
症例51
【症例】70歳代女性
【現病歴】肝硬変、肝細胞癌でRFA後、TACE後のフォロー。
画像はこちら
肝硬変による門脈圧の亢進による側副血行路の症例4症例目(全5症例)です。
肝臓は辺縁鈍で凹凸不整です。肝硬変の状態です。
また肝内にはRFA後変化である低吸収域を認めており、脾腫も認めています。
胆嚢漿膜下浮腫を認めており、肝障害による影響が疑われます。
今回の側副血行路はどこでしょうか?
直腸内腔およびその周囲に血管の拡張及び蛇行を認めており、ここに側副血行路を形成していることがわかります。
直腸静脈瘤・傍直腸静脈瘤です。
この側副路を頭方向に追うと、下腸間膜静脈(IMV)と連続しており、門脈→脾静脈→下腸間膜静脈から血流が来ていることが分かります。
(またちょっと追いにくいですが、側副血行路を追うと内腸骨静脈と連続していそうです。)
診断:直腸静脈瘤・傍直腸静脈瘤
今回の側副血行路の状態をシェーマで示すと以下のようになります。
食道静脈瘤や胃静脈瘤、脾腎シャントなどは形成せずに、ここまで下まで側副血行路が来るのですね!
関連:
その他所見:
- 右胸水あり。
- 肝嚢胞あり。肝にRFA後変化あり。
- 胆嚢漿膜下浮腫あり。肝硬変の影響の疑い。
- 少量腹水あり。
- 腸管浮腫あり。肝硬変の影響の疑い。
- 左大腿骨頸部術後。
門脈圧亢進に伴う側副血行路の解説動画
主に見られる側副血行路の解説をしています。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
4例目とあって、側副血行路の図もだんだんと見慣れてきました。
血行動態がわかっていないと、肝硬変でなんで直腸に静脈瘤ができるのか理解できないですね。
さて、5例目も楽しみにしています!!!
(なんとなく予想がつくような、つかないような・・・ww)
アウトプットありがとうございます。
>4例目とあって、側副血行路の図もだんだんと見慣れてきました。
それはよかったです!!
>(なんとなく予想がつくような、つかないような・・・ww)
さて、今から差し替えますか(^_^;
左右の卵巣静脈(?)も拡張しているのかと思い異常と思ってしまいました。血流が直接IVCや腸骨静脈に入る臓器にに関するものは門脈圧亢進では側副路はできないということですよね?そう考えたら今回のも直腸と考えざるをえないということですね。傍直腸なんだろうか?子宮なんだろうか?と迷ってしまい反省です。
>血流が直接IVCや腸骨静脈に入る臓器にに関するものは門脈圧亢進では側副路はできない
IVCや腸骨静脈に側副路を形成することはあると思いますよ。
側副血行路が左の卵巣に入っているように見えたので
卵巣静脈瘤と書いてしまいました。
よく見てみると、直腸の周囲にあり、
頭側に追っていくと、門脈につながっているので、下腸間膜静脈なのだなと納得できました。
下腸間膜静脈自体、普段あまりじっくりみることがないので、走行の確認が出来ました。
今日もありがとうございました。
>下腸間膜静脈自体、普段あまりじっくりみることがない
おっしゃるとおりですね。
これを機に脾静脈に入っていく連続性を確認しておきましょう。
直腸周囲の血管を見つけて下腸管膜静脈と連続しているので、つい、「下腸管膜静脈へ流入」と記載しましたが…よく考えると、門脈系で閉鎖しているので、下腸管膜静脈→直腸周囲静脈→大静脈系ですよね。
そうですね。
門脈圧亢進時には普段想定される静脈の流れと全く正反対に流れるので混同してしまいがちですね。
つい上に向かうと思ってしまいがちですね。
すごい長い側副血行路の形成ですが,不思議ですね.
最初は細いものがあって,だんだん太く成長するのでしょうか.
色々な静脈瘤による側副血行路を見てきたために少しずつ見慣れてきました!もう一例も楽しみです.
アウトプットありがとうございます。
>すごい長い側副血行路の形成ですが,不思議ですね。最初は細いものがあって,だんだん太く成長するのでしょうか.
そうなんです。人体は摩訶不思議ですね。生き延びようと少しずつ変化するのですね。
下直腸静脈叢でしたか。。やられました^^;
途中で下大静脈が潰れてしまっており、類洞の圧がかなり高くなっているのだろうなと思いました。
P64あたりで見られる膵頭部の円形の低吸収域が何なのか気になりました。
膵管?かと思いましたが、膵体部〜尾部の膵管は拡張していないので、変ですね。。
拡張した胆管との連続性があるようにも見えるのですが、、、。
何なのでしょうか。症例とは関係ないですが、気になってしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>P64あたりで見られる膵頭部の円形の低吸収域が何なのか気になりました。
膵管?かと思いましたが、膵体部〜尾部の膵管は拡張していないので、変ですね。。
拡張した胆管との連続性があるようにも見えるのですが、、、。
小さなIPMNがありそうですね。分枝型です。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/6630
画像所見を探す時、肝硬変で形成されやすい側副血行路を頭に入れた上で探すのと盲目的に探すのとでは大違いだと実感しました!
症例とは直接関係ないですが、この方は骨粗鬆症などはあるでしょうか?172スライス目の椎体の低吸収域が気になりました。
アウトプットありがとうございます。
>画像所見を探す時、肝硬変で形成されやすい側副血行路を頭に入れた上で探すのと盲目的に探すのとでは大違いだと実感しました!
そう言っていただくと作った甲斐があります(^^)
>症例とは直接関係ないですが、この方は骨粗鬆症などはあるでしょうか?172スライス目の椎体の低吸収域が気になりました。
これだけだと何とも言えないですね。単なる変形性脊椎症かもしれませんし、Schmorl結節を見ているかもしれません。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/4676
腹腔動脈周囲に軟部影があるように見えたのですが、有意な所見ではないのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
確かにありますね。早期相でわかりやすいですね。
膵癌の術後などならば要注意な所見ですが、肝硬変で全体的に浮腫が目立つので何とも言えないですね。
ただし、フォローする必要はありますね。ご指摘ありがとうございます。
今回は直腸静脈瘤・傍直腸静脈瘤で、比較的遠い側副血行路でした。
近場の食道・胃静脈瘤を作らずに遠い所を経由するのは何か理由があるのでしょうか。
今回はここが行きやすい所だったのでしょうね。
アウトプットありがとうございます。
>近場の食道・胃静脈瘤を作らずに遠い所を経由するのは何か理由があるのでしょうか。
今回はここが行きやすい所だったのでしょうね。
理由については不明です。
むしろ記載があるものがあれば教えていただきたいです。
おっしゃるように門脈圧が亢進した際にここに側副血行路ができやすかったのでしょうね。
下腸間膜静脈に並行していて、左腎静脈から分岐するのは左卵巣静脈でしょうか?
普段からあんなに太いものでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように卵巣静脈で、確かにこの方は少し卵巣静脈の拡張も目立ちます。
症状などによってはナットクラッカー現象なども考慮に入れる必要がありますね。
この程度ですとたまに見られますが。
いつも貴重な症例をありがとうございます。
image59の肝臓外側区域に早期濃染域を認めます。形状、大きさ、造影様式からAPシャントが1番疑われますが、患者背景からは慎重なフォローが望まれます。
image101の後縦隔に腫瘤を認めます。形状、造影されないことから神経原性腫瘍などの良性腫瘍を第一に疑います。
さて、以前傾聴したIVR血管解剖の講義から…
門脈に流入するのは上腸間膜、下腸間膜、脾、左胃静脈のみですが、門脈圧亢進時に発達する遠肝性側副血行路について。生理的にある短絡路によってできる食道静脈瘤(奇静脈)、直腸静脈瘤(内腸骨静脈)、傍臍静脈(腹壁静脈)に対し、胃静脈瘤、脾腎短絡などは一般的には非生理的である点で一線を画しているとのこと。ここで湧き上がる「食道静脈瘤がないにもかかわらず胃静脈瘤、脾腎短絡の発達している症例があるのはなぜか」という疑問に対し、画像では指摘し得ないくらいの先天的門脈大循環短絡を持つことがあることを初めて知りました。発生の統一性(必ず門脈がある点…当然でしょうが)と多様性(いろいろな破格がある)の両者に神秘を感じました。
いかがでしょうか??
アウトプットありがとうございます。
>image59
そうですね。APシャントが第1に疑われますね。
>image101
確かにありますね。こちらも要フォローですね。
>画像では指摘し得ないくらいの先天的門脈大循環短絡を持つことがあること
そうなんですね。それは知りませんでした。
側副血行路については今回シリーズでやっていますが、人体の神秘を感じる領域の1つですね。
フィードバックありがとうございます。
次回の門亢症のラスト、楽しみにしています。
派手な症例、地味な症例、ワクワクです。