
先に結論:子宮の稀な腫瘍は「筋腫に似ているが典型像から外れる」点で拾い上げる
| 腫瘍 | 一言でいうと | 画像の手がかり | 次にすること |
|---|---|---|---|
| PEComa | 血管周囲類上皮細胞由来の間葉系腫瘍。良性〜悪性 | 境界明瞭・T2不均一高信号・強い造影、血流豊富 | 悪性を含むため婦人科腫瘍の専門施設で評価 |
| アデノマトイド腫瘍 | 中皮由来の良性腫瘍。筋層の外側に多い | T2で筋腫様の低信号域と境界不明瞭な高信号域が混在、辺縁のリング状高信号 | 筋腫と思い込まず術前に可能性を挙げる |
| 子宮頸部筋腫 | 頸部に生じた平滑筋腫。とても稀 | 筋腫と同じ信号の境界明瞭な腫瘤が頸部にある | 頸癌・脱出した粘膜下筋腫との区別 |
| 子宮への転移 | 乳癌・消化器癌などからの二次性病変 | 既往のがん+子宮の腫瘤や出血、卵巣転移の合併 | 原発巣の情報と合わせて病理で確認 |
なぜ「稀な子宮腫瘍」をまとめて知っておくのか
子宮の腫瘤の大部分は平滑筋腫(子宮筋腫)です。ある病理学的検討では子宮全摘標本661例のうち64.6%に筋層の筋腫がみられました(Tiltman 1998)。そのため画像では「筋腫らしさ」を基準に読み、そこから外れる所見があったときに稀な腫瘍を思い浮かべる、という順番が実際的です。筋腫の典型像は子宮筋腫のMRI画像診断のポイント、変性で典型から外れるパターンは子宮筋腫の変性のMRI画像診断、悪性を疑う所見は子宮肉腫(子宮平滑筋肉腫)のMRI画像診断を参照してください。
この記事では、検索される機会は少ないものの鑑別で名前が挙がる4つ(PEComa・アデノマトイド腫瘍・子宮頸部筋腫・子宮への転移)を1本にまとめ、最後に見分け方を表にしました。
PEComa(血管周囲類上皮細胞腫瘍)
どんな腫瘍か
PEComa(perivascular epithelioid cell tumor)は、血管周囲類上皮細胞に由来する間葉系腫瘍で、良性から悪性まで幅があります。悪性PEComa 36例の検討では、発生部位は後腹膜(38.9%)に次いで女性生殖器(27.8%)が多く、臓器別では腎と子宮がそれぞれ8例で最多でした(Tirumani 2014)。
子宮PEComa 5例(33〜57歳、中央値52歳)の報告では、頸部・筋層・子宮腔のいずれからも発生し、術前には筋腫(2病変)や子宮頸癌(2病変)などと診断されていました(Wang 2024)。
エコー・CT・MRIでの見え方
- エコー:子宮PEComa 6病変では、円形〜楕円形・均一・低エコーがそれぞれ66.7%、音響陰影はすべて欠如、カラードプラで中等度〜豊富な血流が83.3%でした。腫瘍内に散在する血管と辺縁を輪状に取り巻く血管が手がかりになりうるとされています(Wang 2024)。
- CT・MRI:悪性PEComaの原発巣は17例中16例が境界明瞭で、CTでは有意な造影効果(12例中11例)、MRIではT1強調像で筋と比べ低〜等信号(9例中8例)、T2強調像で不均一な高信号(9例中9例)、造影で強い増強(7例中7例)を示しました。壊死7例、出血3例、石灰化3例で、平均最大径は11.01cm(4.5〜25cm)と大きな腫瘍でした(Tirumani 2014)。
注意点
悪性PEComaでは36例中26例(72%)に転移が生じ、肺(21.6%)・肝(17.6%)・腹膜(10.8%)の順でした(Tirumani 2014)。筋腫では通常みられない「音響陰影を欠く低エコー+豊富な血流」「T2不均一高信号+強い造影」の組み合わせで、大きく境界明瞭な子宮腫瘤をみたときに鑑別へ加えます。
アデノマトイド腫瘍
どんな腫瘍か
アデノマトイド腫瘍は中皮由来の稀な良性腫瘍で、子宮では筋層の外側に生じ、筋腫に似ることがあります(Takeuchi 2024)。手術で確認された16例(年齢中央値51歳)の検討では、8例に子宮筋腫が併存し、17病変中7病変が筋層内、10病変が漿膜下で、最大径は9〜65mmでした(Chen 2026)。
MRIでの見え方
- T2強調像で、境界明瞭な筋腫様の低信号域(平滑筋の肥大を反映)と、境界不明瞭なやや高信号域(管状構造に富む腫瘍細胞)が混在。10病変中4病変で辺縁のリング状高信号(Takeuchi 2024)。
- T2高信号域は拡散強調像でも高信号ですが、ADCは比較的高く、T2 shine-throughと考えられます。腫瘍内出血はまれです(Takeuchi 2024)。
- ダイナミック造影では、早期の強い造影がT2高信号域に優位にみられ、低信号域ではまれでした(Takeuchi 2024)。
- 別の検討では17病変中13病変が充実性、2病変が嚢胞充実性、2病変が嚢胞性で、被膜は同定されず、4病変でT2強調像の「target sign」(中心低信号+辺縁輪状高信号)がみられました(Chen 2026)。
なぜ区別したいのか
アデノマトイド腫瘍は筋腫と治療上の扱いが異なり、核出も筋腫ほど容易ではないため、術前に可能性を挙げておく意義があるとされています(Takeuchi 2024)。一方で所見は特異的ではなく、確定には病理診断が要ります(Chen 2026)。
子宮頸部筋腫
どのくらい稀か
子宮全摘661例の検討で、筋層の筋腫が64.6%にあったのに対し、頸部の筋腫は4例(0.6%)だけでした。体部の粘膜下筋腫がポリープ状に頸管へ突出した6例は、頸部筋腫に含めていません(Tiltman 1998)。
読影のポイント
- 腫瘤の付着部(茎)がどこにあるかを矢状断で追い、頸部の間質から生じたものか、体部の粘膜下筋腫が頸管へ下垂したものかを分けます。
- 頸部の充実性腫瘤では子宮頸癌が鑑別の中心です。子宮PEComaでも術前に頸癌と診断された例があります(Wang 2024)。
- 頸部の嚢胞性病変との区別は子宮頚部の嚢胞性病変の鑑別ポイントにまとめています。
症例 20歳代女性 子宮頸部筋腫

引用:Radiopaedia(Leiomyoma of uterine cervix)
子宮頸部の前方、頸管と腟上部に接して境界明瞭な腫瘤があり、T2強調像では中等度の信号です。T1強調像では低信号で、造影では中等度に増強され、頸管への脱出はありません。画像からは頸部筋腫が考えられた症例です。
子宮への転移(他臓器がんからの転移)
原発巣と頻度
生殖器以外のがんから子宮体部へ転移した63例(34〜88歳、平均59.7歳)の検討では、原発巣は乳癌(42.9%)、大腸癌(17.5%)、胃癌(11.1%)、膵癌(11.1%)の順でした。手術例20例のうち5例(25%)では、子宮転移が原発巣の最初の手がかりになっていました(Kumar 1982)。
画像を読むときの手がかり
- 内膜より筋層に転移が多く、筋腫の中に転移した例が13例ありました(Kumar 1982)。「筋腫の中の変化」として見落とさないようにします。
- 卵巣転移を約3分の2に合併していました(Kumar 1982)。両側の卵巣腫瘤を同時に評価します(転移性卵巣腫瘍のCT、MRI画像診断)。
- 症状として不正出血を起こすことがあります(Kumar 1982)。がん治療中・治療後の不正出血では転移も念頭に置きます。
見分け方の比較表
| PEComa | アデノマトイド腫瘍 | 子宮頸部筋腫 | 子宮への転移 | |
|---|---|---|---|---|
| 良悪性 | 良性〜悪性 | 良性 | 良性 | 悪性(二次性) |
| 好発部位 | 頸部・筋層・子宮腔 | 筋層の外側(筋層内・漿膜下) | 頸部間質 | 筋層>内膜、筋腫内にも |
| T2強調像 | 不均一な高信号 | 筋腫様低信号+境界不明瞭な高信号の混在、リング状高信号 | 筋腫と同様 | 一定しない |
| 造影・血流 | 強い造影、エコーで豊富な血流・辺縁の輪状血管 | 早期の強い造影がT2高信号域に優位 | 筋腫と同様 | 一定しない |
| 大きさの目安 | 悪性例は平均約11cm | 9〜65mm | 小さなものも | さまざま |
| 手がかり | 大きく境界明瞭、壊死・出血 | 筋腫の併存が多い | 付着部が頸部 | がんの既往、卵巣転移の合併 |
出典:Tirumani 2014、Wang 2024、Takeuchi 2024、Chen 2026、Tiltman 1998、Kumar 1982。転移の画像像は原発巣で異なるため「一定しない」としています。
次にすること
これらの腫瘍は画像だけで確定することが難しく、最終的には病理診断になります。読影レポートでは「筋腫として典型的でない点」を具体的に書き、鑑別を挙げておくことが治療方針の検討に役立ちます。不正出血や下腹部痛など気になる症状があれば婦人科を受診し、検査の進め方は主治医に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 「筋腫ではないかもしれない」と言われたら、すぐ悪性ですか?
いいえ。アデノマトイド腫瘍や頸部筋腫は良性で、PEComaにも良性があります。ただ悪性を含む腫瘍もあるため、追加のMRIや手術・病理での確認が検討されます。
Q2. PEComaは子宮以外にもできますか?
はい。悪性PEComaは後腹膜や腎にも多く、子宮と並んで頻度の高い部位です(Tirumani 2014)。
Q3. 乳癌の治療歴があると、子宮の腫瘤は転移を考えますか?
子宮体部への転移の原発巣として乳癌が最多でした(Kumar 1982)。既往を読影医・婦人科医に伝えておくことが大切です。乳癌の転移全体については乳癌の遠隔転移と治療後の画像診断のポイントも参照してください。
参考文献
- Tirumani SH, Shinagare AB, Hargreaves J, et al. Imaging features of primary and metastatic malignant perivascular epithelioid cell tumors. AJR Am J Roentgenol. 2014;202(2):252-8. PubMed
- Wang R, Luo H, Cao W. Clinical and ultrasound features of uterine perivascular epithelioid cell tumors: case series and literature review. Ultrasound Obstet Gynecol. 2024;64(5):687-695. PubMed
- Takeuchi M, Matsuzaki K, Bando Y, et al. MR Imaging Findings of Uterine Adenomatoid Tumors. Magn Reson Med Sci. 2024;23(2):127-135. PubMed
- Chen C, Huang Y, Chen P, et al. Adenomatoid tumors of the uterus: magnetic resonance imaging features with clinical and histopathologic correlation. Front Oncol. 2026;16:1942362. PubMed
- Tiltman AJ. Leiomyomas of the uterine cervix: a study of frequency. Int J Gynecol Pathol. 1998;17(3):231-4. PubMed
- Kumar NB, Hart WR. Metastases to the uterine corpus from extragenital cancers. A clinicopathologic study of 63 cases. Cancer. 1982;50(10):2163-9. PubMed
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