心膜腔と心膜の層 心膜の層とCT

心膜腔とは、心臓の表面をおおう臓側心膜(心外膜)と、外側の壁側心膜とのあいだにある狭いすき間で、ふだんは少量の心膜液が入っています。心内膜・心外膜・壁側心膜・心膜下脂肪と「心」と「膜」の付く名前が続いて混乱しやすいところを、研修医のハジメくんと一緒に内側から外側へ1枚ずつ整理し、正常の心膜と心嚢液・心膜肥厚のCTまで見ていきます。

先に結論

  1. 心膜腔(心嚢腔)とは、臓側心膜(心外膜)と壁側心膜のあいだのすき間。ふだんは15〜50mLほどの心膜液が入り、増えたものが心嚢液貯留。
  2. 内側から心内膜→心筋→心膜下脂肪→臓側心膜(心外膜)→心膜腔→壁側心膜→線維性心膜→心膜外脂肪。脂肪は心膜の内と外の2か所にある。
  3. CTの正常心膜は、2つの脂肪にはさまれた厚さ2mm未満の細い線。厚く・石灰化していれば肥厚、心外膜側の脂肪の外に水があれば心嚢液。

目的から読む: 心膜腔(心嚢)とは / 心内膜・心外膜・壁側心膜の層 / 漿膜性心膜と線維性心膜 / 心膜下脂肪と心膜外脂肪 / 正常心膜の厚さ(CT) / 心嚢液・心膜肥厚のCT

心膜腔(心嚢)とは? 心臓を包む袋のすき間

心膜腔は、心臓を包む2枚の膜(臓側心膜と壁側心膜)のあいだのすき間です。中の少量の液が潤滑油になり、拍動する心臓がまわりとこすれずに動けます。

ハジメハジメ(研修医)
心膜って、心臓の筋肉のことですか?心膜腔と心嚢は同じものですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
筋肉は心筋です。心膜は、心臓を外から包んでいるふくろのような膜です。そのふくろ全体を心嚢、ふくろの中のすき間を心膜腔(心嚢腔)と呼ぶことが多いです。心嚢液・心嚢穿刺の「心嚢」は、このふくろの中という意味ですね。
ハジメハジメ(研修医)
ふくろの中のすき間…じゃあ、心臓はふくろの中に浮かんでいるんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
いい質問です。じつは心臓は、すき間の外にあります。空気を少し入れた風船を、こぶしで押し込んだところを想像してみてください。こぶしが心臓、こぶしに貼りつく面が臓側心膜、外側の面が壁側心膜、風船の中の空気の部分が心膜腔です。
図1 風船とこぶしで見る心膜腔 こぶし=心臓、こぶしに接する面=臓側心膜、外の面=壁側心膜。2枚は大血管の根もとで折り返してつながり、そのあいだが心膜腔です。
図1 風船とこぶしで見る心膜腔 こぶし=心臓、こぶしに接する面=臓側心膜、外の面=壁側心膜。2枚は大血管の根もとで折り返してつながり、そのあいだが心膜腔です。

臓側心膜(心外膜)は大血管の根もとで折り返して壁側心膜につながり、2枚のあいだに心膜腔をつくります。心膜腔には、心臓が拍動に合わせて摩擦なく動けるように15〜50mLの心膜液が入っています(Ünal 2019)。

この量が正常の範囲を超えてたまったものを心嚢液貯留(pericardial effusion)と呼びます。心嚢穿刺(心膜穿刺)では、この心膜腔に針を進めて、たまった液体を抜きます。

漿膜(しょうまく)とは、胸膜・腹膜・心膜のように体の中の空間(体腔)と臓器をおおう、なめらかで薄い膜のことです。心膜では、臓側(心臓側)と壁側の2枚の漿膜のあいだが心膜腔になります。

ハジメハジメ(研修医)
2枚の膜のすき間に少しだけ液…どこかで聞いた形です。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです、胸膜と同じつくりです。肺に貼りつく臓側胸膜と、胸の壁の内側の壁側胸膜のあいだが胸膜腔で、増えた液が胸水です。心膜腔と心嚢液の関係とそっくりですね。

胸膜の模式図。臓側胸膜と壁側胸膜のあいだが胸膜腔で、液が正常を超えてたまると胸水

胸膜も、臓側胸膜と壁側胸膜のあいだに胸膜腔があり、ごく少量の生理的な胸膜液が入っています。正常の範囲を超えてたまったものが胸水(pleural effusion)です。

図2 心膜と胸膜はおなじつくり 心膜と胸膜を左右に並べた比較。臓側の膜・壁側の膜・そのすき間・増えた液(心嚢液と胸水)の対応が、一列ずつ見くらべてわかります。
図2 心膜と胸膜はおなじつくり 心膜と胸膜を左右に並べた比較。臓側の膜・壁側の膜・そのすき間・増えた液(心嚢液と胸水)の対応が、一列ずつ見くらべてわかります。

心内膜・心外膜・壁側心膜の層: 心臓の壁から外へ

内側から順に、心内膜→心筋→心膜下脂肪→臓側心膜(心外膜)→心膜腔→壁側心膜→線維性心膜と重なります。「心内膜」は心臓の内腔に面した膜で、心膜(外側の袋)とは別のものです。

ハジメハジメ(研修医)
心内膜と心外膜って、どちらも心膜の仲間ですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
名前が似ていて、そう覚えている人が多いところです。心内膜は心房・心室の中、血液に面した膜で、心膜には入りません。心外膜は臓側心膜の別名で、こちらは心膜の一部です。
図3 心臓の壁と心膜の層 心臓の壁を輪切りにした拡大模式。内側の心内膜から、心筋・心膜下脂肪・臓側心膜・心膜腔・壁側心膜・線維性心膜まで、外へ向かう順番を示します。
図3 心臓の壁と心膜の層 心臓の壁を輪切りにした拡大模式。内側の心内膜から、心筋・心膜下脂肪・臓側心膜・心膜腔・壁側心膜・線維性心膜まで、外へ向かう順番を示します。

心臓の壁と心膜の層(内側→外側)

層 説明
心内膜 心臓の内腔(心房・心室)に面した膜
心筋 心臓を動かす筋肉の層
心膜下脂肪 心筋と臓側心膜のあいだの脂肪。冠動脈・冠静脈が走る
心外膜(臓側心膜) 心筋の表面(心膜下脂肪の外)をおおう漿膜
心膜腔(心嚢腔) 臓側心膜と壁側心膜のすき間。少量の心膜液があり、心臓がなめらかに動ける。液が増えたものが心嚢液貯留
壁側心膜(漿膜性心膜の壁側板)+線維性心膜 心臓全体を袋のように包むいちばん外側の膜。2枚はくっついていて、ふつうは1枚の膜として扱う

今回の内容は動画でもまとめています。先に動画で全体の流れをつかんでから読むと、層の順番が頭に入りやすくなります。

心腔・心内膜・心筋の解剖

心腔・心内膜・心筋の模式図。大動脈弁から大動脈が出ていく

上のイラストのように、心臓には心筋があり、心腔(心房・心室の内腔)とのあいだの膜を心内膜といいます。イラストでは、大動脈弁から大動脈が出ていく様子を示しています。左心系(左心房・左心室)・右心系(右心房・右心室)など心臓の中の解剖は、ここでは省きます。

心膜腔・臓側心膜・壁側心膜の解剖

臓側心膜・心膜腔・壁側心膜の模式図。臓側心膜は大血管の根もとで折り返して壁側心膜になる

心膜下脂肪の外側を臓側心膜(心外膜)がおおいます。臓側心膜は大血管の根もとで折り返して外側の膜になり、これを壁側心膜といいます。2枚のあいだが心膜腔です。

漿膜性心膜と線維性心膜: 心膜の構造

心膜は、薄くなめらかな漿膜性心膜(臓側心膜と壁側心膜)と、その外の丈夫な線維性心膜の2つからできています。

ハジメハジメ(研修医)
壁側心膜がいちばん外側の膜だと思っていました。線維性心膜はさらにその外ですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。壁側心膜は線維性心膜の内側に貼りついています。くっついていてはがれないので、臨床では2枚まとめて「壁側心膜」と呼ぶことも多いです。上の表で2つを1行にしたのは、そのためです。
図4 心膜をつくる膜の分かれ方 心膜を、漿膜性心膜(臓側心膜・壁側心膜)と線維性心膜に分けた分類図。心膜腔は膜ではなく、2枚の漿膜のあいだのすき間として区別します。
図4 心膜をつくる膜の分かれ方 心膜を、漿膜性心膜(臓側心膜・壁側心膜)と線維性心膜に分けた分類図。心膜腔は膜ではなく、2枚の漿膜のあいだのすき間として区別します。

線維性心膜(心嚢)の解剖

線維性心膜の模式図。漿膜性心膜の外側を丈夫な線維性心膜がおおう

漿膜性心膜は臓側心膜(心外膜)と壁側心膜の2枚からなり、そのあいだのすき間が心膜腔です。その外側を、丈夫な線維性心膜(心嚢)がおおいます。

  • 漿膜性心膜
  • 線維性心膜(心嚢)

この2つを合わせて心膜といいます。心膜をつくるものをまとめると、次のとおりです。

心膜の構成。心膜は漿膜性心膜(臓側心膜・壁側心膜の2枚。そのあいだのすき間が心膜腔)と線維性心膜(心嚢)からなる

この図では心膜腔も漿膜性心膜の欄に並べていますが、心膜腔は膜ではなく、臓側心膜と壁側心膜のあいだのすき間です(Ünal 2019)。

心膜下脂肪と心膜外脂肪の違い

心臓のまわりの脂肪は2か所にあります。心膜の内側で心筋に接するのが心膜下脂肪(epicardial fat、心外膜脂肪とも)、心膜の外側の縦隔にあるのが心膜外脂肪(paracardial fat)です。冠動脈が走るのは心膜下脂肪のほうです。

ハジメハジメ(研修医)
心臓のまわりの脂肪は、ぜんぶ心膜の外にあるんだと思っていました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこがいちばんのつまずきです。冠動脈は心筋の表面を走りますよね。その冠動脈を包んでいる脂肪は、心膜の内側、つまり心膜腔よりも心臓側にあります。脂肪が心膜をはさんで内と外の2層ある、と覚えてください。
図5 心膜をはさむ2つの脂肪 心膜の内側で冠動脈を包む心膜下脂肪と、外側の縦隔にある心膜外脂肪を色分けした拡大模式。心嚢液がたまる心膜腔は2つの脂肪のあいだです。
図5 心膜をはさむ2つの脂肪 心膜の内側で冠動脈を包む心膜下脂肪と、外側の縦隔にある心膜外脂肪を色分けした拡大模式。心嚢液がたまる心膜腔は2つの脂肪のあいだです。

心膜下脂肪の解剖

心膜下脂肪の模式図。心筋のまわりを脂肪の層がおおう

心筋のまわりを脂肪の層がおおいます。これを心膜下脂肪(epicardial fat)といい、心筋と臓側心膜(心外膜)のあいだにあります。

心膜下脂肪には、心臓を栄養する冠動脈のほか、冠静脈・冠静脈洞も走ります(上のイラストには冠静脈は描いていません)。

心膜下脂肪は、発生のうえでは腹部の内臓脂肪(腸間膜・大網の脂肪)と同じ由来とされ、心筋や冠動脈にすぐ接しているため臨床的な関心を集めています(Iacobellis 2015)。心臓CTで心膜下脂肪の体積を測ると、体積が大きいほど冠動脈硬化や心血管イベントと関連すると報告されています。ただし、現時点ではリスク評価の推奨されている手順には含まれていません(Marwan 2013)。

心膜下脂肪の中を走る冠動脈の解剖・番号は→冠動脈の解剖・番号は?覚え方のコツを図で解説!で、枝ごとの番号と支配領域まで確認できます。

心膜外脂肪の解剖

心臓の層と脂肪の全体の模式図。心膜下脂肪は心筋と臓側心膜のあいだ、心膜外脂肪は線維性心膜の外側にある

心膜の外側にも脂肪があります。これを心膜外脂肪(paracardial fat)といい、縦隔胸膜と心膜のあいだの縦隔にたまった脂肪です。胸部X線写真でも、左右の心臓横隔膜角に縦隔の脂肪による淡い陰影として見えることがあります。

心膜下脂肪と心膜外脂肪を合わせて、心臓周囲脂肪(pericardial fat)と呼びます。

心臓周囲脂肪(pericardial fat)とは
  • 心膜下脂肪(epicardial fat):心膜の内側。冠動脈が走り、臨床的な意義が大きい。
  • 心膜外脂肪(paracardial fat):心膜の外側の縦隔の脂肪。

を合わせたもの。ただし論文によっては pericardial fat を心膜外脂肪だけの意味で使うことがあり、用語がそろっていません(Iacobellis 2015)。読むときは、どこを測った脂肪かを確かめます。

正常心膜はCTでどう見える? 厚さ2mm未満の線

CTでは、心膜(漿膜性心膜+線維性心膜)は1本の細い線に見え、厚さは2mm未満が正常です(Ünal 2019)。内側の心膜下脂肪と外側の心膜外脂肪にはさまれた所で、いちばん追いやすくなります。

ハジメハジメ(研修医)
心膜の正常の厚さは2mm未満なんですね。でも、そんなに細い線、CTで本当に見えるんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
ヒントは脂肪です。心膜も心筋も、CTでは似た濃さです。では、心膜の両側が真っ黒な脂肪だったら、どうなるでしょう?
ハジメハジメ(研修医)
黒い脂肪にはさまれて、白っぽい線が浮かび上がる…あ、だから脂肪の多い心臓の前のほうで見やすいんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そのとおりです。逆に、脂肪がうすい所では心筋や縦隔の組織と区別がつきにくく、心膜が見えないこともあります。見えないことは異常ではありません。
図6 正常心膜が見える場所 心臓CT横断の模式。前方の心膜下脂肪と心膜外脂肪にはさまれた所で心膜が細い線として浮かび、脂肪のうすい側方では追えないことを示します。
図6 正常心膜が見える場所 心臓CT横断の模式。前方の心膜下脂肪と心膜外脂肪にはさまれた所で心膜が細い線として浮かび、脂肪のうすい側方では追えないことを示します。
症例 60歳代 女性

正常の心膜の造影CT。心膜下脂肪と中を走る冠動脈、細い線状の心膜、その外の心膜外脂肪

冠動脈CTで撮影した造影CTです。

  • 心膜下脂肪と、その中を走る冠動脈
  • 心膜
  • 心膜外脂肪

の位置関係がよくわかります。心膜は見やすいように、実際より太めに縁取っています。

マルオマルオ(技師)
撮る側からひとことです!心膜の線は細いので、厚いスライスだとまわりの脂肪と平均されてぼやけます。厚さを見たいときは、薄いスライスの画像で、拍動のぶれが少ない心電図同期のCTがあればそちらで見てください!
ごろ〜ごろ〜(指導医)
もう一つ、大動脈の根もとのまわりでは、心膜腔が袋状に入りこんだくぼみ(心膜洞・心膜陥凹)に少量の液がたまり、リンパ節や大動脈の病気とまちがえられることがあります。場所と、液と同じ濃さかどうかを確かめます(Wang 2003)。心臓の中の部屋や弁の見分け方は、心臓CTの正常解剖で確かめられます。

心嚢液・心膜肥厚・石灰化のCT画像

心嚢液は、心膜下脂肪の外側(心膜腔)に水の濃さの帯として見えます。心膜肥厚は、心膜の線が2mmを超えて厚くなった状態で、石灰化を伴えば収縮性心膜炎を考えます。

ハジメハジメ(研修医)
心膜が2mmより薄ければ、収縮性心膜炎は否定していいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこは注意が必要です。手術で確かめた収縮性心膜炎のうち、2割ほどは心膜の厚さが正常でした。厚さが正常でも、症状やエコーで疑わしければ否定できません。
図7 心嚢液・心膜肥厚・石灰化の見え方 正常・心嚢液・心膜肥厚・石灰化を並べた横断の比較。液は心膜下脂肪の外の水の帯、肥厚は心膜の線そのものが厚くなる点を比べます。
図7 心嚢液・心膜肥厚・石灰化の見え方 正常・心嚢液・心膜肥厚・石灰化を並べた横断の比較。液は心膜下脂肪の外の水の帯、肥厚は心膜の線そのものが厚くなる点を比べます。

心膜が2mmより厚ければ心膜の肥厚を疑います。ただし、手術で確かめた収縮性心膜炎のうち18%は心膜の厚さが2mm以下で、厚さが正常でも収縮性心膜炎は否定できません(Talreja 2003)。

心膜の石灰化をとらえるのはCTがいちばん得意です。MRIは心膜の形に加えて、組織の性状や心臓の動きへの影響まで評価できます。心膜の病気を疑うときは心エコーを最初に行い、目的に応じてCTとMRIを使い分けます(Bogaert 2013)。

マサマサ(技師)
……MRIは石灰化そのものは苦手なんですよね。信号が出ないので、ただの黒い所に見えます。石灰化はCT、心膜の炎症や心臓の動きはMRI、と分けてもらえると助かります。
症例 80歳代 男性

心膜の肥厚と石灰化のCT。収縮性心膜炎

心膜の肥厚と石灰化があります。収縮性心膜炎の所見です。

症例 80歳代 女性

心嚢液貯留のCT。心膜下脂肪のまわりに水の濃さの帯

心膜下脂肪のまわりに水がたまっています。心嚢液貯留の所見です。心膜の肥厚はありません。

ハジメハジメ(研修医)
この水、心膜下脂肪の外にありますね。脂肪の内側じゃないんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
層の順番を思い出してください。心膜下脂肪は臓側心膜の内側、心膜腔はその外です。だから心嚢液は、冠動脈を包む脂肪の外にたまります。心嚢穿刺の針も、線維性心膜と壁側心膜を通り、この液のたまった心膜腔で止めます。
図8 心嚢穿刺の針が通る層 体の外から心膜腔までに針が通る層を順に示すしくみ図。線維性心膜・壁側心膜を抜けた心膜腔で止め、臓側心膜と心筋には届かせません。
図8 心嚢穿刺の針が通る層 体の外から心膜腔までに針が通る層を順に示すしくみ図。線維性心膜・壁側心膜を抜けた心膜腔で止め、臓側心膜と心筋には届かせません。
症例 60歳代 男性

上咽頭がんの心膜転移のCT。右側の心膜の不整な肥厚と造影効果

右側の心膜に不整な肥厚と造影効果があります。上咽頭がんの心膜転移の所見です。

症例 60歳代 男性 原発不明がん

癌性心膜炎を疑うCT。心膜の肥厚と内側の心嚢液

心膜の肥厚と、その内側の心嚢液貯留があります。ほかにも多発転移があり(画像は非提示)、癌性心膜炎を疑う所見です。

心嚢液の量の見積もりや、液の濃さから考える原因は、心嚢液(心嚢水)貯留のCT画像診断で症例と合わせて見られます。

よくある勘違い

Q. 心内膜も心膜の一部?

いいえ。心内膜は心房・心室の内腔に面した膜で、心膜(心臓を外から包む袋)には入りません。心外膜は臓側心膜の別名で、こちらは心膜の一部です。

Q. 心臓のまわりの脂肪は、すべて心膜の外?

いいえ。冠動脈が走る心膜下脂肪は心膜の内側(心筋と臓側心膜のあいだ)にあります。心膜の外の縦隔にあるのは心膜外脂肪です。

Q. 心膜の厚さが2mm未満なら、収縮性心膜炎は否定できる?

できません。手術で確かめた収縮性心膜炎のうち18%は、心膜の厚さが2mm以下でした(Talreja 2003)。

今日のまとめ

  1. 心膜腔は臓側心膜(心外膜)と壁側心膜のすき間。心嚢液がたまるのも、心嚢穿刺で針を止めるのもここ。
  2. 心内膜は心膜ではない。脂肪は心膜の内(心膜下脂肪)と外(心膜外脂肪)の2か所。
  3. CTの正常心膜は2つの脂肪にはさまれた2mm未満の線。ただし厚さが正常でも収縮性心膜炎は否定できない。

あわせて読みたい:心嚢液(心嚢水)貯留のCT画像診断

あわせて読みたい:心臓CTの正常解剖

参考文献

  1. Wang ZJ, Reddy GP, Gotway MB, et al. CT and MR imaging of pericardial disease. Radiographics. 2003;23 Spec No:S167-80. PubMed
  2. Iacobellis G. Local and systemic effects of the multifaceted epicardial adipose tissue depot. Nat Rev Endocrinol. 2015;11(6):363-71. PubMed
  3. Bogaert J, Francone M. Pericardial disease: value of CT and MR imaging. Radiology. 2013;267(2):340-56. PubMed
  4. Klein AL, Abbara S, Agler DA, et al. American Society of Echocardiography clinical recommendations for multimodality cardiovascular imaging of patients with pericardial disease: endorsed by the Society for Cardiovascular Magnetic Resonance and Society of Cardiovascular Computed Tomography. J Am Soc Echocardiogr. 2013;26(9):965-1012.e15. PubMed
  5. Marwan M, Achenbach S. Quantification of epicardial fat by computed tomography: why, when and how? J Cardiovasc Comput Tomogr. 2013;7(1):3-10. PubMed
  6. Ünal E, Karcaaltincaba M, Akpinar E, et al. The imaging appearances of various pericardial disorders. Insights Imaging. 2019;10(1):42. PubMed
  7. Talreja DR, Edwards WD, Danielson GK, et al. Constrictive pericarditis in 26 patients with histologically normal pericardial thickness. Circulation. 2003;108(15):1852-1857. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

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