先に結論:過誤腫(かごしゅ)・肺過誤腫とは
- 過誤腫とは、その臓器にもともとある組織(軟骨・脂肪・平滑筋など)が、まとまりを乱して増えてできた良性のかたまりです。肺・腎臓(血管筋脂肪腫)・脾臓などにできます
- 肺過誤腫は肺の良性腫瘍で最も多いもので、中高年の男性に多く、ほとんどは無症状で健診のレントゲンやCTで偶然見つかります。がんになることはほとんどありません
- CTで境界がはっきりした丸い結節の中に脂肪やポップコーン状の石灰化が見えれば、過誤腫と診断しやすくなります。典型的でない場合は、肺がんとの区別のため経過観察や生検を行います
- ポップコーン状石灰化とは、結節の中の軟骨が石灰化して、はじけたポップコーンのような粒の集まりに見えるものです。過誤腫に特徴的な石灰化です
肺の過誤腫(pulmonary hamartoma)
- 肺の組織成分が混在する組織奇形。肉眼的にも顕微鏡的にも新生物に類似する巣状の奇形。
- 肺の過誤腫は真の過誤腫かどうか議論があり、現在は良性腫瘍の一種と考えられることが多い。
- 大部分の過誤腫で軟骨を含むことが多く、他に脂肪や嚢胞状の液体貯留を認める。
- 肺の良性腫瘍で最も多い(Lien 2004)。
- 中高年の男性に多く(男女比約2:1、ピークは60歳代との報告。Gjevre 1996)、小児には稀。
- 通常は無症状だが、気管支内腫瘍による閉塞性肺炎が原因となって、咳嗽、軽度の胸痛、発熱を来すことがある。まれに喀血あり。
過誤腫の画像診断
- 通常単発性結節。稀に多発。肺野末梢に位置することが多い。気管支内に発生することもある。
- 通常は小さく(平均1.5cm、0.2〜6.0cm。Gjevre 1996)、まれに大きく発育する。
- 軟骨の成分が多い軟骨性過誤腫が最多。辺縁が類円形か分葉形。
- 石灰化を伴うことがある。小病巣の石灰化はアーチファクトとの鑑別が困難(beam hardening artifact)。
- ポップコーン状石灰化を見た場合は過誤腫の可能性が高い。Siegelmanらは、径2.5cm以下・辺縁平滑・内部に限局性の脂肪(または脂肪と石灰化の混在)をCT診断基準とし、肺癌283例・転移72例でこの基準を満たすものはなかったと報告しています(Siegelman 1986)。一方で脂肪も石灰化も検出できない過誤腫も少なくありません。結節内の脂肪は過誤腫の信頼できる指標とされ、石灰化の検出では薄層CTが単純X線写真の10〜20倍の感度をもつため、評価には薄層CTを用います(Erasmus 2000)。
- 脂肪成分を含むことが多い。CTで内部に脂肪濃度を見つければ診断は容易。(薄層CTの検討では47例中、脂肪のみ18例・脂肪と石灰化10例で診断できた。)
- 一般にとてもゆっくり大きくなります。CTで経過を追えた過誤腫25例の推定体積倍加時間は中央値2253日で、400日未満だったのは1例だけでした(Ryan 2023)。カルチノイドとは増大の速さだけでは区別できません(Ryan 2023)。
過誤腫とは(ほかの臓器にできる過誤腫)
過誤腫(hamartoma)は、その場所にもともとある組織が配列を乱して増えたかたまりを指す言葉で、肺以外の臓器にも使われます。
| 臓器 | 代表的な過誤腫 |
|---|---|
| 肺 | 肺過誤腫(軟骨性過誤腫) |
| 腎臓 | 血管筋脂肪腫(過誤腫の一種として扱われてきた) |
| 脾臓 | 脾過誤腫 |
| 脳 | 視床下部過誤腫 |
結節性硬化症やCowden症候群では、いくつもの臓器に過誤腫が多発します。
症例 60歳代 男性

左下葉に境界明瞭な球形の結節あり。
内部には脂肪含有を認めており、過誤腫が疑われます。
5年前の画像(非提示)と著変ありませんでした。
症例 60歳代 男性

引用:Radiopaedia
内部にポップコーン様の石灰化と脂肪組織を有する境界明瞭な結節を認めており、典型的な過誤腫を疑う所見です。
肺過誤腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 肺過誤腫はがんになりますか?
A. がんに変わった証拠は見つかっていません(Gjevre 1996)。無症状で過誤腫と確かめられた人は、手術より経過観察がすすめられています(Elsayed 2015)。
咳・血痰などの気になる症状がある場合や、健診で結節を指摘された場合は、医療機関で相談してください。
参考文献
- Siegelman SS, Khouri NF, Scott WW Jr, et al. Pulmonary hamartoma: CT findings. Radiology. 1986;160(2):313-7. PubMed
- Gjevre JA, Myers JL, Prakash UB. Pulmonary hamartomas. Mayo Clin Proc. 1996;71(1):14-20. PubMed
- Erasmus JJ, Connolly JE, McAdams HP, et al. Solitary pulmonary nodules: Part I. Morphologic evaluation for differentiation of benign and malignant lesions. Radiographics. 2000;20(1):43-58. PubMed
- Gaerte SC, Meyer CA, Winer-Muram HT, et al. Fat-containing lesions of the chest. Radiographics. 2002;22 Spec No:S61-78. PubMed
- Lien YC, Hsu HS, Li WY, et al. Pulmonary hamartoma. J Chin Med Assoc. 2004;67(1):21-6. PubMed
- Ryan JW, Hammer MM. Growth Rates of Pulmonary Carcinoid Tumors and Hamartomas. J Comput Assist Tomogr. 2023;47(3):396-401. PubMed
- Elsayed H, Abdel Hady SM, Elbastawisy SE. Is resection necessary in biopsy-proven asymptomatic pulmonary hamartomas? Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2015;21(6):773-6. PubMed
- Meyer CA, White CS. Cartilaginous disorders of the chest. Radiographics. 1998;18(5):1109-23. PubMed
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