
先に結論:頭部CTの解剖は「スライスの高さ」ごとに目印を決めて覚えます。
| 高さ(レベル) | 見える主な構造 | 目印 |
|---|---|---|
| ① 後頭蓋窩 | 橋・延髄、小脳半球・小脳虫部、第4脳室、側頭葉の下端 | 小脳の前にある「横長の第4脳室」 |
| ② 中脳・鞍上槽 | 中脳、鞍上槽、シルビウス裂、迂回槽、側頭葉内側 | 星形(五角形)の鞍上槽 |
| ③ 基底核・視床 | 尾状核頭、被殻、淡蒼球、内包(前脚・膝・後脚)、視床、第3脳室 | 「く」の字の内包 |
| ④ 側脳室体部 | 側脳室体部、脳梁、尾状核体部、放線冠 | 左右に並ぶ「八の字」の側脳室 |
| ⑤ 半卵円中心・頭頂 | 半卵円中心、中心溝、中心前回・中心後回、大脳鎌 | 逆Ω(オメガ)形の手の運動野 |
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの頭部CTの正常解剖ツール(制作中・順次公開)で、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。頭部CTは塗り終わった構造から順に公開しているため、まだ名前が出ない構造は、完成済みの頭部MRIの正常解剖ツールで同じ高さの構造を確かめられます。

画像診断cafe「頭部MRIの正常解剖」の画面(T2強調像・側脳室の高さ)。構造をタップすると色と名前が出ます。頭部CT版は制作中で、塗り終わった構造から順次公開しています
頭部CTの見え方の基本(白い・黒い)
CTは、X線の吸収(CT値、単位HU: Hounsfield unit)の大きさを白黒で表した画像です。吸収が大きいものほど白く(高吸収 high density)、小さいものほど黒く(低吸収 low density)写ります。
- 骨・石灰化:最も白い。頭蓋骨のほか、松果体・脈絡叢・淡蒼球などの生理的石灰化も白い点として見えます。
- 灰白質(gray matter):白質よりわずかに白い。大脳皮質と基底核・視床がこれにあたります。
- 白質(white matter):灰白質よりわずかに黒い。内包・放線冠・半卵円中心など。
- 髄液(CSF):水に近く黒い。脳室・脳槽・脳溝の中身です。
- 空気・脂肪:髄液よりさらに黒い。副鼻腔・乳突蜂巣の空気、皮下脂肪。
読影の順番や高吸収・低吸収の考え方は頭部CTの見方まとめにまとめています。
① 後頭蓋窩の高さ:脳幹(橋)・小脳・第4脳室
いちばん下のスライスです。頭蓋骨の内側が前・中・後の3つのくぼみ(頭蓋窩)に分かれ、後ろのくぼみ(後頭蓋窩 posterior fossa)に脳幹と小脳が入っています。
| 構造 | 場所と見分け方 |
|---|---|
| 橋(pons) | 後頭蓋窩の前寄り中央。前に脳底動脈、両脇から中小脳脚が小脳へ伸びる |
| 第4脳室(fourth ventricle) | 橋のすぐ後ろ、小脳との間にある横長の黒い髄液腔 |
| 小脳半球・小脳虫部 | 第4脳室の後ろ。中央が虫部(vermis)、左右が半球 |
| 側頭葉の下端 | 中頭蓋窩の中で、錐体骨より前の左右 |
| 錐体骨・乳突蜂巣 | 後頭蓋窩と中頭蓋窩を分ける白い骨。乳突蜂巣は空気で黒い |
- 目印:第4脳室が見つかれば、その前が橋、後ろが小脳です。第4脳室が左右どちらかに押されていないかも見ます。
- 間違えやすい点:錐体骨のあいだは骨によるすじ状のアーチファクト(beam hardening)が出やすく、橋が暗く見えることがあります。左右の骨にはさまれた帯状の黒さは病変と決めつけず、MRIで確かめます。
② 中脳・鞍上槽の高さ:シルビウス裂と側頭葉内側
少し上がると、脳の真ん中に星形(五角形〜六角形)の黒い領域が見えます。これが鞍上槽(suprasellar cistern)で、下垂体の上、視交叉のまわりの髄液のたまりです。
| 構造 | 場所と見分け方 |
|---|---|
| 鞍上槽 | 中央前寄りの星形の髄液腔。前の角が大脳縦裂、左右の角がシルビウス裂に続く |
| シルビウス裂(Sylvian fissure/外側溝) | 前頭葉と側頭葉のあいだを外側へ伸びる溝。奥に島(insula) |
| 中脳(midbrain) | 鞍上槽のすぐ後ろ。左右の大脳脚がミッキーマウスの耳のような形 |
| 迂回槽(ambient cistern)・四丘体槽 | 中脳を左右・後ろから取り囲む細い髄液腔 |
| 側頭葉内側(鉤・海馬) | 鞍上槽の左右外側。鉤(uncus)が鞍上槽に張り出していないかを見る |
- 目印:星形の鞍上槽と、その後ろの中脳。くも膜下出血ではこの脳槽が白く埋まるため、黒く見えているかどうかが大事な確認点です。
- 間違えやすい点:鞍上槽のまわりの白い点は、内頸動脈・中大脳動脈の石灰化や造影された血管のことがあります。
脳葉の境目やシルビウス裂の位置は脳葉と脳回の解剖一覧で図にしています。
③ 基底核・内包・視床の高さ:「く」の字を探す
頭部CTで最も構造が多く、脳梗塞・脳出血の読影でも中心になる高さです。
| 構造 | 場所と見分け方 |
|---|---|
| 側脳室前角(frontal horn) | 前寄り中央の「ハの字」の黒い髄液腔 |
| 尾状核頭(caudate head) | 側脳室前角の外側の壁をつくる灰白質 |
| 被殻(putamen) | 最も外側の大きな灰白質。外側に外包・前障・島 |
| 淡蒼球(globus pallidus) | 被殻の内側。被殻とあわせてレンズ核と呼ぶ |
| 内包(internal capsule) | 尾状核・視床とレンズ核のあいだの白質。前脚・膝・後脚で「く」の字 |
| 視床(thalamus) | 内包後脚の内側、第3脳室の両脇の灰白質 |
| 第3脳室(third ventricle) | 左右の視床にはさまれた縦の細い髄液腔 |
| 松果体(pineal gland) | 第3脳室の後ろ。石灰化して白い点に見えることが多い |
- 目印:白質の「く」の字(内包)を見つけ、その内側前が尾状核、内側後ろが視床、外側がレンズ核と覚えます。
- 間違えやすい点:淡蒼球・松果体・側脳室三角部の脈絡叢には、加齢による生理的な石灰化がよく見られ、出血と見誤りやすいところです。左右対称で境界がはっきりしていれば石灰化のことが多いです。
基底核・視床の左右対称の異常を見るときの考え方は Hegde らの総説にまとまっています(Hegde 2011)。各核の場所と働きは大脳基底核とは?も参考にしてください。
④ 側脳室体部の高さ
基底核より上では、左右の側脳室体部(body of lateral ventricle)が「八の字」〜平行な2本の黒い帯として見えます。
- 脳梁(corpus callosum):左右の側脳室の天井をつくる白質。前が膝部、後ろが膨大部。
- 尾状核体部:側脳室体部の外側の壁に沿う細い灰白質。
- 放線冠(corona radiata):側脳室の外側に広がる白質。内包の上の続きです。
- 側脳室三角部(trigone):体部・後角・下角が合流する後方の広い部分。脈絡叢の石灰化が白く見えます。
側脳室の大きさは年齢で変わり、高齢者では脳室・脳溝が広くなるのが普通です。年代ごとの正常像は年齢別の頭部CT正常像で比べられます。前角・体部・三角部・後角・下角の区別は側脳室の解剖で詳しく解説しています。
⑤ 半卵円中心・頭頂の高さ:中心溝を見つける
側脳室が見えなくなる高さでは、白質が楕円形に広がる半卵円中心(centrum semiovale)と、脳表の脳回・脳溝が主役になります。
- 中心溝(central sulcus):前頭葉と頭頂葉の境目。前が中心前回(一次運動野)、後ろが中心後回(一次感覚野)です。
- 手の運動野(precentral knob):中心前回のうち、横断像で後ろに向かって突き出す逆Ω(オメガ)形のふくらみが手の運動をつかさどる部分と示されています(Yousry 1997)。中心溝を見つける目印として使えます。
- 大脳鎌(falx cerebri):左右の大脳半球を分ける正中の白い線。石灰化することがあります。
- 上矢状静脈洞:大脳鎌の前後の端にある三角形の構造。
中心溝を見分けるコツは、①前頭葉の上前頭溝が後ろで中心前溝にT字につながる、②その1本後ろが中心溝、③逆Ω形のふくらみがある、の順に追うことです。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 頭部CTとMRIでは、見える解剖は違いますか?
構造の場所は同じですが、CTは灰白質と白質の差が小さく、脳幹や小脳は骨のアーチファクトで見えにくくなります。細かい構造を確かめたいときはMRIのほうが向いています。
Q2. 結果に「石灰化」と書かれていました。異常ですか?
松果体・脈絡叢・淡蒼球・大脳鎌の石灰化は、年齢とともによく見られる生理的なものが多いです。気になる場合は、検査を受けた医療機関で説明を受けてください。
Q3. 研修医はどの高さから覚えるのがよいですか?
まず③の基底核・内包・視床の高さです。脳梗塞・高血圧性脳出血が起こりやすく、構造も多いので、ここを押さえると上下の高さも追いやすくなります。
まとめ
- 頭部CTの解剖は、後頭蓋窩・中脳/鞍上槽・基底核/視床・側脳室体部・半卵円中心の5つの高さで整理する。
- それぞれ「第4脳室」「星形の鞍上槽」『く』の字の内包」「八の字の側脳室」「逆Ω形の手の運動野」を目印にする。
- 生理的石灰化と骨のアーチファクトは、出血・梗塞と見誤りやすい。
画像診断cafeの頭部CTの正常解剖ツール(制作中・順次公開)では、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。まだ名前が出ない構造は、完成済みの頭部MRIの正常解剖ツールで同じ高さの構造を確かめられます。iPhoneでは無料アプリ画像診断cafe(頭部MRIの解剖)でも、同じ高さの脳の構造を確かめられます(頭部CTはWeb版で順次公開中)。
参考文献
- Yousry TA, Schmid UD, Alkadhi H, et al. Localization of the motor hand area to a knob on the precentral gyrus. A new landmark. Brain. 1997;120(Pt 1):141-57. PubMed
- Hegde AN, Mohan S, Lath N, et al. Differential diagnosis for bilateral abnormalities of the basal ganglia and thalamus. Radiographics. 2011;31(1):5-30. PubMed
- Shepherd TM, Hoch MJ. MRI-Visible Anatomy of the Brainstem. Neuroimaging Clin N Am. 2022;32(3):553-564. PubMed
- Naidich TP, Kang E, Fatterpekar GM, et al. The insula: anatomic study and MR imaging display at 1.5 T. AJNR Am J Neuroradiol. 2004;25(2):222-32. PubMed
- Smith AB, Rushing EJ, Smirniotopoulos JG. From the archives of the AFIP: lesions of the pineal region: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2010;30(7):2001-20. PubMed
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