
【胸部】TIPS症例34
【症例】70歳代男性
スクリーニング
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両側肺上葉にはどんな変化がありますか?
ちょっと見えにくいかもしれませんが、両側上葉に小葉中心性の気腫性変化があります。
この気腫性変化は壁構造ははっきりしません。
また左肺尖部には嚢胞を認めています。この嚢胞は壁構造を薄いですがはっきり認めています。
こちらは、bulla(ブラ)と呼ばれるものです。
皆さんの環境ではできませんが、CTの濃度を調節するとややわかりにくい気腫性変化も低吸収域として浮かび上がってきます。
やはりこれらの壁構造ははっきりしません。
肺気腫のCT画像所見には以下の3種類が知られています。
今回はこの中でも小葉中心性肺気腫に相当します。
小葉中心性肺気腫は、傍隔壁型肺気腫とともに喫煙が関連していると言われています。
※今回この方は消化器内科で撮影されており、カルテには喫煙歴などの記載がありませんでしたが、おそらく喫煙歴があるのであろうと推測されます。
画像上の特徴
- ブラ・ブレブ:壁構造を有する
- 気腫:壁構造を有しない
ブラと気腫の違いは上のように壁構造を有するか有さないかの違いがあります。
また、ブラは胸膜直下に認めることが多く、ブレブは臓側胸膜内に認めサイズが小さいのが特徴です。
画像上はブラとブレブは区別ができませんので、まとめてブラと表現します。
また、
- ブラの周囲には気腫を認めることが多い。
- 気腫の一部が壁を形成してブラになることがある。
という点から、ブラと気腫は鑑別ができないこともしばしばあります。
診断:両側上葉に小葉中心性肺気腫、肺尖部にbullaあり。
関連:
【胸部】TIPS症例34の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
壁構造の違いがあるんですね。溶けてなくなった場所か嚢胞かの違いかな?くらいで、あまり違いを考えたことありませんでした。
アウトプットありがとうございます。
厳密には区別できないこともありますし、明らかに壁が見えるのに気腫と書くこともあります。
(印象として傍隔壁型肺気腫は結構な割合で壁が見えるような・・・)
あくまで目安として覚えておきましょう。
当院では肺気腫の程度をクラスター解析で客観視しているようです。ふと『治療はできるのだろうか?』と思い調べたところ、進行抑制と症状緩和を薬物により行い、後は呼吸リハやHOTとかになるのですね。現状把握までという認識で調べ終えました。良い機会になりました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>肺気腫の程度をクラスター解析で客観視している
そんなのあるのですね。それと呼吸機能を見て総合的に判断されるのですかね。
病変の消長の経過観察、患者への禁煙の啓蒙などに利用とネット記事に書かれてましたので先生のおっしゃるっとおり総合的に判断だと思います。
アウトプットありがとうございます。
画像検査に加えて、呼吸機能検査も重要ですね。むしろそちらの方が重要ですね。
肺気腫と嚢胞病変の鑑別はブラだけでなく、リンパ脈管筋腫症、ランゲルハンス細胞組織球症、Birt-Hogg-Dubé症候群などのまれな嚢胞を呈する病変との鑑別にも大切だと感じます。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるとおりです。
>リンパ脈管筋腫症、ランゲルハンス細胞組織球症、Birt-Hogg-Dubé症候群などのまれな嚢胞
これらをあらゆる方向から探したのですが・・・・。
LAMくらいはありそうなんですが、それぽいものはあっても病理学的に証明されたものを見つけることができませんでした(T_T)
まだまだ高齢者を中心に喫煙者は多くて、よく見る画像ですね
将来的に呼吸が悪くなる可能性があるということの説明も必要かもしれませんね
アウトプットありがとうございます。
そうですね。おっしゃるように、高齢者を中心に多いですね。
特にそれでもなおかつ禁煙してない人にはその説明は必要ですね。
こんばんは。
本日もご解説ありがとうございます!
今回は、なんとなく「気腫性変化」と所見を述べるにとどまってしまいました。壁の有無や大きさなどをもとに嚢胞なのか気腫性変化なのか厳密に所見を同定するべきでした。
含気性病変はいろいろあって混乱しがちです…
今日は、
Fleischner Societyによる用語の定義によると、
◎嚢胞:4mm未満の薄く整な壁に囲まれた含気性病変で、通常は円形
◎空洞:壁の厚さは4mm以上の含気性病変、もしくは腫瘤や炎症性病変の内部に認められる含気性病変。
◎ブラ:形状はcystと同じだが、壁の厚さが1mm以下で、大きさが1cm以上のもの。
◎ブレブ:形状はcystとほぼ同じだが、胸膜直下もしくは胸膜に存在し(典型的には肺尖部)、大きさが1cm以下のもの。
◎Pneumatocele:円形で、一過性の含気性病変、感染症や外傷に伴うものであり、周囲に改善傾向にある浸潤影を伴うことが多い
となっているということを調べました!
アウトプットありがとうございます。
>なんとなく「気腫性変化」と所見を述べるにとどまってしまいました。
普段はそれでいいのですが、せっかくなので今回ちょっと細かく見てみましょうという企画です。
>Fleischner Societyによる用語の定義
補足ありがとうございます(^^)
結構境界が曖昧でどれも同じように使われることもあるのですが、定義は重要です。
CTで肺が肋間にめり込むように見える方っていますよね。表面が大きく波打つように見える方。
この症例もそうですし、肺気腫の方に多い印象があります。
閉塞性換気障害や、るい痩による肋間筋の萎縮が原因なのではと、勝手に思っていたのですが、実際のところはなんなのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>表面が大きく波打つように見える方。
確かに今回このパターンですね。
>閉塞性換気障害や、るい痩による肋間筋の萎縮が原因なのではと、勝手に思っていたのですが、実際のところはなんなのでしょうか。
原因については不明ですが、確かに肋間筋の萎縮はあるのかもしれませんね。胸郭が綺麗に広がっていないということですからね。
胸郭の広がりが制限しているとすれば、拘束性換気障害ですかね。
なお、胸部レントゲンで横隔膜が波打って描出される場合があり、横隔膜弓分割(scalloping)と呼ばれますが、こちらは加齢性変化です。
今回のCTでの肋間の波打ちの様子は加齢性変化には記載がありませんでした。
気腫性変化もブラも同じものと思っていました。
一つひとつしっかりと覚えていきたいです。
気腫性変化があれば肺気腫といっていいのですか。
レントゲン写真では肺の過膨張がありますが、CTでは肺の過膨張
というのはわかるのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>気腫性変化があれば肺気腫といっていいのですか。
少々の気腫性変化ならば「気腫性変化あり」と記載するにとどめるのが無難かもしれません。
広範に及ぶ場合は「肺気腫あり」でよいです。
>レントゲン写真では肺の過膨張がありますが、CTでは肺の過膨張というのはわかるのでしょうか。
CTでも冠状断像を見ればレントゲンと同じように過膨張であることがわかりますが、横断像でも「肺気腫あり」と記載するような気腫性変化が強い場合は過膨張があるのが通常ですね。