
先に結論:前置胎盤の診断は経腟エコー、MRIは癒着胎盤(PAS)の評価が中心
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 前置胎盤 | 胎盤が内子宮口を覆う |
| 低置胎盤 | 胎盤の端が内子宮口から20mm以内(覆ってはいない) |
| 診断の基本 | 経腟エコーで内子宮口から胎盤の端までの距離を測る |
| 妊娠中期に見つかった場合 | 多くは妊娠の進行とともに離れていく(約9割) |
| MRIの役割 | 癒着胎盤(PAS)の有無・深さ・範囲、出血リスクの手がかり |
前置胎盤と低置胎盤の違い
前置胎盤(placenta previa)は胎盤が内子宮口を覆う状態で、分娩は帝王切開の絶対的な適応です。妊娠中期の超音波では最大10%に見られますが、分娩時の頻度は0.5〜1%に下がります(Cassardo 2026)。
研究や診療では、胎盤の端と内子宮口の距離で分類します。妊娠中期の胎児スクリーニングで見つかった1663例の研究では、内子宮口を覆うものを前置胎盤、端が内子宮口から0.1〜20mmのものを低置胎盤として扱いました(Durst 2018)。この研究では、妊娠中期のスクリーニングを受けた女性の8.7%が前置胎盤または低置胎盤と診断されていました。内子宮口の位置は子宮頸部の正常解剖|内子宮口・外子宮口で確認できます。
| 初回の距離 | その後に解消した割合(Durst 2018) | 解消までの中央値 |
|---|---|---|
| 10〜20mm | 99.5% | 9週 |
| 0.1〜10mm | 95.4% | 10週 |
| 前置胎盤(覆っている) | 72.3% | 12週 |
低置胎盤では内子宮口との距離が分娩計画の目安となり、11〜20mmでは経腟分娩の試行を支持するデータがあります。無症状の前置胎盤では、妊娠36週0日〜37週6日の予定帝王切開が一般に勧められています(Cassardo 2026)。
エコーとMRIの役割分担
エコー:前置胎盤の診断の基本
経腟エコーが診断のゴールドスタンダードで、経腹エコーの所見を確かめ、内子宮口からの距離を測り、癒着胎盤や前置血管を除外するために用います(Cassardo 2026)。
MRI:癒着胎盤(PAS)の評価
前置胎盤には癒着胎盤(placenta accreta spectrum:PAS)が合併することがあり、エコーでもその除外が求められます(Cassardo 2026)。リスクの高い女性を対象とした17研究・1301例のメタアナリシスでは、PASの診断精度はエコー(感度83.3%、特異度83.4%)とMRI(感度83.8%、特異度83.1%)で差がありませんでした(De Oliveira Carniello 2022)。
MRIは超音波を補う検査で、胎盤の侵入の深さや位置関係(topography)の情報が得られます。SAR(米国腹部放射線学会)とESUR(欧州泌尿生殖器放射線学会)の2020年合同コンセンサスでは、次の7つのMRI所見がPAS診断に「推奨」とされました(Jha 2020)。
- 胎盤内のT2強調像低信号帯(intraplacental dark T2 bands)
- 子宮・胎盤の膨隆(uterine/placental bulge)
- 胎盤後面のT2低信号線の消失
- 子宮筋層の菲薄化・断裂
- 膀胱壁の途絶
- 局所的な外向性の胎盤腫瘤
- 胎盤床の異常血管
前置胎盤のMRIで見るポイント
- 前壁か後壁か:前置胎盤202例(PASは6.9%、前壁18.8%・後壁81.2%)の検討では、前壁の前置胎盤では4つのMRI所見(胎盤の不均一な信号、T2低信号帯、筋層の菲薄化・断裂、局所の膨隆)のいずれかでPASを感度87.5%・特異度86.7%で予測できましたが、後壁では感度42.9%にとどまりました。後壁では頸部の静脈瘤(cervical varicosities)の位置を指標にすると、感度100%・特異度89.2%でした(Ishibashi 2020)。
- 亜急性血腫:PASのない前置胎盤78例では、妊娠後期のMRIで50%に亜急性血腫がみられ、血腫のある群では分娩前出血(51.3%対17.9%)と緊急帝王切開(46.2%対17.9%)が多く、胎盤辺縁の血腫はとくに関連していました。ただし血腫の有無の読影者間一致は中等度(κ=0.573)でした(Otake 2024)。
子宮筋層の正常像は子宮体部の正常解剖とMRIも参考にしてください。
症例 30歳代女性 全前置胎盤

引用:Radiopaedia(Complete placenta praevia)
前壁付着の胎盤が子宮下部まで広がり、内子宮口を完全に覆っています。胎児は胎盤より上に位置しています。
心配な場合と次にすること
前置胎盤では分娩前の出血が40〜60%、産後出血が20〜35%にみられ、40%以上が37週より前に分娩となります。帝王切開の既往があるとリスクが最も高く、生殖補助医療では自然妊娠の約6倍、前回の前置胎盤からの再発は4〜8%とされます。手術は産科・麻酔科・IVR(血管内治療)などの多職種チームで準備することが勧められています(Cassardo 2026)。妊娠中期に「低い」と言われても多くは解消するため、まずは予定どおりの経過観察のエコーを受けることが大切です。
妊娠中に性器出血やおなかの張りなど気になる症状があれば、婦人科(通院中の産科)を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 妊娠中期に「胎盤が低い」と言われました。ずっとこのままですか?
多くは妊娠の進行とともに内子宮口から離れます。1663例の研究では、追加の超音波を受けた例の91.9%で解消しました(Durst 2018)。
Q2. MRIはどんなときに必要ですか?
主に癒着胎盤が疑われ、超音波を補って侵入の深さや位置関係を詳しく知りたいときです(Jha 2020)。どの検査を選ぶかは施設の機器や検査者の経験にもよります(De Oliveira Carniello 2022)。
Q3. 妊娠中のMRIは赤ちゃんに影響しませんか?
カナダの大規模研究では、妊娠初期のMRIは胎児・小児期の有害事象の増加と関連しませんでした。一方、妊娠中のガドリニウム造影MRIは、リウマチ・炎症性・皮膚疾患や死産・新生児死亡のリスク上昇と関連していました(Ray 2016)。被ばくのある検査についてはレントゲン・CTの被ばく量は大丈夫?妊娠中・授乳中の影響で解説しています。検査の必要性は主治医に相談してください。
あわせて読みたい:癒着胎盤(placenta accreta spectrum)のMRI所見
参考文献
- Cassardo O, Orsi M, Ossola MW, et al. Cesarean delivery for placenta previa. Am J Obstet Gynecol. 2026;233(6S):S255-S271. PubMed
- Durst JK, Tuuli MG, Temming LA, et al. Resolution of a Low-Lying Placenta and Placenta Previa Diagnosed at the Midtrimester Anatomy Scan. J Ultrasound Med. 2018;37(8):2011-2019. PubMed
- De Oliveira Carniello M, Oliveira Brito LG, Sarian LO, et al. Diagnosis of placenta accreta spectrum in high-risk women using ultrasonography or magnetic resonance imaging: systematic review and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(4):428-436. PubMed
- Jha P, Pōder L, Bourgioti C, et al. Society of Abdominal Radiology (SAR) and European Society of Urogenital Radiology (ESUR) joint consensus statement for MR imaging of placenta accreta spectrum disorders. Eur Radiol. 2020;30(5):2604-2615. PubMed
- Ishibashi H, Miyamoto M, Shinmoto H, et al. The use of magnetic resonance imaging to predict placenta previa with placenta accreta spectrum. Acta Obstet Gynecol Scand. 2020;99(12):1657-1665. PubMed
- Otake Y, Ugajin A, Takahashi H, et al. Prediction of antenatal bleeding and preterm deliveries using placental magnetic resonance imaging in patients with placenta previa. Jpn J Radiol. 2024;42(6):630-638. PubMed
- Ray JG, Vermeulen MJ, Bharatha A, et al. Association Between MRI Exposure During Pregnancy and Fetal and Childhood Outcomes. JAMA. 2016;316(9):952-61. PubMed
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