
【頭部】TIPS症例70
【症例】50歳代 女性
【現病歴】3年前より、とある疾患で定期フォローされている。
【身体所見】両側上肢痙縮あり。四肢の筋萎縮あり。深部腱反射亢進、病的反射陽性あり。
画像はこちら
異常所見およびどんな疾患の可能性がある?
FLAIRおよびT2WIにおいて、錐体路に沿った高信号を認め、通常より目立ちます。
また50歳代にしては、側脳室の下角の開大が目立ち、大脳半球の前頭葉及び側頭葉を中心に萎縮を認めていることがわかります。
また少し気づきにくい所見ではありますが、T2WIで中心前回の皮質に帯状の低信号を認めています。
今回の主訴である、上位運動ニューロン障害、下位運動ニューロン障害があり、このような所見を見た場合に考えるべきは、まずは筋萎縮性側索硬化症(ALS)です。
診断:錐体路に異常信号あり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の可能性あり。
※錐体路に沿った異常信号を示す疾患はたくさんありますので、この所見だけで筋萎縮性側索硬化症とは言えません。臨床所見などを合わせて総合的に診断します。
※この方は、筋萎縮性側索硬化症としてフォローされており、この検査の1年3ヶ月後に亡くなりました。
【錐体路に沿った高信号の鑑別診断】
140文字では収まらないほど鑑別があります😇
(引用:画像診断 Vol.35 No.10 2015 P1256) pic.twitter.com/09PS9xE1Zh— ごろ~にゃ@画像診断cafe (@radiology_cafe) October 3, 2021
関連:
【頭部】TIPS症例70の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
T2などで中心前回皮質に低吸収とはCTにおける皮髄不明瞭みたいな感じで悪い所見なのですね。ちょっとハイレベルというか私の無知が原因で知らないことが続いています。しかし、勉強になります。ありがとうございました。
FLAIRでは皮質の低信号化は起きていないように見えます。T2に限った所見なのでしょうか?すいません。
何回もすいません。まとめに『T2強調像における側頭葉前方内側や島の皮質下白質の高信号化を特徴とする』と記載がありました。FLAIRだと皮質のT2における高信号が水分だから抑制されるということなのかと考えました。
アウトプットありがとうございます。
>T2などで中心前回皮質に低吸収とはCTにおける皮髄不明瞭みたいな感じで悪い所見
T2WIでの中心前回皮質に低信号=CTにおける皮髄不明瞭というわけではありません。
そもそもCTにおける皮髄不明瞭は脳梗塞などで認める所見ですので、今は全く異なるものです。
この低信号はT2WIやSWIで認めることがあるようですが、ALSに特異的な所見ではない点に注意ですね。
健常人よりはALSで認めると記載があります。
ここの所見よりも、まずは錐体路に沿った異常な高信号を指摘できるようにしましょう。
錐体路の異常信号による鑑別は難解な疾患が多いくて大変です…
今回はU-fiberも侵されているので、炎症性疾患を疑いたくはなりますね。
アウトプットありがとうございます。
鑑別は多いのですが、主訴や臨床所見と併せると鑑別疾患はかなり絞られますね。
それでも多いかもしれませんが(^_^;)
鑑別診断が非常に多いですね
一つの参考所見というところでしょうか
アウトプットありがとうございます。
鑑別診断が非常に多いのですが、後は臨床所見と併せてということになりますね。
まずは正常範囲の錐体路の高信号ではないと気づけるかが重要ですね。
調べてみるとalsでは前頭葉や側頭葉の機能低下で認知機能障害も伴うみたいですね。勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
認知機能障害は全例で伴うわけではなく、むしろもともとALSには伴わないとされてきましたが、少なからず伴うことがあることがわかり、ALS-D(amyotrophic lateral sclerosis with dementia)と区別されているようですね。
参考:よくわかる脳MRI 第3版 P599