【胸部】TIPS症例27
【症例】50歳代女性
健診の胸部レントゲンで異常陰影を指摘された。
画像はこちら
異常所見と診断は?
左中肺野に直径2.3cm大の境界明瞭な円形の結節影を認めています。
肺癌除外のためCTが撮影されました。
CTにおいても左S4に直径2.3cm大の境界明瞭な円形結節を認めています。
縦隔条件で内部やや低吸収な部位があり、脂肪の含有が示唆されます
石灰化は認めていません。
CT値を測定すると内部のCT値はマイナスであり、やはり脂肪の含有があります。
このような脂肪の含有を認めた場合、肺過誤腫を疑う所見です。
診断:肺過誤腫(hamartoma)
※過誤腫疑いの場合、通常フォローされるのみですが、この方は強い希望があり、切除(胸腔鏡下左上葉舌区区域切除術)されました。病理の結果はやはり過誤腫(病理記載:腫瘤部は分葉状構造を示す軟骨組織や気管支上皮様の腺上皮、脂肪組織が混在し増生しており、過誤腫の像です。)でした。
参考:腫瘤影、結節影、粒状影の定義
- 3cm以上→腫瘤影
- 5mm-3cm→結節影→今回はサイズから結節影と表現されます。
- 2-5mm→粒状影
※2mm以下は粟粒影と呼ばれる。ただし、単発ではなくびまん性の分布を示すもの。
関連:
その他所見:胸腺やや目立つが正常範囲。
【胸部】TIPS症例27の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
過誤腫(良性)の判断が画像のみでできる場合というのは本当に患者にとってラッキーですね。放射線技師は正しいCT値を計れるように部分体積効果の影響が少ないように、腫瘤に対して最低3スライスが割り当てられるように画像を作りたいものです。いい画を作って正しく判断していただけるように心がけたいものです。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>腫瘤に対して最低3スライスが割り当てられるように画像を作りたいものです
確かにサイズが小さい場合はその部位だけでもthin sliceなどがあれば助かりますね。
技師目線のコメントとても有り難いです。
フォローしている結節部位のthin sliceやMRPがあればありがたいです。
過誤腫の画像診断は全然知らなかったのですが、脂肪を確認できれば「過誤腫」と結構言い切ってもいい感じでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
断定はできないですが、過誤腫疑いでフォローとなりますね。
患者の不安を極力抑えるためにも、良性腫瘍の知識も大切だと感じます。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
より良性らしい
より悪性らしい
どちら寄りの肺結節なのかを形状や内部の組成から推測することが重要ですね。
良性腫瘍は勉強が疎かになりがちですよね。
ですが、良性を知ることで悪性がより理解できますね。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
脂肪を含有している、石灰化を含有していると言った所見は悪性を否定するものではないですが、より良性らしい所見として覚えておきましょう。
こんにちは。
いつもご解説ありがとうございます!
結節影が肺血管と連続性があるようにみえて、肺動静脈奇形と答えてしまいました…。
Radiopaediaで調べてみると、ややこしいことに肺動静脈奇形でも静脈結石の存在で石灰化を呈することがある…と書かれてあり、総合的に判断しないと誤診してしまいそうだと思いました。※1
より良性らしさを判断するために、今後は「結節の辺縁の性状に注目する」、「結節内部の吸収値を意識する」も意識したいと思います!
【参考】
※1Dr Mostafa El-Feky and Dr Donna D’Souza et al.Pulmonary arteriovenous malformation
https://radiopaedia.org/articles/pulmonary-arteriovenous-malformation?lang=us
アウトプットありがとうございます。
>結節影が肺血管と連続性があるようにみえて、肺動静脈奇形と答えてしまいました…。
今回もちょっと血管と連続してそうにも見えますが、動静脈奇形の場合は前後の血管を通常追うことができます。
>肺動静脈奇形でも静脈結石の存在で石灰化を呈することがある…
確かに悩ましいですね(^_^;)
脳でも動静脈奇形はCTで石灰化を来すことで発見されることもあります。
>より良性らしさを判断するために、今後は「結節の辺縁の性状に注目する」、「結節内部の吸収値を意識する」も意識したいと思います!
そうですね。ともに非常に重要な点です。
私もやってしまいました。。肺動脈と連続性があったので、肺動静脈瘻と答えました。
https://遠隔画像診断.jp/archives/24412 ←これを見て、納得できました。ありがとうございます。
結節影中に脂肪成分があることに全然気づきませんでした。もっと丁寧に細かく濃度をチェックする習慣を付けねばと反省です。
ポップコーン状石灰化、脂肪成分含む、境界明瞭ということを覚えておこうと思います。
アウトプットありがとうございます。
>結節影中に脂肪成分があることに全然気づきませんでした。もっと丁寧に細かく濃度をチェックする習慣を付けねばと反省です。
脂肪腫のような明瞭な脂肪があるわけではないので、慣れていないと脂肪成分には気づきにくいかもしれませんね。
脂肪を疑うような低吸収がないか、ポップコーン状(なかなかこれぞポップコーンというのは少ないですが)の石灰化に着目してみてください。
いつもありがとうございます。
本当に恥ずかしいのですが、 部位を舌区(S4)ではなく、左肺上葉S3としてしまいました。。。
気管支走行を追って答えなきゃダメですね・・・・・・・反省を込めてコメントです。
アウトプットありがとうございます。
実際はS3-4の間くらいでしょうね。結構微妙な位置ではありますね(^_^;
胸部レントゲンでは過誤腫は石灰化がなくても、肋骨の濃度より高いのが普通でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
胸部レントゲンは肺野の空気の中に異常な結節や腫瘤がないかを見つけるものであり、結節があれば、それが脂肪濃度であれ、石灰化を含有するものであれ高吸収になります。
あまりレントゲンではこのようなことはしないかもしれませんが、このレントゲンのウインドウレベル(WL)/ウインドウ幅(WW)=-511/1023でした。
その上で、文章による解説より動画の方がわかりやすいと思いますので動画解説しました。
この話は、腹部で脂肪ウインドウというのがありましたが、その辺りの復習にもなりますね。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/abmo
動画をわざわざ作っていただき、詳しい説明をありがとうございました。理解が深まりました。
お返事が大変遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。