先に結論:大腸癌術後のCTで見られる変化と合併症
- ステープルラインとは、腸をつなぐときに使う自動縫合器の金属の針の列のことで、CTでは吻合部に沿った白い(高吸収の)線として見え、吻合部を探す目印になります
- implantation cyst(インプランテーション嚢胞)は、吻合のときに腸の粘膜が壁の中に入り込み、そこから出る粘液がたまってできる吻合部に接した嚢胞で、直腸・S状結腸の術後に見られる良性の変化です。直腸癌術後の仙骨前の軟部影とあわせ、再発とまちがえないことが大切です
- 合併症では、縫合不全(吻合部の外に空気を含む液体のたまり)、麻痺性イレウス・腸閉塞、傍ストーマヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニアなどを確認します。抗がん剤オキサリプラチンによる肝類洞閉塞症候群(SOS)や脾腫も見られることがあります
- 術前の大腸癌・直腸癌のCT所見は、限局した不整な壁肥厚と、周囲脂肪へのしみ出し・リンパ節腫大・肝転移などです
大腸癌術後の術後変化
- 大腸癌の結腸切除後の吻合には多くは自動縫合器が使用されており、CT画像では高吸収なステープルライン(staple line)で吻合部を同定できる。
ステープルラインとは
- 自動縫合器・自動吻合器で打ち込まれた小さな金属の針(ステープル)の列のこと。切って閉じた所は直線状、円形の器械でつないだ所(低位前方切除後など)はリング状の高吸収として写る。
- それ自体は正常な術後変化。経過でその周りの壁肥厚や腫瘤が大きくなる場合は吻合部再発を考える。
直腸癌術後、仙骨前軟部陰影
- 直腸癌術後では術後変化として、仙骨前に軟部陰影を認めることがあり、局所再発との鑑別が問題となることがある。術後は定期的にCT画像でフォローし、サイズが大きくなるなど再発を除外できない場合にはMRIやFDG-PETを追加して評価する。
implantation cyst
- 吻合部に接する嚢胞性病変。
- 腸管吻合の際に粘膜下層以深に置換された腸粘膜上皮より産生された粘液による嚢胞と考えられている。
- 直腸癌術後の2.5%に認めたとする報告あり
- 直腸やS状結腸の術後に多い。
- 画像所見としては吻合部に接する嚢胞性病変として認められ、多くは単発。
オキサリプラチンによるsinusoidal obstruction syndrome(SOS)
- オキサリプラチンは大腸癌の化学療法に使用され、SOSのリスクであることが知られている。
- 肉眼的に青銅色を呈することからblue liverと呼称される。
- SOSはオキサリプラチン以外にも造血幹細胞移植後や種々の抗がん剤、放射線治療などが原因となる。
- 病態は類洞内皮細胞障害に伴う類洞の閉塞による還流障害。
- 画像所見としては静脈還流障害を反映し、肝静脈の狭小化、肝腫大、肝実質の造影効果の不均一化、periportal collar、胆嚢壁の漿膜下浮腫、門脈圧亢進に伴う変化(脾腫、側副路の発達、腹水貯留)など。
- EOB-MRIにおける肝細胞相での網状低信号も診断に有用。
大腸癌術後の合併症
大腸癌術後の合併症としては、
- 縫合不全
- イレウス
- 腸閉塞
- 尿管損傷
などがある。
縫合不全
- 縫合不全が疑われる場合、多くはCTで診断可能。ただし、25%程度は偽陰性を呈するためCTでの除外は困難とされている。
- CT画像では、吻合部周囲(腸管外)にairを含む液体貯留を認めるのが典型的。大腸術後の縫合不全疑い131例の検討では、CTの感度は71〜87%、特異度は84〜92%で、吻合部外への造影剤漏出が最も感度・特異度の高い所見であった。経肛門的に造影剤を注入してCTを撮影すると陽性的中率が大きく上がると報告されている。術後の変化と鑑別が難しいことがあり、術後の反応性腹水やairを認めることがある。そのため、画像所見だけでなく血液検査や腹部所見、ドレーン性状などから総合的に判断する。
イレウス
- 術後早期には閉塞機転を認めない麻痺性イレウスが起こりやすい。
ヘルニアによる腸閉塞
- 腹壁瘢痕ヘルニアに加え、傍ストマヘルニアや腸間膜欠損部への内ヘルニア、会陰ヘルニアなどをきたす可能性がある。
- 会陰ヘルニアはAPR後に骨盤底を越えて主に小腸が会陰部皮下に突出した状態。
- 腸間膜にはリンパ節郭清で生じた間隙が生じるが、特に腹腔鏡手術ではこの部分は必ずしも閉鎖はされていない。
傍ストーマヘルニアの画像診断
- ストーマ脇の腹壁のすき間から腸管や脂肪が脱出した状態。単孔式の結腸ストーマで多い。診断は診察が基本で、はっきりしないときにCTや超音波を用いる(Antoniou 2018)。
- CTではヘルニア門の大きさ、脱出物が脂肪か腸管か、腸閉塞・血流障害の有無をみる。単孔式結腸ストーマ83例では、経過中にCTで28.9%に認め、症状のある例はヘルニア門が大きかった(Seo 2011)。
関連記事:【保存版】腸閉塞・イレウスのCT画像診断の徹底まとめ!
症例 40歳代男性

引用:Radiopaedia(Parastomal hernia)
大腸全摘後のストーマのわきに痛みを伴う硬いふくらみが出た症例のCTです。ストーマ近くの腹壁の筋層を越えて、小腸ループと腸間膜が突出しています。その口側の小腸は拡張して液体で満たされ、ヘルニアによる腸閉塞をきたしていました。
尿管損傷
- まれではあるが術中に注意を払う合併症の一つ。
- 局所進行癌や膿瘍形成など高度炎症の合併、放射線照射後などでリスクが高い。
- 事前に尿管ステントを留置することで術中にメルクマールとなり損傷の予防に役立つ。
- 尿管損傷は術中に気づかれず術後の水腎症やurinomaとして同定される場合もある。
関連記事:大腸癌(結腸癌、直腸癌)に対する術式(手術)まとめ
(参考)術前の大腸癌・直腸癌のCT所見
- 限局性・不整な壁肥厚と内腔狭小化が基本。周囲脂肪織の濃度上昇は壁外浸潤、腫大リンパ節は転移を疑い、肝・肺・腹膜転移も確認する。
- 結腸癌の壁外浸潤(T3〜T4)の検出は感度90%・特異度69%だが、リンパ節転移は感度71%・特異度67%と苦手(Nerad 2016)。直腸癌の局所評価にはMRIが広く用いられる。
大腸癌術後のCTでよくある疑問(Q&A)
Q. ステープルラインが写っているのは異常?
A. 金属の針が写っているだけで正常な術後変化です。周りの壁肥厚や腫瘤が増えていないかを経過で確認します。
Q. 縫合不全の症状は?
A. 発熱、強くなる腹痛、ドレーンからの濁った排液などです。術後に気になる症状があれば、手術を受けた医療機関に相談してください。
あわせて読みたい:術後CTの「再発もどき」
参考文献:
- 臨床画像 Vol.38 No.7 増刊号2022 P59-61,63-5
- Kauv P, Benadjaoud S, Curis E, et al. Anastomotic leakage after colorectal surgery: diagnostic accuracy of CT. Eur Radiol. 2015;25(12):3543-51. PubMed
- Pennings JP, de Haas RJ, Murshid KJA, et al. FDG-avid presacral soft tissue mass in previously treated rectal cancer: Diagnostic outcome and additional value of MRI, including diffusion-weighted imaging. Eur J Surg Oncol. 2019;45(4):606-612. PubMed
- Antoniou SA, Agresta F, Garcia Alamino JM, et al. European Hernia Society guidelines on prevention and treatment of parastomal hernias. Hernia. 2018;22(1):183-198. PubMed
- Seo SH, Kim HJ, Oh SY, et al. Computed tomography classification for parastomal hernia. J Korean Surg Soc. 2011;81(2):111-4. PubMed
- Nerad E, Lahaye MJ, Maas M, et al. Diagnostic Accuracy of CT for Local Staging of Colon Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis. AJR Am J Roentgenol. 2016;207(5):984-995. PubMed
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