先に結論:門脈圧亢進症と側副血行路
- 門脈圧亢進症の原因は肝硬変が最多で、ほかに特発性門脈圧亢進症(近年は門脈・類洞血管疾患(PSVD)という概念で扱われます)・門脈血栓・Budd-Chiari症候群などがあります
- 画像では脾腫・腹水と、門脈から体循環へ逃げる側副血行路(食道・胃静脈瘤、胃腎シャント、脾腎シャント、傍臍静脈など)を確認します
- 肝外門脈が詰まると、肝門部に細い静脈が集まる海綿状変化(cavernous transformation)が見られます。大きな胃腎シャントは肝性脳症の原因やB-RTOの対象になります
- 門脈は、腸・胃・脾臓・膵臓からの血液を集めて肝臓へ運ぶ太い静脈で、上腸間膜静脈と脾静脈が膵臓の裏で合流してできます
門脈とは?どこにある?(走行・働き・合流する静脈)
門脈(portal vein)は、消化管(胃・小腸・大腸)と脾臓・膵臓・胆嚢から戻ってくる血液を集めて、心臓ではなく肝臓へ運ぶ静脈です。ふつうの静脈は心臓へ戻りますが、門脈はいったん肝臓に入ってから肝静脈→下大静脈へと流れる点が特徴です。
- 場所と走行:膵臓の頸部の背側で上腸間膜静脈(SMV)と脾静脈が合流して門脈になります。そこから肝十二指腸間膜の中を総胆管・固有肝動脈と並んで右上へ進み、肝門で右枝・左枝に分かれて肝臓の中へ入ります
- 合流する静脈:上腸間膜静脈・脾静脈のほか、下腸間膜静脈(多くは脾静脈かSMVに合流)、左胃静脈(胃冠状静脈)、右胃静脈、胆嚢静脈、膵十二指腸静脈などが流れ込みます
- 働き:腸で吸収した栄養や薬、腸内でできた物質を肝臓へ届け、代謝・解毒を受けさせます。肝臓は門脈と肝動脈の両方から血液を受けており、門脈のほうが肝臓の血流の大部分を担います
- 門脈系とは:門脈とそこへ注ぐ静脈のまとまりを「門脈系」と呼びます。肝硬変などで門脈の流れが悪くなると、この門脈系の血液が下大静脈・上大静脈へ逃げ道(側副血行路)を作ります。これが下で解説する門脈圧亢進症です
詳しくは門脈とは?どこにある?肝臓へ向かう走行と右枝・左枝(臍部)の解剖、分岐バリアントとCT画像で解説しています。
門脈圧亢進症の原因

肝硬変と間違えやすい門脈・類洞血管疾患(PSVD)
門脈・類洞血管疾患(porto-sinusoidal vascular disorder:PSVD)は、肝硬変がないのに門脈圧亢進症を起こす病気で、画像や臨床所見が重なるため肝硬変と誤診されやすいことが知られています。
肝生検で確かめた12研究のシステマティックレビューでは、次のような違いがまとめられています(Giri 2023)。
| PSVDを考える所見 | 肝硬変を考える所見 |
| エラストグラフィで肝臓が比較的やわらかく、脾臓が硬い | 肝表面の凹凸 |
| FNH様の結節、肝内・肝外の門脈の異常、大きな脾臓 | S4の萎縮とS1(尾状葉)の肥大 |
門脈圧亢進の程度をそろえて比べた韓国とフランスの研究では、CTで測った標準化した脾臓の体積がPSVDで大きく(5.14対3.59、5.20対3.46)、肝臓の合成能や肝細胞障害の指標はPSVDのほうが保たれていました(Heo 2026)。
門脈圧亢進の所見が強いのに、肝機能が比較的保たれ、肝表面が平滑な場合は、肝硬変と決めつけずPSVDを考え、肝生検を含めた精査につなげます。
門脈圧亢進症に伴う臨床症候
・脾腫、脾機能亢進症 脾腫の基準は施設や文献により異なる(長さが15cmを超えるもの等)。
・門脈-大循環短路(門脈に帰れない血流がIVCやSVCに還流する遠肝性側副血行路)
・食道、胃、異所性静脈瘤
・肝性脳症
・腹水、腸間膜の浮腫性変化。2022年のBaveno VIIコンセンサスでは、代償性の進行慢性肝疾患では「臨床的に意義のある門脈圧亢進症(CSPH)」の有無で死亡リスクや必要な診断・治療が変わるとされ、その判定には肝静脈圧較差(HVPG)が標準で、非侵襲的検査も用いられます。画像で脾腫や側副血行路を見つけたら、CSPHを示唆する所見として報告することが大切です。
門脈圧亢進に伴う側副血行路
・遠肝性側副血行路(門脈に帰れないので遠回りしてIVC,SVCに帰る)
・求肝性側副血行路(結局門脈に帰る)
の2つに分けられる。
遠肝性側副血行路
・噴門部・食道静脈瘤(cardiac and esophageal varices)
・胃腎短絡路(gastro-renal shunt:G-R shunt)胃静脈瘤の多くは左下横隔静脈を経て左腎静脈へ流出する胃腎短絡路を排血路とし、この型ではB-RTOがよい治療選択肢となる。脾腎短絡路は肝性脳症の原因となりやすい。
・脾腎短絡路(spleno-renal shunt:S-R shunt)
・傍臍静脈(paraumbilical vein)
・腸間膜静脈瘤
・肝内門脈瘤(門脈-肝静脈短路)
・精巣・卵巣静脈瘤
・直腸周囲静脈瘤
噴門部・食道静脈瘤(cardiac and esophageal varices)

胃腎短絡路(gastro-renal shunt:G-R shunt)/脾腎短絡路(spleno-renal shunt:S-R shunt)

傍臍静脈(paraumbilical vein)

腸間膜静脈瘤

求肝性側副血行路
・肝外門脈や脾静脈の閉塞では、求肝性の門脈側副路(膵頭・十二指腸・総胆管・胆嚢周囲の小静脈が吻合して形成される側副血行路=cavernous transformation)が見られる。
・おもに、①脾静脈-短胃静脈-胃冠状静脈-門脈 ②脾静脈-胃大網静脈-SMV-門脈へと形成される。
あわせて読みたい:日本住血吸虫症の画像
参考文献
- Kiyosue H, Ibukuro K, Maruno M, et al. Multidetector CT anatomy of drainage routes of gastric varices: a pictorial review. Radiographics. 2013;33(1):87-100. PubMed
- Moubarak E, Bouvier A, Boursier J, et al. Portosystemic collateral vessels in liver cirrhosis: a three-dimensional MDCT pictorial review. Abdom Imaging. 2012;37(5):746-66. PubMed
- de Franchis R, Bosch J, Garcia-Tsao G, et al. Baveno VII – Renewing consensus in portal hypertension. J Hepatol. 2022;76(4):959-974. PubMed
- De Gottardi A, Rautou PE, Schouten J, et al. Porto-sinusoidal vascular disease: proposal and description of a novel entity. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2019;4(5):399-411. PubMed
- Giri S, Singh A, Roy A, et al. Noninvasive differentiation of porto-sinusoidal vascular disorder from cirrhosis: a systematic review. Abdom Radiol (NY). 2023;48(7):2340-2348. PubMed
- Heo S, Ronot M, Rautou PE, et al. Clinico-radiological differences between porto-sinusoidal vascular disorder and cirrhosis. JHEP Rep. 2026;8(11):102034. PubMed
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重複下大静脈のある患者でも門脈圧亢進症は起こりえますか?
コメントありがとうございます。
門脈圧亢進症は、主に門脈系の血流に影響を与える要因によって引き起こされるため、下大静脈の解剖学的変異が直接的に門脈系に影響を与えることは通常ありません。
つまり起こるということです。