
【胸部】TIPS症例1
【症例】80歳代男性
【生活歴】喫煙 15本/日 60年間
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両側下葉背側にすりガラス影があるけどこれはなに?
まず両側上葉優位に気腫性変化を認めています。
分布は小葉中心性分布であり、喫煙が関連していることが多いとされます。
さて今回問題となっているのは、両側下葉背側にすりガラス影を認めている点です。
この所見は日常臨床でも頻度が多く見受けられます。
これは、間質性肺炎の初期像でしょうか?
ではなく多くの場合は、重力効果と呼ばれる正常変異です。
間質性肺炎の初期像と鑑別が難しい場合、腹臥位での撮影がなされることがあります。
今回この症例においても腹臥位の撮影がされました。
腹臥位で撮影すると、すりガラス影が消失していることがわかります。
もし間質性肺炎の初期像ならば体位にかかわらず認めていなければなりません。
逆に体位を変えることで消失するということは、吸気不良(含気不良)による重力効果であると診断することができます。
診断:重力効果(によるすりガラス影)
関連:COPD(慢性塞性肺疾患)のCT画像診断のポイントは?
【胸部】TIPS症例1の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
実際、重力効果と間質性変化の鑑別に腹臥位を撮影したことはないです…。以前、「声のかけ方で重力効果が減るか?」という検証をしたことがあります。「息を吸ってとめてください」と「大きく息を吸ってとめてください」を比べた結果、有意差は見られませんでしたが、「大きく」と言った方が重力効果は減少しました。
アウトプットありがとうございます。
>重力効果と間質性変化の鑑別に腹臥位を撮影したことはないです…。
そうですね。通常は撮影されないですが、この症例は主治医の希望で撮影されました。
>「息を吸ってとめてください」と「大きく息を吸ってとめてください」を比べた結果、有意差は見られませんでしたが、「大きく」と言った方が重力効果は減少しました。
確かに「大きく」といわれるといつも以上に吸いそうですね。貴重な検証結果のシェアをありがとうございます。
よく見る画像で,正常変異であることは知っていましたが,腹臥位の撮像は初めて見ました.
綺麗に消えており,わかりやすいですね.
アウトプットありがとうございます。
そうなんです。
「重力効果」と記載するも、本当にそうなのか?という疑問が晴れる腹臥位撮影の画像ですね。
重力効果や含気不良で画像が変わるということがよくわかりますね。
腹臥位初めて見ました。こんなに違うんですね。kenkenさんの検証も大変参考になりました。
アウトプットありがとうございます。
多分なかなか撮影されないと思いますので重力効果を体感するのに有効な症例ですね。
おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
重力の影響で背側肺の圧縮があるのだろう、と解答しました。
ADLが悪くて長期臥位の状態だったのかもしれない、とまで書いてしまったのですが、CT撮像時の一時的な臥位でも生じるのですね。
ひとつ質問なのですが、
今回は80代と高齢ですが、重力効果は年齢によって生じやすさは違ったりするのでしょうか?
おはようございます。
アウトプットありがとうございます。
>今回は80代と高齢ですが、重力効果は年齢によって生じやすさは違ったりするのでしょうか?
印象で申し訳ありませんが、年齢は関係ないと思います。若年者でも見られます。
「息を吸ってください」という指示に従いにくいという点と相関すると考えます。
後は個人差もありそうです。
おはようございます。
解説ありがとうございます。まだ臨床に出ていないので、よく見るものがイマイチわからず、不勉強なのですが、今回のような「重力効果」を認めやすい要因や条件はあるのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>今回のような「重力効果」を認めやすい要因や条件はあるのでしょうか。
含気不良な場合に認めやすいという点だけ覚えておいていただいたら大丈夫です。
おはようございます。普通にたばこによる間質性の肺疾患だと思ってしまいました。
しかし、伏臥位での胸部撮影は初めて見ました。胸部が圧迫されて吸気がしにくそうですが、重力効果との鑑別がここまで分かりやすくなるのであれば、今後の撮影に活かしていきたいと思います。
また、皆さまのコメントも大変参考なります。ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
>伏臥位での胸部撮影は初めて見ました。
なかなか撮影されるケースは少ないかと思いますが、仰臥位との画像の比較で、間質性肺炎が疑わしい場合には有効ですね。
被曝の問題もありますので、しょっちゅう撮影というわけにはいかないですが。
やられました。腹臥位再撮はすごいですね。
アウトプットありがとうございます。
綺麗に消えているのでわかりやすいですね(^^)
詳細な解説ありがとうございました。肺気腫の人は目立つ?息の吸い方がわるいとでしょうか?肺気腫があっても個人差でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
肺気腫の人はむしろ息を吐きにくくなるので、吸い方が悪いとかはないかと思います。
はじめまして。医学生でまだ現場に出ていないので、的外れな質問をしていたら申し訳ありません。
両下葉背側のすりガラス影はよく見られる重力効果であり、腹臥位での撮影で鑑別することはほぼ無いとのことですが、その他の所見や情報から除外してるということでしょうか。それとも、間質性肺炎のすりガラス影とは雰囲気が違うなどあるのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>その他の所見や情報から除外してるということでしょうか。それとも、間質性肺炎のすりガラス影とは雰囲気が違うなどあるのでしょうか。
重力効果は、重力によって肺実質が縮んでおり、無気肺になる一歩手前のようなものですが、肺実質にはなんら異常はありません。
一方で間質性肺炎の場合は、肺実質が線維化を来しており、不可逆な変化を認めています。
ですので、ミクロでは両者は全く異なるものです。
ただし、マクロ(画像所見)では間質性肺炎の初期像では重力効果と同じようにすりガラス影となり、進行した間質性肺炎に特徴的な線状影や網状影として認めないことがあります。
ですので、画像だけでは重力効果なのか、間質性肺炎の初期像なのかは鑑別ができないことがあり、おっしゃる「雰囲気」が同じことがあります。
間質性肺炎を起こすような基礎疾患がある場合や、臨床的にも間質性肺炎の可能性がある場合、下肺野背側のすりガラス影が続く場合などで、腹臥位撮影がなされることがあります。
ただし、頻度は重力効果>>>間質性肺炎の初期像ですので、間質性肺炎を疑うような臨床情報がなければ通常、「いつもの重力効果」で片付けられます。
PDFがあると記載されてた記憶があるのですが、PDFはどこに添付されてますでしょうか。
質問ありがとうございます。
pdfはありません。
10症例ごとに解答ページのURLが記載されたpdfを配布はしますが。
いつも勉強させて頂いています。
COVID-19の肺炎像でも両側下肺野末梢にスリガラス影を認め、
他の場所に影がない時に吸気不良か肺炎像か迷うことがあります。
鑑別点などありますでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>COVID-19の肺炎像でも両側下肺野末梢にスリガラス影を認め、
他の場所に影がない時に吸気不良か肺炎像か迷うことがあります。
最近では初期の間質性肺炎よりもこちらの方との鑑別が重要かもしれませんね。
COVID-19肺炎:胸膜直下に円形のすりガラス影を示すことが多い。
重力効果:胸膜直下に胸膜沿いのすりガラス影を示すのが通常。
といった形態から鑑別可能と考えます。
もちろんCOVID-19肺炎も円形でないこともありますが、胸膜に沿ったあるいはニボー像のような左右方向に陰影を認めることは稀だと思われます。
あとは、左右対称性やより複数スライスに及ぶかどうかなどでしょうか。
どうしても除外できない場合は今回のように腹臥位撮影されてもいいかもしれません。
いつも貴重な症例をありがとうございます。
現場の放射線技師より、私の意見ですが…
1、年齢問わず、体格の良い患者に重力効果が現れる頻度が多いように思います。(仰臥位だとさらに胸郭圧迫が強まるため?SAS睡眠時無呼吸症候群に似たような機序がありそうな?)
2、何れの時も重力効果は診断に影響を及ぼすため、患者説明をしっかり行い、なるべく最大吸気時にスキャンをするようにする。(今回のような初期間質性肺炎の他に、重力効果部に初期の肺癌AIS、AAHなどによるGGNが発生しているとも限りませんので)
3、腹臥位撮影の依頼が来た場合は、低被曝を心掛ける。(撮影範囲:全肺で無く下葉が始まる部分からきっちり肺底まで。撮影条件:仰臥位撮影がきちんと施行されているという条件で、腹臥位撮影は線量を1/5くらいに、高周波成分を強調した肺野条件で重力効果鑑別するには低画質で可。)
以上です。
現場も頑張っています(笑)
アウトプット&貴重な体験談&心がけありがとうございます。
>患者説明をしっかり行い、なるべく最大吸気時にスキャンをするようにする。
確かになるべく最大吸気の説明は重要ですね。
>重力効果部に初期の肺癌AIS、AAHなどによるGGNが発生しているとも限りませんので
そうですね。これらが混在していたらわからないですね。
>高周波成分を強調した肺野条件で重力効果鑑別するには低画質で可。
そうだったのですね。確かに陰影があるかどうかだけ知りたいわけですので、同じ線量である必要はありませんね。
こちらも勉強になりました(^^)
ありがとうございます。
因みにですが、
image19-25くらいに、気管支前部に円形から類円形の数センチのmassを認めますが、気管支原性嚢胞や心膜嚢胞などの中縦隔腫瘍でよろしいでしょうか?
>image19-25くらいに、気管支前部に円形から類円形の数センチのmassを認めますが、気管支原性嚢胞や心膜嚢胞などの中縦隔腫瘍でよろしいでしょうか?
肺野条件のみでよくそこに目が行きましたね。
心膜洞の心嚢液貯留ですね。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/13529
フィードバックありがとうございます。濃度的には水(嚢胞?)かな、と。
つまり…
前大動脈陥凹と後大動脈陥凹に連続して心嚢液貯留を疑う所見。
ということですね。
検査依頼内容によると思いますが、生理的正常所見ということでレポートには記載する必要はないでしょうか?それとも記載必須でしょうか?
>前大動脈陥凹と後大動脈陥凹に連続して心嚢液貯留を疑う所見。
ということですね。
そうですね。
>検査依頼内容によると思いますが、生理的正常所見ということでレポートには記載する必要はないでしょうか?それとも記載必須でしょうか?
レポートには記載する必要は特にありませんが、依頼内容が縦隔リンパ節腫大フォローなどとなっていれば、リンパ節ではないと記載した方がいいでしょうね。
ちなみに、なぜこの症例を肺野条件のみ提示したのか?お察しください。(つまり今後の症例で・・・略)(;゚ロ゚)
>ちなみに、なぜこの症例を肺野条件のみ提示したのか?お察しください。(つまり今後の症例で・・・略)(;゚ロ゚)
運営上支障を来すのであれば、上記コメント等を削除して頂いて大丈夫です。誠に申し訳ありません。
いえいえ、半分冗談ですので大丈夫です(^^)。
全く支障を来しません。
これがあのときの・・・、と楽しんでいただけたら幸いです。
貴重な症例をありがとうございます。看護師をやっており、普段あまり胸部CTを見ることがないのですが、最近はCOVID-19の影響もあり、胸部CTのオーダーが入るので所見がわからずに困っていました。
重力効果は、吸気の不良のよるものであるから基本的には両側の下葉背側にみられる所見であり、片肺だけにみられることはないと考えて良いですか?
アウトプットありがとうございます。
基本的には両側見られることが多いですが、片側にのみ認めることもあります。その場合は、判断に迷う場合もありますが。
研修医です。
小葉中心性という言葉に馴染みがありません。
小葉間隔壁に囲まれてる部分が肺小葉と理解しています。
気腫性変化が小さく、まばらに分布しているのを小葉中心性と表現しているのですか?
また、解説動画内で’一部気腫性変化が辺縁にも認められるが〜’とありました。辺縁の気腫性変化は小葉中心性に含まれないのですか?
初歩的な質問で申し訳ないですがよろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
>小葉間隔壁に囲まれてる部分が肺小葉と理解しています。
そうですね。この部分を小葉と言います。
小葉中心性というのは気道に沿った病変を示唆する所見で、このように分布する気腫を小葉中心型の肺気腫と言います。
肺気腫には、分布により
1、小葉中心性
2、傍隔壁型
3、汎小葉性
の3つのタイプがありますが、この症例では、1と2が見られているという意味です。
これについては今後出てきます。
関連:
小葉中心性とは?
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/2746
肺気腫のCT所見
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/10907
重力効果という言葉はよく使われて知っていたのですが、
結局これの正体は
血管などが重力で背側に集まったもの…?
みたいな感じでよいのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
いろいろ原因はあるようですが、基本的に肺胞の虚脱と考えてください。