先に結論:Morel-Lavallée病変とは
- 強く打ったり引きずられたりした外傷で、皮膚・皮下脂肪が筋膜からはがれ、そのすき間に血液やリンパ液がたまったものです。太ももの付け根の外側(大転子部)に多く、傷が外から見えないため見逃されやすいのが特徴です
- CT・MRIでは皮下脂肪と筋膜の間のレンズ形〜紡錘形の液体のたまりで、時間がたつと被膜(線維性の壁)ができ、中身は血液の時期によりさまざまな信号になります
- 治療は大きさや時期に応じて圧迫・穿刺吸引・硬化療法・手術を選び、慢性化して被膜ができると治りにくくなります。骨盤骨折などに伴う場合は感染にも注意します
※打撲のあとに腫れがひかない・ぶよぶよしたふくらみが続くときは、整形外科を受診してください。
Morel-Lavallée lesion(MLL)
- 外傷によって皮膚および皮下脂肪組織が筋膜と離開し、血腫を形成後、残存する液体貯留が線維性被膜によって被包化されたものをMorel-Lavallée lesionと呼ぶ。
- 血腫、seroma、リンパ液貯留、瘢痕などさまざまな段階が含まれるが、遷延する液体貯留、血腫として認められることが多い。
- 通常の打撲で認められる皮下血腫と異なり、筋膜と筋膜上の軟部組織が分離され、穿通血管・リンパ管の損傷により生じた閉鎖腔内に血液・リンパ液が貯留する。
- 閉鎖性損傷であるため外見上から損傷が認識されにくい。
- 大腿骨の大転子部周囲に好発する。
- 腰部や膝のまわり、下腿などにも発生する(Bouchard 2025、De Coninck 2017)。
- 小さく急性のものは保存的治療でよくなることが多いが、慢性化・再発して治りにくいものもある(Bouchard 2025)。
- 大腿骨や骨盤骨骨折を伴う多発外傷でみられることがあり、見逃されやすい(Nguyen 2026)。
- 治療は、小さく急性期のものでは圧迫などの保存療法、液体が多い場合は穿刺吸引・ドレナージや硬化療法が行われ、被膜を形成した慢性・再発例では外科的切除が選択される。
-
症例 40歳代女性 古い外傷後の右腰部痛

引用:Radiopaedia
右大腿近位部(右大腿骨大転子部周囲)の皮下組織と筋膜の間の側面にレンズ状によく囲まれた液体が溜まっています。
Morel-Lavallée lesion(MLL)を疑う所見です。性状評価にはMRIが最も適した検査で、MRI分類では漿液腫(seroma)・亜急性血腫・慢性器質化血腫の3型が多いとされます。鑑別として軟部肉腫や出血性の膝蓋前滑液包炎が挙げられます。
頻度のわりに見逃されやすい:けがのあとに残る皮下の液体貯留
Morel-Lavallée病変は、こすれる・ずれる力(剪断力)で皮膚と皮下脂肪が筋膜からはがれる閉鎖性の損傷です。多発外傷では見落とされやすく、診断が遅れると感染や治りにくさにつながるとされています(Nguyen 2026)。
- 29研究・928例(964病変)をまとめた系統的レビューでは、部位は大腿(26.5%)、大転子部(24.9%)、腰部(20.3%)の順に多くみられました(Bouchard 2025)。
- 31例の検討では、皮下脂肪と筋膜の間の紡錘形の液体貯留として見え、内部の隔壁や脂肪の粒を伴うことが多く、約半数は被膜をもっていました。超音波が診断の第一の検査で、MRIは広がりが大きい例や感染が疑われる例などで役立つとされています(De Coninck 2017)。
受傷の直後には目立たず、しばらくたって「皮下のふくらみ・しこり」として見つかることもあります。外傷歴のある太ももや腰の皮下〜筋膜上に液体貯留を見たときは、軟部腫瘍と決めつける前にこの病変を考え、受傷時の状況を確認します。
Morel-Lavallée病変の検査と治療の選び方
| 検査 | 役割 |
|---|---|
| CT | 外傷の全身検索で偶然見つかることが多い(診断の40.9%) |
| 超音波 | 手軽な最初の検査(14.6%)。隔壁や脂肪の粒を伴う紡錘形の液体貯留として見える |
| MRI | 単独の検査として最も多く使われ(19.5%)、中身・時期・広がりの評価に優れる |
(Bouchard 2025、De Coninck 2017)
| 病変 | 治療 | 再発率 |
|---|---|---|
| 小さい(100cm³未満)・急性 | 圧迫などの保存的治療 | 5.6% |
| 大きい(100cm³以上) | 穿刺吸引・ドレナージ | 15%と最も高い |
| 大きい(100cm³以上) | 手術 | 1研究で50% |
| — | 硬化療法(sclerodesis) | 4.8%と最も低い(21病変と少数) |
(29研究・964病変の系統的レビュー、Bouchard 2025)
Morel-Lavallée病変でよくある疑問(Q&A)
Q. 読み方は?どんな症状ですか?
A. 「モレル・ラヴァレ(モレル・ラバレー)病変」と読みます。ぶよぶよした波動のあるふくらみ、皮下出血、腫れ、皮膚が異常に動く感じなどで気づかれます(Nguyen 2026)。
Q. 慢性化するとどうなりますか?
A. 慢性・再発例では、硬化療法、低侵襲のデブリードマン、切開して被膜ごと取る手術などが必要になり、その後に皮膚・軟部組織の再建が必要になることもあります(Nguyen 2026)。
参考文献:
- 小橋由紋子, 宗友洋平, 馬場亮, ほか. 股関節. 臨床画像 34(5):550-557, 2018(本記事の参照: P557)
- 林田佳子, 上谷雅孝. 筋損傷. 画像診断 39(6):529-538, 2019(本記事の参照: P533)
- 救急医学 第45巻第13号 2021年11月臨時増刊号 P1913
- Bonilla-Yoon I, Masih S, Patel DB, et al. The Morel-Lavallée lesion: pathophysiology, clinical presentation, imaging features, and treatment options. Emerg Radiol. 2014;21(1):35-43. PubMed
- Mellado JM, Bencardino JT. Morel-Lavallée lesion: review with emphasis on MR imaging. Magn Reson Imaging Clin N Am. 2005;13(4):775-82. PubMed
- Nguyen PD, Truong N, Jebbia M, et al. Clinical Presentation, Imaging Features, and Management of Morel-Lavallee Lesions: A Scoping Review. Am Surg. 2026;92(3):999-1014. PubMed
- Bouchard MD, Pow C, Gilbert J, et al. Characteristics, Patterns and Optimal Treatment Strategies of Morel-Lavallee Lesions: A Systematic Review. J Orthop Trauma. 2025:10.1097/BOT.0000000000003005. PubMed
- De Coninck T, Vanhoenacker F, Verstraete K. Imaging Features of Morel-Lavallée Lesions. J Belg Soc Radiol. 2017;101(Suppl 2):15. PubMed
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