
症例42
【症例】80歳代男性
スクリーニング
画像はこちら
肝内の門脈沿いにairを認めています。
airは肝門部と連続しており、総胆管と連続性を認めており、肝内胆管〜総胆管のairを認めていることが分かります。
診断:胆道気腫(pneumobilia)
この胆道気腫(pneumobilia)は、
- 胆管空腸吻合後
- 乳頭切開後
- 内瘻化後
- 胆石の通過後
- 胆石イレウス後
- 外傷後
に見られることがある頻度が高い現象です。
今回の症例では、総胆管結石により乳頭切開後(その後胆摘)であり、その影響でpneumobiliaを認めていることがわかります。
これらの既往・手術歴ない場合は、胆道-消化管瘻の可能性があるため、慢性胆嚢炎の十二指腸穿通などをチェックする必要があります。
また、前回の画像ではpneumobiliaが見られたのに、今回の画像では認めてないと言う場合、胆管内に感染を伴っている可能性があり、要注意です。
胆道気腫(pneumobilia)と門脈内ガスの違い
胆道気腫(pneumobilia)とよく似ているものに、門脈内ガスがありますが、
- 胆道:肝の末梢から肝門部に向かって流れる。
- 門脈:肝門部から肝の末梢に向かって流れる。
という全く逆の流れから、
- 胆道気腫:中枢側
- 門脈内ガス:末梢側
に認めやすい特徴・傾向があります。
ただし、末梢まで胆道気腫を認めることもありますので、これらの分布だけではなく、肝門部の胆管や門脈との連続性をチェックすることが重要です。
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その他所見:
- 胆摘後。
- 動脈硬化あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
はじめてpneumobiliaにあたったのが、胆管感染でした。その後、術後症例で「病気だ!」と言ってしまったことがあり、その場でたしなめられた経験があります。
この記事を若いときにみれた方は幸せですね(それほど辛い経験ではなかったですのでご安心を)
経験談&アウトプットありがとうございます(^o^)
むしろpneumobiliaがあったのに消えてしまった場合は、病気(胆管炎)の可能性がありますね。
乳頭切開術によるpneumobiliaと考えました。
「胆摘後と言うことは胆石症があった可能性がある」→「胆石が総胆管に嵌頓して胆管炎を起こして乳頭切開が行われた」というヒストリーを想像しました。
胆摘が原因で、肝内胆管にガスが残っていると言うことは、胆摘直後ということでしょうか?
勝手なイメージですが、胆摘後で胆道が閉鎖された状態で、かつ乳頭の機能が保持されている場合、そのうちガスは吸収されるのではと思うのですが…。(一応、ネットで検索をかけてみたのですが、詳しく書かれている文献を探すことができませんでした。)
アウトプットありがとうございます。
>「胆摘後と言うことは胆石症があった可能性がある」→「胆石が総胆管に嵌頓して胆管炎を起こして乳頭切開が行われた」というヒストリーを想像しました。
すいません、まさにおっしゃるとおりでした。修正しました。
胆摘後→pneumobiliaの場合はそれですね。
こちらも勉強になりました。
先日、門脈内ガスを見たばかりで、誤診しそうになりましたが、どこにつながっているのか注意深く追って正解できました(^▽^)/
分布もヒントになるんですね。流れを考えれば納得です。
アウトプットありがとうございます。
>分布もヒントになるんですね。流れを考えれば納得です。
そうなんです。ただし分布はあくまで傾向なので注意も必要です。
pneumobiliaであっても結構末梢まで見られるケースもあります。
airの分布が門脈の分布?に似ていたので門脈内ガスとしてしまいました。
確かに胆管も同じ分布ですね。流れる方向によってある程度の鑑別はできるのですね。
勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>流れる方向によってある程度の鑑別はできるのですね。
そうですね。ある程度鑑別できます。
あとは、肝臓だけではなく肝門部などとの連続性をチェックすることも重要ですね。
門脈ガスであるならば、門脈やSMVさらにはその末梢にもガスを認めることが多いのでそれらがないのかをチェックしましょう。
pneumobiliaの場合は今回のように総胆管内にもガスを認めていることがありますのでチェックですね。
pneumobiliaは何度か経験したことがあり,その時に消化器の先生に慌てないようにと教わりました.今後見た時には門脈内ガスと慎重に鑑別しなければなりませんね.気をつけます.
門脈内ガス=慌てる というわけではありませんが、pneumobiliaよりはドキッとしないといけないですね。
一方で、pneumobiliaは前回見えていたのに消失していた場合は感染の可能性がありドキッとしなくてはいけません。
こんにちは。いつもお世話になっております!
胆管内ガスであるとしつつも、念の為門脈内ガスの可能性も排除せず、腸管の方に何かないかしっかり確認するように心がけました。
アウトプットありがとうございます。
胆管内ガスの場合→総胆管との連続性
肝内門脈ガスの場合→門脈やSMVおよびその末梢
との連続性を認めることがありますのでこちらにも着目しましょう。
認めないこともありますので、今回のように腸管の方もチェックも重要です。
勉強させていただいています。
初歩的なことで申し訳ないのですが、胆管炎で胆道気腫が消失する機序は、なぜですか?
アウトプットありがとうございます。
>胆管炎で胆道気腫が消失する機序
胆道気腫が消失した
=繋がっていたはずの胆管と腸管が途絶された
=閉塞機転ができた
→胆管に胆管炎による浮腫などにより狭窄ができた、石ができた、腫瘍ができた、胆管を外から圧迫する腫瘍ができた などが考えられます。
ですので、
胆道気腫が消失した=胆管炎
ではなく、腫瘍などの可能性もあります。
>繋がっていたはずの胆管と腸管
胆管空腸吻合後や、切開後などの乳頭といった原因でairが流入するようになったのでpneumobiliaを認めるのでしょうか?
airが流入していた病態から、胆管炎による浮腫性狭窄や胆石などでairが流入できなくなった病態へ変化したため、pneumobiliaの消失は胆管炎を新規に発症している可能性を示唆するのでしょうか?
似たような質問を繰り返して申し訳ありません
アウトプットありがとうございます。
>胆管空腸吻合後や、切開後などの乳頭といった原因でairが流入するようになったのでpneumobiliaを認めるのでしょうか?
おっしゃるとおりです。
>airが流入していた病態から、胆管炎による浮腫性狭窄や胆石などでairが流入できなくなった病態へ変化したため、pneumobiliaの消失は胆管炎を新規に発症している可能性を示唆するのでしょうか?
こちらもおっしゃるとおりです。
いつもご教授いただきありがとうございます。
胆道気腫症はわかったのですが、総胆管短くないですか?膵管との合流もはっきりしなくて、胃が途中からそれも正中より左側で壁の厚みが極端に変わり術後(B-Ⅱ法)で小腸につながっているのかと思ったのですが。
B-Ⅱじゃなくて、膵頭十二指腸切除術後で再建されている状態
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように胃が切除されていますね。
胃潰瘍で胃切除の既往があるようですが、再建方法までは記載がありませんでした。
おそらくBillroth Ⅱ法だと思われます。
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>前回の画像ではpneumobiliaが見られたのに、今回の画像では認めてないと言う場合、胆管内に感染を伴っている可能性があり、要注意です
pneumobiliaが消失すると感染の可能性を示唆する病態生理が探しても見つかりませんでした。pneumobiliaを認める方が細菌などが存在していそうな気がしますし、airを細菌などが消費している事を示唆しているのだろうかと考えてしまいました。分かる方居たらご教授頂けたら幸いです。
上のコメントで解決しました。ありがとうございます。