肺炎かどうかを画像診断で悩むことは日常臨床において頻繁にあることです。
レントゲンではっきりしないとき、胸部CTが撮影されることがありますが、肺炎(感染)があるかどうかを判断する上で非常に重要な手がかりとなるのが、「小葉中心性に陰影が分布」していることなのです。
では、この胸部CTの画像診断における「小葉中心性分布」とはいったいどのようなものなのでしょうか?
今回は、「小葉中心性分布」について動画解説や実際のCT画像を用いてまとめてみました。
小葉中心性とは?
小葉中心性の分布についてはこちらで動画解説しました。
まず動画を見ていただき、そのあとで記事を読んでいただけるとより理解が深まると思います。
気管支の分岐を理解する
下のように気管は分岐していき、最後に、肺の実質を形成する肺胞へと変化します。
このうち導管領域と呼吸領域の境界である終末細気管支・呼吸細気管支の部分が小葉・細葉を形成する重要な場所となります。
気管支の分岐はCT画像でどう見える?
実際のCT画像を見るときにはどのように見えるのでしょうか?
胸部CTの横断像(輪切り)の左肺を例に出して、イメージ図を作ってみました。
終末細気管支から呼吸細気管支へと気管支が分岐していく様子がわかります。
ただしここでの注意点として、呼吸細気管支は通常CT画像では見えません。
ですので、実際の画像で見えるときは肥厚している、感染症の可能性があるということができます。
さて、このうち、呼吸細気管支が作る領域には小葉間隔壁というCTでは通常見えない隔壁に境される「小葉」という構造が存在します。
それを示したのが上の図になります。
小葉中心性の分布とは?
さらに小葉の中には、呼吸細気管支が作るさらに小さな構造である「細葉(さいよう)」という構造からなります。
つまり小葉は細葉がいくつか集まったものということができます。
そして、感染が起こったときに上のように小葉中心(厳密には細葉中心ですが、画像所見では「小葉」中心性と慣用的に表現することが多いです)性に結節や粒状影を形成します。
これが「小葉中心性の分布」であり、このように分布する結節や粒状影をそれぞれ、
- 小葉中心性の結節影
- 小葉中心性の粒状影
などと表現するのです。
このうち小葉の部分をイラストで表すと次のようになります。
1)を参考に作図
そして肺炎(感染症)のときに見られる小葉中心性の分布を表すと下のようになります。
右側は実際の肺結核の症例です。
小葉中心性の小さな粒状影が多数あるのがわかります。(矢印で示しているのはごく一部の病変のみです)
小葉中心性の分布については次の症例で目に焼き付けましょう。
症例 30歳代男性
左下葉に小葉中心性の結節を多数認めています。
典型的な気管支肺炎のパターンです。
これを詳しく見てみるとどうでしょう。
胸膜直下には病変がなく空いていることがわかります。
このことは小葉中心性の分布であり、肺炎(感染症)を示唆する重要な所見ということができるということです。
ただし、小葉中心性の分布=肺炎 ではありませんので、臨床所見と合わせて総合的に診断することが重要です。
症例 70歳代女性 非結核性抗酸菌症(M.avium)
左下葉に小葉中心性の粒状影・分岐状影を認めています。
また、胸膜直下は保たれていることがわかります。
小葉中心性分布を示すことがある肺炎以外の病気は?
小葉中心性の分布=肺炎 ではないと先程述べましたが、感染症以外でこのパターンの分布を示すものには以下の疾患が挙げられます。
- 膠原病(リウマチ、シェーグレン症候群、全身性強皮症)
- びまん性汎細気管支炎(DPB)
- 喫煙関連疾患(RB-ILD)
- 過敏性肺臓炎(HP)
背景にこれらの疾患があったり、現病歴で関連しそうな情報があれば、いくら小葉中心性の分布とは言え、これらの疾患を鑑別に挙げる必要があります。
最後に
胸部CTにおける肺炎(感染症)を示す重要な所見である「小葉中心性の分布」についてまとめました。
まず気管支がどのように分岐していくのか、そしてそれがCTではどのように見えるのか、小葉がどのようなものかを順番に理解していくと容易ですね。
参考になれば幸いです( ´∀`)
1)胸部疾患のCT診断(最新医学社)P10図12