【胸部】TIPS症例25
【症例】60歳代女性
スクリーニング
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胸部レントゲンで左心陰影の第4弓が突出して見えていますが、その原因は?
胸部レントゲンから見ていきましょう。
確かに、左心陰影と横隔膜が交差する心横隔膜部が不明瞭化して、第4弓が外側に突出しているように見えます。
- 心陰影の拡大でしょうか?
- 何か腫瘍が存在しているのでしょうか?
実はこれはよく見られる正常変異であり、CTで脂肪を目立たせた濃度にするとその正体がわかります。
脂肪を目立たせるように濃度を変えると皮下脂肪と同じような濃度である脂肪の塊が心臓の周りに出現します。
これを心膜外脂肪塊(pericardial fat pad)といいます。
そしてこれは心臓に接しており、本来作るべき左右の心陰影のX線との接線方向を妨げている(=シルエット陽性となり本来の心陰影を作れない)ことが分かります。
接線を作れなければレントゲンでは輪郭は浮かび上がってこないのでしたね。
脂肪塊が心臓周囲にくっついていることで、心臓と接線を作るのをジャマしているということです。
シェーマで表すと以下の様になります。
あるときは、心臓の左右で、心陰影と横隔膜の交差部がわかりにくくなり、左右に突出(あるいはいずれかのみに突出)するような陰影を作ります。
診断:心膜外脂肪塊(pericardial fat pad)
関連:
その他所見:肺動脈拡張あり。
【胸部】TIPS症例25の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
自分の健康診断時の胸部画像でこれがあったときはショックでした。ダイエットしたら消えました。知らなかったら『おや!』と思ってしまいますね。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>自分の健康診断時の胸部画像でこれがあったときはショックでした。ダイエットしたら消えました。
体験者ですか。しかも消えたという。before→afterで、「さて、この方はなにをしてこうなった?」というコンテンツにしたいくらいです。
初期研修医です。講座ありがとうございました。
日常診療でよく見るXp像で、心拡大ではないと思いつつも何となく心拡大として取っていた所見でした。CTと比べるとよくわかりました。
心不全患者などではよくXpを取りますが、その際習慣としてCTRを測定しております。しかし今回のようなpericardial fat padがある場合、心陰影が追えないためCTRを過大評価してしまう事が多々ありました。出来るだけ正しく評価するためのコツや見方などあるのでしょうか?それとも、CTR計測は困難なのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>しかし今回のようなpericardial fat padがある場合、心陰影が追えないためCTRを過大評価してしまう事が多々ありました。出来るだけ正しく評価するためのコツや見方などあるのでしょうか?それとも、CTR計測は困難なのでしょうか?
そうですね。過大評価する傾向にあります。
もとの左室壁からおおよそのラインを推測するしかないでしょうね。
そういう意味でCTR計測は難しいことも多々あると思います。
「関連:胸部レントゲンで見られる心膜外脂肪塊とは?」に出てくるような症例だと、私ではCTを撮影しないと判断できません…。
アウトプットありがとうございます。
>「関連:胸部レントゲンで見られる心膜外脂肪塊とは?」に出てくるような症例だと、私ではCTを撮影しないと判断できません…。
ですね。ちょっとあの症例はそれ以外もあるので余計そうですね。
異所性脂肪で心臓の周りに脂肪がつくと心機能障害や虚血性疾患のリスクだと聞きます。
内臓脂肪と合わせて、検診のメニューなんかに良さそうですね。
アウトプットありがとうございます。
>心臓の周りに脂肪がつくと心機能障害や虚血性疾患のリスクだと聞きます。
この脂肪ですが、今回の心膜外脂肪塊ではなく、心膜下脂肪ですね。
https://遠隔画像診断.jp/archives/19350#i-3
なんとなくレントゲンで心拡大あるように見えるけど、心不全ではなさそうな患者さんで見たことありますね。すぐ騙されてしまいそうなので、勉強になりました
アウトプットありがとうございます。
結構だまされてしまいますよね。
CTがあれば脂肪が見やすいように条件を変更して確認してみてください。
何度かその作業をすると、「あ、またあれか」とレントゲンで分かるようになります。
背景肺がややこしい方は別ですが。
肺動脈が結構太いように思いますが
有意な所見でしょうか
そう思って色々 深読みしてしまいました
アウトプットありがとうございます。
そうですね。その他所見のところに記載があるように、有意な所見で拾うべき所見です。
こんばんは。
本日もありがとうございました!
脂肪組織も心膜下と心膜外に分けられるのですね。
かなり遭遇頻度が高い割りに、今まではっきりと区別して所見を述べてこなかったので、大変勉強になりました!
アウトプットありがとうございます。
>脂肪組織も心膜下と心膜外に分けられるのですね。
かなり遭遇頻度が高い割りに、今まではっきりと区別して所見を述べてこなかった
そうなんです。臨床的意義も異なるので合わせて覚えておきましょう。
ありがとうございました。
この方、横隔膜の位置も両側高いと思うのですが、いかがですか?
前肋骨は第五肋骨、後肋骨は第9肋骨のところにあるように見えます。
肥満のせいでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>横隔膜の位置も両側高いと思うのですが、いかがですか?
前肋骨は第五肋骨、後肋骨は第9肋骨のところにあるように見えます。
おっしゃるとおりですね。ご指摘ありがとうございます。
>肥満のせいでしょうか。
そうですね。肥満による挙上と考えられます。
このように両側の横隔膜の挙上を認めた場合、病的な状態で生じることは少なく、
・深吸気で撮影されていない
・肥満
・円背
であるケースが大半と言われています。
参考:画像診断押さえておきたい24のポイント P54
心膜外脂肪塊(pericardial fat pad)はよく見られる正常変異とのことですが、
正常変異ならスルーしてしまうということではなく、読影の時は所見としてしっかりと
記載すべきですか。
アウトプットありがとうございます。
>正常変異ならスルーしてしまうということではなく、読影の時は所見としてしっかりと
記載すべきですか。
分かっているならばあえて記載する必要はないかと考えます。よく見られますので。
聞かれたときに心膜外脂肪塊(あるいは肥満によるもの)と答えられたら問題ありません。