常染色体優性遺伝性脳動脈症(cerebra autosomal dominant arteriopathy with subcorticalinfacts and leukoencephalopathy:CADASIL)
- CADASILの読み方は「カダシル」。
- Notch3遺伝子の変異を原因する常染色体優性遺伝。変異により平滑筋の変性が起こり、血管の脆弱性をきたす。これにより、穿通枝領域に梗塞、微小出血が若年から多発する。また、白質病変をきたし、これも虚血を反映していると思われる。
- 定型的には家族歴があり、前兆を伴う偏頭痛が30歳前後から生じ、脳梗塞と気分障害・うつ症状は40~60歳くらいに生じる。認知症は50~60歳で発症する。(認知症の特徴は、記憶の障害ではなく遂行機能の障害。)
- うつ症状や脳血管性認知症、仮性球麻痺などを認めることもある。
- 高血圧や糖尿病、高脂血症などの脳卒中のリスクファクターがない若年で梗塞、出血をみた時に本症を疑う。ただし、本邦ではリスクファクターを有する率が高い。
- わが国では明らかな家族歴が確認できない孤発性のことも少なくないため注意。
常染色体劣勢遺伝性脳動脈症(cerebral autosomal recessive arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy:CARASIL)
- CARASILの読み方は「カラシル」。
- HTRA1遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝。
- 早発性禿頭、脳小血管病、変形性脊椎症を三徴とする。
- 禿頭は平均17歳頃で最も早期に発症し、変形性脊椎症や歩行障害や腰痛などで30歳頃にそれに続く。禿頭は必発ではなく、頻度は69%程度とされる。その後、30歳代に進行性認知症を呈するようになり、加齢とともに認知機能、運動障害が進行し続ける。
- 画像所見はCADASILと区別がつかない。
- 脊椎には、典型的な変形性脊椎症として椎体、椎間板の年齢不相応な変性が認められる。
CADASIL/CARASILの画像所見
- CARASIL、CADASILともに類似した画像所見を呈する。
- 大脳白質、中心灰白質に広範な虚血性変化を認め、大脳白質病変が徐々に進行する。白質病変は外包、内包へと広がり、加齢とともに増加、癒合していく。白質病変の広がりはCARASIL>CADASILの傾向がある。
- 30歳代頃からラクナ梗塞、微小出血を繰り返すようになる。
- 特に側頭極白質にT2WIやFLAIRで高信号域を90%以上(ただし、我が国では65%という報告もある)で認め、同部は高血圧などの他の原因による白質病変では現れにくいため、特徴的な所見。高信号は梗塞巣ではなく、血管病変による間質液の排出不良による拡大した血管周囲腔と髄鞘脱落を反映している。
- 外包のT2WI高信号は特徴的所見とされるが、Binswanger病や加齢性白質病変でもみられることがある。
- 微小出血を反映し、T2*WIやSWIで低信号域を認めることもある。
症例
引用:radiopedia
広範な大脳半球の白質病変を認め、右半卵円中心では陳旧性ラクナ梗塞を疑う所見を認めています。
左優位に側頭極白質に異常高信号があり、CADASIL/CARASILに特徴的な所見です。(生検でCADASILと診断された症例。)
前側頭極皮質下高信号を呈する鑑別疾患
- CADASIL/CARASIL:側頭極だけでなく、白質病変や微小出血、ラクナを合併する点がポイント
- 筋強直性ジストロフィー
- 神経梅毒
- 前頭側頭葉変性症
- 認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症
参考文献:
- 臨床放射線 Vol,63 No,6 2018 P621-622
- 臨床放射線 Vol.65 No.3 2020 P196-197
- 頭部 画像診断の勘ドコロ NEO P165-1666
- 画像診断 Vol,35 No,5 2015 P482-484