症例31 解答編

症例31

【症例】40歳代男性
【主訴】右の鼠径部の腫脹、疼痛、嘔吐
【データ】WBC 15100、CRP 0.08

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下腹部に局所的な小腸の拡張像を認めています。

腸間膜の浮腫を認めており、小腸には内部に糞便状の構造(プツプツとair)を認めています。

これをsmall bowel feces signといい、閉塞機転を示唆する所見です。つまりこの先に閉塞機転があるというヒントになるサインです。

(今回は小腸イレウスの範囲が狭いですが、広範なイレウスの場合は、このサインがヒントになるので覚えておいてください。)

右鼠径-陰嚢内に腸間膜および腸管の逸脱を認めており、浮腫性変化を伴っています。

右鼠径ヘルニアの嵌頓が疑われます。

S状結腸などと比べると拡張した腸管の造影効果が不良で、嵌頓により腸管虚血に陥っていることが予測され、嵌頓の解除が必要となります。

また、嵌頓したヘルニア部分には腸管外に液貯留を認めています。
これはヘルニア水と呼ばれ、早期の絞扼を示唆する所見と言われます。

 

緊急手術となり、解除されました。腸管壊死には至っておらず、腸切除にはなりませんでした。

さて、鼠径ヘルニアといえば、

  • 内鼠径ヘルニア
  • 外鼠径ヘルニア

があります。

症例8の解説にも記載したように、

  • 下腹壁静脈の内側から出ている→内(直接)鼠径ヘルニア
  • 下腹壁静脈の外側から出ている→外(間接)鼠径ヘルニア

というのが鑑別のポイントでした。

今回は下腹壁動静脈の外側にヘルニア門を認めておりますので、外鼠径ヘルニアと診断することができます。

診断:右外鼠径ヘルニア嵌頓

※嵌頓の解除が必要であり、外科コンサルトとなります。

症例31の解説動画

下腹壁動静脈の解剖について

外ヘルニアの復習+α

関連:

その他所見:

  • 腎嚢胞あり。
  • 肝に2カ所淡いLDAあり。嚢胞や血管腫か。
  • 少量腹水あり。
  • 右陰のう水腫あり。

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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