
先に結論:膵臓がんは「しこり」として見える前に、膵臓の一部の萎縮や膵管の変化として写っていることがある
| 見逃されやすいサイン | どんな変化か | 診断前のCTでの頻度・時期 |
|---|---|---|
| 限局性の膵萎縮 | 膵臓の一部だけが薄くやせる | 26.6%。平均で診断の約2.7年前から(Gonda 2024) |
| 主膵管の拡張・途絶 | 膵液の通り道(主膵管)が太くなる、途中で途切れる | 11.3%。平均で約1.1年前から(Gonda 2024) |
| 膵臓と同じ濃さの膵癌(等吸収膵癌) | 造影CTで腫瘍そのものが見えにくい | 膵癌の5.4%(Kim 2010) |
| 急性膵炎の陰 | 膵炎が先に起こり、原因の膵癌が隠れる | 膵癌の10.7%が診断前2年以内に急性膵炎(Munigala 2014) |
「膵管が太い」「膵臓がやせている」と言われたときに大事なのは、以前の画像と比べて変化しているか、膵管が途中で途切れていないかを、膵臓の精密検査で確かめることです。
膵臓がんは「早くから写っている」ことがある
膵臓がん(膵管癌、PDAC)は早期発見が課題とされるがんです。そこで、膵癌と診断された人が診断より前に別の理由で受けていたCTを見直す研究が行われてきました。
1832例の膵癌のうち、診断の6か月以上前にCTを受けていた320例を見直した日本の多施設研究では、47.8%に膵癌を疑わせる所見がすでにありました。最も多かったのは限局性の膵萎縮(26.6%)、次いで主膵管拡張(11.3%)でした(Gonda 2024)。
古い研究でも、診断の2〜6か月前、6〜18か月前のCTでは50%に「確実」または「疑い」の所見があった一方、18か月より前のCTでは7%にとどまりました。早期の所見として挙げられたのは膵管の拡張と途絶で、読影者間の一致度も高い(κ=0.84、0.76)所見でした(Gangi 2004)。
つまり、膵臓がんは「ある日突然できる」というより、小さな変化が時間をかけて進んでいくことが多いと考えられます。前がん病変(PanIN)の話は医療者向けのPanIN(膵上皮内腫瘍性病変)とは?で詳しく扱っています。
サイン1:膵臓の一部だけがやせる(限局性膵萎縮)
限局性膵萎縮(focal parenchymal atrophy:FPA)は、膵臓の全体ではなく一部分だけが薄くなる所見です。
- 診断前CTで、のちに腫瘍ができる場所に一致したFPAは、膵癌群で34.2%、対照群で3.9%でした(Miura 2021)。
- 膵体部・尾部の膵癌に多く(46.7%・47.4%)、膵頭部では少ない(11.1%)傾向でした(Miura 2021)。
- FPAは主膵管の途絶・拡張よりも先に現れ、最も早い所見でした。萎縮した部分は、診断時には腫瘍に置き換わっていました(Miura 2021、Gonda 2024)。
「膵臓がやせている」と言われたら、全体なのか一部なのか、そして前回より進んでいるかがポイントです。
サイン2:主膵管が太い・途中で途切れる
主膵管は膵臓の中を通る膵液の通り道です。腫瘍が膵管をふさぐと、そこより尾部側(上流)の膵管が太くなります。膵管が途中で急に細く途切れ、その先が太い形は、膵癌を考える大事な所見です(Gangi 2004)。主膵管拡張は診断まで進行し続けることも示されています(Gonda 2024)。
ただし、主膵管拡張は加齢やIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)などでも見られます。太さの基準や原因については膵管拡張(主膵管拡張)とは?、IPMNについてはIPMNの画像診断にまとめています。
症例 70歳代女性 膵癌(膵頭部)

引用:Radiopaedia(Pancreatic adenocarcinoma)
膵体部の主膵管が太く広がり、そのまわりの膵臓が薄くやせて見えます。この症例では膵頭部の腫瘍が周りの膵臓とほぼ同じ濃さで、「しこり」よりも膵管の拡張と膵臓のやせが手がかりになっています(EUS下生検で膵癌と確定)。
サイン3:膵臓と同じ濃さで「しこり」が見えない膵癌
膵癌の多くは造影CTで周りの膵臓より黒っぽく(低吸収に)写りますが、周囲と同じ濃さで見分けにくい膵癌(等吸収膵癌)があります。644例の検討では5.4%で、大きさは1.5〜4cm(中央値3cm)でした。このような膵癌でも、CTでは膵管の変化などの間接的な異常が見られ、MRIの感度は79.2%、PET/CTは73.7%でした(Kim 2010)。
間接所見の読み方は膵癌のCT画像診断|等吸収膵癌・間接所見、MRIの使い分けは膵癌のMRI画像所見を参照してください。
サイン4:急性膵炎が膵癌を隠している
膵癌は急性膵炎として発症することがあります。米国退役軍人の大規模データでは、膵癌と診断された人の10.7%が診断前2年以内に急性膵炎を起こしていました。膵炎後の膵癌のリスクは最初の1年が最も高く、その後は急に下がりました。40歳未満ではリスクはごくわずかでした(Munigala 2014)。
デンマークの全国研究でも、急性膵炎の1.0%で1年以内に膵癌が見つかり、年齢50歳超、新たに出た慢性膵炎や糖尿病が手がかりになりました(Kirkegård 2020)。
40歳以上で、胆石やお酒などのはっきりした原因がない急性膵炎は、膵癌が隠れている手がかりになりえます(Munigala 2014、Kirkegård 2020)。デンマークの研究では、胆道や飲酒に関連する病気があることは、むしろ膵癌がない方向の手がかりでした(Kirkegård 2020)。
サイン5:膵炎に似る膵癌(自己免疫性膵炎との区別)
膵臓がソーセージのように腫れ、周りに薄い縁(被膜様構造、capsule-like rim)が見えると、自己免疫性膵炎(AIP)を考えます。ただし、この縁はAIPで40%に対し膵癌でも9%に見られ、それだけでは決められません(Takahashi 2008)。詳しくは自己免疫性膵炎(AIP)のCT・MRI画像診断をご覧ください。
医療者向け:読影のチェックポイント
| 見るところ | ポイント |
|---|---|
| 膵実質 | 体尾部に多い限局性萎縮(Miura 2021) |
| 主膵管 | 途絶とその上流の拡張(Gangi 2004) |
| 過去画像 | 萎縮・拡張の進行。FPAは診断の数年前から先行しうる(Gonda 2024) |
| 臨床背景 | 40歳以上の原因不明の急性膵炎、新たな糖尿病(Munigala 2014、Kirkegård 2020) |
「膵管が太い」「膵臓がやせている」と言われたら
- 過去に受けたCTやMRIがあれば、比較してもらうと変化の有無が分かります。
- 精密検査として、膵臓を詳しく見る造影CTやMRI(MRCP)などが行われます。
- 相談先は消化器内科(膵臓の診療をしている医療機関)が一般的です。
気になる症状があれば医療機関を受診してください。検査の進め方は、主治医と相談して決めましょう。
よくある疑問(Q&A)
Q. 検診のCTで膵臓がんは見つかりますか?
A. 写っていることはありますが、すべてではありません。診断の1年半以上前のCTでは異常が見つかる割合は低く(Gangi 2004)、周囲と同じ濃さの膵癌もあります(Kim 2010)。「異常なし」でも、症状が出たときは改めて相談してください。
Q. 膵臓がやせていると言われたら、がんの可能性が高いのですか?
A. 多くの人は膵癌ではありません。研究でも、膵癌でない人の3.9%に限局性萎縮が見られました(Miura 2021)。一部だけか、進んでいるかを確かめることが大切です。
Q. 急性膵炎が治りました。膵臓がんの検査も必要ですか?
A. 年齢や膵炎の原因によって考え方が変わります(Munigala 2014、Kirkegård 2020)。追加の画像検査が必要かは主治医に相談してください。
参考文献
- Gonda M, Masuda A, Kobayashi T, et al. Temporal progression of pancreatic cancer computed tomography findings until diagnosis: A large-scale multicenter study. United European Gastroenterol J. 2024;12(6):761-771. PubMed
- Miura S, Takikawa T, Kikuta K, et al. Focal Parenchymal Atrophy of the Pancreas Is Frequently Observed on Pre-Diagnostic Computed Tomography in Patients with Pancreatic Cancer: A Case-Control Study. Diagnostics (Basel). 2021;11(9):1693. PubMed
- Gangi S, Fletcher JG, Nathan MA, et al. Time interval between abnormalities seen on CT and the clinical diagnosis of pancreatic cancer: retrospective review of CT scans obtained before diagnosis. AJR Am J Roentgenol. 2004;182(4):897-903. PubMed
- Kim JH, Park SH, Yu ES, et al. Visually isoattenuating pancreatic adenocarcinoma at dynamic-enhanced CT: frequency, clinical and pathologic characteristics, and diagnosis at imaging examinations. Radiology. 2010;257(1):87-96. PubMed
- Munigala S, Kanwal F, Xian H, et al. Increased risk of pancreatic adenocarcinoma after acute pancreatitis. Clin Gastroenterol Hepatol. 2014;12(7):1143-1150.e1. PubMed
- Kirkegård J, Mortensen FV, Heide-Jørgensen U, et al. Predictors of underlying pancreatic cancer in patients with acute pancreatitis: a Danish nationwide cohort study. HPB (Oxford). 2020;22(4):553-562. PubMed
- Takahashi N, Fletcher JG, Fidler JL, et al. Dual-phase CT of autoimmune pancreatitis: a multireader study. AJR Am J Roentgenol. 2008;190(2):280-6. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
