先に結論:腹壁の4つの筋肉

  • 腹壁の筋肉は側腹部の3層(外側から外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)と、正中前方の腹直筋の4つです
  • 一般に「腹筋」と呼ぶのは腹直筋、「わき腹の筋肉」は外腹斜筋・内腹斜筋、「インナーマッスル」としてよく挙がるのが腹横筋です
  • 外腹斜筋は反対側、内腹斜筋は同じ側への体幹の回旋に働き、腹横筋は腹圧を高めるのに最も重要です
  • CTではこの層構造を意識すると、腹壁ヘルニア・血腫・膿瘍・腫瘍がどの層にあるかを正確に伝えられます

腹壁筋群は、体幹の運動、内臓の保護、腹圧の調整、姿勢の安定に寄与する重要な筋肉群で側腹部の3層(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)と正中前方の腹直筋の、4つの筋肉で構成されます。

  • 外腹斜筋
  • 内腹斜筋
  • 腹横筋
  • 腹直筋

の4つです。

お腹(腹壁)の筋肉の名前一覧

「お腹の筋肉の名前」を一般的な呼び方と合わせて一覧にします。腹壁(ふくへき)とは、お腹の中の臓器を前と横から包む壁のことで、外側から皮膚→皮下脂肪→筋肉→横筋筋膜→腹膜外脂肪→腹膜の順に重なっています。

筋肉の名前 一般的な呼び方・場所 CTでの見え方
腹直筋 いわゆる「腹筋」。お腹の正面(シックスパック) 正中の白線の左右にある縦長の筋
外腹斜筋 わき腹(側腹部)の一番外側 側腹部3層のいちばん外
内腹斜筋 わき腹の真ん中の層 3層の中間
腹横筋 わき腹の一番内側。インナーマッスルとして知られる 3層のいちばん内側で腹膜に近い
錐体筋 恥骨の上、腹直筋の前下部の小さな筋(ない人もいる) 恥骨結合のすぐ上の小さな三角形の筋
腰方形筋・大腰筋 背中側でお腹を支える「後腹壁」の筋 腰椎の横〜後ろにある筋

 

それぞれについて解剖および役割を見ていきましょう。

外腹斜筋

  • 位置:腹壁の最外層に位置。
  • 走行:上外側から下内側に斜めに走行(ポケットに手を入れる方向)。
  • 起始:第5~12肋骨の外側。
  • 停止:腸骨稜、鼠径靭帯、白線。
  • 機能:体幹の回旋(反対側に回旋)。体幹の側屈、前屈。腹圧の調整、呼気の補助。

外腹斜筋のCT解剖についてはこちら→外腹斜筋のCT画像の解剖と起始停止のまとめ

内腹斜筋

  • 位置:外腹斜筋の深層で中間層に位置。
  • 走行:下外側から上内側に斜めに走行(外腹斜筋と逆方向)。
  • 起始:胸腰筋膜、腸骨稜、鼠径靭帯。
  • 停止:第10~12肋骨、腹直筋鞘、白線。
  • 機能:体幹の回旋(同側に回旋)。体幹の側屈、前屈。腹圧の調整、呼気の補助。

内腹斜筋のCT解剖についてはこちら→内腹斜筋のCT画像の解剖と起始停止のまとめ

腹横筋

  • 位置:腹壁の最内層で腹腔を直接包む。
  • 走行:水平に走行。
  • 起始:胸腰筋膜、第7~12肋軟骨、腸骨稜、鼠径靭帯。
  • 停止:腹直筋鞘、白線。
  • 機能:腹圧の調整(最も重要な筋肉)。内臓の保護。呼気の補助。

腹横筋のCT解剖についてはこちら→腹横筋のCT画像の解剖と起始停止のまとめ

腹直筋

  • 位置:腹壁の中央、縦方向に走行。
  • 走行:上下に走行し、腹直筋鞘に包まれる。
  • 起始:恥骨、恥骨結合。
  • 停止:第5~7肋軟骨、剣状突起。
  • 機能:体幹の前屈。腹圧の調整。内臓の保護。

腹直筋のCT解剖についてはこちら→腹直筋のCT画像の解剖と起始停止のまとめ

腹壁筋群の役割

腹壁筋群は以下の重要な役割を担います:

(1)体幹の運動

  • 回旋:外腹斜筋と内腹斜筋が協調して体幹を回旋。
  • 外腹斜筋 → 反対側への回旋。
  • 内腹斜筋 → 同側への回旋。
  • 屈曲:腹直筋が体幹を前屈。
  • 側屈:外腹斜筋と内腹斜筋が同側に体幹を傾ける

(2)腹圧の調整

  • 腹横筋が主に働き、腹圧を高める。
  • 排便、排尿、嘔吐、分娩などの際に腹圧を利用。
  • 横隔膜との連動で呼吸運動を補助。

(3)内臓の保護

  • 腹腔内臓器を物理的な衝撃から守る。
  • 特に腹横筋や腹直筋が重要。画像では見落とされやすいものの、非穿通性外傷で救急を受診した患者のおよそ10人に1人に(Matalon 2017)腹壁損傷(筋の挫傷・断裂・血腫、外傷性腹壁ヘルニアなど)があるとされます。腹壁損傷は大動脈損傷など重い内臓・血管損傷と関連が強いため、腹壁の層構造を意識して読影することが大切です。

(4)姿勢の安定

  • 体幹を安定させ、骨盤と腰椎を支える。
  • 腹圧を高めて体幹を支えることで、姿勢の保持に関わる。

(5)呼吸運動

  • 呼気時:外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋が胸郭を収縮させる。

腹壁の筋肉でよくある疑問(Q&A)

Q1. 側腹部とはどこですか?

A. お腹の左右の横の部分、いわゆる「わき腹」です。外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の3層の筋肉があり、CTではこの3層が重なって見えます。

Q2. シックスパックの割れ目は何ですか?

A. 腹直筋を横に区切る「腱画(けんかく)」という腱の帯です。左右の腹直筋の間の縦の線は「白線」で、3層の側腹筋の腱膜が正中で合わさってできています。

Q3. CTで腹壁の層を見分けると何に役立ちますか?

A. 腹壁ヘルニアがどの層のすき間から出ているか(Aguirre 2005)、血腫や腫瘤が筋の中か外か(Ballard 2020)を伝えられ、治療方針の判断に役立ちます。

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの腹部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は腹部CTの解剖にまとめています。

あわせて読みたい:お腹の真ん中のふくらみ

参考文献

  1. Seeras K, Qasawa RN, Ju R, et al. Anatomy, Abdomen and Pelvis: Anterolateral Abdominal Wall. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023. PubMed
  2. Aguirre DA, Santosa AC, Casola G, et al. Abdominal wall hernias: imaging features, complications, and diagnostic pitfalls at multi-detector row CT. Radiographics. 2005;25(6):1501-20. PubMed
  3. Matalon SA, Askari R, Gates JD, et al. Don’t Forget the Abdominal Wall: Imaging Spectrum of Abdominal Wall Injuries after Nonpenetrating Trauma. Radiographics. 2017;37(4):1218-1235. PubMed
  4. Ballard DH, Mazaheri P, Oppenheimer DC, et al. Imaging of Abdominal Wall Masses, Masslike Lesions, and Diffuse Processes. Radiographics. 2020;40(3):684-706. PubMed
  5. Suarez S, Hernandez JD. Laparoscopic repair of a lumbar hernia: report of a case and extensive review of the literature. Surg Endosc. 2013;27(9):3421-9. PubMed

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