
症例41
【症例】70歳代 男性
スクリーニング
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MRCPのMIP像で上部胆管(総肝管)に狭窄様所見を認めています。
- 総胆管結石
- 胆管癌
などでもあるのでしょうか?
肝門部での動脈、門脈、胆管の位置関係は前から見ると上のイラストのようになっており、
- 総肝管のすぐ背側に右肝動脈が走行
しています。(※上のイラストの吹き出しの右冠動脈→右肝動脈の誤植です。作成したパワポ資料が見当たらず、このまま放置しています。)
つまり、この右肝動脈が総胆管を圧迫して狭窄のように見えてしまう、偽狭窄を作ることがあります。
今回は、T2WIの冠状断像でその様子が分かりやすいです。
上の様に総肝管部分を右肝動脈が横切っていることが分かりますね。
冠状断像と横断像の関係を見てみましょう。
右肝動脈が横切っているレベルの横断像では、
- 胆管のすぐ後ろを右肝動脈が走行している
様子が分かります。
CTも撮影されていますので見てみましょう。
CTにおいても動脈相で血管と胆管の関係を見ることができます。
CTでも同じように胆管の後ろを右肝動脈が走行しています。
拡大してみましょう。
ちなみに
- T2WIでは胆管は高信号、血管は低信号
- 造影CTでは胆管は低吸収、動脈は高吸収
に見えるのでした。
ということで、胆管の上部にこのような狭窄様所見をMRCPで見たときに、安易に
- 総胆管結石
- 胆管癌
などを考えるのではなく、このような偽病変(偽狭窄)を生じることがあることを知っておきましょう。
※ただし、他のシークエンスや断面での確認も必要です。
診断:右肝動脈による偽狭窄(偽病変、圧排)
関連:
その他所見:腎嚢胞あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
本来、右肝動脈は総肝管の背側を通るのに、総肝管を狭窄してみえるとういうことは、体位や動きによってみえてしまうということでしょうか。
狭窄というよりは、動脈の硬いので接するだけで少し押してしまうという感じですね。
見える人と見えない人がいますので、体位によっても変わると思われます。
総肝動脈としてしまいましたが、右で、かつ、動きによる欠損かと思いましたが、圧迫なんですね。一度経験すると次からの自信になります。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
MRCPでは有名な偽病変ですので、この機会に覚えておいてください。
胆道系のMRI検査において、MRCP MIPで全体像を確認しますが、T2冠状断の薄いスライスが、結石の存在や、胆管と血管、その他の臓器との関係を確認しやすい場合が多いと感じます。今回の症例でも、T2冠状断を見て血管の存在を確認しました。
アウトプットありがとうございます。
>T2冠状断の薄いスライスが、結石の存在や、胆管と血管、その他の臓器との関係を確認しやすい場合が多い
おっしゃるとおりですね。MIP像だけで判断すると痛い目に遭いますね。
まず問題に「胆管が狭窄しているように見えますが」とありましたが、どこが狭窄しているように見えるかを探すのに時間がかかりました(;’∀’) MIP像のありがたみを感じました(^▽^)/
最初はやっぱり腫瘍や結石を考えましたが、上流の胆管の拡張がないこと(+あえて問題になっていること(笑))から、調べて正解にたどりつくことができました。
アウトプットありがとうございます。
>上流の胆管の拡張がないこと(+あえて問題になっていること(笑))から、調べて正解にたどりつくことができました。
いろいろ調べて正解にたどり着く方が記憶に残りますね(^o^)
T2WIで低信号の線状構造は血管だなぁと見てはいたのですが、全然違うところを一生懸命見てしまいました。
内耳の検査時には血管と神経の位置関係には気を使って画像を作成するのですが、腹部でも大事なことだと考えるきっかけとなりました。
そうですね。内耳ほど細かい画像ではないですが、このように血管が走行している様子が見えることがあるので、多方向での観察が大事ですね。
動脈に圧排されていることはわかりましたが,このように見えることは初めて知りました.
MIPを見てから,異常に気がつきその後に他の撮像条件を確認することで狭窄部位がわかりました.
確かに冠状断ではわかりやすいので,複数平面で見ることが必要ですね.
アウトプットありがとうございます。
今回は冠状断像で確認することができましたが、よくわからないこともあります。
そのような場合に狭窄!結石!腫瘍!とすぐに持って行かずに、「待てよ。ここにはこのような偽病変があったな」と一息つくことが大事ですね(^o^)
いつも大変勉強になる症例をありがとうございます。MRCPの画像についてご質問させて頂きたいのですが、T2WIの冠状断が複数種類あるのはどういう違いがあるのでしょうか?(MIPや3D以外で)いつも違いがわからず3種類全部見てしまうのですが…
アウトプットありがとうございます。
具体的にどのシークエンスでしょうか?
こちらにまとまっていました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/photographingjsrt/51/0/51_KJ00005046384/_pdf
結石やガンにしては、バンド状で辺縁がスムーズですから、その違和感を大事にしたいです。
アウトプットありがとうございます。
違和感も重要ですね。よくあるので部位も覚えておきましょう。
今回も、目からウロコでした。ありがとうございました!
アウトプットありがとうございます。
誤って狭窄とか総胆管結石としないように注意しましょう。
動脈の分岐および肝管との位置関係、勉強になりました。イラストの「右冠動脈」は「右肝動脈」ですね。
アウトプットありがとうございます。
>イラストの「右冠動脈」は「右肝動脈」ですね。
おっしゃるとおりです。そのように注釈を付けています。
この元のイラストが行方不明で画像内で修正ができないでいます(;゚ロ゚)
いつも貴重な症例をありがとうございます。
その他の所見としては、
少しChilaiditi症候群、気味でしょうか?
本症例では上部胆管ですが、
上腸間膜動脈から右肝動脈の全てまたは一部が
分岐するreplaced RHAやaccessory RHAでは、
下部胆管に偽狭窄像を呈するケースもありますので、要注意ですね。
T2系シーケンスの総胆管結石による透亮像や、T1系シーケンス結石や腫瘍自体の信号、DWIでは腫瘍の信号、肝内〜十二指腸合流部までの胆管の見え方など、総合的に見るようにしています。何でもかんでもERCPにもってかれないように(笑)
先生おっしゃるように、全てのシーケンスや撮像面の画像をよく見るのが大切ですね(焦らず…)。
アウトプットありがとうございます。
>少しChilaiditi症候群、気味でしょうか?
そうですね。結腸が肝臓の前にありますね。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/34145
>本症例では上部胆管ですが、
上腸間膜動脈から右肝動脈の全てまたは一部が
分岐するreplaced RHAやaccessory RHAでは、
下部胆管に偽狭窄像を呈するケースもありますので、要注意ですね。
恥ずかしながらこのケースは認識していませんでした。補足ありがとうございます。
>T2系シーケンスの総胆管結石による透亮像や、T1系シーケンス結石や腫瘍自体の信号、DWIでは腫瘍の信号、肝内〜十二指腸合流部までの胆管の見え方など、総合的に見るようにしています。何でもかんでもERCPにもってかれないように(笑)
そうですね。3DのT2WIなども隈無く観察する必要がありますね。