症例32 解答編

症例32

【症例】70歳代女性
【主訴】腹部著明膨満、食思不振、嘔吐
【データ】WBC 22000、CRP 1.24

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著明に拡張した腸管を認めています。

肛門から直腸→結腸を追うと拡張しているのがS状結腸であることがわかります。

S状結腸を追うと、急に拡張している部位(beak sign)を認め、そこから口側のS状結腸が拡張しています。

頑張って口側に追うと再び拡張がなくなり(beak sign)、先ほどのbeak signのやや頭側で交叉していることがわかります。

イメージ図で表すとこんな感じです。

つまり、S状結腸が捻転している状態であるということです。

S状結腸捻転というと有名なのがレントゲンのcoffee bean signですが、これは冠状断像をみるとその意味がわかります。

また冠状断像でもbeak signを認めており、その周りに渦巻状構造を認めているのがわかります。

Whirl sign(ワールサイン)と呼ばれるものです。

ということで、診断は、S状結腸軸捻転となります。
腸管虚血や壊死を疑う所見は現状認めていません。

診断:S状結腸軸捻転

※内視鏡的に整復がまず試みられます。ですので、消化器内科コンサルトとなります。
この症例でも、消化器内科にて内視鏡的整復をする予定でしたが、ショック状態となり、緊急手術となりました。

関連:【画像あり】S状結腸軸捻転とは?原因、症状、CT、治療まとめ!(今回のと同じ症例を掲載しています。)

その他所見:

  • 甲状腺右葉に石灰化あり。
  • 左少量胸水あり。
  • 胆石あり。
  • 脾臓周囲などに腹水貯留あり。
  • 直腸周囲脂肪織濃度上昇あり。(浮腫を反映か)
症例32の解説動画

S状結腸軸捻転について


お疲れ様でした。

今日は以上です。

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補足:S状結腸軸捻転について

S状結腸はclosed loopを作る病態の中でも、おそらく唯一、(腸管虚血などを疑う所見がない場合は)内視鏡的整復が第一選択とされています。(他にもあれば教えてください。)

また、緊急内視鏡となることもありますが、待機的に行われることもあります。

そして、内視鏡的整復がなされてもS状結腸軸捻転が再発することが結構あります。

推測ですが、捻転しやすいクセみたいなのがつくのでしょうか。
捻転したり、戻ったりということもあるのかもしれません。
とすると、S状結腸軸捻転で起こっている捻転の多くは他のclosed loopを形成する病態と比較して、比較的緩いのかもしれません。

外科の同期にLINEで聞いてみました。

とのことです。

やはり、同じ捻転、closed loopでもやや緩い印象ですね。

また「腸管虚血などを疑う所見」というのは、画像のみから判断するわけではなく、患者さんの状態、バイタルや採血データなどが非常に重要となります。(もちろん採血データなどは遅れて異常値となることもありますが)

今回の症例でも、「消化器内科にて内視鏡的整復をする予定でしたが、ショック状態となり、緊急手術となりました。」と記載しましたが、実は緊急内視鏡ではなく、数日後の待期的な内視鏡整復予定でした(すぐにやらなかったからショック状態になったとも言えますが)。

とはいえ、他のclosed loopを作る病態と比べて、やや絞扼が緩い傾向にあるというのが個人的な印象です。

今回、closed loopを形成していますが、下行結腸の拡張は認めていませんでした。
これは時間がまだ経過してないという点に加えてこういった要素もあるのかもしれません。
(あくまで推測ですので、詳しいことがわかればまた記載します)