
先に結論:CA19-9は膵がん・胆道がんの目安になる腫瘍マーカーだが、胆汁の流れが悪いとき(閉塞性黄疸・胆管炎)や肺の病気などでも上がる。症状のない人の検診では、高値でもがんの割合はごくわずか
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| CA19-9とは | シアリルLeaという糖鎖。正常な膵管・胆管の細胞などでも作られる |
| がん以外で上がる主な原因 | 閉塞性黄疸・胆管炎・胆汁うっ滞、良性の消化器の病気、間質性肺炎・気管支拡張症・非結核性抗酸菌症などの肺の病気 |
| 上がらない人 | Lewis抗原陰性の人(5〜10%)は、がんがあってもCA19-9がほとんど出ない |
| 症状のない人での意味 | 韓国の約7万人の検診で、高値の人のうち膵がんは0.9% |
| 次にすること | 膵臓・胆道を中心に画像で調べ、見つからなければ肺も確認。方針は主治医と相談 |
CA19-9とは
CA19-9(carbohydrate antigen 19-9)は、シアリルLea(sialyl Lewis a)抗原とも呼ばれる糖鎖です。膵がんで最もよく使われる血液の腫瘍マーカーですが、正常な膵管・胆管の細胞や、胃・大腸・子宮内膜・唾液腺の上皮でも作られ、いくつかの良性の消化器の病気でも上がります(Scarà 2015)。
多くの研究では37 U/mLが区切りとして使われています(Kim 2004, Kodama 2007)。基準値は検査を受けた施設の値を確認してください。
がん以外でCA19-9が上がる原因
| 分類 | 例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 胆汁の流れの障害 | 閉塞性黄疸、急性胆管炎、胆汁うっ滞 | 閉塞性黄疸では10〜60%で偽陽性(Ballehaninna 2011) |
| 良性の消化器の病気 | 膵臓・胆道などの良性疾患 | 一時的に上がることがある(Scarà 2015) |
| 肺の病気 | 特発性間質性肺炎、膠原病の肺線維症、びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症 | これらの患者の38.9%で37 U/mLを超えた(Kodama 2007) |
| 非結核性抗酸菌症(NTM) | 肺MAC症など | NTM肺疾患79人の24%で高値。胸部CTの重症度スコアと相関(Kim 2021) |
胆道の病気は急性胆管炎のCT画像所見、肺の病気はNTM(非結核性抗酸菌症)とは?や気管支拡張症のCT・レントゲン画像所見で解説しています。
どのくらい「がん」の可能性がある?
- 症状のない人:韓国の検診で70,940人を調べたところ、37 U/mLを超えたのは1,063人(1.5%)で、そのうち膵がんは4人。陽性的中率(高値の人が本当にがんである割合)は0.9%でした(Kim 2004)。
- 症状のある人:膵がんの診断での感度は79〜81%、特異度は82〜90%と報告されています(Ballehaninna 2011)。37 U/mLで区切ると、膵がんに対する感度76.7%・特異度87.1%という報告もあります(Kim 1999)。
感度・特異度がそこそこ高くても、症状のない人では膵がんそのものがまれなため、「高値の人の大半はがんではない」という結果になります(Kim 2004)。このため、症状のない人のがん検診にCA19-9は向かないとされています(Scarà 2015, Ballehaninna 2011)。
また、急性胆管炎や胆汁うっ滞のような良性の状態でも上がるため、膵がん・胆道がんとの区別でCA19-9を読むときは、その時の臨床状況を考える必要があります(Kim 1999)。
逆に、Lewis抗原陰性の人はCA19-9をほとんど作れないため、CA19-9が正常でもがんは否定できません(Parra-Robert 2018)。
画像検査で何を探すか
1. 膵臓と胆道
まず膵がん・胆道がんがないか、胆管が詰まっていないかを調べます。韓国の検診研究でも、高値の人はCA19-9の再検査、CT、ERCPで追跡されていました(Kim 2004)。
- 膵臓の腫瘤、主膵管の拡張(膵管拡張とは?)
- 胆管の拡張、胆管結石、胆管炎の所見
膵がんの見え方は膵癌のCT画像診断で解説しています。
2. 肺
腹部や内視鏡で原因が見つからないときは、胸部CTで肺を見直します。気管支拡張症、間質性肺炎、NTMでもCA19-9は上がり(Kodama 2007, Kim 2021)、NTMでは、菌の種類(M. abscessus)や病気が活動的な時期であることが高値の危険因子で、治療がうまくいくとCA19-9が下がる傾向も報告されています(Hong 2016)。
症例 50歳代女性 膵頭部癌(double duct sign)

引用:Radiopaedia(Double duct sign)
肝臓の中の胆管が太く広がり、膵体尾部の主膵管も拡張しています(double duct sign)。この症例では膵頭部に約27mmの造影されにくい腫瘤があり、手術で膵癌と確定しました(症例ページにCA19-9の値は書かれていません)。
心配な場合と次にすること
CA19-9が高いと言われたら、まずは消化器内科で相談しましょう。気になる症状があれば医療機関を受診してください。
1回の値だけで決めず、ほかの血液検査や画像の結果、経過をあわせて判断します。どの検査をいつ行うかは主治医と相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. CA19-9が高いのは体質ですか?
A. 体質だけで高いと決めることはできません。胆道や肺の病気など、がん以外の原因がないかをまず調べます(Scarà 2015, Kodama 2007)。
Q. 画像で何も見つかりませんでした。安心していい?
A. がん以外の原因で一時的に上がることもあります(Scarà 2015)。再検査の時期は主治医と相談してください。
Q. 肺の病気でCA19-9が高いと言われました。意味はありますか?
A. 間質性肺炎(特発性間質性肺炎・膠原病の肺線維症)では、CA19-9が高い人のほうが生存率が低かったという報告があります(Kodama 2007)。NTMでは画像の重症度と相関します(Kim 2021)。呼吸器内科の主治医と相談してください。
Q. CA19-9が正常なら膵がんはない?
A. Lewis抗原陰性の人ではがんがあっても上がらないため、正常でも否定はできません(Parra-Robert 2018, Ballehaninna 2011)。
参考文献
- Scarà S, Bottoni P, Scatena R. CA 19-9: Biochemical and Clinical Aspects. Adv Exp Med Biol. 2015;867:247-60. PubMed
- Ballehaninna UK, Chamberlain RS. Serum CA 19-9 as a Biomarker for Pancreatic Cancer-A Comprehensive Review. Indian J Surg Oncol. 2011;2(2):88-100. PubMed
- Kim JE, Lee KT, Lee JK, et al. Clinical usefulness of carbohydrate antigen 19-9 as a screening test for pancreatic cancer in an asymptomatic population. J Gastroenterol Hepatol. 2004;19(2):182-6. PubMed
- Kim HJ, Kim MH, Myung SJ, et al. A new strategy for the application of CA19-9 in the differentiation of pancreaticobiliary cancer: analysis using a receiver operating characteristic curve. Am J Gastroenterol. 1999;94(7):1941-6. PubMed
- Parra-Robert M, Santos VM, Canis SM, et al. Relationship Between CA 19.9 and the Lewis Phenotype: Options to Improve Diagnostic Efficiency. Anticancer Res. 2018;38(10):5883-5888. PubMed
- Kodama T, Satoh H, Ishikawa H, et al. Serum levels of CA19-9 in patients with nonmalignant respiratory diseases. J Clin Lab Anal. 2007;21(2):103-6. PubMed
- Kim K, Yong SH, Lee SH, et al. Correlation between serum carbohydrate antigen 19-9 levels and computed tomography severity score in patients with nontuberculous mycobacterial pulmonary disease. Sci Rep. 2021;11(1):2777. PubMed
- Hong JY, Jang SH, Kim SY, et al. Elevated serum CA 19-9 levels in patients with pulmonary nontuberculous mycobacterial disease. Braz J Infect Dis. 2016;20(1):26-32. PubMed
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