肺炎かどうかを画像診断で悩むことは日常臨床において頻繁にあることです。
レントゲンではっきりしないとき、胸部CTが撮影されることがありますが、肺炎(感染)があるかどうかを判断する上で非常に重要な手がかりとなるのが、「小葉中心性に陰影が分布」していることなのです。
では、この胸部CTの画像診断における「小葉中心性分布」とはいったいどのようなものなのでしょうか?
今回は、「小葉中心性分布」について動画解説や実際のCT画像を用いてまとめてみました。
先に結論:小葉中心性分布とは
- 肺は直径1.0〜2.5cmほどの「(二次)小葉」という単位の集まりで(Hochhegger 2021)、その中心に細い気管支と肺動脈が通り、まわり(小葉間隔壁)を静脈・リンパ管が走ります
- 小葉中心性分布とは、粒状影などが胸膜や葉間から数mm離れて接しない位置に、規則的に点々と並ぶ分布のことで(Hochhegger 2021)、気管支(気道)から入った病気を示唆します。例:気管支肺炎・細気管支炎・抗酸菌症(tree-in-bud)・誤嚥・過敏性肺炎など
- これに対し、胸膜や隔壁に沿う(リンパ路性)ならサルコイドーシスやがん性リンパ管症、どこにでも均等(ランダム)なら粟粒結核や血行性転移を考えます
- 肺炎のCTの見方は、大葉性肺炎(区域・肺葉に広がる浸潤影)・気管支肺炎=小葉性肺炎(小葉中心性の粒状影・斑状影)・間質性パターン(すりガラス影など)の3つに分けて考えると整理しやすいです(下の表)
- 「粒状影」の読み方は「りゅうじょうえい」です
小葉中心性とは?
小葉中心性の分布についてはこちらで動画解説しました。
まず動画を見ていただき、そのあとで記事を読んでいただけるとより理解が深まると思います。
気管支の分岐を理解する
下のように気管は分岐していき、最後に、肺の実質を形成する肺胞へと変化します。

このうち導管領域と呼吸領域の境界である終末細気管支・呼吸細気管支の部分が小葉・細葉を形成する重要な場所となります。
気管支の分岐はCT画像でどう見える?
実際のCT画像を見るときにはどのように見えるのでしょうか?
胸部CTの横断像(輪切り)の左肺を例に出して、イメージ図を作ってみました。

終末細気管支から呼吸細気管支へと気管支が分岐していく様子がわかります。
ただしここでの注意点として、呼吸細気管支は通常CT画像では見えません。
ですので、実際の画像で見えるときは肥厚している、感染症の可能性があるということができます。

さて、小葉間隔壁というCTでは通常見えない隔壁に境された「(二次)小葉」という単位があり、その中心部に細い気管支(細気管支)と肺動脈が入り込んでいます。
それを示したのが上の図になります。

小葉中心性の分布とは?
さらに小葉は、1本の終末細気管支より先(呼吸細気管支から肺胞まで)が受け持つ、さらに小さな「細葉(さいよう)」という単位からなります。
つまり小葉は細葉がいくつか集まったものということができます。

そして、感染が起こったときに上のように小葉中心(厳密には細葉中心ですが、画像所見では「小葉」中心性と慣用的に表現することが多いです)性に結節や粒状影を形成します。
これが「小葉中心性の分布」であり、このように分布する結節や粒状影をそれぞれ、
- 小葉中心性の結節影
- 小葉中心性の粒状影
などと表現するのです。なお、小葉中心部に陰影が分布するのは、小葉中心の細気管支だけでなく、リンパ管や肺動脈の枝を主に侵す病気でも起こりうるとされています。分布だけで気道の病気と決めつけず、分岐状影の有無や背景疾患とあわせて判断しましょう。
このうち小葉の部分をイラストで表すと次のようになります。

1)を参考に作図
そして肺炎(感染症)のときに見られる小葉中心性の分布を表すと下のようになります。

右側は実際の肺結核の症例です。
小葉中心性の小さな粒状影が多数あるのがわかります。(矢印で示しているのはごく一部の病変のみです)
小葉中心性の分布については次の症例で目に焼き付けましょう。
症例 30歳代男性

左下葉に小葉中心性の結節を多数認めています。
典型的な気管支肺炎のパターンです。
これを詳しく見てみるとどうでしょう。

胸膜直下には病変がなく空いていることがわかります。
このことは小葉中心性の分布であり、肺炎(感染症)を示唆する重要な所見ということができるということです。
ただし、小葉中心性の分布=肺炎 ではありませんので、臨床所見と合わせて総合的に診断することが重要です。
症例 70歳代女性 非結核性抗酸菌症(M.avium)

左下葉に小葉中心性の粒状影・分岐状影を認めています。
また、胸膜直下は保たれていることがわかります。
小葉中心性分布を示すことがある肺炎以外の病気は?
小葉中心性の分布=肺炎 ではないと先程述べましたが、感染症以外でこのパターンの分布を示すものには以下の疾患が挙げられます。なお、小葉中心性の粒状影と分岐状影からなるtree-in-budパターンも、感染症だけでなく、誤嚥、びまん性汎細気管支炎などの細気管支疾患、膠原病、さらに腫瘍塞栓のような末梢肺血管の病変でもみられることがあります。
- 膠原病(リウマチ、シェーグレン症候群、全身性強皮症)
- びまん性汎細気管支炎(DPB)
- 喫煙関連疾患(RB-ILD)
- 過敏性肺炎(HP)
背景にこれらの疾患があったり、現病歴で関連しそうな情報があれば、いくら小葉中心性の分布とは言え、これらの疾患を鑑別に挙げる必要があります。
肺炎のCT画像の見方:3つのパターン
肺炎は、胸部画像での広がり方から大きく大葉性肺炎・気管支肺炎・間質性パターンの3つに分けられます(Reynolds 2010)。小葉中心性分布は、このうち気管支肺炎(小葉性肺炎)を見分ける手がかりになります。
| パターン | CTでの見え方 | 考える病態の例 |
|---|---|---|
| 大葉性肺炎 | 区域・肺葉単位に広がる浸潤影(コンソリデーション)。中に空気の入った気管支(エアブロンコグラム)が見えることがある | 市中肺炎で多いパターン |
| 気管支肺炎(小葉性肺炎) | 気管支に沿って小葉中心性の粒状影・分岐状影や斑状の浸潤影が散らばる。胸膜直下が保たれやすい | 院内肺炎で多いパターン |
| 間質性パターン | すりガラス影や網状影が主体 | ウイルスやマイコプラズマなどによる、いわゆる非定型肺炎 |
Reynolds 2010をもとに作成
また、誤嚥による肺炎は重力のかかる側(下葉や背側)に分布しやすいとされ、高齢の市中肺炎では意識障害などが下葉優位の分布と関連していました(Komiya 2022)。「左下葉肺炎」「右下葉肺炎」のように下葉に偏った肺炎を見たら、誤嚥の背景がないかも確認しましょう。
小葉中心性分布でよくある疑問(Q&A)
Q1. 「粒状影」の読み方と大きさは?
A. 「りゅうじょうえい」と読みます。英語圏の用語集では、3mm未満の小さな結節は正式な計測をせず「微小結節(micronodule)」と呼んでよいとされています(Hochhegger 2021)。
Q2. 終末細気管支と呼吸細気管支の違いは?
A. 終末細気管支までは空気を運ぶだけの「導管」で、その先の呼吸細気管支から肺胞までがガス交換をおこなう領域です。1本の終末細気管支より先を「細葉」と呼び、細葉は直径6〜10mmほどで、1つの二次小葉には3〜25個の細葉が含まれます(Hochhegger 2021)。正常の細気管支はCTでは見えませんが、分泌物などで拡張・充満すると小葉中心性の結節やtree-in-budとして見えます(Hochhegger 2021)。
最後に
胸部CTにおける肺炎(感染症)を示す重要な所見である「小葉中心性の分布」についてまとめました。
まず気管支がどのように分岐していくのか、そしてそれがCTではどのように見えるのか、小葉がどのようなものかを順番に理解していくと容易ですね。
参考になれば幸いです( ´∀`)
1)胸部疾患のCT診断(最新医学社)P10図12
参考文献
- Webb WR. Thin-section CT of the secondary pulmonary lobule: anatomy and the image–the 2004 Fleischner lecture. Radiology. 2006;239(2):322-338. PubMed
- Hansell DM, Bankier AA, MacMahon H, et al. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008;246(3):697-722. PubMed
- Rossi SE, Franquet T, Volpacchio M, et al. Tree-in-bud pattern at thin-section CT of the lungs: radiologic-pathologic overview. Radiographics. 2005;25(3):789-801. PubMed
- Bankier AA, MacMahon H, Colby T, et al. Fleischner Society: Glossary of Terms for Thoracic Imaging. Radiology. 2024;310(2):e232558. PubMed
- Gruden JF, Webb WR, Warnock M. Centrilobular opacities in the lung on high-resolution CT: diagnostic considerations and pathologic correlation. AJR Am J Roentgenol. 1994;162(3):569-574. PubMed
- Hochhegger B, Marchiori E, Rodrigues R, et al. Consensus statement on thoracic radiology terminology in Portuguese used in Brazil and in Portugal. J Bras Pneumol. 2021;47(5):e20200595. PubMed
- Reynolds JH, McDonald G, Alton H, et al. Pneumonia in the immunocompetent patient. Br J Radiol. 2010;83(996):998-1009. PubMed
- Komiya K, Yamamoto T, Yoshikawa H, et al. Factors associated with gravity-dependent distribution on chest CT in elderly patients with community-acquired pneumonia: a retrospective observational study. Sci Rep. 2022;12(1):8023. PubMed
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COPDが小葉中心性だと書いてあるのを見て飛んできました。ちょっと長いのですが、自分なりに考えてみました。ツッコミどころがあったらツッコんでいただけると嬉しいです。
小葉中心性肺炎を見たら、気道から入った物が原因だと考え、喫煙関連疾患(RB-ILD)、過敏性肺臓炎(HP)、びまん性汎細気管支炎などを鑑別に挙げるということだと思いました。
膠原病も小葉中心性肺炎の鑑別に上がるのは意外でした。
膠原病による肺炎は、免疫学的機序が原因であって、吸気物が原因ではないので、厳密に小葉中心性分布にはならないと思ったからです。
膠原病による肺炎は、肺胞隔壁性間質が病態の首座だと思います。なので、厳密に小葉の中心性に分布していると言う意味ではなく、小葉全体にある程度のバリエーションを持って分布するという”広義の意味での小葉中心性”なのかなと思いました。