
先に結論:脈絡叢(みゃくらくそう、choroid plexus)は、4つの脳室(左右の側脳室・第3脳室・第4脳室)の中にあり、髄液(脳脊髄液)を作る組織です。側脳室の三角部にある大きなかたまり(脈絡糸球)は、CTで石灰化して白く見えることが多く、造影CT・造影MRIで強く染まるのも正常です。
| 場所 | 脈絡叢の位置と見え方 |
|---|---|
| 側脳室 | 体部〜三角部(脈絡糸球 glomus)〜下角。前角・後角には無い |
| 第3脳室 | 天井(上の壁)に沿って細く付く。モンロー孔で側脳室の脈絡叢とつながる |
| 第4脳室 | 天井の下半分。左右のルシュカ孔から小脳橋角槽へ少し顔を出す |
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの頭部MRIの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。

画像診断cafe「頭部MRIの正常解剖」の画面(T2強調像・側脳室の高さ)。一覧から脈絡叢などを選ぶと色づきます
脈絡叢とは?髄液を作る働き
脈絡叢は、細い血管のかたまりを、髄液を分泌する上皮細胞(脈絡叢上皮)が包んだ、ふさ状の組織です。4つの脳室それぞれにあり、脈絡叢上皮が血液から水分を取り出して髄液を作り続けています(MacAulay 2022)。髄液を作るほか、脳を守るバリア(血液-髄液関門)や免疫にも関わっていると考えられています(Mortazavi 2014)。
作られた髄液は、側脳室 → モンロー孔 → 第3脳室 → 中脳水道 → 第4脳室 → マジャンディ孔・ルシュカ孔 → くも膜下腔(脳槽)の順に流れます。
場所ごとの脈絡叢
側脳室:体部〜三角部〜下角
| 部位 | 見え方 |
|---|---|
| 体部 | 側脳室の内側の床に沿う細い帯 |
| 三角部(atrium/trigone) | 脈絡叢がいちばん大きくなる脈絡糸球(choroid glomus)。横断像で左右対称の「かたまり」として見える |
| 下角(側頭角) | 海馬の上内側に沿って前へ伸びる |
- 脈絡叢は脳室の内側の溝(脈絡裂 choroidal fissure)に付いており、前角と後角には脈絡叢がありません。前角に「脈絡叢のようなもの」が見えたら別のものを考えます。
- 側脳室の各部分の名前は側脳室の解剖で図とともに解説しています。
第3脳室:天井に沿って
第3脳室の天井(脈絡組織)に沿って左右2本の細い脈絡叢があり、モンロー孔のところで側脳室の脈絡叢と連続しています。細いので、ふだんの画像ではあまり目立ちません。
第4脳室:天井とルシュカ孔
第4脳室の天井の下半分に付き、左右の外側の出口(ルシュカ孔 foramen of Luschka)から小脳橋角槽へ少しはみ出しています。造影MRIで小脳橋角の近くに小さく染まる点が見えることがあり、腫瘍と間違えないよう注意します。
脈絡叢を養う血管
- 側脳室下角〜三角部:前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery)(内頸動脈の枝)と外側後脈絡叢動脈(後大脳動脈の枝)。
- 第3脳室:内側後脈絡叢動脈。
- 第4脳室:後下小脳動脈などの枝。
前脈絡叢動脈の走り方と灌流域は前脈絡叢動脈(AChA)とは?へ。
CT・MRIでの正常の見え方
| 検査 | 正常の脈絡叢 |
|---|---|
| 単純CT | 脳とほぼ同じ濃さ。三角部の石灰化(白い点・かたまり)は大人でよく見られる |
| 造影CT・造影MRI | 強く均一に造影される(正常) |
| T2強調像・FLAIR像 | 髄液の中の、やや不均一なかたまり。石灰化部分は黒っぽい |
| 拡散強調像(DWI) | 三角部の脈絡叢嚢胞が白く見えることがある |
- 石灰化:脈絡叢の石灰化は、松果体の石灰化などと並ぶ代表的な生理的石灰化です。0〜9歳の頭部CT 500例を調べた報告では12%に脈絡叢の石灰化があり、乳児でも見られました(Whitehead 2015)。年齢別の考え方は脳の生理的石灰化へ。
- 造影される理由:脈絡叢の血管は脳の血管と違って血液脳関門(blood-brain barrier)を持たないため、造影剤が組織にしみ出して染まります。脈絡叢が染まること自体は異常ではありません。
脈絡叢に関係する病気・所見
| 所見・病気 | ポイント |
|---|---|
| 脈絡叢嚢胞(choroid plexus cyst) | 大人では三角部に多く、多くは偶然見つかる良性の所見。DWIで白く見えることがある(脈絡叢嚢胞とは?)。胎児超音波で見つかる脈絡叢嚢胞は別の文脈で扱われる(Lopez 2006) |
| 脈絡叢乳頭腫(choroid plexus papilloma) | 脈絡叢から出る腫瘍。小児では側脳室(三角部)、大人では第4脳室に多い。分葉状で強く造影され、水頭症を伴うことがある(Smith 2013) |
| 脳室内転移 | 脈絡叢は血流が多く、転移の起こる場所の一つ(脈絡叢/脳室内転移のMRI画像所見) |
| 脳室内髄膜腫 | 大人の側脳室三角部に多い脳室内腫瘍の一つ(Smith 2013) |
| 脈絡叢の腫大 | 左右差のある腫大や結節は、腫瘍・炎症・血管性病変などを考える |
脳室内の腫瘍は、どの脳室のどの場所にあるかと年齢を組み合わせると候補を絞りやすくなります(Smith 2013)。脈絡叢の病気の画像所見全体はGuermaziらの総説にまとめられています(Guermazi 2000)。
間違えやすい構造:側頭葉内側の脈絡裂にできる脈絡裂嚢胞は、名前が似ていますが脳室の外(脳実質と脳槽のあいだ)の嚢胞で、脈絡叢嚢胞とは別のものです。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 頭部CTで「脈絡叢の石灰化」と言われました。心配いりませんか?
大人の側脳室三角部の左右対称な石灰化は、生理的石灰化としてよく見られるものです。ただし、年齢や形、ほかの所見によって意味が変わることもあるため、気になる場合は検査を受けた医療機関で確認してください。
Q2. 造影MRIで脳室の中が白く染まっています。異常ですか?
脈絡叢は血液脳関門がないため、正常でも強く造影されます。左右差のある腫大や結節状の部分があるかどうかで、異常の可能性を考えます。
Q3. 脈絡叢はどの断面で見るとわかりやすいですか?
横断像では側脳室三角部の高さで左右対称のかたまりとして見つけやすいです。下角や第4脳室の脈絡叢は冠状断・矢状断も合わせると位置関係がつかみやすくなります(頭部MRIの解剖)。
まとめ
- 脈絡叢は4つの脳室の中にあり、髄液を作る組織。
- 側脳室の体部〜三角部〜下角にあり、前角・後角には無い。三角部の大きなかたまりが脈絡糸球。
- 第3脳室は天井、第4脳室は天井の下半分とルシュカ孔。
- 石灰化と強い造影増強は正常でも見られる。左右差のある腫大・結節は脈絡叢乳頭腫・転移・髄膜腫などを考える。
画像診断cafeの頭部MRIの正常解剖ツールでは、スライスを動かしながら脳室や脈絡叢のまわりの構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。iPhoneでは無料アプリ画像診断cafe(頭部MRIの解剖)でも見られます。
参考文献
- Mortazavi MM, Griessenauer CJ, Adeeb N, et al. The choroid plexus: a comprehensive review of its history, anatomy, function, histology, embryology, and surgical considerations. Childs Nerv Syst. 2014;30(2):205-14. PubMed
- MacAulay N, Keep RF, Zeuthen T. Cerebrospinal fluid production by the choroid plexus: a century of barrier research revisited. Fluids Barriers CNS. 2022;19(1):26. PubMed
- Whitehead MT, Oh C, Raju A, et al. Physiologic pineal region, choroid plexus, and dural calcifications in the first decade of life. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(3):575-80. PubMed
- Smith AB, Smirniotopoulos JG, Horkanyne-Szakaly I. From the radiologic pathology archives: intraventricular neoplasms: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2013;33(1):21-43. PubMed
- Guermazi A, De Kerviler E, Zagdanski AM, et al. Diagnostic imaging of choroid plexus disease. Clin Radiol. 2000;55(7):503-16. PubMed
- Lopez JA, Reich D. Choroid plexus cysts. J Am Board Fam Med. 2006;19(4):422-5. PubMed
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