大腸癌術後の術後変化
- 大腸癌の結腸切除後の吻合には多くは自動縫合器が使用されており、CT画像では高吸収なステープルライン(staple line)で吻合部を同定できる。
直腸癌術後、仙骨前軟部陰影
- 直腸癌術後では術後変化として、仙骨前に軟部陰影を認めることがあり、局所再発との鑑別が問題となることがある。術後は6ヶ月ごとにCT画像でフォローし、サイズが大きくなるなど再発を除外できない場合にはMRIやFDG-PETを追加して評価する。
implantation cyst
- 吻合部に接する嚢胞性病変。
- 腸管吻合の際に粘膜下層以深に置換された腸粘膜上被より生産された粘液による嚢胞と考えられている。
- 直腸癌術後の2.5%に認めたとする報告あり
- 直腸やS状結腸の術後に多い。
- 画像所見としては吻合部に接する嚢胞性病変として認められ、多くは単発。
オキサリプラチンによるsinusoidal obstruction syndrome(SOS)
- オキサリプラチンは大腸癌の化学療法に使用され、SOSのリスクであることが知られている。
- 肉眼的に青銅色を呈することからblue liverと呼称される。
- SOSはオキサリプラチン以外にも造血幹細胞移植後や種々の抗がん剤、放射線治療などが原因となる。
- 病態は類洞内皮細胞障害に伴う類洞の閉塞による環流障害。
- 画像所見としては静脈環流障害を反映し、肝静脈の狭小化、肝腫大、肝実質の造影効果の不均一化、periportal collar、胆嚢壁の漿膜下浮腫、門脈圧亢進に伴う変化(脾腫、側副路の発達、腹水貯留)など。
- EOB-MRIにおける肝細胞相での網状低信号も診断に有用。
大腸癌術後の合併症
大腸癌術後の合併症としては、
- 縫合不全
- イレウス
- 腸閉塞
- 尿管損傷
などがある。
縫合不全
- 縫合不全が疑われる場合、多くはCTで診断可能。ただし、25%程度は偽陰性を呈するためCTでの除外は困難とされている。
- CT画像では、吻合部周囲(腸管外)にairを含む液体貯留を認めるのが典型的。術後の変化と鑑別が難しいことがあり、術後の反応性腹水やairを認めることがある。そのため、画像所見だけでなく血液検査や腹部所見、ドレーン性状などから総合的に判断する。
イレウス
- 術後早期には閉塞機転を認めない麻痺性イレウスが起こりやすい。
ヘルニアによる腸閉塞
- 腹壁瘢痕ヘルニアに加え、傍ストマヘルニアや腸間膜欠損部への内ヘルニア、会陰ヘルニアなどをきたす可能性がある。
- 会陰ヘルニアはAPR後に骨盤底を越えて主に小腸が会陰部皮下に突出した状態。
- 腸間膜にはリンパ節郭清で生じた間隙が生じるが、特に腹腔鏡手術ではこの部分は必ずしも閉鎖はされていない。
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尿管損傷
- まれではあるが術中に注意を払う合併症の一つ。
- 局所進行癌や膿瘍形成など高度炎症の合併、放射線照射後などでリスクが高い。
- 事前に尿管ステントを留置することで術中にメルクマールとなり損傷の予防に役立つ。
- 尿管損傷は術中に気づかれず術後の水腎症やurinomaとして同定される場合もある。
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参考文献:
- 臨床画像 Vol.38 No.7 増刊号2022 P59-61,63-5