【胸部】TIPS症例23
【症例】80歳代男性
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とある肺の疾患で他院で20年以上フォローされている。その疾患は?
まず肺野条件から見てみましょう。
両側肺野に多数の粒状影〜結節影を認めています。
粒状影の分布ですが、気道散布性と考えられる小葉中心性に加えて、胸膜に接して存在していたり、粒状影が集簇して気管支血管束にも存在していることが分かります。
また、両側上葉では粒状影や結節影が集簇して粗大な病変を形成(大陰影(PMF:progressive massive fibrosis)と呼ばれる)しているように見えます。
またその中には石灰化を認めています。
縦隔条件で見てみると、縦隔にはリング状の石灰化(卵殻状と呼ばれる)を有するリンパ節を多数認めていますが、有意な腫大はなさそうです。
まとめますと、
- 小葉中心性分布+胸膜上分布+気管支血管束上分布の粒状影→広義リンパ路病変を示唆。
- 上葉では集簇して大きな腫瘤状陰影を形成→大陰影と呼ばれる
- 縦隔にリング状の石灰化を有するリンパ節→卵殻状石灰化と呼ばれる。
といった特徴があり、これらの特徴を有する疾患は、珪肺(けいはい)となります。
診断:(慢性)珪肺症
※印刷、工事関係の仕事についていたことがあり、防塵マスクをつけての仕事もあった。他院にて珪肺でフォローされている。塵肺手帳あり。とカルテに記載がありました。
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【胸部】TIPS症例23の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
最近、塵肺の申請をしたいという患者様がいて、塵肺の勉強をしたばかりでした^^
アウトプットありがとうございます。
タイムリーでしたね。
特徴的なので見慣れると「あ、きっと珪肺だ」と分かるのですが、大陰影などはちょっと腫瘍?などと思ってしまうこともあるかもしれませんね。
肺がんとの鑑別はどうすればよいのか疑問でしたが、関連文書より、PMFはMRIのT2WIにて低信号を呈するということですね。ファイブローシスですもんね。PETは擬陽性になることもあるとのことですが、他のPMFには集積すくなく一つの結節のSUVが高い場合に悪性疾患とみなすことは強引でしょうか?また、MRをとる際に、(鑑別に必要なシーケンスとして)T2以外に撮影しておいたほうが良いシーケンスはありますか?
本当に申し訳ありません。過去に調べてわからずでした。いつも貴重な症例提示ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
>肺がんとの鑑別はどうすればよいのか疑問でしたが、関連文書より、PMFはMRIのT2WIにて低信号を呈するということですね。ファイブローシスですもんね。
そうですね。ただし、MRIが撮影されることは稀ですね。
両側であったり、他の広義リンパ路に認める粒状影やリンパ節などから総合的にPMFだろうと診断します。
>他のPMFには集積すくなく一つの結節のSUVが高い場合に悪性疾患とみなすことは強引でしょうか?
もちろんその場合は悪性の可能性も考える必要があります。
ただし、PETでは炎症もしばしば高集積を来しますので高集積=悪性疾患とは言えません。
PETで高集積な肺結節があり、肺癌を否定できないと手術して、結果結核腫だったということはよくあります。
ですので、CTでフォローしていくことが一番妥当ですね。
塵肺は相当素人でいつも分からないですが、リンパ節の石灰化であったりPMFであったり特徴的な所見は多いのですね。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。PMFまで認めるケースはそれほど多くないですが、上肺野の広義リンパ路の結節というものはよく見られる所見です。
そういった所見を見たときに思いだしてくだされば幸いです。
リンパ節腫張などからサルコイドーシス?と思ってしまいましたが、珪肺でこのような陰影を来すとは知りませんでした。
アウトプットありがとうございます。
良い線は行ってますね。なかなか経験がないと肺水腫と異なり、広義リンパ路病変とは思えないかもしれませんが、典型的ですので、覚えておきましょう。
お世話になっております。広義リンパ路とは何なのかというご説明が分かり易くて大変有り難かったです!もっとリンパ路病変の勉強をしようとやる気を湧かせてくださいました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
今回は扱わないですが、肺水腫や癌性リンパ管症といった病態でも広義リンパ路病変の理解は非常に重要となりますので覚えておいてください(^^)
大変勉強になりました。
粟粒結核かなと思ってしまいました。
アウトプットありがとうございます。
胸膜下にも認めており、一見randomパターンに分布する粟粒結核のようにも見えてしまうかもしれませんね。
上葉優位に認めている点やよく見ると気管支血管束にも認めている点などから広義リンパ路病変であることがわかります。
こんばんは!いつもご解説ありがとうございます。
上中肺野優位の疾患の鑑別はそれほど多くないのかなと思い(サルコイドーシス、珪肺、肺好酸球性肉芽腫症、気管支散在性肺結核など)、かつ「肺のみ20年という慢性の経過」からは、珪肺が最も疑わしいと考えつつ読影しました。
サルコイドーシスも粒状影が集簇して似ていると思いましたが、サルコイドーシスは「galaxy sign」と呼ばれているだけあって、結節とても繊細な粒が集簇してできている印象です。一方、珪肺の方はぼて〜っとした粒の集簇な気がします。
アウトプットありがとうございます。
>上中肺野優位の疾患の鑑別はそれほど多くないのかなと思い(サルコイドーシス、珪肺、肺好酸球性肉芽腫症、気管支散在性肺結核など)、かつ「肺のみ20年という慢性の経過」からは、珪肺が最も疑わしいと考えつつ読影しました。
素晴らしいですね(^^)
>サルコイドーシスも粒状影が集簇して似ていると思いましたが、サルコイドーシスは「galaxy sign」と呼ばれているだけあって、結節とても繊細な粒が集簇してできている印象
そうですね。かなり微細なのがサルコイドーシスの特徴ですね。
>一方、珪肺の方はぼて〜っとした粒の集簇な気がします。
進行度にもよりますので微細な場合もありますが、進行すると今回のような大陰影を作るのが珪肺の特徴ですね。
解説動画で病変の分布についてわかりやすい解説があり、よく理解できました。
今回の症例では、肺の容量の減少はありませんか。
粒状陰影の癒合による大陰影を見たとき、癌との鑑別が大事と思われます。扁平上皮癌や小細胞癌を合併しやすいとの合併しやすいとのことですが、鑑別点などありましたら教えてください。
アウトプットありがとうございます。
>今回の症例では、肺の容量の減少はありませんか。
上葉では両側容量の減少があると考えられます。
>粒状陰影の癒合による大陰影を見たとき、癌との鑑別が大事と思われます。
大陰影自体が、不整形陰影なので、隣接して発生した癌の場合は、過去画像との比較でしか引っかけることはできないと思われます。
肺の画像が大変苦手で本も読んだりしたのですが動画だと非常にわかりやすいですね。広義リンパ路の考え方が非常に勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>広義リンパ路の考え方が非常に勉強になりました。
広義リンパ路の肥厚を理解する上では肺水腫が最もわかりやすいかもしれませんが、今回の珪肺においてもその目で見ると広義リンパ路への分布が理解できると思います。
珪肺以上に、肺水腫や癌性リンパ管症などで広義リンパ路の理解は重要となりますので是非考え方を覚えておいてください。