
先に結論:胎盤遺残・胎盤ポリープ(RPOC)は「子宮内腔の腫瘤+血流」で考える
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 何か | 分娩・流産・中絶後に胎盤/絨毛組織(chorionic villi)が子宮内に残った状態 |
| 症状 | 産後・流産後の遷延する出血(晩期産後出血)、腹痛、発熱 |
| 第一の検査 | 経腟超音波+カラードプラ |
| 最も有用な所見 | 子宮内膜の腫瘤と、そこへの血流 |
| CT・MRI | 超音波で判断がつかないときに。造影される子宮内腔の腫瘤として見える |
| 注意 | 血流の多いRPOCを子宮動静脈奇形(AVM)と取り違えない |
胎盤遺残・胎盤ポリープ(RPOC)とは
RPOC(retained products of conception)は、分娩や妊娠中絶ののちに胎盤・絨毛組織が子宮内に残った状態で、よくみられ、治療可能な合併症です。病理学的には絨毛(chorionic villi)の存在で診断されます(Sellmyer 2013)。残った組織がポリープ状に内腔へ突出したものは、日本では「胎盤ポリープ」と呼ばれることがあります。
RPOCは晩期(二次性)産後出血や中絶後出血の主な原因のひとつです。ほかの原因として子宮動静脈奇形・仮性動脈瘤などの血管異常、胎盤付着部の復古不全(subinvolution)、まれに絨毛性疾患があり、RPOCと画像が似ることがあります(Iraha 2018)。
超音波(エコー)での見え方
グレースケール
臨床的にRPOCが疑われた163例の検討では、子宮内膜の腫瘤(endometrial mass)が最も感度・特異度の高い所見でした(感度79%、特異度89%)。一方、内腔の複雑な液体や10mmを超える内膜肥厚だけでは感度・特異度とも低い結果でした(Durfee 2005)。
- 腫瘤も内腔の液体もなく、内膜厚が10mm未満であればRPOCはきわめて考えにくい(Durfee 2005)
- RPOCの患者で超音波所見が正常だった例はなかった(Durfee 2005)
グレースケール所見だけでは正確な診断には不十分で、カラー/パワードプラで血流を確かめることで陽性的中率が上がります(Sellmyer 2013)。
カラードプラ:血流の程度
病理で確認された症例を血流の程度で分けた検討では、次のようになりました(Kamaya 2009)。
| 血流のタイプ | 内容 | そのタイプでRPOCだった割合 |
|---|---|---|
| type 0 | 血流なし | 45% |
| type 1 | わずかな血流 | 86% |
| type 2 | 中等度の血流 | 100% |
| type 3 | 著明な血流 | 100% |
内膜の血流はRPOCと強く関係しますが、血流がないからといってRPOCは否定できません。血流のない像は、子宮内の凝血塊でも血流に乏しいRPOCでもみられます(Kamaya 2009, Durfee 2005)。
血流の多いRPOCとAVMの見分け
産後・流産後には、胎盤床の筋層に蛇行・拡張した血管と高速・乱流の血流がみられることがあり、enhanced myometrial vascularity(EMV)と呼ばれます。AVMと間違えやすい所見ですが、EMVは妊娠に関連した動的な変化で、多くは関連するRPOCが排出されると自然に退縮します。一方、AVMは妊娠と関係せず自然には退縮しません(Zamboni 2026)。血流の多いRPOCをAVMと誤認することは診断上の落とし穴として挙げられています(Sellmyer 2013)。
症例 20歳代女性 胎盤遺残(RPOC)

引用:Radiopaedia(Retained products of conception)
薬による人工妊娠中絶のあと約20日出血が続いた症例です。子宮内腔に約2.5cmの不均一なエコーの領域があり、ふつうの薄い内膜とは違って見えます。
症例 20歳代女性 胎盤遺残(RPOC) カラードプラ

引用:Radiopaedia(Retained products of conception)
同じ症例のカラードプラです。内腔の病変に豊富な血流がみられ、血流のある遺残を考える所見です。
CT・MRIでの見え方
超音波で判断がつかない場合、CTやMRIでは造影される子宮内腔の腫瘤として描出されるのが典型です(Sellmyer 2013)。
MRIでは、子宮内腔の軟部腫瘤として見え、造影される組織の量はさまざまで、筋層の菲薄化やjunctional zoneの不明瞭化を伴うことがあります。これを絨毛性疾患と誤らないことが大切で、特に産後でhCGが正常〜軽度上昇にとどまる場合に注意が必要とされています(Noonan 2003)。MRIは、子宮腔への器具操作を難しくする解剖学的変異の把握にも役立つことがあります(Noonan 2003)。
血管異常の確定診断には血管造影が重要とされます(Iraha 2018)。子宮の血管解剖は内腸骨動脈の分岐と子宮動脈の解剖・走行、出血や血液成分の信号の考え方は漿液、高蛋白、石灰化、脂肪、壊死、出血、線維成分のCT、MRI画像所見も参考にしてください。
鑑別のポイント
| 鑑別 | 手がかり |
|---|---|
| 凝血塊 | 血流なし。ただし血流のないRPOCもあるため単独では区別できない(Kamaya 2009) |
| 子宮AVM・仮性動脈瘤 | D&Cや帝王切開などの処置歴に関連することが多い(Iraha 2018)。EMVとの区別も重要(Zamboni 2026) |
| 胎盤付着部の復古不全 | 原因不明の晩期産後出血の原因で、見落とされている可能性がある(Iraha 2018) |
| 絨毛性疾患(侵入奇胎など) | RPOCと画像が似る。hCGの推移とあわせて評価(Iraha 2018, Noonan 2003) |
閉経後や妊娠と関係のない内膜肥厚・内膜病変については子宮内膜肥厚は何ミリから?、子宮内膜ポリープ・子宮内膜増殖症のMRI画像診断を参照してください。
心配な場合と次にすること
- 心配な場合:出血量が多い、続く、発熱や強い腹痛を伴う。画像で血流の多い腫瘤や、AVM・仮性動脈瘤を疑う血管所見がある。
- 落ち着いて見てよい場合:超音波で腫瘤も内腔液体もなく、内膜が10mm未満(RPOCはきわめて考えにくい:Durfee 2005)。
気になる症状があれば婦人科を受診してください。分娩・流産後であれば、まずはかかった産婦人科へ。治療方針(経過観察・子宮内容除去・血管内治療など)は、出血の程度と画像所見をもとに主治医に相談しましょう。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 内膜が厚いと言われました。胎盤遺残ですか?
A. 10mmを超える内膜肥厚だけでは感度・特異度が低く、RPOCの決め手にはなりません。腫瘤の有無と血流をあわせて評価します(Durfee 2005)。
Q2. ドプラで血流がないと言われました。胎盤は残っていないのですか?
A. 血流のないRPOCもあるため、血流がないことだけでは否定できません(Durfee 2005, Kamaya 2009)。
Q3. 血流がとても多いと言われました。AVMでしょうか?
A. 産後・流産後の筋層の血流増加(EMV)はAVMと似て見えますが、多くはRPOCの排出後に退縮します(Zamboni 2026)。経過や他の検査とあわせて判断されます。
あわせて読みたい:胞状奇胎のエコー・MRI所見、癒着胎盤(placenta accreta spectrum)のMRI所見、前置胎盤のMRI
参考文献
- Sellmyer MA, Desser TS, Maturen KE, et al. Physiologic, histologic, and imaging features of retained products of conception. Radiographics. 2013;33(3):781-96. PubMed
- Durfee SM, Frates MC, Luong A, et al. The sonographic and color Doppler features of retained products of conception. J Ultrasound Med. 2005;24(9):1181-6. PubMed
- Kamaya A, Petrovitch I, Chen B, et al. Retained products of conception: spectrum of color Doppler findings. J Ultrasound Med. 2009;28(8):1031-41. PubMed
- Noonan JB, Coakley FV, Qayyum A, et al. MR imaging of retained products of conception. AJR Am J Roentgenol. 2003;181(2):435-9. PubMed
- Iraha Y, Okada M, Toguchi M, et al. Multimodality imaging in secondary postpartum or postabortion hemorrhage: retained products of conception and related conditions. Jpn J Radiol. 2018;36(1):12-22. PubMed
- Zamboni CG, Andrade GHV, Pria OAFD, et al. Enhanced Myometrial Vascularity: Is It an Arteriovenous Malformation? Review of Definitions, Imaging Findings, and Management. Radiographics. 2026;46(2):e250152. PubMed
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