胸部レントゲンで心臓の周りの脂肪により陰影(心陰影)が見えにくくなることがあります。
肺炎や肺腫瘍が存在していないのにあたかも存在しているかのように見えることもあります。
これを心膜外脂肪塊(pericardial fat pad)と言います。
この心膜外脂肪塊とはどこに存在してどのような画像を形成するのかについてまとめました。
先に結論:心膜外脂肪塊(pericardial fat pad)
- 心臓と横隔膜の角(心横隔膜角)には脂肪のかたまりがあることが多く、太った人では大きくなります。これは正常な脂肪です
- 胸部レントゲンでは、この脂肪のために心臓の下の縁がぼやけて(シルエットサイン陽性)、肺炎や腫瘍があるように見えることがありますが、脂肪なので淡い影なのが特徴です
- 迷うときはCTで脂肪であることを確認します。まれに脂肪壊死(心外膜脂肪壊死)を起こすと、急な胸痛の原因になります
※急な胸の痛みがあるときは、すぐに医療機関を受診してください。
心膜外脂肪塊(pericardial fat pad)とは?
左右の心膜横隔膜部の縦隔脂肪による陰影を心膜外脂肪塊といいます。
この脂肪は、縦隔胸膜と心外膜との間の縦隔に沈着したもので、正常変異です。
つまりこの脂肪自体は異常ではないということです。
ただし、異常ではないこの脂肪が胸部レントゲンで左右で心臓と横隔膜の交差部位あたりが不明瞭で右第2弓、左第4弓が追いにくくなる(シルエットサインが陽性となる)ことがあります。
胸部レントゲンで典型的な所見である場合は、CT検査まですることは少ないですが、臨床的に肺炎や肺腫瘍などが疑われる場合にはCTによる精査が行われることがあります。
心臓の周りの脂肪組織についてはこちらで詳しくまとめました。→【保存版】心膜の構造の解剖は?心膜腔とは?イラストでわかりやすく!
心膜外脂肪塊の画像所見は?

- 胸部X線正面像では、心横隔膜の上部で左心縁、時に右心縁が不明瞭となる。
- 陰影は脂肪組織であるためにやや淡い。心横隔膜角の領域(cardiophrenic space)は通常脂肪で占められ、その量は過体重の人で増える傾向がある。一方でこの部位には心膜脂肪壊死、心膜嚢胞、リンパ節腫大(悪性リンパ腫など)、横隔膜ヘルニア、門脈圧亢進症に伴う静脈瘤なども生じるため、典型的でない場合はCT・MRIで性状を確認する。
- 時には壊死化したり塊状に増生し腫瘤様にみえることもある。心膜外脂肪壊死(epipericardial fat necrosis)は急性冠症候群や肺塞栓に似た急な胸痛で発症し、CTでは心横隔膜角の脂肪内に軟部濃度を含む円形〜卵円形の病変としてみられる。自然に軽快する良性の病態で、手術は不要とされる(Gayer 2017)。救急外来で胸痛のため胸部CTを受けた人では2.15%にみられ、左の心臓のわきの卵円形の脂肪を含む病変として、胸水を伴うことが多かった(Giassi 2016)。
心膜外脂肪と心外膜脂肪の違い
「心臓の周りの脂肪」には、心膜の外にある脂肪と、心膜の内側で心臓の表面にある脂肪があり、名前が似ているので注意が必要です。
| 心膜外脂肪(心膜外脂肪塊) | 心外膜脂肪(epicardial fat) | |
|---|---|---|
| 場所 | 心膜の外側(縦隔胸膜と心膜の間)。心横隔膜角に多い | 心膜の内側で、心筋と臓側心膜(心外膜)の間(Khanna 2025) |
| 主な意味 | 正常変異。胸部レントゲンで淡い影・シルエットサインの原因になり、肺炎・腫瘍との区別が問題 | 冠動脈疾患・心不全・不整脈との関連が研究されており、評価には心臓CTが適する(Khanna 2025) |
心横隔膜角の脂肪の量は過体重の人で増え、心血管病のリスクとの関連も指摘されています(Pineda 2007)。
症例 70歳代男性 発熱、血痰

baseに間質性肺炎があるのでいろいろ所見がありますが、左の第4弓を途中から追うことができません。
また右の第2弓も不明瞭で心膜横隔膜部が不明瞭となっています。
このように心陰影が消えてしまうことをシルエットサイン陽性といい、心陰影を形成する構造物に接して何か(肺炎や肺腫瘍など)が存在していることを示唆するサインです。
では、何が存在しているのでしょうか?
正体をチェックするにはCTが有用です。

それが、今回の心膜外脂肪だということです。

すなわち心膜外脂肪が心臓と接しているため、本来の心臓との接線(上の図だと左室)を形成できないためシルエットサイン陽性となっているということです。
関連記事:縦隔脂肪腫症のCT画像診断のポイント
参考:画像診断 Vol.31 No.12 2011 P1141-1153
参考文献
- Gayer G. Mediastinal (Epipericardial) Fat Necrosis: An Overlooked and Little Known Cause of Acute Chest Pain Mimicking Acute Coronary Syndrome. Semin Ultrasound CT MR. 2017;38(6):629-633. PubMed
- Giassi KS, Costa AN, Bachion GH, et al. Epipericardial Fat Necrosis: Who Should Be a Candidate? AJR Am J Roentgenol. 2016;207(4):773-777. PubMed
- Pineda V, Andreu J, Cáceres J, et al. Lesions of the cardiophrenic space: findings at cross-sectional imaging. Radiographics. 2007;27(1):19-32. PubMed
- Felson B, Felson H. Localization of intrathoracic lesions by means of the postero-anterior roentgenogram; the silhouette sign. Radiology. 1950;55(3):363-374. PubMed
- Khanna S, Mann G, Vasanthakumar S, et al. From Cushion to Culprit: The Role of Epicardial Adipose Tissue in Cardiovascular Disease. Heart Lung Circ. 2025;34(10):1006-1020. PubMed
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