の仰臥位写真では、片側の肺の容積が小さく、濃度が高く見える(外傷の所見と見間違えやすい)と説明されています(後述の症例)。

片側が黒い写真の鑑別は気管・気管分岐部の高さと気管偏位の見方と合わせて、「まず回旋を除く」ことから始めます。

吸気:息が浅いと「偽の異常」ができる

胸部レントゲンは、最大吸気で息を止めて撮るのが基本です。息が浅いと、肺が縮んで血管や気管支が下の方に詰まり、下肺野が白く濁って見えます。心臓も横に広がって見えます。肺炎や心拡大と誤診しないよう、後ろの肋骨の見える本数と横隔膜の高さを先に確かめます。

高齢の方、寝たきりの方、痛みで息を吸えない方、乳幼児では、十分な吸気が得られないことが普通にあります。吸気不足の写真で見つけた下肺野の影は、撮り直しや、ほかの方法(超音波やCT)で確認してから判断します。

透過度:背骨が透けて見えるかを目安にする

X線の強さが適切だと、心臓の陰を通して、胸椎の輪郭が薄く見えます。まったく見えなければ、写真は白すぎ(X線が不足)で、心臓の裏の肺や下肺野の異常を見逃します。背骨がくっきり見えすぎれば黒すぎで、淡い影や細い血管が見えなくなります。デジタル画像では、画面の明るさやコントラストを調節できるので、条件が悪い写真でも調整すると見えることがあります。

AP像・臥位で変わる見え方

胸部レントゲンの基準は、立位で、背中側からX線を当てて胸側のフィルム(検出器)で受ける後前(PA)像です。重症の患者さんや術後の方、新生児では、座位や臥位で前からX線を当てる前後(AP)像になります。ベッドサイドの携帯撮影は、ほとんどがAP像です。

見るもの PA・立位 AP・臥位
心臓の大きさ 心臓がフィルムに近く、拡大が少ない 心臓がフィルムから遠く、拡大して大きく見える
縦隔の幅 基準になる 広く見えやすい(正常でも)
胸水 下に溜まり、肋骨横隔膜角が鈍くなる 背中側に広がり、肺全体がうっすら白くなる
気胸 肺尖部の空気が見えやすい 空気が胸の前の方に集まり、見逃しやすい
肩甲骨・鎖骨 肩甲骨が肺野の外に出る 肩甲骨が肺野に重なりやすい

心臓は大きく、縦隔は広く見える

AP像では心臓がフィルムから遠いため、影が拡大します。ファントム(人体模型)と患者で調べた研究では、PA像からAP像に変えたときの心胸郭比への影響は、撮影距離を変えた影響よりずっと大きいことが示されています。AP像では心臓の横幅が拡大する一方、胸郭の横幅はフィルムに近くなって縮小するためで、この2つが逆向きに働いて心胸郭比が大きく変わります。また、小さな心臓ほど拡大されやすいとされ、正確な補正はできないものの、おおよその補正係数(撮影距離により、心胸郭比の値の10〜12.5%ほどを割り引く)を使えば、心臓が大きいかどうかの目安は付けられると報告されています(Milne 1988)。心拡大の評価は心陰影の拡大(心拡大)とはも参考にしてください。

縦隔も、臥位や前後方向の撮影では広く見えやすく、回旋や息の浅さでも幅が変わります。外傷の場面では、仰臥位の写真で縦隔が広く見えても、実際には正常で、CTで異常がなかった例が、症例ページで示されています。

胸水は「肺全体の白さ」になる

立った状態では、胸水は下の方に溜まり、肋骨横隔膜角が鈍くなるので目立ちます。一方、仰向けでは、胸水は背中側に薄く広がります。仰臥位の写真での胸水の見え方を調べた研究では、立位のPA像で肋骨横隔膜角が鈍くなる量の胸水(175〜525 mL)でも、仰臥位の写真では下肺野の濃度がはっきり上がる程度と報告されています。肺野全体が白くなる所見や、肺尖部にかぶさるように見える所見(apical capping)は、大量の胸水で見られる遅い所見でした(Woodring 1984)。

別の研究では、側臥位(デクビタス)像で確認した胸水36例のうち、仰臥位の写真で見つけられたのは24例でした(感度67%、特異度70%)。著者は、仰臥位の写真が正常でも胸水を否定できないと結論しています(Ruskin 1987)。胸水の原因そのものは別の記事で詳しく説明しています。

気胸は「前に集まる」ので見逃しやすい

立位では、気胸の空気は肺の上(肺尖部)に溜まります。仰向けでは、空気は胸の前側、心臓の脇や横隔膜の上に集まるので、肺尖部に黒い線が見えず、「肋骨横隔膜角が深く黒い(deep sulcus sign)」といった間接的なサインに頼ることになります。外傷患者を調べた研究では、仰臥位の写真での気胸の診断は、感度が12.7%、正確度が46.7%と低く、CTで初めて見つかる気胸(潜在性気胸)に注意が必要だと述べられています(胸部外傷1,284例、Park 2023)。仰臥位の写真で気胸を見つけるためのサインは、症例を示した総説にまとめられています(Rierson 2016)。臥位での気胸の見落としは臥位のfree airと気胸の見落としでも取り上げています。

症例 回旋した仰臥位の胸部X線

回旋した仰臥位の胸部X線 外傷患者
引用:Radiopaedia(Normal supine trauma chest x-ray with rotation)

仰臥位で撮った外傷患者の胸部X線で、患者の体が大きく回旋しています。症例ページでは、この回旋によって、右の肺の容積が小さく、濃度が高く見えるため、外傷の所見と誤って判断されかねないと説明されています。この患者さんは、その後のCTで胸部に異常はありませんでした。

症例 仰臥位で縦隔が広く見える正常像

仰臥位で縦隔が広く見える正常の胸部X線
引用:Radiopaedia(Normal supine trauma chest x-ray)

外傷の患者さんの仰臥位の胸部X線で、縦隔が広く見え、大動脈弓がはっきりしません。症例ページでは、その後のCTで胸部に異常はなく、仰臥位の外傷患者では縦隔の拡大に見えるのはよくある正常所見で、高齢の方、肥満の方、息を吐いた状態で撮った写真、回旋のある写真で目立つと説明されています。

デクビタス撮影と呼気撮影はいつ使うか

撮影 方法 使いどころ
側臥位(デクビタス) 横向きに寝て、水平方向からX線を当てる。胸水を疑う側を下にする 胸水が動くか(遊離しているか)を調べる。少量の胸水を確認する。仰臥位の写真での胸水の評価の基準としても使われた(Ruskin 1987)
呼気撮影 息を吐ききった状態で撮る 気管支の異物で片側のエアトラッピングを見る。気胸の確認(効果は議論がある)

デクビタスは、胸水が重力で側胸壁に沿って広がるかを見るための撮影で、胸水が溜まった側を下にします。液体が動かなければ、癒着や被包化(液体が袋状に閉じ込められた状態)を考えます。現在は、超音波で少量の胸水を調べることも増えています。超音波で確認する方法もあります。

呼気撮影は、気胸の小さな空気を見つけやすくなると長く考えられてきました。しかし、肺尖部の小さな気胸の患者22人で、吸気と呼気の写真の濃度を比べた研究では、呼気の写真で、肺と胸腔内の空気のコントラストは良くならなかったと報告されています(Schramel 1996)。胸部の病気全体を最初に評価する撮影としては、深く息を吸った状態の正面像と側面像が適切とされ、気胸の初期診断で吸気と呼気のどちらを選ぶかには議論があると整理されています(Cases Susarte 2018)。呼気撮影は、気管支異物のエアトラッピングを見るためなど、目的をはっきりさせて使うものです。片側の肺が黒い原因として気道異物を考えるときの見方は、別の記事で詳しく説明します。

条件の悪い写真を読むときの考え方

  • 最初に、写真の条件(回旋・吸気・透過度・体位)を確認し、悪い条件は読影レポートにも記録する
  • 条件が悪いときの「異常」は割り引いて読み、本物かどうかをほかの方法で確認する
  • 心拡大、縦隔拡大、肺底部の白さ、片側の黒さは、特に撮影条件の影響を受けやすい
  • 経過を比べるときは、同じ体位・同じ撮影方向の写真同士にする(AP像と、PA像を比べない)
  • 臥位の写真で見つからなくても、胸水や気胸を否定しない
  • 迷ったら、撮り直し、側面像、超音波、CTを検討する

よくある疑問(Q&A)

Q1. ベッドサイドで撮った写真は、心拡大の診断に使えませんか?

使えますが、AP像では心臓が大きく見えるため、胸部写真だけでは判断を保留することがあります。以前のAP像との比較、心エコーなどでの確認をすすめます。心拡大の目安をPA像と同じ数字で当てはめないことが大切です(Milne 1988)。

Q2. 健診の写真が「回旋」と書いてありました。撮り直しが必要ですか?

回旋が軽く、診断に影響しないことも多いので、すべてが撮り直しになるわけではありません。気になる影があれば、再撮影や追加の検査が行われます。結果の説明を受けたときに、条件のことも含めて確認してください。気になる症状があれば医療機関に相談してください。

Q3. 息を止めるのが苦手です。どうしたらよいですか?

撮影のときに技師の指示に従って、息を大きく吸って止めます。うまくできないときは、そのまま伝えてください。体調や年齢で難しい場合は、できる範囲で撮影し、その条件が医師に伝わります。

Q4. 立位で撮れない患者さんはどうしていますか?

座位や臥位で、前後(AP)方向から撮ります。このときの写真の特徴(心臓が大きく見える、胸水や気胸が目立たない)を踏まえて読影します。胸水や気胸の疑いが強いときは、超音波やCTを追加します(Park 2023、Ruskin 1987)。

あわせて読みたい:胸部レントゲンで片側の肺が白い、胸部レントゲンで片側の肺が黒い(一側性透過性亢進)

あわせて読みたい:新生児の胸部レントゲン

あわせて読みたい:比較読影とは

参考文献

  1. Milne EN, Burnett K, Aufrichtig D, et al. Assessment of cardiac size on portable chest films. J Thorac Imaging. 1988;3(2):64-72 PubMed
  2. Woodring JH. Recognition of pleural effusion on supine radiographs: how much fluid is required? AJR Am J Roentgenol. 1984;142(1):59-64 PubMed
  3. Ruskin JA, Gurney JW, Thorsen MK, et al. Detection of pleural effusions on supine chest radiographs. AJR Am J Roentgenol. 1987;148(4):681-3 PubMed
  4. Marais J, Venkatakrishna SSB, Calle-Toro JS, et al. Patient rotation chest X-rays and the consequences of misinterpretation in paediatric radiology. Paediatr Respir Rev. 2023;47:41-50 PubMed
  5. Park IH, Kim CW, Choi YU, et al. Occult pneumothorax in patients with blunt chest trauma: key findings on supine chest radiography. J Thorac Dis. 2023;15(8):4379-4386 PubMed
  6. Schramel FM, Golding RP, Haakman CD, et al. Expiratory chest radiographs do not improve visibility of small apical pneumothoraces by enhanced contrast. Eur Respir J. 1996;9(3):406-9 PubMed
  7. Cases Susarte I, Sánchez González A, Plasencia Martínez JM. Should we perform an inspiratory or an expiratory chest radiograph for the initial diagnosis of pneumothorax? Radiologia (Engl Ed). 2018;60(5):437-440 PubMed
  8. Rierson D, Bueno J. Pneumothorax in the Supine Patient: Subtle Radiographic Signs. J Thorac Imaging. 2016;31(4):W16-22 PubMed

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